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個人開発ヒットメーカーに聞く、プロダクト開発のこだわり(全2記事)

【個人開発者に聞く開発の美学】匿名質問サービス「質問箱」、Vtuberのお気に入りシーンを共有できる「ココスキ」… 個人開発ヒットメーカーせせり氏に聞く、プロダクト開発のこだわり

個人開発によって生まれたプロダクトにはどのような思いや情熱が込められているのか。「個人開発者に聞く開発の美学」は、さまざまなプロダクトを開発している個人開発者に、これまでの経緯を振り返っていただき、開発に対するこだわりを深掘りしていくインタビュー企画です。 今回は、「質問箱」「ココスキ」など、数々のプロダクトをヒットさせてきたせせり氏にこれまでの個人開発を振り返りながら、それぞれの開発に対するこだわりや開発の裏側などをおうかがいしました。全2記事。

初めてのプログラムはXのボット

ーーせせりさんの個人開発に至るまでの経歴を教えていただけますか?

せせり(以下、せせり):もともと高専出身で、高専にはプログラムをやりたくて入ったんですけど、やっているのがけっこう機械系のプログラムというか、当時はあまりプログラミングっぽい学部がなかったので、「これやっていてもあまりプログラムがうまくならないな」と思って、3年で卒業資格みたいなのがもらえるので、そのまま大学を受けてという感じですね。

ーーそのまますぐに個人開発された感じですか?

せせり:そうですね。当時はプログラムをやっている人も少なかったです。Twitter(※現「X」)のボットを作り始めたのが、たぶん初めてのプログラムで、それをやっているうちに、「こういうサービスが欲しい」みたいなことを知り合いに言われて作ったのが、初めて作ったWebサービスですかね。

「質問箱」がバズったことで個人開発者として一躍有名に

ーーせせりさんと言えば、「質問箱」のイメージが強いのですが、質問箱が生まれたきっかけは、どういったものだったんでしょうか?

せせり:質問箱が生まれたきっかけは、「Sarahah」ですね。もともと「インスタ(Instagram)」で流行ったんですよ。これって、もともと企業の内部の人間が内部告発をするためのサービスで、登録するのには、電話番号や本名を入れなきゃいけなかったんですよ。

それを見て、Twitterで似たようなものをやったらおもしろそうかなという感じですね。

ーー質問箱を開発する中で、一番難しかったところはどこですか?

せせり:あのサービスって、月間のPVが2.5億PVぐらいあって、おそらく「東洋経済オンライン」さんぐらいの規模なんですね。

一瞬サーバーが詰まっただけで1万人ぐらいに迷惑をかけるような規模だったので、それが一番しんどかったですね。11月、12月とか、年の暮れの間近でどこにも遊びにいけないし、毎日サーバーに張りついているみたいな感じでした。

ーー質問箱がバズって個人開発者として有名になった後は生活は変わりましたか?

せせり:大企業の取締役とかと顔合わせをさせられたり、テレビに出ないかっていう連絡が来たり、「書籍を出さないか?」と、5社ぐらいの出版社から声がかかったり、「学校の先生をやってくれないか?」という連絡が来たりしました。

ーーそれは、どう対応したんですか?

せせり:全部断りました。

ーーそれはどうしてですか?

せせり:キャリアって、プレイヤーと卒業した人がいるじゃないですか。それって、卒業した人のムーブじゃないですか。もう自分はやっていないのに過去の栄光で上から目線でしゃべるのってダサいじゃないですか。

ーーなるほど。

せせり:でもそういうのがあるので、夢はありますよ。

ーー今も個人で開発はされているんですか?

せせり:最近はあまりしていないですね(笑)。たぶん同じ気持ちの人は多いと思うんですけど、サービス開発をする中で昔は「Google AdSense」というのが、速攻で貼れたんですね。バズったらもうその瞬間にお金がもらえる仕組みだったんですけど。

今って、事前にサイトを作ってドメインの審査をして、ある程度のPVがあります、コンテンツがあります、OKです、じゃあ、今から貼れますという仕組みになっちゃったんですね。バズって、それが波が収まった頃にやっと審査が通るので、ぜんぜんお金にならなくなっちゃったんですよ。

やる気が出なくなっちゃったというか(笑)、一発ネタみたいなのを作るおもしろさがなくなっちゃった感じがありますね。

せせりさん流・個人開発のTipsとは

ーー個人開発で気をつけていることを教えてください。

せせり:個人開発で気をつけていることは、サーバー代をとにかく安くすること。企業って会社のお金だからAWSとか、めちゃくそ高いお金のサーバーを使うじゃないですか。信頼性の面でもそうですけど。

