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特別企画② 生成AI/LLMトークセッション 「生成AI/LLM未踏的ビジネス活用最前線」(全5記事)

「ホワイトカラーの領域が急速にリプレイスされている」 中山心太氏が考える、生成AIとLLMで起きている革命

ダイキン工業株式会社の比戸氏、株式会社NextIntの中山氏、株式会社LayerXの中村龍矢氏が、所属企業における生成AIの活用事例と展望について話しました。全5回。

田中邦裕氏の自己紹介

司会者:みなさま、お待たせしました。これより再び特別企画をお送りします。2つ目の特別企画は、「生成AI/LLM未踏的ビジネス活用最前線」と題してお届けします。なお、本セッションでは視聴者からの質問を受けます。質問は「Slido」というコミュニケーションツールを使用します。

それでは、登壇者のみなさま、ステージへお願いします。みなさま、拍手でお迎えください。

(会場拍手)

ここからの進行は未踏IT人材発掘・育成事業プロジェクトマネージャーの田中さんにお願いします。よろしくお願いします。

田中邦裕氏(以下、田中):はい、みなさま、セッションにお越しいただきありがとうございます。タイトルが「生成AI/LLM未踏的ビジネス活用最前線」ということで、お届けしたいと思います。では、さっそくですが、パネラーの方の紹介をしたいと思います。

まず中山さんから……。あっ、自己紹介か。忘れていました。あらためまして、今回モデレーターをします、田中と申します。どうぞよろしくお願いします。

私自身はさくらインターネットの代表をしていて、28年前に学生起業した会社の起業家でもあります。あと、2019年から「未踏IT人材発掘・育成事業」のプロジェクトマネージャーも併任しています。

本業ではデータセンターを運営しながら、GPUクラウド、ガバメントクラウドを提供していて、足元だと「H100」と呼ばれるNVIDIAのかなり高速なGPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units)を提供しています。

中山心太氏の自己紹介

田中:これからパネラーの紹介をしたいと思います。では中山さん、お願いします。

中山心太氏(以下、中山):中山心太と申します。「心」に「太」と書いて「ところてん」と読むので、インターネットでは「ところてん」という名前で通っています。本業は株式会社NextIntという会社をやっています。なぜ僕がここに呼ばれたのかよくわからないのですが、2023年に『ChatGPT攻略』という本を書いたので、おそらくここに呼ばれているんだろうなと思っています。

最近は、高校生がやっている「情報Ⅰ」という科目があるのですが、その大人向けの解説本とかを作っていたりします。

現在の仕事としては、機械学習のコンサルや、普通にプログラマーとしてお客さんのところでコードを書いていたり、あとはいくつかの会社で企業研修などをさせてもらっていたりします。

今回持ってきた資料も、基本的にはお客さんに提供している研修資料から一部抜粋して持ってきたものです。みなさま、よろしくお願いします。

田中:ちなみに、ところてんさんというと、先ほどの特徴的なアイコンの「Twitter(現X)」が有名かと思いますが、もともとそういう情報発信をされるようになったきっかけはどういうところなんですか?

中山:そういうような? 生成AIとか?

田中:生成AIだけじゃなくて、Twitterを通じてさまざまな人に響くような、IT業界での突っ込みとかを共有をしていると思うのですが、その背景を教えてもらえますか?

中山:その背景ですか。会社を作って、名前が売れないと仕事が取れないので(笑)。自分の飯のためですね。自分が作った研修資料とかの一部を切り出して公開することによって、自分の知名度をちょっと稼いで、そこから仕事につなげていくという、わりとそういう目的のためにやっています。

田中:講演者のランキングでもトップになっていましたよね。

中山:そうなんですか(笑)。

田中:はい。なんか人気の……。

中山:あぁ、そうですね。ある研修サービスのところでは、人気ナンバーワン講師みたいな呼ばれ方をしていますね(笑)。

田中:はい。すみません、めちゃくちゃ突っ込んでしまいましたが、どうぞよろしくお願いします。

比戸将平氏の自己紹介

田中:では比戸さん、お願いします。

比戸将平氏(以下、比戸):比戸将平と申します。私と未踏との関わりで言うと、2002年に未踏ユースというものが初年度であった時に、共同採択というかたちで別の人間とやって、その後、IBM(IBM東京基礎研究所)、Preferred Networksという会社で一貫して機械学習をバックグラウンドとしていろいろ仕事をしました。

その中で15年ぐらいずっと機械学習の産業応用をやってきて、今はダイキン工業というところでDX推進担当の技師長となっていますが、要はAI技術担当のテックリードとして生成AIの産業応用などもやっているので、今回そういう話もできたらなと思っています。よろしくお願いします。

田中:よろしくお願いします。ちなみに比戸さん、Preferredからいきなりダイキンへということで、かなりエキサイティングな転職ですが、そのきっかけはどういうものがあったんですか?

