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湯前慶大氏に聞く、仕事の流儀(全3記事)

EMによるEMのためのPodcast「EM . FM」 主催者・湯前慶大氏が開設に込めた想い【あらたまが聞くエンジニアリングマネージャー仕事の極意】 

主にエンジニアを対象としたピープルマネジメントを主軸に、エンジニア採用からプロダクトマネジメントに至るまで、会社のフェーズによってさまざまな役割を求められるEM(エンジニアリングマネージャー)。やるべきタスクの多さに比例して悩みも増えがちな職種ですが、ロールモデルがまだまだ少ないのが現状です。 そこで今回は、Engineering ManagerによるEngineering ManagerのためのPodcast「EM . FM」の主催者である湯前慶大氏に「EM . FM」を開設した理由、仕事の流儀、キャリア形成における考え方など、EMの魅力についておうかがいしました。全3回。

今回のゲストはカケハシ社CTOの湯前慶大氏

新多真琴氏(以下、新多):ログミーTechアンバサダー企画、「あらたまが聞くエンジニアリングマネージャー仕事の極意」、第2回をお届けしていきたいと思います。よろしくお願いします。

この企画は、エンジニアリングマネージャー、これからEMと略していこうと思いますが、EMは重要なポジションであると誰しもが言いますが、役割定義がなかなか難しかったり、職務範囲が広くなりがちであったり、会社や組織のフェーズによっていろいろなものが求められて大変とか、いろいろなお悩みを抱えている方が多いとよく聞きます。

そこで、ロールモデルたる方にお越しいただいて、私とディスカッションをしていく中で、みなさんになにかエッセンスを見つけて持ち帰っていただきたいと、そんな企画になっております。

今回は、「ゆのん」さんこと湯前さんにお越しいただいております。よろしくお願いします。

湯前慶大氏(以下、湯前):よろしくお願いします。

新多:まず、私から軽く自己紹介から始めていきたいと思います。ログミーTechアンバサダーに、2023年に就任しました、新多真琴といいます。

ふだんは、LayerXという会社でEMをやったりエンジニアをやったりしているのですが、これまでのキャリアとしては、一貫してエンジニアリングのロールを担っていて、前職ではCTOを経験して、今はまたプレイングもやっているという状況になっています。

では、ゆのんさん。

湯前:はい。初めまして、ゆのんこと湯前です。よろしくお願いします。

僕は今、株式会社カケハシという医療系のスタートアップ企業で執行役員CTOを務めています。これまでの職務経歴的には、1社目が大手の電機メーカーで研究員として社会インフラ向けのシステムの研究開発をやっていて、特にOS、Linuxの研究開発を行っていました。

2社目はモバイルゲームの会社でVPoEをやっていました。最初は、アプリケーションを書くエンジニアだったのですが、途中からエンジニアリングマネージャーを経てVPoEになりました。

今の会社で、執行役員CTOになり、今は、開発組織のマネージャーのマネージャーをやっています。だいたい150人規模ぐらいの開発組織の取りまとめをやっているところです。どうぞよろしくお願いします。

新多:よろしくお願いします。

エンジニアリングマネージャーによるエンジニアリングマネージャーのためのポッドキャスト「EM.FM」を開設

新多:いろいろなことを聞いていきたい気持ちでいっぱいですが、まずは、世間的にゆのんさんと言えば、「EM.FM」というところで名が知られているのかなと思います。EM.FMは、エンジニアリングマネージャーのためのポッドキャストというところで、認識は間違っていないですか?

湯前:はい、そうですね。正確には、「エンジニアリングマネージャーによるエンジニアリングマネージャーのためのポッドキャスト」で、始めた当初は、僕がEMだったんですけれども、そこからだいぶ時間も経っていることもあり。

新多:VPoEになったり、CTOになったり。

湯前:そう、今は、一応3人で運営しているんですけれども、3人とももう全員CTOあるいは代表をやっているんですよ。

だからもはや「EMによる」みたいなところはなくなってしまいましたが。

新多:(笑)。いやいやいや、エンジニアのマネジメントもね、職務の1つではありますから。

湯前:そうですね。

新多:確か初回の配信が2018年なので、もうすぐ始めてから6年になりますか?

