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生成AI産業の直感的理解とAIの社会実装装置としてのPKSHA(全2記事)

生成AIは社会をどう変えるのか PKSHAが挑む未来のエンジニアリング

PKSHA Technology社長の上野山勝也氏が、生成AIの現状と未来について語りました。10年間のAI技術の進化を振り返り、ニューラルネットワークから生成AIまでの道のりをわかりやすく解説。PKSHAの実例を交えながら、これからの時代におけるソフトウェア開発の在り方と、エンジニアの重要性を強調しました。全2回。前回の記事はこちら

PKSHAの社会実装への挑戦

上野山勝也氏:後半は、社会実装装置としてのPKSHAです。我々も、やはりこういう「メチャクチャおもしろいね」という新しい技術をを実装して、社会価値に転換したい。(会社は)ここから徒歩5分ぐらいのところにあって、この木(本郷の楠)の下で10年前にいろいろなAI技術やコンピューティングの技術を使って社会実装したいなと思っていたんですが、けっこう実装までの道のりが遠い。

これはハードテック系の会社すべてが置かれている話なんですが、10年ぐらいプラクティスしてきた事例とか、今後生成AIの実装の時に何が重要かを最後にお伝えして終われればなと思います。このギャップを埋める装置として、(スライドを示して)今この巨木の下で数百名の技術者がいろいろなソフトウェアを作っています。

ファクトだけお伝えすると、今これはPoCじゃなくて商用で動いているものです。私がしゃべっている間も、約7,000体のAIエージェントが日本全国の社内で動いています。未来から見るとそこまでまだ知能的かはわからないですが、言葉を操ったり、音声を操ったり、半年前から見ると非常に知能的なエージェントが日々働いて動いています。

AIエージェントの実用例

これは具体的に何が動いているの? という事例をいくつかババッとお伝えして、抽象化して資産に変えられればと思います。1個目は、「PKSHA Security」というエージェントです。攻撃側がテクノロジー武装をしているので、最近クレジットカードの不正利用が爆増しています。

クレジットカードの決済が飛んで、これが犯罪かどうかを見抜くのは今まで人間がやっていたんですよ。人間がルールベースでルールをおいて、「これが犯罪」「犯罪じゃない」ってやっていたんですが、ぜんぜん追いつかない。これをマシンラーニングベースに切り替えて、今だいたい40兆円ぐらいの決済トランザクションの裏でリアルタイムにディテクターのアルゴリズムが金融系の基幹システムの中で動いています。

これはもう、ソフトウェアの役割って何なんだろうと我々は問うんですが、人間の認知の外にある重要なものをソフトウェアに認知させる。これは未来のソフトウェアの役割であると。こういう0.何秒の認知は人間には向いていないですよね。こういうものをソフトウェアに委ねていく事例だったり、またそのChatbotやVoicebotみたいなところも一応日本で一番実装しています。

コンピューターインターフェイスはどうなるの? やはり対話型になるはずだよね。2018年の社会に実装して、一番使われているんですが、2023年に「トランザクション日本1位!」と言っていたら、OpenAIや「ChatGPT」が出てきて一瞬で抜き去られるということが起きました(笑)。

(会場笑)

でも商用レベルで言うと、まだトランザクション1位だと思います。(スライドを示して)この右側が、我々のエンジンが動いているマップです。ずっと島根県に導入がされていなかったんですが、島根にようやく導入されて、今は47都道府県全部で動いています。だいたい1エージェント、年収100万円ちょっと、日本の平均年収のちょうど半人前ぐらいの能力のエージェントが動き始めています。

不登校予防への取り組み

ただ、これが5年後や10年後にはどうなるのか、どうなるべきなのかという非常にセンシティブな問いの中で生成AI産業は動いていると思います。

我々はやはりエンジニアは「エンジニア社会のエンジンであるべきである」「社会課題を解決すべきである」と思っています。子どもの不登校を予測/検知して予防するというエンジンが動き始めていますが、いろいろな小中学校で、いろいろなデータから予兆が出て、それが職員室の中に表示されると先生方のコミュニケーションが変わり、これは実際に先生方の感覚値と近いと言われています。

ただ時々「あれ? この子気づいてなかったが、大丈夫なの?」「大丈夫じゃないんじゃないか?」「いや、大丈夫だよ」みたいな議論が起こるんですね。なので今まで属人化した1人の先生の優しさに委ねられていたようなものが、仕組みになり、ケアする能力をエンパワーしていくようなデザインがあるんじゃないかと思います。

これは個別事例ですが、社内の中では、アルゴリズムモジュールというかたちでイメージとレゴブロック化されていて、日本にあるさまざまな社会課題に高速で適用できるようなデザインを模索しています。これは一例ですが、本当にさまざまなプロジェクトをやっており、いろいろなアルゴリズムの精度を上げることで犯罪を減らすなど、極めてダイレクトに接続するところにAIを実装していっているということです。

