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特別企画① 「修了生×PMによるトークセッション」 「未踏へのチャレンジ」~光る君になるために~(全5記事)

実験的創作活動、アバターづくり、組織支援、身体のDX… 未踏修了生とPMが今没頭していることとは?

未踏修了生である安野貴博氏、中村裕美氏、登大遊氏と、プロジェクトマネージャーの稲見昌彦氏、漆原茂氏が、未踏時代の思い出、未踏事業の魅力などについて話しました。全5回。

登壇者の自己紹介

司会者:これよりステージから特別企画をお届けします。1つ目の特別企画は「『未踏へのチャレンジ』~光る君になるために~」と題して、未踏修了生とプロジェクトマネージャーの方々によるトークセッションをお届けします。登壇者のみなさま、ステージへお願いします。みなさま拍手でお迎えください。

(会場拍手)

それではここからの進行は、未踏アドバンスト事業プロジェクトマネージャーの漆原さんにお願いします。

漆原茂氏(以下、漆原):はい。みなさん、こんにちは。漆原です。会場はすごく盛り上がっていますね。みなさん元気ですか?

(会場拍手)

漆原:すばらしい! 3万人ぐらいから拍手をいただき、ありがとうございます。大変盛り上がっています。ここからは特別企画「未踏へのチャレンジ」ということで、未踏人材、尖った技術屋がどれだけ活躍しているか、その最たる者として、すばらしい方々をお呼びしました。それぞれ名前と紹介をしてもらえればと思います。よろしくお願いします。まずは安野さんからお願いします。

安野貴博氏(以下、安野):はい。安野貴博と申します。今は小説家をやっていて。

漆原:小説家!?

安野:はい。未踏初のSF作家として本を出しているので。名前で検索してもらえれば本が出るので、ぜひ検索してポチって、「Amazon」で星5つを付けてもらえればと思います。よろしくお願いします。

漆原:はい、ありがとうございます。続いて、お願いします。

中村裕美氏(以下、中村):みなさんこんにちは。中村裕美と申します。現在は東京大学で教員をしています。私自身は「電気で食べ物の味を変える」ことを未踏の頃からやっていて、実は先日イグ・ノーベル賞をいただきました。

漆原:おめでとうございまーす!

安野:すごい!

漆原:すばらしい。ありがとうございます。続いて登さんお願いします。

登大遊氏(以下、登):こんにちは。登大遊と申します。2003年の未踏ソフトの未踏ユースで「SoftEther」というソフトを作って、今まで19年、20年ぐらいそのソフトをオープンソースで配っています。よろしくお願いします。

漆原:はい、ありがとうございます。すばらしく広がっているソフトウェアの開発者です。続いて稲見先生お願いします。

稲見昌彦氏(以下、稲見):はい。東京大学 先端科学技術研究センターで教授をしている稲見と申します。未踏のPMもやっていて、未踏で私がPMをやった人たちもどんどん活躍しています。よろしくお願いします。

漆原:はい。稲見先生、今日は人間に見えますが、身体拡張では日本一の方々なので、大変おもしろい話ができるんじゃないかなと思っています。

そして私は漆原と申します。未踏アドバンストのプロジェクトマネージャーを拝命しています。ソフトウェアの技術も開発しています。よろしくお願いします。

安野氏が没頭している「技術を使った実験的創作活動」

漆原:さて、それではさっそく、これだけヤバいエンジニアの方々に集まっていただいたので、一人ひとりが今、何に没頭しているのか、どんなエモい仕事をしているのかを話してもらえればと思います。では、まずは安野さんからいきましょう。

安野:はい。スライドを1枚作ってきました。

漆原:おぉ!

安野:(スライドを示して)現在没頭していることは何かというと、「技術を使った実験的創作活動」と書いているのですが、先ほどお話ししたとおり、小説を書いています。一番左にある『サーキット・スイッチャー』が私が2022年に出版した小説なんですが。

漆原:読みましたよ!

安野:ありがとうございます!

中村:私も読みました!

安野:ありがとうございます!

漆原:今度サインくださいね?

安野:はい! ぜひぜひ(笑)。

漆原:みなさん、ぜひポチッてもらえればと思います。

(会場笑)

安野:新幹線大爆破AI世代みたいな感じの話です。これが(2024年)4月に文庫化して、今まで2,000円払わないと買えなかったのが、1,000円で買えるようになるので、1個宣伝として挟みました。

漆原:どっちで買ったほうがいいんですかね?

