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不確実な世界で成果をあげる〜変化を抱擁するアジャイル思考(全2記事)

AIは“作業”はできるが“仕事”はできない 不確実さが増す世界で増加している「ナレッジワーカー」の仕事

株式会社ソニックガーデンの倉貫氏は、不確実さが増す世界のプロジェクトマネジメントについて話しました。全2回。

プロジェクトマネジメントはなかなかうまくいかない

倉貫義人氏:今日は「不確実な世界で成果を上げる」というテーマで話をしたいと思っています。

私の簡単な自己紹介ですが、倉貫と申します。ソニックガーデンとクラシコムという、2つの会社で経営をしている人間です。ソニックガーデンが自分で創業した会社ですね。クラシコムは2018年から社外取締役で入らせてもらっています。

もともとのバックグラウンドはエンジニアです。いわゆるソフトウェアエンジニア、プログラマーということで、子どもの時代からプログラミングをずっとやっていて、プログラミング畑で学生、社会人になりました。

今回のテーマがプロジェクトマネジメントということですが、システム開発のプロジェクトマネジメントはなかなか(大変で、)今もギャップとか……。社会人になった二十数年前もやはり大変でした。

プロジェクトマネジメントはなかなかうまくいきません。当時のプロジェクトマネジメントのウォーターフォールというやり方の中で、後ろの工程、下流工程と言われているところで「エンジニアの働き方が大変だ」と言われたこともあったりする。

それ自体どうしようもないし、「絶対にこういう進め方はしないほうがいいよね」ということで、「直したい」と言っても、「上流で決まったことだ」みたいになるということで、やりたかったソフトウェア開発とプロジェクトマネジメントがどうも違うなと。

本来やるべきシステム、ソフトウェアで一番いいプロジェクトの進め方は何だろうかと考えた時にアジャイル開発に出会って、「じゃあアジャイル開発を広めよう」ということで、活動を続けてきた人間です。

大手のシステム開発会社ではアジャイル開発ができなかった

アジャイル開発をずっと続けてきたのですが、前職が大きな会社さん、システム開発会社なので、アジャイル開発をやろうとしてもプロジェクトがどうもうまくいきませんでした。

アジャイル開発は、タスク管理的にはいわゆる優先順位の高いタスクを作り、その優先順位の高いところから順に作っていこうとするもので、小さく作って、実現して、ユーザーに届けていき、改善していこうというものです。

しかし、大手のシステム開発会社さんだと、「最後に一括で納品してくれ」とか(になってしまう)。最後に一括で納品するのだから、上から順に作っていって優先順位を見直しても、結局最後まで作るということが起きます。いやー、これではなかなか……。やりたいアジャイルでのプロジェクトマネジメントができないということで、自分で会社を作ろうと。

新規事業の取り組みから、会社の設立に

最初にいきなり(自分で)会社を作ったわけではなくて、(前職は)大きな会社だったわけですが、「新規事業をやらせてほしい」ということで、会社の新規事業で取り組ませてもらいました。

社内ベンチャーとして新しく取り組ませてもらったのですが、そのアジャイル開発で新規事業やろうという2年間が、サンフランシスコに行った時のものになります。

2年間がんばって自分たちの事業がうまく立ち上がったので独立しようということで、その会社から事業を買い取って作ったのがソニックガーデンという会社です。

株式会社ソニックガーデンについて

僕らは事業を買い取って独立したのですが、独立した時に「自分たちでどういう会社をやっていこうか」ということを考えました。5人で創業して5人全員がエンジニアなので、エンジニアの人たちが働きやすく幸せになれる会社を作ろうと取り組んだのが、ソニックガーデンの「プログラマで、生きていく」というテーマで、弊社はそれでやっています。

プログラマーで生きていく人たちが、プログラマーで生きていくのにどういう仕事をしたらちゃんと幸せにお金を稼げて、かつお客さまのためになるのかというのを考えた時に、あまり「アジャイル開発」と言い過ぎてもお客さんは買ってくれないので、「一緒に悩んで、いいものつくる」というスローガンでやろうと。

お客さまが一番欲しいのは、決まったものを作ってくれる人じゃない。プログラマーも決まったものを作るだけじゃない。やりたいのは一緒に悩んで作ることだということで、それを「納品のない受託開発」という名前でやっています。

今社員は60名ぐらいいるのですが、総務とかの人たちがほぼいない会社で、ほぼ全員エンジニアでやっています。

クリエイティブな仕事で生産性を上げるために

僕らがやっているのは納品のない受託開発という仕事ですが、納品なくしてどうやってお金をもらうかというと、月額で契約しようということですね。月額で契約して、顧問のようなかたちで、お客さまの内製のチームとして一緒に仕事をやりましょうと。そうすると納品してサヨナラすることもないし、納品のために一覧で決めたものを作って終わりでもないし、それこそ現場で優先順位を順に決めて仕事をしていくことができるかなと。

