2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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藤井涼氏(以下、藤井):宇宙ビジネスのセッションが始まりました。今回、2部構成になっていて、前半が宇宙ビジネスのIPO、宇宙でのハードシングスについてうかがいたいと思っています。
後半のパート2が、人類の課題解決に活用できるんじゃないか、貢献できるんじゃないかと言われているので、こちらにアレンジされているみなさんのお話を聞いていきたいと思っています。コーディネーターを務めるのは、「UchuBiz」という宇宙ビジネスメディアの編集長をやっている藤井と申します。よろしくお願いします。
(会場拍手)
藤井:さっそく前半の、宇宙ビジネスIPOのセッションに入っていきたいと思います。豪華なお二人に来ていただいていて、まず、奥から紹介しますが、ispace取締役CFOの野﨑さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。
野﨑順平氏(以下、野﨑):よろしくお願いします。野﨑です、こんにちは。
(会場拍手)
藤井:そしてお隣が、企業側の考えも理解していて、政府側の話も熟知されているTMI総合法律事務所のパートナー弁護士、新谷さんです。
新谷美保子氏(以下、新谷):新谷美保子です。よろしくお願いします。
(会場拍手)
藤井:お願いします。最初に、簡単に事業紹介や自己紹介をお願いできればと思います。野﨑さん、よろしくお願いします。
野﨑:はい、よろしくお願いします。ispaceという会社をご存じの方はいらっしゃいますか? いらっしゃる……あっ、ありがとうございます。うれしいです。
ispaceは、月面ランダーという月着陸船を作っています。最初の「ミッション」を、2022年に打ち上げて、2023年に着陸を試みました。(会場モニターを示し)今ご覧いただいているのは、その時に実際に撮った写真です。これは、高度約2,000キロから撮った月の写真なんですね。
実はもう1枚あって、こちらもその写真です。これは非常に貴重な写真で、地球が見えると思うのですが、地球の下のほうに黒い影が見えます。ちょうどオーストラリア大陸のあたりの日食を捉えた瞬間なんです。
昔は、こういう写真はNASAや宇宙機関しか撮れなかったのですが、民間企業としてこういう写真を撮れるようになりました。ispaceのランダーというのですが、そこから撮っている写真を、冒頭で紹介したいと思っています。
野﨑:少し申し上げましたが、ispaceは2023年の4月に、着陸を目指しました。この最後のほうの、マイルストーンで言うと、月に向かって垂直な状態で降りていくところまではしっかり実現できたのですが、残念ながら、最後の高度数キロあたりで、ホバリングのような状態になってしまって、最後は燃料切れになって落ちてしまいました。
高度計算にミスがあったんですね。高度に認識ミスがあって、残念ながら着陸できなかったんです。非常に惜しいところまでいったという状況です。
ただ、技術、R&Dがよくハイライトされることはもちろん一番大事なのですが、それだけではなくて、ispaceはこれを事業としてやることで、ビジネス化をしているところです。なぜこんなことをやりたいのかというと、会社として月に経済圏を作りたいからです。
経済圏が何かというと、単に実験や冒険だけだと、なかなか宇宙船が飛び交うような世界は作れないのですが、何機も何機も宇宙船が飛び交うような世界を作るには、ビジネスの仕組みが必要です。お金が回る仕組みが必要なので、経済圏を作りたいというのが、ispaceがやっていることになります。
野﨑:もうちょっと申し上げると、鍵になるのが月の水資源です。月には水があることをみなさんご存じでしょうか? すでに確認されていることですが、この水資源からエネルギーを作れます。
この間、H3ロケットが打ち上げられましたが、ああいうロケット燃料を水から作り出すことができます。月でこれを作れると、例えばもっと簡単に、火星や諸惑星に圧倒的に安いコストで行けます。あるいは、地球の周りのたくさんの衛星、みなさんの生活にも欠かせないGPSや気象衛星といったものを維持していく時にも、この月の水の燃料が非常に有効活用できます。
これを使って、経済圏、ビジネスの流れを作って、ひいては人間の生活を豊かにしていきたいというのがispaceのやりたいことです。よく、「月に脱出したいんですか?」と言われるんですけど、そうじゃなくて、地球の生活をよりちゃんと維持するために、そういう衛星インフラをちゃんと守るために、ispaceはこういう事業をやっているというのが紹介になります。
最後のページかな。具体的にどういうビジネスをやっているかというと、宅配事業です。ペイロードというのはお客さんの荷物ですが、月にいろいろなものを持っていきたいという方がたくさんいるので、それを預かって月に届けることでお金をいただくということを今やっています。
そして、今後もっとやっていきたいと考えているのは、データをさらに活用して、いろいろな収益につなげていくことです。一応PRすると、弊社がおこなう民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のパートナーシップサービスにスポンサーがいて、このユニフォームを見ていただくとわかるとおり、いろいろな企業さんからご協賛をいただいて、ご協力をいただいています。
野﨑:こういうことをやっている会社です。……もう1枚ありました。「ミッション1」は、2022年に打ち上げて終わったのですが、実は今、ispaceは3つのミッションをやっています。「ミッション2」を2024年の冬に打ち上げます。2回目のチャレンジで、今度こそ着陸をしっかりしたいと思います。
同時に、2026年の「ミッション3」です。これは、アメリカで「APEX 1.0」というより大型のランダーを作っています。そして日本では、2027年にさらに大型な「ミッション6」に向けたランダーを開発しています。今日は、いろいろと話せればと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
(会場拍手)
藤井:ありがとうございます。新谷さんにいく前に、1問だけお聞きします。先日中国が、史上初めて月の裏側のサンプルリターンに成功しましたが、あれは、まさに月をやっていらっしゃる野﨑さんには、どれほどの衝撃だったんですか?
野﨑:実はあまり衝撃的ではなかったです。みなさんにはあまり知られていない事実かもしれませんが、月を今、世界で一番アクティブにやっているのが中国ですね。そして一番進んでいるのは、実はアメリカよりも中国だと思います。
もう月に、実際に新規で着陸も3回していますし、今回裏側でサンプルが採れるというのも、ある程度期待、予想はできます。ただ、リアルになってきているので、どんどんどんどんやらないと、やはり、中国が一国で先行してしまうと、実際そういうふうに宇宙で資源を採るのは、ispaceでやっているだけじゃなくて、どの地域でもみんなが目指していることだと思います。
(次回へつづく)
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