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プロダクトマネージャーの「覚悟」を分解する(全5記事)

「チームの理想の状態は“巻き込み巻き込まれ”になっていること」 及川卓也氏が語る、プロダクトマネージャーの「ヒトを巻き込む覚悟」

及川卓也氏と吉羽龍太郎氏が、プロダクトマネージャーが直面する課題や決断の背後に隠れる「覚悟」を分解しました。前回はこちら。

その人の人生を狂わせるくらいの巻き込む能力が必要

吉羽龍太郎氏(以下、吉羽):2つ目の「ヒトを巻き込む」という話も出ました。このペースでしゃべったら絶対終わらないので、そろそろ次のテーマにいきたいと思います。

次が今、及川さんから振りがあった、「ヒトを巻き込む覚悟」ですね。ちょっとこっちについて話していきたいと思うんですけど。

これもいろいろな話がありますよね。人といっても、自分のチームのメンバーも人じゃないですか。それから、ステークホルダーも当然巻き込む対象になってくると思うんですけど。

ユーザーに関しては、下で触れようと思うので1回置いておいて、チームとステークホルダーという観点でいうと、どんな覚悟が必要ですかね?

及川卓也氏(以下、及川):人の人生を狂わせちゃうかもしれないわけで。

吉羽:(笑)。

及川:スタートアップは、「俺の会社でこのプロダクトを作って世界を変えようぜ」と言って、夢を追いかけて、10年経っても実現できないなんて普通にあるわけですよね。だから、その人の人生を狂わせちゃうかもしれない。

大企業だとやはり、こういったところはすごく希薄化されて、そこまで人の人生を狂わせない。「いったん、そういった新規事業系に行くだけか」みたいなのはあるかもしれないんだけれども。でも本当は、その人を狂わせるぐらい巻き込む能力が必要なんじゃないかなとは思いますね。

吉羽:確かに、そうですね。プロダクトは1人じゃ作れないですからね。いくらビジョンがあっても、結局それを形にするのはチームです。自分たちがどこに行きたいかというのを、すごくしつこくしつこく、本当にしつこいぐらい伝えるということをチームの人たちによく言っています。同じバスに乗ってもらうというんですかね。そういうふうにならないといけないよね、みたいな話はありますよね。

それってイコール、及川さんがおっしゃった、人の人生も巻き込んじゃうという話だと思うんですけど、プロダクトマネージャーが、そのへんをしつこく言うのはすごく重要かなという気がしますよね。

及川:でも、今言っていて思ったのが、プロダクトマネージャー=プロダクトの企画の創始者というか、最初に考えた人である必要はないんですよね。

吉羽:確かに必要はないですね。

及川:だから、実は巻き込まれた側に立つこともあるわけですね。

吉羽:確かに、確かに。

中の人たちは“巻き込み巻き込まれ”という状態になっているべき

及川:この人の思いに共感してというかたちも多いので、やはり巻き込む力、巻き込まれる力の両方必要で、冷めている状態が一番良くないと思うんですよね。

吉羽:一歩引いた感じですかね。それはなんか、あれですね。やはり僕たちに対するブーメラン的なところもあって、僕らは支援側の立場なので、もちろん同じ目線に立って自分が当事者のつもりでいろいろ考えるんですけど、どうやったって一歩引いていたりはしますかね。でも、自分たちがプロダクトをやると良くないですよね。

及川:そうなんですよ。一応ポジショントーク的にいうと、第三者の指摘が必要なこともあるので(笑)。

吉羽:必要、必要(笑)。

及川:それはそれであるとして、ただ、本当に中の人たちは、巻き込み巻き込まれという状態になっているべきだと思いますね。

吉羽:そうですね……あと、なんだろうな……Googleみたいなチームだったら、最初からもう最高の人材で最高のチームじゃないですか。

でも、普通にこれからプロダクトを作るとなると、なかなかそういう完璧なスター揃いのチームでいきなり始められるということはなくて。人も少ないし、お金も少ないしとなると、今いる人たちをいかに巻き込むかもそうだし、成長してもらって、その人たちにパフォーマンスをガンガン発揮してもらってというところも重要になってきます。

もちろんプロダクトを作るのはすごく忙しいし、やらなきゃいけないことが山積みなんだけど、なんていうのかな、その人の今持っているスキルを焼畑農業的に使い潰しちゃうと、たぶん持続もできないしプロダクトも頭打ちになるので、そういう成長にも関与していかなきゃいけないのかなと思っています。どうですか?

及川:そのとおりなんだけど、プロダクトマネージャーにはそれが苦手な人もいるし。

吉羽:そうですね(笑)。

及川:かつ、私は著作でも書いているんですけれど、それをやるのは各職能上の上司である。

吉羽:エンジニアリングマネージャーとかそういう人。

及川:そういうことです。その方々と両輪になり、でもプロダクトマネージャーはどちらかというと、プロダクトの成功をけっこう愚直に求めちゃうという、そういった役割分担をするほうがいいんじゃないかなと思います。

吉羽:確かにそうですよね。だから、時としてそれはコンフリクトしますよね。

及川:そうなんですよ。

吉羽:「メンバーの成長とプロダクトの成長、どっちを取りますか?」みたいな話になったりしますよね。どうしても「締め切りだ」とか「プロダクトのローンチだ」とかを抱えていると、ちょっとメンバーに無理をさせてでもなんとかしたいみたいになりますしね。

吉羽:一方で、持続可能性みたいなものを、エンジニアリングマネージャーは考えると思うんですけど、どうやってもコンフリクトしますよね?

及川:しますね。やはり軸足をどっちに置くかというのはありつつも、吉羽さんが言うようにプロダクトマネージャーにも、今特にサステナビリティとか持続性は求められてきているのかなとは思いますね。

吉羽:確かにそうですよね。でもプロダクトでやりたいことは、やれる時間以上にたくさんあるじゃないですか、山のように。どうしたらいいんですかね?

及川:うーん。でもこれって、あれですよね。MVPの考え方と一緒で、「やりたいことがたくさんあるから」と言って全部やっちゃうと、それこそビルドトラップになりかねないんですよね。

吉羽:そうそう。ですよね。うん、そうそう、そうそう。

(次回へつづく)

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