実践型研究とワールドモデル

じゃあ、これを実装するポイントって何なのかみたいな議論ですが、我々はリサーチを研究所だと思っていて「PKSHA ReSearch」という、一般的な研究所とイメージが違って、社会実装の研究をやっています。もちろんラボに籠もっての研究も重要なんですが、やはりその工学というものの研究の言語のルールが変わったと思っていて、社会と相互作用しながら実践していく。

なので試して深めるのが非常に重要になってくる。ワールドモデルという話を何度もしていますが、そもそも自分の脳みたいなものと、この広大な世界ではどっちが複雑なんだ? という議論をよくして、どう考えても世界のほうが複雑であると。だとすると、世界と相互作用してワールドモデルを育てることを繰り返し続けることが、そもそも実装の方法論の定石なんじゃないか。

ということで、1個目は、実践型研究という、試して深めていくことが生成AIにおいても非常に重要になってくると思います。Webニュースを読むんじゃなくて自分で作ってみる、自分でユーザーに問うてみることが非常に重要になってくる。

認知限界を超える協働

2つ目は、「一人でやらない」という標語がありまして、もう今は、1人で全部を認知するのは無理なんですよ。人間の認知限度を超えているので、基本的にコラボとかチームとかでやります。我々が大規模言語モデルをいろいろと実装していく中で、「あ、こういうコスト構造のこういうレスポンス速度のものは求められているね」、かつ「OpenAI等々はやらないけれども求められている」というものは内製化します。

それをMicrosoftさんとか、いろいろな会社さんにサポートしていただいて1人でやらずに実装するということが非常に重要になってくると思います。これは社内の宣伝っぽくなっちゃって恐縮なんですが、やはり認知限界はもうすでに超えているんですよ。これは何を意味するかというと、異なる専門性を持つ人たちがうまくコラボレーションをしてプロダクトを作らないといけないということです。

研究室ではブレストがメチャクチャ重要だと思うんですが、これを異分野でやる。とても重要だと思っているのは、ユーザーとか、社会とか、エンジニアとかビジネスって分けるじゃないですか。あれも溶けていくんじゃないかなと思っていて、今後のソフトウェアデザインって、ユーザーとか社会とかも含めてアーキテクトする必要があるんじゃないかと思っています。

ニューラルネットワークは、デジタルなニューラルネットワークですよね。人間の脳はバイオロジカルなニューラルネットですよね。抽象化してみると同じクラスとして表現できるかもしれない。そのモジュール同士が相互作用して新しい価値を紡いでいくことになってくるわけです。なので1人でやらないことが非常に重要になってきます。

最後に「越境せよ」というのがもう1個あるんですが、やはり社会はクラスターになっているので、ここを越境しながら実装していくということです。例えば保険業界に特化したLLMの実装をやる。保険業界はやはり特殊なドメイン知識があるのでこういうことですね。

エンジニアの意思とAI開発の方向性

あと3分ぐらいなのでまとめます。生成AIのポイントは、今申し上げたこと+最後に、我々は未来のソフトウェアをかたちにすると言っていますが、ソフトウェアってやはり究極的にはソフトなものなので、エンジニアの人たちの意思が重要だと思っています。なんで作りたいのか、誰に使ってほしいのか、何の課題を解決したいのかは、極めて重要です。

ソフトウェアって柔らかなものなので、的のないAI開発は危険なんですよね。だからガードレールとしての規制が議論されているわけです。なので問いたいのは、何が壊れていて何を直すのかになると思っています。今日来ている方々はいろいろなモチベーションを持たれていると思うんですが、生成AIを実装したり、あるいはソフトウェアエンジニアリングの領域で生成AIに関わるのは極めて重要です。

その中にあるモチベーションがプロダクトのユニークスになるのはほぼ確実だと思うので、ぜひそこを大事にしていただきたいなと思います。

PKSHAのビジョン:ソフトウェアエンジニアが駆動する社会

最後に、我々が考えているワールドモデルと意思って何なの? ということなんですが、全産業がソフトウェア産業になる中で、ソフトウェアエンジニアは社会を駆動させるエンジンである。一方で、それが適切にまだ社会価値に接続していないんじゃないかと常に思っています。ここを接続する装置としてPKSHAというものをやっていますし、ここから5分のところで、本当に異なる専門性を持つチームでいろいろなプロダクトを作っています。

なので、最後はちょっとただの宣伝なんですが(笑)。1人でやるのではなくて、チームでやるのが非常に重要になってきている産業だと思うので、こういうことに興味のあられる方はご連絡いただければなと思います。ちょうど35分ということで、ありがとうございました。

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