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Session#2 「エンジニアが事業を創る、事業会社イオンネクストの開発組織」(全2記事)

「エンジニアが事業を創る」ために必要な会社の構造とは イオンネクストCTOが語る“手段”と“目的”

イオンネクスト株式会社の樽石氏は、「エンジニアが事業を創る」ためにイオンネクスト株式会社で取り組んでいることについて紹介しました。前回はこちらから。

「買い物を変える。毎日を変える。」

樽石将人氏:これを踏まえて、「エンジニアが事業を創る」というところ。(スライドを示して)イオンネクストの組織はこういうふうになっているので、これがどういうことなのかを今日は紹介したいなと思います。

結局イオンネクストのエンジニアとは何なのかは、これまでの説明でもなんとなく見えてきているのかなと思うのですが、エンジニアはデジタルの細部を熟知しています。

例えばパソコンの電源スイッチを押したらなぜログイン画面が出てくるのかとか、Googleで検索キーワードを入力したらなぜ目の前に検索結果が出てくるのかとか、そういった裏側の仕組みをみんな極めて熟知しています。

そういうデジタルにすごく精通した人たちが、オーナーシップを持って価値を創っていきます。価値というのはお客さまへの価値そのものを創り出していきます。

イオンネクストにはこういうエンジニアがたくさん揃っているという感じになっています。この価値は何かというと、これまでも再三紹介をしていますが、「買い物を変える。毎日を変える。」という当社のサービスのビジョンですね。買い物のやり方を、今までの店舗主体の買い方から、オンライン主体のまとめ買いのかたちに変えます。

変えることはお客さまからすると単に手段であって、買い方が変わることによって例えば時間の使い方が変わっていくことで、その時間に別のことができます。そうすると毎日が変わっていく。そういったことを目指してやっています。

トップダウンDXでは足りなくて、ボトムアップDXが必要

山﨑(山﨑賢氏)からトップダウンDXとボトムアップDXというキーワードがあったと思うのですが、これはトップダウンで普通に今みたいにマクロの分析をして、それを提供するという考え方もあるのですが、最近はそういうものもありつつも、もう少し別の見方があるなと思っています。

要は何かというと、トップダウンは上から見て何か指示するとかそういうことではなくて、上から見ている人が現場にもちゃんと行って細部までちゃんとやり切るということに過ぎないんじゃないかなと思います。

(スライドを示して)左にある写真ですが、これは2023年かな? 12月21日の午前5時か6時のちょうど夜が明けた頃なんですが、この時間にこの緑のトラックに自分も乗って宅配を手伝ってきたというようなことをやったりします。

同時に実はトップダウンだけでは足りなくて、やはりボトムアップが必要なんですよね。ボトムアップも、ボトムで作ったものをどうこうすることも大事だけれど、それだけではなくて、ボトムで日々(業務を)アップされているような方がしっかり経営目線でマクロに物事を見ている。

(スライドを示して)右は前期のイオンのIRの資料のスクショを適当に持ってきただけなのですが、そういう感じで、「経営目線で見ると今自分たちがやっていることはこういうことなんですよ」といったことをまとめていくわけですが、経営者目線で物事を見ながら現場のことを日々取り組んでいきます。

こういったことがたぶん非常に大事で。こういうことで僕らが何をしたいかというと、買い物を変えて毎日を変えたい。これはもうトップダウンDXだろうが、ボトムアップDXだろうが、それは手段であって目的は「これをやりたい」ということです。こういうかたちでイオンネクストは取り組んでいます。

エンジニアが関わる事業KPI

(スライドを示して)この図は2024年にイオンネクストのIT部で特に注力したいなと思っている領域です。イオンネクスト・プラットフォーム2.0という名前を付けて取り組みを進めています。これは何をやりたいかというとシンプルで、事業KPIにコミットするということをやりたいんですね。

今までエンジニアの人たちはこういう数字にはあまり馴染みがなくちょっと距離があって。例えば別途事業部門、Bizの部門があります。そのBiz部門がやることを支援するかたちでシステムを作るのですが、これだと本当にシンプルに受託会社になってしまうので、こうなるとなかなかボトムアップDXをエンジニアがやるのは難しいことになってしまいます。

なので、イオンネクストでは我々エンジニアが作るものは事業のKPIにしっかりコミットするということを考えてやっています。

具体的に何の事業のKPIに寄与するのかというと3つあります。(まず2つは)販促費の効率化とバスケット単価です。バスケット単価というのは、1回あたりに買う購入金額です。先ほど説明したスクショだと1万4,000円でしたっけ? 1万4,000円とか1万9,000円とか、そういった1回の購入金額を「今よりもこれだけ上げていきたいんですよ」ということです。

あとは配送効率です。配送効率はどういうことかというと、今は自分たちで商品が売れた時に実際にトラックで運転をしてお客さまの元まで商品を届けているのですが、配送のやり方をうまく工夫すれば、もっと1人の人がたくさんのお客さまに商品を届けられるだろうと考えています。