湯前:確かに、そうですね。気がついたらそれぐらいになっていたんですけれど、おかげさまで多くの方に聞いていただいていてなんとか続けてこられたかなというところですね。

新多:基本的には、みなさん、週末に集まって、ワッと録ってみたいなことを繰り返しているんですか?

湯前:最初は僕と一緒にやっている広木さん(広木大地氏)と2人で始めたんですが、だいたい隔週とか3週間とかに1回程度集まって3本録りぐらいして、というのをずっと繰り返していました。

今は、だいたい月一か2ヶ月に1回ぐらいのペースで、日中の時間を使って2時間ぐらいで2本録りをしていますね。

新多:そうなんですね。みんなにとって無理のないサイクルでやっているんですね。

湯前:ただもうみんなけっこう忙しくなっちゃって(笑)。

新多:そうですよね。

湯前:どうしてもこの月は予定が合わないみたいになって、2ヶ月に1回になったり3ヶ月に1回になったりしたこともあったのですが、なんとか続けています。

新多:無理せず続けられるペースで続けているんですか?

湯前:そうですね。もう最初は、本当に毎週更新していて、ものすごく編集も大変でした。今は、それぐらいのペースになってなんとか落ち着いているところですね。

新多:なるほど、ありがとうございます。

「EM.FM」を開設した理由は“EMの認知度向上のため”

新多:そもそも、EMによるEMのためのポッドキャストをやっていこうってなったきっかけも聞いていいですか?

湯前:もともと、「Engineering Manager Meetup」という勉強会があって、それに参加させていただいた時に、OST、オープン・スペース・テクノロジーというのがあったんです。

そこで、いろいろなテーマに沿って話をしていこうというのを各テーブルでやっていたのですが、「どうやったらEMの認知って広がるんだろうね?」みたいなことを話すテーブルがあって、そこに僕と広木さんも一緒にいて、「認知度を上げるためにどうすればいいんだろうね?」ということをいろいろと話していた中で、広木さんが「ポッドキャストをやってみたいんだよね」みたいなことをおっしゃったんです。

新多:おぉ、なるほど。

湯前:ちょうどその時って、けっこう各企業でポッドキャストをやるのがなんとなくブームみたいになっていて、「あっ、僕もポッドキャストをやりたいと思っていたんですよ」と言って、「じゃあ、2人でやりましょうか」となって始まったのがきっかけですね。

新多:なるほど。EMの認知というテーマで集ったディスカッションのグループの中で議論が進んでいく中で、ポッドキャストをやってみようというトライに落ち着いたという。

湯前:はい。そうですね。なので、すごく緩く始まった感じですね。

自身の知見が深まる中で、より深い話ができるようになった

新多:EMの認知というところで言えば、この6年間でわりとエンジニアにとってメジャーなキャリアの選択肢のうちの1つと言っていいぐらいには、認知が拡大されてきたと思うんですけど、その中で、EM.FMに込めるみなさんの思いや立ち位置みたいなものの変遷はありましたか?

湯前:そうですね。最初は、僕が広木さんにいろいろと質問しながら、「これ、どういうふうに考えたらいいんでしょうね?」みたいなことを教えてもらうみたいなのがわりと多かったですし。

あとは、けっこうゲストの方もお呼びして、「どういうふうに会社を運営しているか?」とか、「マネージャーをやっているのか?」というところを聞くことが多かったですね。途中で2回ぐらいリブートしたんですけども、最近では、もうちょっと体系立った知識を出すようにしようとなっていまして。

先ほど、今3人で運用しているとお伝えしましたが、その3人がそれぞれテーマを持ってきて、ディスカッションをするというかたちに変わっていっていますね。

新多:持ち回りでアイデアを出し合うんですか?