比戸:そうですね。理由としてはいろいろあったのですが、転職するとしたら次は事業会社のほうがいいなと思っていたので、転職活動を始めた段階でいろいろ事業会社を回って、その中で縁あってダイキンを選びました。

田中:なるほど。ネット企業さんがネットの中だけでビジネスしていたものを、既存のビジネス×ネット技術やITデジタル技術になると、実は本当のグロースがやってくるんじゃないか。

でもそこを進めていくためのボトルネックが人材だったのですが、このような転職が発生してくると、既存の力を持ったメーカーさんもすごくいいのかなと思います。その中でもダイキンさんはやはり強いですよね。

比戸:そうですね。今日もそういう話ができればと思います。けっこうユニークな企業文化を持っていて、私もやりたいようにやらせてもらっている状況です。

田中:ありがとうございます。

中村龍矢氏の自己紹介

田中:では、中村さんお願いします。

中村龍矢氏(以下、中村):はい。LayerXの中村龍矢と申します。よろしくお願いします。私が未踏(と関わりがあったの)は2020年なので、並んでいるみなさんたちは本当に大先輩という気持ちです。

私が未踏をやっていた頃は「Ethereum」というブロックチェーンのセキュリティの研究をしていて、Ethereum自体を作り変えるみたいことの一部を研究、仕事としてやっていました。

そこからいろいろとテーマが転じて、今は事業責任者をやっていて、セキュリティの流れから、データに関するセキュリティやプライバシーの研究を始めて、それをエンタープライズ企業さまに提供する事業をやって。

その流れからエンタープライズ企業さんのデータ利活用という観点でLLMがすごくパワーになるだろうということで、今はLLMを使ったプロダクトを作っています。以上です。よろしくお願いします。

田中:はい。よろしくお願いします。私がPMになってから(中村さんが)採択されたので、私もよく知っているのですが、その後にLayerXに行くということで。王道のキャリアパスのような気もするのですが、大企業にも行けるし研究者にもなれる中で、あえてスタートアップを選んだ背景はどういうものがあるんですか?

中村:そうですね。そういう意味だと、まず補足として、私はLayerX在籍中に未踏に参加しました。LayerXには創業から参加していて、未踏はけっこう学生の方が多いイメージだったのですが、会社をやりながらでも土日とかの時間を使ってできるので参加したというかたちになります。

私は東大の松尾先生のところの学科の出身で、(その時)みんなけっこう機械学習をやっていたので、ちょっとあまのじゃくな気分でブロックチェーンを始めて、今またLLMをやっているという感じで(笑)。戻ってきたなという感じです。

田中:そういう意味だと、LayerX自体が未踏出身者が経営者ということもあって、相性もいいんですかね?

中村:そうですね。CEOの福島がもともと未踏に2012年(にいて)、その後にGunosyという会社を創業して、そこからLayerXに転じているので、経営陣全員があまりロジカルじゃないぐらいテクノロジーが好きなメンバーが集まっているかなと思います。

田中:なるほど(笑)。ありがとうございます。

ホワイトカラーが最後まで担っていた領域が急速にリプレイスされている

田中:では自己紹介は以上として、さっそく活用事例紹介を進めていきたいと思います。では、ところてんさんから……。あっ、中山さんからですね。ところてんさんって言っちゃいそうになりますけど。

中山:活用事例ということですが、活用じゃない話を持ってきてしまったので、困ったなと今思っているんですけど。

「生成AIとは何か?」というところの前に、「今のホワイトカラーってどんな仕事をしているの?」ということを考えます。

(スライドを示して)僕は「ミスの許容可能度」を横軸に取って、縦軸に「入出力の複雑さ」を取ると、いろいろなものがうまく分解できるだろうと(考えて)、こういう図を作ったんですね。

普通のプログラミングが解決できている問題は、実はそんなに多くないんだなというのがわかるわけですよ。普通のプログラミングが解決している問題は、入出力が定形、特に入出力のフォーマットが変わらないもので、けれどもミスが許容不可能な仕事です。これがプログラミングで解決されている領域です。

「プログラミングは万能だ、万能だ」とみんな言うんだけれど、「(解決できる範囲としては)実はそんな大して大きくないよ」というのが、こういう図を描くとわかるんですね。

今のホワイトカラーの人たちが何をやっているかっていうと、多少ミスが許容可能で、入出力が複雑な仕事です。入出力が不定形だったり、複雑な仕事をやっているんだということがこういう図を描くとわかってきます。

あとは、弁護士や会計士のような士業ですね。士業の人たちは、入出力が極めて複雑だけど、ミスしてはいけない。もしくはミスしたら罰則があります。そういうのは士業として免許制になっているというのが、こういう図を描くとわかってきます。

ということを考えた時に、今僕らプログラマーの仕事は、業務を整理して定型業務を発見するとか、不定形な業務を無理やり定型化することになります。これがプログラマーの仕事です。

なので、IT産業でプログラミングができることは当然なのですが、その上で不定形な業務をどう取り扱うかが実は非常に重要だったりします。

(スライドを示して)今、何が起こっているかをさらにざっと整理すると、機械学習は間違ってもいい仕事をリプレイスしていっているというのが、僕の提言というか提案です。

入出力が定形で多少間違ってもいい仕事は表形式の機械学習ですね。例えばLightGBMとかがこれに当たるのですが、保険の加入審査や銀行与信など、このあたりはとうに機械学習で置き換えられました。

