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プロダクトマネージャーの「覚悟」を分解する(全5記事)

「『撤退はしないくせに投資もしない』はインパール作戦みたいなもの」 “撤退”か“追加投資”しかない中で、プロダクトマネージャーが持つべき心構え

及川卓也氏と吉羽龍太郎氏が、プロダクトマネージャーが直面する課題や決断の背後に隠れる「覚悟」を分解しました。前回はこちら。

「撤退はしないくせに投資もしない」はインパール作戦みたいなもの

吉羽龍太郎氏(以下、吉羽):さてさて、あと5分ぐらいなので、最後の「プロダクトや機能を終了する」という話をして、終わりにしたいと思います。これ、僕らは散々言いますよね。もう口酸っぱく言いまくるという感じかな。

「プロダクトをやめられない」とよく聞きます。だから人が分散しちゃって勝負にならなくなっちゃうというのが、すごくありますよね。薄い人数のチームがいっぱいあって、どれも塩漬け、プラス、運用対応をちょっとだけしてみたいな。

それで、「メンバーのモチベーションが上がらないんですけど、どうしたらいいですか?」、いや、そりゃ、そんな塩漬けを運用させていてメンバーのモチベーションが上がるんだったらやり方を教えてくださいよという感じだと思います。これはもう(プロダクトを)捨てろという話だと思うんですが、それ以上の話はなにかあります?

及川卓也氏(以下、及川):いや、本当にそのとおり、冒頭でも話したとおりで、基本的にプロダクトは、撤退か追加投資しかないんですね。

吉羽:そうですよね。

及川:継続的に投資し続けるか、それとも撤退するかしかない。でも、やっていないところが多いんですよね。

吉羽:多いですね。

及川:撤退はしないくせに投資もしないというのは、戦争の最前線で補給物資を送られない中で、「お前、がんばれ」と言われているインパール作戦みたいなもんですよ。そう考えれば、答えはもう明確だと思うんですね。

吉羽:そうですね。でも、お客さんがいるのでやめられないというのが、次のカウンタートークの言い訳で来るじゃないですか。

及川:でもそれもね、絶対嘘なんです。

吉羽:ですよね。

及川:なぜかというと、絶対にお客さんにとっても不利益だからです。要は収益化が、健全な収益体制になっていないプロダクトは、どこかのどこかで終わりを迎える可能性が高い。もしくは、他社の競合製品を使っていたならば、きちっと進化し続けるかもしれないものをのらりくらりと停滞したままで使わされ続けているわけですよね。

吉羽:機会損失しているわけですよね。

及川:そのぐらいならば、「申し訳ない、我々はやめます」と。そこまではっきり言うかはわからないけども、競合をお勧めするほうがお客さんにとってもハッピーかもしれないし。

及川:例えば、A社に信頼を置いてくれているとして、この採算が取れないプロダクトをやめることで優秀な人材をほかの事業に充てますと言ったほうが、お客さんのこのA社に対する信頼は増すはずなんですよ。だから、たまたま1社というのは、営業や担当者がお客さんとしっかりとした信頼関係を持った会話ができていないということからの逃げなんですよね。

吉羽:確かにね。

使われていない機能はどんどん削っていくべき

吉羽:プロダクト自体もそうですけど、機能もバンバン消したほうがいいじゃないですか。その点についてはどうですか?

及川:基本的に、プロダクトで使われない機能はゴミだと、私は『ソフトウェア・ファースト』という本に書いているんですけれども。

吉羽:ですよね(笑)。

及川:でも、そうなんですよ。これはプロダクトマネジメントというよりも、開発、エンジニアリングのほうかもしれないんですけれども、やはりエンジニアの視点でも、「せっかく作ったんだから残しておいてほしい」というのは、とっととやめるべきなんですよ。

吉羽:わかる。

及川:使われていない機能はどんどん削っていく。コードクリーンアップやリファクタリングをやっていくほうが、コードは進化し続けるわけですよね。だから、なにか足したらなにか引くぐらいのイメージを持ったほうがいいと思います。

吉羽:そうですよね。運用コストはコードのサイズの二乗ぐらいに比例する感じで、でかくなればなるほど大変というのもあるので。だから、僕はよくお客さんに、「プロダクトバックログには、機能を削除するバックログアイテムを入れろ」と言っていますね。

これも怖いんですよ。「なんで動いているものを削除するの?」とか「一応お客さんがいるのになんでサービスを終了するの?」と(言われる)。でも全体のことを考えたらそれが最善の選択だよというふうに、ステークホルダーに言っていくしかないですね。そこには、思いというかあれも要るのかなという気はします。

吉羽:ということで、時間になったんですけど、最後に言い残したことはなにかありますか?

及川:最後のところに付け加えて言うと、スマホアプリを作るといいと思うんですよ。スマホアプリはやはりフットプリントも限られているし、かつ、UI上機能をたくさん入れてもUI的に無理なことがある。なにか足したらなにかを消さなきゃいけないので、それをプロダクト作りの1つのモデルにするといいかなと思います。

吉羽:確かに。昔のiモードアプリを思い出しました。スクラッチパッドの容量が小さすぎて機能を削りまくっていた、みたいなことを思い出しましたけど、確かにちょっと制約があったほうがいいのかもしれないですね。

ということで、放談しまくったという感じですけれども、なにか1つでも参考になることがあれば幸いです。ということで、みなさん引き続き「プロダクトマネージャーカンファレンス」をお楽しみください。今日はありがとうございました。

及川:どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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