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「自分のサービスで生きていく」 個人開発者入江慎吾氏に聞く、プロダクト開発のこだわり(全2記事)

【個人開発者に聞く開発の美学】「ヘボくてもいいから、まず1個作って出してみる」 入江慎吾氏に聞く、プロダクト開発のこだわり

個人開発によって生まれたプロダクトにはどのような思いや情熱が込められているのか。「個人開発者に聞く開発の美学」は、さまざまなプロダクトを開発している個人開発者に、これまでの経緯を振り返っていただき、開発に対するこだわりを深掘りしていくインタビュー企画です。 第1回目の今回は、入江慎吾氏にこれまでの個人開発を振り返りながら、それぞれの開発に対するこだわりや開発の裏側などをおうかがいしました。前回はこちら。

やろうと思ったらだいたいその日にもう始めている

ーー最近個人開発された、英語の「YouTube」を日本語音声で再生させるプロダクトについて教えてください。

入江慎吾氏(以下、入江):海外の動画にも日本語の字幕はついているんですが、音声は英語なんですよね。それを日本語に変換して、自動的に日本語でしゃべってくれるというものを作って、けっこう広まりましたね。

ーー構想から実際に開発が終了するまで、期間はどのくらいかかっているものなんですか?

入江:これは、1週間かかっていないと思いますね。

ーーそうなんですね。プロダクトによって期間はけっこうバラバラですか? 

入江:バラバラです。やってみて難しかったら長引きますね。でも、わりと早く出そうとは思っています。粗削りでもまずは出してみる。

ーーなんとなく構想を練って、実際に手を動かしてみて、「難しそうだな」とか「あっ、いけるな」みたいな感じで判断していく感じなんですね。

入江:そうです、そうです。自分の頭の中ではこう思っていたけど、作ってみたらぜんぜんおもしろくないなとか、技術的にちょっと難しいなとか、いろいろやってみるとわかります。でも、やろうと思ったらだいたいその日にもう始めていますね。早かったら本当に2、3日ぐらいで出しますね。

ーーやはりそのくらいのスピード感が大事になってくるのでしょうか?

入江:作っている途中で、「これ、早く出したい」って自分がもう早く出したくて堪らなくなってくるので、自分で勝手に急いでいる感じです。

とりあえずいったん出してみて、反響がいいとそこでめちゃくちゃフィードバックが来るんですよね。先ほどのYouTubeの動画のプロダクトにしても、スマホのこのバージョンで見られるようにしてほしいとか、再生速度をつけてほしいとか、いろいろ要望が来るんですよ。

それを受けて、「あっ、なるほど、それもあったほうがいいんだ」という気づきがあるので、早めに出していますね。

ーー実際ユーザーの声に沿ったものがだんだんと出来上がる感じですね。

入江:そうですね、それを聞いていくことで、「あっ、こういう人が見ているんだ」と、リアルになってくるので、こっちも作ろうと思ったものが想像しやすくなります。

プロダクト開発におけるこだわりは?

ーープロダクト開発における入江さんのこだわりを教えてください。

入江:作りたいものが出てきた時に、できること、できないこと、コストがかかるところ、コストがかからないところ、個人開発が勝ちやすいところを見て判断しています。

大企業と違って、個人開発はニッチなほうが勝ちやすくて、そういうところを狙ったほうが結果的にヒットしやすいと思っています。その上で、自分の強みを活かせるものを選んでいます。

僕は開発ができることが強みなので、開発が中心です。逆に、めちゃくちゃデザインができるというわけではないので、デザイン重視、世界観重視というプロダクトはちょっと厳しいな。

自分がやりたいことを掛け合わせて、「じゃあ、このあたりからやろうかな」という塩梅をつけている感じですね。

あと、何を作るかも大事ですが、それを使った時の操作感とか気持ち良さとか、そういうのもけっこう大事だなと思っています。

機能的なところができた後に自分で使い込んでみて、ちょっとした言葉の書き方や、ボタンを押した時の音など、そのあたりの雰囲気で気持ち良さは変わってくるので、けっこう重視しています。

