
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
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ーーその後に就職をされていて、ここでモチベーションがマイナス40になっています。これはなぜですか?
安野貴博氏(以下、安野):これは勤労に励みすぎたからですね。新卒で入社した会社が外資コンサルの会社だったんですが、けっこう忙しい会社なんですよね。
1年半くらいそこにいたんですけど、たぶん0時前に帰ったのが2、3回くらいしかなかったくらいで、基本的にはむちゃくちゃ長い時間働いていました。ほんとにいろいろ教えてくれて最高だったのですが、もうちょっと寝たいなとは思いましたね(笑)
ーーコンサルティングはエンジニアリングとは、また別な領域だと思うんですけど、どうしてコンサルティングを選ばれたのですか?
安野:大学の松尾研というところが、機械学習やAIをやっているところなんですけど、そこで得た機械学習やAIという技術は、この先むちゃくちゃこの世の中にインパクトをもたらすだろうなということはわかっていました。
ただ、どういうふうに世の中にインパクトをもたらすのかなというのを考えた時に、当時流行っていたソーシャルゲームやWebサービスみたいなかたちのアウトプットとはまた違う戦い方になるんじゃないかなと思っていて。
機械学習が得意なのって、大量にあるトランザクションを一部自動化することなので、ある意味大企業とかすごく人手がかかっているところにそういう技術を入れるのが勝ちパターンなのかなと思って。
それって、対大企業のビジネスになりそうだなと思ったことがあったんですけど、学生の時って大企業のこととかまったくわからないじゃないですか。
なので、まずは大企業のダイナミズムみたいなところを近くで吸収したいなというところで、コンサルティングファームはいろいろな会社さんの中を間近で見させていただくことができるので良いと思いました。
ーー個人的にすごく気になったのが26歳の時で、「M-1グランプリ」にロボットで出場されたというところです。きっかけや理由をおうかがいしてもいいですか?
安野:ちょうどタイミングが良かったというのもあるんですけど、2つ大きな理由があって、まず1個は、当時『Pepper』というソフトバンクが出しているロボットが市場に出たんですよ。あんなふうにロボットが世の中に売り出されたことはなかったので、どういうことができるんだろうと、実機をもとにいろいろ調査していて、ぶっちゃけあまり役に立たないなって思ったんですよね。
ただ、人型でコミュニケーションができてしゃべれるというところを考えると、人間とコミュニケーションをするという意味では、いい機体だなと思って。
僕は将来、機械と人間がむちゃくちゃコミュニケーションするようになると思っていて、「人間のコミュニティの中にどう機械が入っていくんだろうか?」「どういうコミュニケーションだと自然に仲良くなれるんだろう?」という実験をするにはすごく良いなと。
そんな中で、お笑いはすごくおもしろい切り口だなと思ったんですよね。ユーモアが伝わる相手かそうじゃないかってけっこうコミュニケーションを規定するじゃないですか。もし、機械をめっちゃおもしろいやつという見え方にすることができれば、それって将来的にもすごく意味があることだと思ったんですよね。
なので、どこまで行けるんだろうと。どこまでユーモラスなやつに見えるんだろうというところを追求してみようというのが1個のモチベーションでした。
もう1個のモチベーションは、これもタイミングが良かったんですけど、当時高校の同級生の1人が、NSCという吉本のお笑い養成スクールに通っていたんです。
彼は変わったやつなので、吉本の中でも一緒に漫才コンビを組んでくれるやつがいなくて困っていたんですね。「あっ、じゃあこの2人を掛け合わせればちょうどいいのでは?」ということで、2人で漫才を組む流れになりました。
漫才を組むのであれば、やはり「M-1グランプリ」に出るのは必然的な流れじゃないですか。なので、M-1に出たという感じでしたね。
けっこう反響もいただいて、M-1の後も吉本さんに仕事をもらって、営業回りをちょっとしたりして、いろいろ機会をいただいたので良かったなと思いますね。
ーーその後は、BEDORE社を創業して、その後は粛々と事業を立ち上げられたとのことですが、どのような事業を立ち上げられたんですか?
安野:BEDORE社ではコールセンター向けのチャットボットを開発していました。チャットボットそのものを開発するというよりかは、コールセンターの人が自分のチャットボットをトレーニングしていろいろなところに展開できるサービスです。
当時のチャットボットって、今の「ChatGPT」とかとぜんぜん違っていて、できることはぜんぜん少なかったんですが、コールセンターに来る質問をよく見てみると、8割くらいけっこう簡単な質問で、しかも反復的な質問だったんですよね。「パスワードを忘れちゃったんだけど」みたいなものがほとんどで、そういう簡単な質問は機械でも答えられるよねと。
難しい質問は人間のオペレーターさんにシームレスに渡してあげようねと。そういう自動応答のレイヤーを作ると、コールセンター側のオペレーターさんがもっと価値のある質問、難しい質問に集中することができるというサービスで、ご好評いただけました。
ーー事業をする中で、29歳の時に短編「コンティニュアス・インテグレーション」を書かれて星新一賞優秀賞を受賞されました。執筆したきっかけは、どういったものだったんですか?
安野:もともと小説や漫画や映画がすごく好きで、いつか書いてみたいなとは思っていたんです。当時、「星新一賞というのがあるらしいよ」と友だちに聞いてですね……星新一賞は短編の賞なんですよ。1万文字とかショートショートから応募ができる。なので応募ハードルがすごい低いなと思いました。
あともう1つが、審査員は誰だろうと見てみた時に、この前年だったかな……松尾先生(松尾豊氏)だったんですよね。さらにその前を見てみると、未踏の時に指導をいただいた石黒浩先生という、アンドロイドの先生がいて、「あっ、なんかすごくアットホームな感じもするな」みたいなことも思いました(笑)。
文学の難しい賞だと、たぶんぜんぜん評価してもらえない感じがしたんですけど、わりと理系的な方も審査員としていらっしゃる賞であれば、自分の発想もある種評価いただけるのかなというところで、「あっ、やってみよう」と思いました。それが始めたきっかけですね。
(次回へつづく)
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