2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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南野充則氏(以下、南野):では次の質問にいきたいと思います。プロダクトの検証といったところですね。作った後、どうやって検証したりであったり、「そもそもこれ、テストをどうするんだ?」とか、「お客さんの要求を、達成できるのか?」とあると思うんですけど、どうやって検証されているのかみたいなところ。
じゃあ、小城さんからお願いしてもいいですか?
小城久美子氏(以下、小城):ありがとうございます。弊社は、まだプロダクトローンチにたどり着いていないので、ぜひお二人から学びたいなと思っているんですが。
今まで私、ユーザーインタビューがすごく得意で、ユーザーさんが何に困っているのかを読み取って、それに対して提案をするというかたちでやっていたんですが、正直、今、生成AIを使いたい方々の一番のペインは「これを解決したい」みたいに困っていることがあるというよりは、「生成AIに乗り遅れたくない」みたいなところじゃないかと思っているんです。
今は、プロダクトの機能の検証というよりは、ビジョンの検証というところで、生成AIがみなさんの業界の中でどういうことができるのかというところをちょっと発散ベースにお話しさせていただくということをしています。詳しいところは、ぜひ教えてください。
大友太一朗氏(以下、大友):ちょっと言い訳から入るんですけど(笑)、Microsoftも日本にプロダクト開発をしている人はいないというところがまずあって、私の知る限りでお話を、というところと、あとは営業としてお客さまとプロダクトを作っていく中で、超初期の段階でやっていることというところで2つお話ししたいんですけど。
先ほどもちょっと触れましたが、MicrosoftのプロダクトではOfficeがたぶん一番有名なのかなと思っていて、そこに今、「Copilot for Microsoft 365」というものをくっつけています。
プロンプトを打って文章を作ったり、スライドを作ったり、会議の要約ができたりしますよ、みたいなもののソリューションの束として提供しています。
これは最初、けっこう作り込んでから世の中に出しました。ただそれも、プライベートプレビューみたいなかたちで、アーリーアクセスプログラムというものをグローバルでやって、ふだんからMicrosoft製品を使っていただいている600社のお客さまに対して早めに提供して、使っていただきました。
この時に、いろいろな数値を取っていきました。どんな効果があるのか、これで作った文章は、ふだん人間が作る文章とどれぐらい精度に差があるのか。
Copilotが要約して作ったものを会議に出ていない人間が見て、どれぐらい会議の理解度が違うのか、みたいなところを100個ぐらいKPIを取って、人間のオペレーションをAIが代替できているのかというところを、けっこう精緻に取っています。
あとは、製品の話で言うと、例えばお客さまに、「会社で無料ランチが提供されるのとCopilotが提供されるのとでは、どちらを選びますか?」みたいなところとかを聞いたりなど、そんなこともメトリックとして取っていました。
ほかにも、お客さまとプロダクトを作っていく時には、やはりいかにお客さまのオペレーションを楽にするかという観点からスタートするので、今やっているオペレーションがどんなものなのかを洗い出して、何をAIに置き換えられるのかをお客さんと一緒にアイディエーションしていくというところから、けっこう入っています。
ちょっと長くなっちゃったので、1度切ります。
友松祐太(以下、友松氏):AI Shiftで言うと、2つ軸があると思っています。ひとえに生成AIと言っても使い方は、今までの自然言語処理技術の部品として使うケースと、いわゆる生成部分を使うという、2つのパターンがあると思っています。
部品として使う部分は、今まで培ってきた仕組みの中で動かすというところなので、そういう観点でいくと、今まで測ってきた指標と同じところで比較できるようなものになってくるのかなと思っています。
要は、生成としての評価というところは、ものすごくみなさまも悩まれているところかなと思うのですが、例えば業務改善の軸でいくと、まずは、本質的に何を解決したいのか、生成をした結果、どういうことを実現したいのかというところで、評価軸をいくつかのパターンで作って、それによって1回結果を出して、定性的に評価を行うというかたちにしています。
途中で成果物を見た時に解像度が上がってきて、「あっ、これもやりたい、あれもやりたい」というパターンがものすごく出てくるのですが、その評価軸をどんどん変えていってしまうと、やはり新しい評価軸にフィットさせた時にデグレードが起こったりするので。
その評価軸をぶらさずに作っていくとか、解像度を高めていくというところをかなり重要視しています。これは、対お客さまですね。