これをやる方法はいろいろあって、例えば注文を受けた時に、その周辺のお客さまに買ってもらうようにします。例えば、シンプルに同じマンションの人に同じ時間に買ってもらいます。そういった仕組みをうまく作れれば、トラックの移動時間が減るので移動効率が上がるだろうということです。

こういった仕組みをAIによって作ることで配送効率を上げたいなと、こんなことを考えて取り組みを進めています。

イオンネクストIT部について

(スライドを示して)これを実際に推進する組織は我々のイオンネクストIT部というものがあって、こんな感じになっています。組織図上で見るとイオンネクストIT部がだんだんシンプルになっていって。何をやるかというと、業務部門と連携して、特に2024年はこの3つの数字を改善するということです。

加えて、サービスは動き続けていなくちゃいけないので……。これもSLI(Service level indicator)というサービスレベルの指標があるので、これをしっかり定義して、定量化して見える化することによって、「IT部はこういうことをやっているんですよ」ということがよくわかるようにしています。

(スライドを示して)これは参考なのですが、今イオンネクストIT部で作っているシステムのすべてです。これはローンチ時にやったシステムで、半年ぐらい経っているので、実際はこれに加えてもうちょっとシステムが増えています。

こういったものをすべてフロント側のいろいろなシステム、アプリやデータのプラットフォームや会計や人事のシステムなどもすべて作って、さらにAIなども活用して、業務の生産性を向上させることもやっています。

結局「エンジニアが事業を創る」とはどういうことか

これはまとめですが、結局エンジニアが事業を創るというのはどういうことか、具体的にどうやっているのかを端的に表しています。我々がIT部が結局どういうふうにやれば事業KPIが推進できるのかというと、やはりIT部だけでは難しいというのがあります。なぜかというと、ドメイン知識があまりあるわけではないからです。

例えば商品も、どんな商品を取り入れ、品揃えすべきかというのは、データが溜まってきて、データを分析したりすればある程度見えてくるのでしょうが、そもそも販売していない商品はデータがないので、売っていいのかどうかわからないんですよね。ゼロの時はわからないです。

そういうのがあった時に、商品部で長年の経験があるような知見を借りたほうが物事がうまく立ち上がっていくんですよね。

特にこの1、2年で取り組んでいきたいなと思っているのは、業務部門の人とIT部が同じチームのように動いて、目標を1つにしてそれを達成するという動きをやっていきたいです。その具体的なアプローチで、例えば半年という時間を区切った時に、前半の最初の3ヶ月は人間ががんばってPDCAをします、そしてある程度ノウハウが出てきたら、後半部分にAIを作っていくんです。

それで産声を上げた何かのシステムができたら、今度はそれを業務部門とIT部が一緒になってPDCAをしていくという動きをします。つまり、エンジニアの人、デジタルを軸にした人材と、業務部の人が両輪で取り組みを進める。こういうことをすることで、過去誰もできなかったことを実現したいなと思っています。これがイオンネクストの「エンジニアが事業を創る」ということの具体的な構造になります。

ボトムアップである構造を作ることで、エンジニアが事業を創っていける

まとめると「神は細部に宿る」です。先ほどの山﨑とまったく一緒で、現場でやることが結局すべてということになります。その中で、より詳細に解像度を上げていろいろなことに取り組むことが結果につながるから、それをやることがまずは大前提です。それを考えた時にイオングループは300社あって、非常にたくさんの会社でできています。

そうなると、会社がまずは何をするのか、どういうアプローチでやるのかを考えていった時に、イオングループで見たボトムは事業会社のことなので、事業会社がちゃんとボトムアップにオーナーシップを持ってやることが大事です。事業会社が動くのは従業員が動くからなので、従業員もボトムアップである必要があるし、従業員が動くためにはエンジニアもボトムアップでなければいけません。

こういう構造をしっかり作っていくことで、エンジニアが事業を創っていけるんだろうなということですね。“創る”ということが具体的に何かというと、「買い物を変える。」ということです。買い物を変えるのも、お客さまから見ると実は手段に過ぎないので、それによって毎日を変えていきます。それで毎日が変わった人がどんどんたくさん増えていくと、社会までどんどん変わっていくだろうと。そういうことをイオンネクストはやっていきたいなと思っています。

もし興味があったらこちらからサイトの情報を見てほしいです。あとは、イオンネクストは採用もそうなのですが、いわゆる副業エンジニアの方にもけっこう入ってもらっていて、空いている時間でちょっとだけ開発を手伝ってもらうとかもやったりしながら……。結局、やりたいことはすごくシンプルで、買い物を変えて毎日を変えたいということです。なので、そういった取り組みに興味がある方がいたらお声がけいただきたいなと思います。

以上です。ありがとうございました。

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