入出力が不定形で出力が定形なもの。例えばCNNによって画像を解析することとかですね。画像を解析して、最終的に異常か正常か、0か1かを出力するだけであれば、出力は定形なわけです。このあたりは畳み込みニューラルネットワークでわりと回収されました。

なぜ今生成AIが来ているかを考えると、入出力が不定形な仕事、インプットも不定形だし、出力も不定形なものがうまく取り扱えるようになったことで、今大きな変革が起こっていることなのかなと思っています。ホワイトカラーが最後まで担っていた領域が、今急速にリプレイスされていっていると思っています。

機械学習の時代には「間違ってもいい問題」に変換するスキルが求められる

中山:実例を持ってくると、EVERSTEELという会社で……。僕は(この会社の考え方が)好きなのでいろいろなところで紹介するのですが、こちらは鉄のスクラップの解析サービスをやっている会社さんなんですね。

鉄スクラップは、0.4パーセントの非鉄金属が混じると不良品になってしまいます。ということは、逆に言うと、0.4パーセントまでは非鉄金属が混じってよいという問題に変換できます。

ということは、間違ってもいい問題にうまく変形したんですね。だから彼らは、画像解析でそれを自動化するところにうまくリーチできたわけです。つまり、機械学習の時代においては、こうやって問題をうまく「間違ってもいい問題」に変形するという、問題を変換するというスキルが実は求められます。

今何が起こっているのかというと、生成AIは最後のピースを埋めたんですね。最後までホワイトカラーに残っていた、入出力が不定形な仕事を奪いつつあります。

自然言語が入力できて、それを処理できるということは、究極的には要件定義ができればそれは実行されるという世界がこの後に待っています。

だから、この後に何が求められるかというと、要件定義ができるやつが求められます。要件定義ができたら、それがそのまま実行されます。そういう世界が来ます。ということは、この後に何が来るかというと、ドメイン知識のあるホワイトカラーが、プロンプトエンジニアリング(を活用すること)で、だいたいの問題が解決可能になるということです。

なので、この後の活用事例というか、そういったドメイン知識をうまく言語化できる人たちが、この後すごく価値が上がっていく人たちなのかなと思っています。

というところで僕の話はおしまいです。ありがとうございます。

“理系の文章”を書ける人材は絶対的に必要

田中:質問したいのが、生成AIとスライドで書かれている領域で、けっこう(いろいろなことが)解決するんじゃないかという意見がありますが、かたや、AI人材が不足しているという話があります。

AI人材を作るために、いわゆる理系の人材を育てないといけないというのがあるのですが、ちょっとそれとは違う結論にもなっているような気がしています。

「ホワイトカラーの方でも、プロンプトができれば課題解決ができてくるんだ」と、この意見は「理系人材が必要だ」とか「AI人材が必要だ」という話と、どう整合性がついてくるんでしょうね?

中山:そうですね。僕が研修でこの話をする時は、この資料の後ろに「『理科系の作文技術』を読め」という話が続いているんですね。

田中:なるほど。

中山:つまり、理系の人材が必要ということです。理系の人材がどういう文章を書くかというと、まず事実はどうであるか、それに対して自分はどう思ったかという、気持ちと事実の分離を行います。理系の人材は、気持ち、意見、事実を全部分離して書くんですね。そういう文章をLLMにちゃんと食わせられると、ちゃんと良い結果が返ってくるわけですよ。

そうじゃない人たちはどういうことを書くかというと、まず自分のお気持ちを書くんですね。お気持ちを書いちゃうから、お気持ちをLLMが処理しようとして、ろくでもない結果が返ってきます。

だから、事実を事実としてちゃんと書けるということがスキルになります。だから、理系人材が必要か必要じゃないかであれば、絶対的に必要なんですよ。それはどういう理系人材かというと、ちゃんと理系の文章が書ける人材が欲しいというところですね。

田中:なるほど。よく社会人の研修などでマネージャーなどにロジカルシンキングやクリティカルシンキングという、いわゆる情報を整理する能力を後天的に養ってもらおうとするみたいなことをよくしますが、理系・文系という言葉以外で理系を言い換えると、ロジカルにその問題を整理する能力なんでしょうか?

中山:そうですね。あまり理系・文系という分け方をしたくはないのですが(笑)。「少なくとも理系的な人材である」と言われる人たちは、やはり「ロジカルに考える」もそうですし、それ以前の「事実と気持ちを分けること」「何が可能で何が不可能か」「何が世界で何が自分の心の中なのか」をちゃんと切り分けられるということが、理科系の人材(の要素)なのかなと思います。

田中:なるほど。そういう人たちがAIをインプルーブして、実際に生成AIを活用する入り口の人材になってくるというお話なんですね。

中山:そうですね。

田中:なるほど。ありがとうございます。実際に今、生成AIで現在の仕事の量を減らそうとしていますが、下手なインプットをすると減るどころか違う結果を導いちゃうかもしれないということで、そこは要注意なのかなと聞きながら思いました。ありがとうございます。

(次回につづく)

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