安野:あ、もう文庫で買ってもらえれば。持ち運びもしやすいです。「Kindle」でもぜんぜん大丈夫です。

真ん中が日本科学未来館の展示の1つですが、「ナナイロクエスト」というのを作りました。これは2023年11月ぐらいに発表した展示です。2050年ぐらいのロボットと生きる未来の社会の街に入っていって、そこでストーリーを経験するという、わりと新しい感じの展示になっています。

漆原:非常におもしろいですね。ワクワクします。

稲見:これは展示を見に行ったことがあるんですけど。

安野:ありがとうございます!

稲見:未来館は、たいていクール系の展示が多いのですが、(この展示は)「あ、かわいい」という感じで。

安野:そうなんですよ。

稲見:ぜんぜん毛色が違っていて、また新しい層も増えるんじゃないかなと。

安野:そうなんですよ。「クール」だと、フィクションの世界というちょっと遠い世界に感じるのですが、感情的に「かわいい」となると自分事として捉えやすいなと。日常の延長線上で2050年の未来ではどういう悩みや人の生き方があるんだろうということを展示に詰め込んでいます。

漆原:おもしろいですよね。2050年の世界を描いているということですよね。楽しそうですね。

安野:なぜこれをやっているのかみたいなことを簡単に話すと、技術と広い意味での物語みたいなものの距離は、どんどん近づいてきているなと思っています。我々の生活の中に技術がどんどん入ってきていて、「ChatGPT」としゃべるみたいなこと、AIとしゃべることもごく普通のことになってきましたよね。そんな中で、自分たちの生活の中で考えている技術に関する悩みみたいなものが、より切実なものになってきています。

というのと、もう1個は物語的なものを作る時に、物語もアルゴリズム的に作れるんじゃないかと僕は思っていて、それを作る技術のほうもどんどん発達してきているなと思うんです。なので、技術を描いた物語も、技術で作る物語も両方できるようになってきている中で、その両者が密結合したかたちの創作活動が、けっこうおもしろいんじゃないかということで、これをやっている感じです。

漆原:なるほど。おもしろいですね。では、『サーキット・スイッチャー』はChatGPTが作ったんですか? あれにはまだ入れていない?

安野:文法誤り訂正のアルゴリズムで、誤字脱字のフィルタリングとかはしています。

漆原:なるほど。すごい。SFのライティングも最先端ということですね。ありがとうございます。おもしろいですね。

(会場拍手)

中村氏が没頭している「ちびキャラ風のアバターづくり」

漆原:続いて、中村さんお願いします。最近没頭していること。

中村:(スライドを示して)はい。私はだいぶ趣味に近いことを持ってきてしまったんですけど。

漆原:かわいい。

中村:現在没頭していることと言われて、研究は昔から没頭しているなと思ったので。この頃は、ちびキャラ風のアバターづくりをするのが趣味になっています。

漆原:かなり似ていますね。

中村:みなさんのを勝手に作ってしまいました。

漆原:これは使ってもいいんですか?

安野:ありがたい。

中村:後日送ります。

漆原:ありがとうございます。ちなみにこれはどういう技術で作られているんですか?

中村:これは「VRoid Studio」という、バーチャルアバターを作るためのソフトでやっていますね。わりと細かいところまで加工できるので気に入って使っています。

稲見:メタバースで着ていくアバターがこれで作れるわけですね。

中村:そうですね。等身大のものをスキャンする技術とかはたくさんあるのですが、こうやってデフォルメするのはまだまだ難しいところもあるかなと思います。

また、デフォルメの過程でその人をよく見るようになるのがとても楽しいなと思っていて、実はいろいろな人のを作っています。

安野:これ1体作るのにどれくらいかかるんですか?

中村:だいたい2時間から5時間ぐらいです。やり始めちゃうと終わるまで没頭しちゃうので時間は気にしていないんですけど(笑)。だいたいそのくらいですかね。

漆原:わかりました。後ほどイグ・ノーベル賞を受賞したネタは別に紹介してもらえればと思います。ありがとうございます。

登氏が没頭している「失敗許容の領域を各組織の中に作ることの支援」

漆原:さぁみなさんやってきましたよ。スーパーエンジニアの登さんです。登さん、よろしくお願いします。

:登と申します。(スライドを示して)2003年に未踏で自分に与えられた環境が非常に恵まれていて、いろいろなコンピューターの基礎的な部分、基本的な部分を勉強しつつ、VPNのソフトを作ったら、ユーザーがたくさんつきました。

VPNのソフトはシステムソフトウェアと呼ばれる領域です。システムソフトウェアはGoogleやAmazon、Microsoftなど(があって)、そういうシステムソフトウェアを作っているのは、日本だと人数がまだ少ないんです。