南野:ありがとうございます。
南野:会場からの質問も出ています。、「UIの検証で、やはりチャットUIが多いんじゃないかといったところで、ほかのUIでこんなのもあるんじゃないかとか、もし検証されている会社さんがあればぜひ聞きたい」といったご質問があります。
友松:じゃあ、私から。先ほどAI Workerというプロダクトを紹介しました。いわゆるChatGPTとかはプロンプトを書いていくようなところにはなっていると思いますが、やはりプロンプトの書き方がわからないというポイントもかなりあって、それをチャット形式で実現することが難しい時。
例えば、要約をしたいという時に、UIでプロンプトを書かずに直感的にUIを選択していくと、裏側でプロンプトが走るような仕組みで生成AIの難しいところを除外するというところは、やっています。
南野:ありがとうございます。
大友:たぶん自然言語で対話できるというところが、まず価値の1つだと思うので、自然とチャットUIになりがちというところはあると思います。
生成AIの得意技の1つとして、やはり要約とか、いい感じにまとめるみたいなものがあると思っていて、それで言うと、例えばあるアメリカの中古車ディーラーは、車のレビューを大量に要約をさせて、「この車は、こんな車です」みたいなものを一気に生成AIで全部生成したというのが事例としてあって。
それは、対話型ではないんですけど、ちょっと違うUIというか、違った生成AIの使い方の1つなのかなと思っていたりします。11年ぐらいかかりそうな業務が数時間で終わるようになったみたいな事例が出ていたりします。アメリカのCarMaxさんですね。
南野:ありがとうございます。
小城:ちょっと検証できている事例ではなくて、これは、会社じゃなく私個人が最近思っていることなんですけれど、入力ができた時点でだいたい自分の困りごとって解決しているな、みたいなことを思っているんですよね。
入力しなくても自分が欲しいものが出てくるとか、ユーザーが使っていると意識しないけれども出てくるとか、そういうところが本当に生成AIが社会実装された世界なんじゃないかなと思っています。
南野:ありがとうございます。
南野:じゃあ、次にいきたいと思います。
次は組織の話ですね。生成AIプロダクトを作っていくにあたって、強い組織とはどんな組織なのかといったところ。では、小城さんからお願いします。
小城:先ほどもお話ししたとおり、生成AIを作るのは、不確実性が本当にラッパになってどんどん膨らんでいくなと思うので、いろいろな職能を持った人たちの小さなチームに、しっかりミッションが入っていること。
何が指標なのかがきちんとミッションとして持てていて、小回りが良く小さなPDCAが回せる組織が強いなと思っています。
ただ、それだけだといろいろな方向に走っていってしまうことがあると思うので、全体としてどっちに向かっていくのかみたいなところの全社の戦略に合わせて、たくさんチームがある状態を目指していきたいなと思っています。
大友:僕も小城さんに賛成です。プロダクトに埋め込んでいくという使い方をする時には、やはりプロダクトオーナーが主導権を握って、いろいろな職能の人が集まったチームでやっていくのがいいと思います。
逆コンウェイの戦略とよく言われたりしますが、作りたいものの単位でチームを作っていくというのが基本になるのかなと思っています。
最初にAutonomyの話をしましたが、自律性を与えると同時に、みんなの動きに統一感が出るように戦略と文化を作るみたいなところは、リーダーの役割なのかなと思っています。
あと、そうですね、横串を通すという意味で、IT部門みたいなところがある大きな会社さんは、そういうところが主導権を握ってバーンと「AIを全社で使っていくぞ」みたいなのもありだと思うんですけど。
生成AIプロダクトに強いというのとは、ちょっと違うんですかね。全社で活用する時は、そういうところが主導権を取ってやっていくのがいいのかなと思うんですけど。
プロダクトを作るという意味だと、やはりプロダクトオーナーが、「何を作るんだ?」というところ、「このプロダクト、かくあるべし」というものを示して、「その中でツールとしてAIを使うべきだよね。じゃあ、みんなでやってみよう」というのが、たぶんいいのかなと思っています。
友松:基本的にお二人に賛成です。小回りが利くところがものすごく重要だと思っていて、小回りをうまく利かせるためには、その技術に対して強いということと、市場理解が強いということ、この2つの掛け算なのかなと思っています。
先ほど細かいPDCAという話がありましたが、市場に当てて、技術的な部分に戻してというところを高速に回して、しかも高速にピボットしまくるというのが、この激動の時代における、強い組織の条件なのかなと思っています。
南野:ありがとうございます。AI Shiftさんは、どんな組織で、何人チームでやられているんですか?