終わりがなく、何よりエンジニアもずっと自分で作ったものを見ていけるのは幸せなことかなということで、納品のない受託開発をやっています。

僕らエンジニアの会社では納品のない受託開発をやるのですが、このあと出てきますが、彼らはクリエイティブな仕事をしています。

クリエイティブな仕事をしている人たちがどうすれば生産性が上がるのかと考えた時に、管理するのか、指示・命令をするのか、はたまた監視までするのかというと、指示・命令をしても、管理しても生産性が上がらないことがクリエイティブな仕事かなと思っています。

ではどうすれば生産性が上がるのか。(それは)管理をなくそうと。管理をしないで、自分たちで考えて自律的に動いて、自主的に運営してもらおうとしました。

そういう人たちで構成する会社にしようということで、「セルフマネジメント」というキーワード、その先にあるのは管理のない会社ということで、管理をなくして上司がいないとか決裁がないとか(の状態にして)、なんなら売上目標も評価もしない。そうしたほうがクリエイティブな仕事においては生産性が上がるよねということでやっています。

リモートワークもその一環ですね。「リモートをやろう!」と言って始めたわけではなくて、コロナの前からやっているのは、そのほうが生産性が上がるだろうということでやってきました。

(スライドを示して)このあたりは話が長くなるので。本が3冊出ているので(笑)。読んでもらえたらと思います。

不確実さが増す世界で、ナレッジワーカーの仕事はすごく増えている

今日のテーマの「不確実さが増す世界」ということを聞いて、これもVUCAや変化などいっぱいあると言われていますが、本当に不確実なんですよね。(イベントも)リブートということで、コロナが終わって久しぶりにオフラインで会う。コロナは誰も想像していなかったし、その先に戦争があって、円安があって。AWSを使っていますが、めちゃくちゃ高いんですよね。「そんな事業計画なんか考えてなかったよ」ということが起きたりします。

逆にAIができて生産性が上がるのか、プログラマーの仕事がなくなるのか、ちょっとわからないです。それこそ昔は中計といって、中期経営計画みたいなものを立てて、そのとおりにやっていくのが良いというか、(それができるのが)優れた経営者だと呼ばれていました。けれども今はそんなことはできない時代になってきたなと思っています。

そんな中で仕事はどうなるのかというと、私は仕事と作業は違うと思っているんですよ。仕事とは、誰かの指示どおりに働くことではないんですね。指示どおりに働くことは作業です。AIは作業はできるけど仕事はできないんですね。AIに指示するのは人間だからです。

なので、仕事まで考えて成果を出せる人は「ナレッジワーカー」とドラッカーは言ったのですが、ナレッジワーカーの仕事はすごく増えていると思います。

ほとんどの作業がAIコンピューターやプログラムに任せることができるようになったら、自分でやらなくていいことがすごく増えています。

先ほど「Twitter(現X)」を見ていたら、まだ「『Excel』でタスク管理しています」みたいな投稿があって。タスク管理はツールに任せたらいいんだよね。「良いツールがあるから、ツールは使っていきましょう」という話だと思うんですよね。人間はもっとクリエイティブな仕事をしていこうということです。

「クリエイティブな仕事」とは「再現性の低い仕事」のこと

クリエイティブな仕事とは何なのか。中には「ちょっと自分には関係ないな」と思う人がいるのかもしれませんが、ここに来た人たちはほぼ全員クリエイティブな仕事をしていると思っているんですよ。

クリエイティブな仕事の僕なりの定義ですが、再現性が低い仕事のことです。再現性のある仕事は、昨日と、今日と、明日とで同じです。5人いたら5人同じ仕事をするのが、再現性のある仕事ですね。

だけど、マーケティングをしている人がいるかもしれない、人事の仕事をしている人かもしれない、デザインももちろんそうだし、プログラマーもそうだし、コンサルタントをしている人もそうかもしれない。だけど全員同じことをしてないですよね。マーケティングの仕事はしているけど、昨日と今日と明日で同じことをしているわけではない。中身は絶対に違うはずですよね。それを再現性の低い仕事と言っています。

こういうクリエイティブな仕事が増えてきています。これをしていかなければいけません。

それを表にしたのが、マニュアルワーカー、ナレッジワーカーです。

ナレッジワーカーのマネジメントはどうすれば良いのか

ナレッジワーカーのマネジメントをどうするのか。そのクリエイティブな仕事をしている人たちのマネジメントは、そもそもマネジメントは管理ではないですよね。「プロジェクト管理」と言うのも良くないんですよね。プロジェクトはマネジメントするもので、マネジメントは何なのかというと、「なんとかすること」と言われます。「なんとかすること」では(理解するのが)難しいので、これも僕なりの定義で「良い感じにすること」と言っています。

プロジェクトマネジメントはプロジェクトを良い感じにすること。ピープルマネジメントは、ピープルを良い感じにすること。会社のマネジメントは会社を良い感じにすることだと思っています。そういう「なんとかすること」、良い感じにするためには、例えば内発的動機づけの環境を作ることが求められます。

(次回に続く)

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