いわゆるプラットフォーマーと呼ばれる会社を日本でも増やさないといけないと思っています。自分は、それをやるために非常に基本的な(ことである)基礎的な自由な実験ができたり、コンピューターを勉強できる環境が、日本の資源や人材、施設、体制をいくらでも持っている日本型の組織、日本企業や行政機関になぜか無いんじゃないかと思っています。

素質のある方々がいろいろな日本中の組織に点在しているので、そういう方々が自律的にコンピューターソフトの実験環境みたいなものを自分で構築することを擁護、黙認できるようにすれば、日本でも2030年ぐらいに、Google、Amazon、Microsoftのクラウドや今のLLMを超えるものを、その中から自然に作れるようになるのではないかと思っています。

これは歴史的法則で、アメリカではそういうふうにして1960年ぐらいから何十年もかけて今のアメリカのITが作られています。日本でも自然発生で……。その自然発生は、一応業務と関連性が合理的にあると説明できるような、うまい建前の作り方も日本の組織では必要だと思います。こういうことを各組織の中の個人がやるのは大変な苦労を伴うと思っています。

そこで我々は、そういう各組織の中でシステムを自作するとか、クラウドやLLMも自分で作ってみるようなことを内製できる能力が最初にできるようにするために、ブートストラップみたいな問題を解決しないといけないと思っています。

そのためには、例えばコンピューターやインターネットやセキュリティの部分を全部買ってくるのではなくて、組織の中で自分で作ってみるという、失敗許容の領域を各組織の中に作ることを後方から支援する必要があると思っています。

そういう取り組みを、最近は大企業や地方自治体の行政機関さんを回って、どういうふうにすれば作れるかを考えていて、実際に2024年ぐらいから作ろうと思っています。以上です。

漆原:登さんはたくさんの組織にいろいろと……。兼務なんですかね?

:はい。

漆原:(兼務)というかたちで組織されていて良いと思うんですよね。

:ありがとうございます。

漆原:登さんのDNAをいろいろな組織が吸収して変わっていくみたいなかたちですね。

:私のほうがいろいろと教えてもらう立場であります。

漆原:みなさんも知らない間に、登さんのソフトを使っていますからね。今ユーザーはどのくらいいるんですか?

:未踏で作った「SoftEther」は、全世界で800万人です。

漆原:800万人いるんですよ!? すごいですね。今日はぜひ楽しい話をよろしくお願いします。

稲見が没頭している「身体のデジタル・トランスフォーメーション」

漆原:稲見先生、プロマネをやっていただいてありがとうございます。自己紹介をお願いします。

稲見:(スライドを示して)はい。私は東大先端研で人間拡張、テクノロジーの力で人間の能力をどこまで拡張できるかというところに今はチャレンジしています。人と機械が一体になることで、体が頑丈な方でも、弱い方でも、老若男女まったく体格や体力の区別なく活躍できる。そういう世界を作れればなということで、いわゆる身体のデジタル・トランスフォーメーションをやろうとして今はいろいろと研究を進めています。

この研究に関わるようなところ……。これはあくまでも大学の中のことで、ちょっと遠い世界の話かと思いがちかもしれません。

実はこの研究をやろうとしたきっかけの1つが、40歳からスキューバダイビングを始めたことです。

漆原:すごい。

稲見:テクノロジーがあるおかげで、ふだん活躍できない海の中、しかも三次元で自由自在に移動できて。これは何かすごく可能性があるような動きでした。

漆原:確かにそうですね。

稲見:そして、50歳になってバイクの免許も取って。

漆原:すばらしいですね(笑)。

稲見:それもやはり人と機械が一体化する。自動車はたぶんどんどん自動運転車になると思います。自動運転バイクは事故防止にはいいかもしれないですが、あまり楽しくないかもしれない。それはなぜかというと、やはり自分の力で自由自在に活躍したいからです。そこをうまくテクノロジー化とどう合わせていくか、そういうようなモチベーションでこれからもいろいろとチャレンジしていきたいなと思っている次第です。

漆原:ありがとうございます。(スライドを示して)画面の右下にあるようなものは今日は装着されていませんが。これは稲見先生のロボットなんですかね。人間拡張みたいなやつですね。

稲見:はい。第3、第4の腕とか。

漆原:いいですよね。楽しいですよね。腕が5本あったらぜんぜん違うビジネスができるみたいなやつですね。

稲見:はい。でも一応ちゃんと三十三間堂に仁義切りに行ったこともありますけれどね。

漆原:すばらしい。

稲見:「仏罰に当たりませんか?」みたいな感じで。

漆原:ありがとうございます。そんなキレッキレな方々を紹介しました。

(次回につづく)

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