友松:この1年の中でもやり方をすごく動かしながらやっているんですけれども、AI Shiftは見てのとおり、今4つとかのプロダクトを一気に動かしているところです。
市場に対して生成AIのどういうところがインパクトがあるのかを広げる動きと、そこから一気に、色をつけて狭める動きを、この1年半ぐらい、もう何度も繰り返していくというところで、チームもかなり流動的にやってきていますね。
南野:ありがとうございます。
南野:また質問が来ています。組織の話ですね。「生成AIの登場で、能力が高い人と低い人の差が縮まってきている気がしますが、今後もその傾向は強まると思います。これからの社会、人の能力はどういった部分で差が出ると思いますか?」という話。では、友松さんからよろしくお願いします。
友松:ものすごく難しいところかなとは思うんですけれども、やはり、これから生成AIを使うことが当たり前になってくるというところで、私、生成AIのリスキリングを主導させていただいていて、先ほどAIを民主化する、AIと協調するというお話をしたんですけれども。
人間がやるべきところと、AIがやるべきところの境界線じゃないですけど、うまくAIと付き合う。先ほど、Copilotっていうお話もありましたが、そういうところを軸に、自分の業務を広げるじゃないですけれども、開拓していけるというところが、これから人材的な市場価値になっていくのかなと思っています。
それ(AI)によって仕事がなくなるとか、仕事が淘汰されるっていうというよりは、それによって新しい価値を生み出していくというところが、これから必要なところなのかなと思っています。
南野:では、大友さん、お願いします。
大友:よく最近言われていることとして、AIが人間の仕事を奪うんじゃなくて、AIを使いこなせていない人の仕事を、AIを使いこなしている人が奪っていくという話があります。結局、そういうようなことなのかなと思っていて。
AIはテクノロジーですし、ツールなので、それを上手に使って自分の効率を高めたり、浮いた時間、リソースを新しいことに使って新しい価値を生んだ人が勝つ世界なのかな、と思っています。
うちの社内でも、自分たちの製品を使っている人と使っていない人がやはり出てきているんですね。「メールは全部Copilotに書かせているよ」という人とか、「会議は、もう全部要約でキャッチアップできるから出ない」とかですね。
あと、「外国人との会議も怖くない」みたいな話とかもけっこうあったりして、本当にそういうので自分の世界をいかに広げられるかというところが勝負のポイントになってくるという話なのかなと思っています。
南野:ありがとうございます。
南野:じゃあ、小城さんお願いします。
小城:今日、お医者さんと会議をしていたんですが、「手術のロボティクスみたいなところが進んで、機械を使って手術ができるようになってきたけれども、じゃあ、それを毎回使うのかといったら、なにかあった時には自分が手動でやらなきゃいけないみたいな切り替えができなきゃいけない。機械化によって楽にはなったけれども、自分が学ばなきゃいけないことが減ったわけではなくて、手術ができなきゃいけないというところは変わっていない」みたいなことをおっしゃっていて、めちゃめちゃ「確かにな」と思ったんですよね。
じゃあ、その機械化の意味はないのかといったらそうではなくて、それで救える人がすごく増えてきたというところがすごくすばらしいなと思っています。
これからソフトバンクの孫さんは、人間と金魚ぐらいニューロンの差ができると。2030年には、私たちとAGIの関係は今の金魚と人間くらいの差ができるらしいんですけど。
金魚としてやっていかなきゃいけないなとは思うんですが(笑)、そうやって今までも人間は進化してきたんじゃないかと思っていて。
必要となってくることはどんどん変わっていって、その時に人間がやらなきゃいけないことをやらなきゃいけないというところは変わらないし、機械でできるから全部それを機械任せにしていいのかというと、その機械をもっと進歩させるためにはその分野について人間が詳しくなければいけないと思っています。
そうすると、今手が回っていないこととか、ちょっと優先度が低いことに生成AIを使えばいいんじゃないかと思っていて。
自分が本当にやらなきゃいけない、集中しなきゃいけない、もう本気で、いっぱい勉強して、いっぱい仕事をして、みたいなところにフォーカスをしていくみたいな使い分けになっていくのではないだろうかと、最近思っています。
南野:ありがとうございます。
(次回へつづく)
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