湯前:はい、そうですね。なので、だいたい2、3ヶ月に1回ぐらいは番が回ってくるので、「あっ、次、何話そうみたいな」(笑)。

新多:(笑)。

湯前:何回もやっているとネタ切れになってくるし。なかなか大変なんですけど。

新多:そうですよね。

私も直近で、ここ1年ぐらい、EMのためのコミュニティをオフラインメインでやっていて、毎回3、40人ぐらいを集めていろいろとディスカッションしているんですけど、普遍性のあるテーマが人気が出やすいですね。

例えば、「EMとは何なのか?」とか、「EMは何であって何でないのか?」とか、EMの職務の中で一番難しいとして話に上がる、評価だったり目標設定だったり1on1だったりといったトピックに対しての関心が、今でもすごく高いんですよね。

ですが、その話題ってたぶん、ゆのんさん的にはもうし話し尽くした話だと思っていて、その中でポッドキャストを続ける中で、「ここは変わったな、ここは変わっていないな」みたいなところってなにかありますか?

湯前:そうですね。でも、今でもやはり評価の話をするし、この間も「技術力とは何か?」という話もしましたし、普遍的なテーマをちょこちょこと出す機会は多いですね。

やはりポッドキャストを続けていく中で、ちょっとずつ世の中の変化もありますし、エンジニアリングマネージャーについての考え方がちょっとずつアップデートされていっているので、最初は、初歩的だったところから、より深い話ができるようになったというところが変わっていっているところなんじゃないかなと思います。

新多:なるほど。

湯前:深いところをできるようになったというのは、世の中のEMの認知度が上がっていったというのもありますし、僕自身とか、一緒にやっている広木さんや佐藤さん(佐藤将高氏)自身の知見もいろいろ広がっていって深まっていっているから、そういった深い話ができるようになっているんじゃないかなと思います。

マネージャーの頃から経営の視座を手に入れるためには?

新多:確かに経営の視座を得ることで出る話の深みってありますよね。

湯前:そうですね。今まではマネージャー視点だったところから、ポジションが変わっていく中で、見る範囲が広がっていったと思います。

「何を考えていかなければいけないんだろう?」というのを、見上げる目線だったところから、「広い視点に立つ人が見た時にどういうふうに考えるのか?」というところまでを意識して話すことができるようになったというのは、僕自身としては、アップデートとして大きいなと思っていますね。

新多:なるほど。俯瞰して1回全体を捉えた上で戻ってきて、「じゃあ、こうしよう」みたいなことですか?

湯前:そうですね。

新多:その視点、すごく大事だと思いますが、マネージャーの頃からそれを手に入れるのは、けっこう難しくないですか?「鶏が先か、卵が先か」というか。

湯前:おっしゃるとおりです。だからこそ僕らが発信する時に、「こういう視点で経営メンバーは捉えるんだよ」とか、「こういうのが大事なんじゃないか?」みたいなことを発信するようにしています。

自分が体験するわけではないけれども、ほかの人から、「こういうことってあるんだ」ということを知ることによって、仕事の中で、ちょっとそれを意識して行動するという点で変わるかもしれないと思っていますね。

新多:なるほど。そういう意味でEM.FMは、「EMによるEMのための」というところから、EMを通ってきた人たちによる、今EMをやっている人たちに、より一段深い視座や解像度を提供するという役割にシフトしつつあるのかもしれないですね。

湯前:そうですね。なので、リブートした時も、「そういう視点も大事だよね」というところから、ジェネラルな話や深い話もしていこうというところで変わったというのがありますね。

新多:なるほど、ありがとうございます。いやぁ、さっそくいい話が聞けてしまって、ちょっと満足しつつあるんですけど(笑)。

「どのくらい追体験をしてもらえるか」という視点が大事

湯前:そういう意味では、あらたまさんももともとCTOをされていて、EMをやられて、またエンジニアになって、みたいなところでいろいろとキャリアが変わっていっていますけど、いろいろなポジションを経験することによって、考え方や行動は変わりましたか?

新多:めちゃめちゃ変わりました(笑)。先ほど話を振っておいてあれなんですけど、同意で首がもげそうでした。

湯前:本当ですか(笑)。

新多:そうなんですよね。自分がそのポジションを経験したからこそ得られているものももちろんあるんですけど。

それを1回やってみたらというのではなく、それを経験せずにどのぐらい追体験してもらえるかみたいなものは、経営の立場からマネージャーに対して働きかけることもそうですし、マネージャーの立場からメンバーに対して働きかける時も、そういった視点がすごく大事だなと思っていて、日々いろんな人と、1on1したりしていますね。

湯前:いいですね。

新多:ありがとうございます。

(次回へつづく)

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