でも、自分はけっこうアメリカの訳わからないサーバーを使うんですね、安いので。やはり大学生の頃から始めていて、「月額500円でも削れるかな、削れないかな」みたいな気持ちでずっとやっていたので。月1万円とかになっちゃうと、サーバー代がしんどいなって人も多いと思うので、基本的に月2、3,000円が限度って感じで作る時やっています。

「神は細部に宿る」 細かいところがすごく大事

ーープロダクト開発時にこだわっていることを教えてください。

せせり:こだわっていることは、そうですね、なんかいろいろあるんですよね(笑)。何だろう……僕は、デザインは答えがあるもので、アートは呼びかけるものだと思っているんです。アートって人によって答えが違っていいんですよ。でも、デザインの答えって1つなんですね。

例えばダウンロードというボタンがあったとして、そのボタンの色が緑色でした。なぜでしょう? わからないですよね、たぶん。

それが、ちょっと緑色だったかは忘れたんですけど、「Firefox」が、緑、赤、青、黄色とかいろんな色で試した時に、確か、緑色だけが10パーセントぐらいクリック率が高かったんですね。だから緑なんだって言えるんですよ。

デザインには、「ヘッダーの高さは64ピクセルです。それはなぜ?」みたいに、一つひとつの「なぜ?」に対して答えがあるんですね。僕はそれを突き詰めていくのがすごく好きなんです。

例えば、スマホでテキストフィールドをタップする時に、大きくなることはないですか? あれって、確か「Safari」だと16ピクセル未満の設定がされていて大きくなっちゃうんですね。

デザインを重視すると小さくしたいんですけど、そうすると大きくなって、文字を入力した後に戻す手間がかかっちゃうので、あえて16ピクセルにしようみたいな、そういうすごく細かいところが大事だと思っているんですよ。

そういう意味では、世界に対して不満が多い人は、個人開発に向いているかもしれないですね。世の中には「なんでこれ、大きくなるんだよ」とか、みたいに思う人と思わない人がいると思っていて(笑)。

下スクロールしていたら、「なんでこれ、被ってくるんだ」とか、「ここ、使いにくいじゃん」みたいなのが日々あるんですよ。

ーー松屋の画面が使いにくいとかあったじゃないですか。

せせり:そうそう。気になる。作ったのは誰だ? って思いましたよ。あれ、ヤバいのが、英語にした時に、メインの商品は日本語なんですけど、買った後に「こちらもどうですか?」って出てくるトッピングが全部日本語なんですよ。

だから使っている人も困って、「んっ? んっ?」みたいな顔していて(笑)、すごくお金をかけてもちゃんと作らないとそういうことになるんですよ。

だから、そこはもう本当にこだわっています。「神は細部に宿る」という言葉があるじゃないですか。あれはインテリアかなにかの言葉なんですけど、すごく好きな言葉で、もう一生考えていますね。

インタビューに向けて構想していたプロダクト

ーー今後、こういうプロダクトを作ってみたいなとか、ありますか?

せせり:このインタビューの話をもらってから今日までに作ってこようと思っていて、アイデアを考えていたんですけど、ちょっとやる気が出なくて(笑)。

(一同笑)

せせり:2パターンあったんですよ。「こういうパターンとこういうパターンがあって、こうです、こうです」っていう話をしようと思って、ドメインまで取ったんですけど。

ーー今回インタビューに向けて作ろうと思っていたのはツール系ですか?

せせり:ツール系ですね。日本語のフォントっていっぱいあるじゃないですか。ホームページとかでフォントを変えたこととかありますか?

ーーあります、あります。

せせり:日本語のフォントってめちゃくちゃ重いじゃないですか。だからWebフォントがあまりないんですよ。最近Googleが始めたんですけど、GoogleのWebフォントも数が少ない。日本語フォントはすごくたくさんあるんですけど、使えるフォントが少ないんですよ。

「ためしがき」って調べてもらっていいですか?ちょっと文字を入れてもらうと、こういうフリーの日本語フォントだとこうなりますよみたいなのが見られるだけで、あとはやってねという感じなんですよ。

次に、「Google日本語フォント」って調べてもらっていいですか?これはCSSを貼るだけで、Webフォントで読み込めますよというやつなんですけど、4種類か5種類しかないんですね。今はもっとあるかもですけど。

それを2つを合わせたら、フリーフォントで、Webフォントで読み込めるサイトをツールとして運用できるので、作って持ってこようかなと思っていたんですよ。簡単ですし。

(次回へつづく)

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