ほかには自分で使ってみて、使い方を迷わないかとか。説明をつらつら書いてもユーザーはたぶん読まないので、やはり一番の理想は説明がなくてもわかること。特に新しいサービス、今までにないサービスの場合、ユーザーはわからないので、このサービスを使うと何ができるのかという、サービスの価値を一発で伝えるのがけっこう難しいですね。

あとは、正しいことをまっすぐやることを大事にしています。例えばSNS系のアプリだと、プッシュ通知とかいろいろなものでいかにユーザーにそのアプリを使わせ続けるかみたいな作りになっているじゃないですか。

例えば広告が「作成する」みたいなボタンの上にあって、わざと迷わせるとか、退会するところをすごくわかりにくくするとか。そういう騙しテクニックみたいなことはやらないようにしています。

「自分のサービスで生きていく」が理想の姿

ーー入江さんが考える、成功している個人開発の定義とは何でしょうか?

入江:難しいですね。その人が満足していれば成功していると言えるんじゃないでしょうか。

僕もいろいろな個人開発の話を聞きます。もちろんそれだけで生計立てていければというのはありますが、作っていること自体が楽しいとか、ライフワークになっている人とかもいるので、そこは人それぞれかなと思いますね。

ーー入江さんにとって個人開発とは何ですか?

入江:僕にとってはライフワークみたいな感じですね。僕の中では一番得意なことで、新しいものを作って世の中に出すというところが楽しいなと思っています。しかも生成AIが出てきて、自分でコードを書かなくてもできるようになってきているので、けっこう年を取ってもできるんじゃないかなと思っていて、ずっと続けていけたらいいなと思っていますね。

ーーご自身のSNSに「自分のサービスで生きていく」と書かれていると思いますが、入江さんにとってはこれが一種の理想の姿なのでしょうか?

入江:そうですね。個人開発をずっと続けていって、その延長で結果的に価値が生まれて、お金をいただいて、それだけで生活できると一番楽しいし、いいなという理想のキャッチコピーですね。

将来はスタートアップスタジオ的なことをやってみたい

ーー今現在、個人開発者としてのご自身をどのように評価されていますか? 

入江:まだまだかなと思っています。

ーーまだまだですか? なにか目標があるのでしょうか?

入江:自分が作ったものをどんどん成功させて、ある程度資金的な余裕が出てきたら、チームみたいなものを作って、スタートアップスタジオ的なことはやってみたいなとは思っています。作れるチームは用意して、アイデアがあれば、そのチームの中でどんどんサービスを作っていけるみたいな。スタートアップに近いものなんですけれど。

スタートアップでなにか新しいプロダクトを作ろうと思った時は、エンジニア、デザイナー、マーケターとか、いろいろな人を集めないといけないし、そういう人を探すのがやはり難しいなと感じています。

自分がゼロからやるとしても、仲間を探すのは大変なので、こういうサービスをたくさん作っているチームみたいなプロがいれば、アイデアを提案をして、それを作って、リリースして、運営チームに引き継ぐ、みたいなことができるので、わりとスムーズに立ち上げがしやすくなるんじゃないかなと思っていて、そういうのはちょっと興味があるところです。

適当なものでもいいからまず作って出してみることが大事

ーー個人開発に挑戦したいなと思っている方にメッセージがあればお願いします。

入江:ハードルもなにもなくて作ればいいだけなので「作ってみたらいいんじゃない?」と思っています。

最初の1個か2個を作れば簡単というか……たぶん最初のそこが分かれ目になっている人が多いんじゃないかなと思います。周りも、作っている人はめちゃくちゃ作っているし、作っていない人は1個も作っていない感じなので。

適当なものでもいいから、まず1個作って出してみる。一発目から成功するなんてことはあまりないと思います。ヘボくてもいいので、とりあえず1回作って出してみれば自分の中の個人開発のハードルは下がるんじゃないかなと思います。

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