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ファイナリスト CTOによるピッチコンテスト(武藤 悠輔氏 )(全1記事)

たった1人の業務をAI化するだけで、年間数億円のコストを削減 サプライチェーンの「計画業務効率化」における技術的挑戦

CTOの秘める“知と熱”を解き放つ、唯一無二のピッチコンテスト「Startup CTO of the Year」。ここで登壇したのは、株式会社ALGO ARTIS・VPoEの武藤悠輔氏。サプライチェーンの計画業務効率化における技術的挑戦について発表しました。

サプライチェーンの計画業務をAI化し属人化を解消するALGO ARTIS

司会者:ALGO ARTIS 取締役/VPoEの武藤悠輔さまです。持ち時間は6分間です。さぁ、ご準備はよろしいでしょうか?

武藤悠輔氏(以下、武藤):はい、お願いします。

司会者:それでは、お願いします。

武藤:こんにちは。ALGO ARTISの武藤です。よろしくお願いします。「大きな社会課題への技術的挑戦」についてお話しします。

さっそくですが、1人の業務をAI化するだけで年間数億円のコスト削減につながる業務があります。これは何の業務だと思いますか? ポイントはたくさんの人ではなくて、たった1人の業務をAI化するだけでこのインパクトを実現するという点です。しかもこの業務は、みなさんの生活にも関係していて、なんと今この会場でみなさんも利用しているある物にまで関係しているんです。

これがALGO ARTISがターゲットとしている、サプライチェーンの計画業務です。この会場にあるものの答えは、今私をこうやって照らしているライトに使われる電気です。電力会社もサプライチェーンを持って、計画に従って電気が作られて、この会場まで届いています。このサプライチェーンとは、原材料の調達から始まる、ものづくりの一連のプロセスを指します。

この中の計画業務とは、例えば資源輸入の配船計画や化学品の生産計画、または陸運の配送計画など、さまざまなものが存在します。この計画業務に従って現場は運用しているため極めて重要な業務なのですが、実はこの業務、なんとたった1人の計画担当者によって実行されることがほとんどなんです。これは大きな社会課題になっていて、計画業務の属人化と産業全体の後継者不足によって、計画業務の現場は技術継承の危機に晒されています。

サプライチェーンはさまざまなものに関係しており、今の生活の中に当たり前にあるものが今後もあり続ける保証はどこにもないんです。ALGO ARTISは、この計画業務をAI化することによって、属人化を解消します。さらに、最初に言った「1人の業務をAI化するだけで数億円のコスト削減」とはまさにこの業務のことで、サプライチェーンでは日々の計画に従って毎日数万トンもの物が動いています。

これはコストに換算すると、年間数百億円です。したがってAI化によって計画を1パーセントでも効率化できれば、年間数億円のコスト削減が実現します。製造業全体は年間210兆円のコストがかかっているため、計画をたった1パーセント効率化できるだけで、年間2兆円ものインパクトにつながるんです。

ALGO ARTISは、計画最適化AIをこの計画業務に社会実装していくことによって、計画業務の課題を解消し、さらに計画の1パーセントの効率化を本気で実現しようとしている会社です。このように、関西電力や東北電力をはじめとする、名だたる企業の重要な計画業務にすでに使っていただいています。みなさんが生活の中で使っている物にも、すでにALGO ARTISの計画で作られたものが混ざっているのではないかと思っています。

計画問題には“10の720乗通りものの組み合わせ”が存在

このように創業から2年で着実に実績を積み重ねてきたのですが、ここまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。ここからは、この大きな社会課題に対する我々の技術的挑戦についてお話しします。

まずはこの難しい計画課題への挑戦です。計画問題は非常に難しく、(スライドを示して)こちらは発電所の例ですが、さまざまな設備とそのさまざまな制約条件を愚直に考慮すると、10の720乗通りものの組み合わせが存在します。組み合わせ数は囲碁や将棋などと比較しても圧倒的に多く、最適解は到底作れません。さらに厄介なことに、この計画業務は属人化しているため、過去のデータは基本的に存在しません。

したがって、従来のデータが必要なAI技術などは使えないわけです。ここでALGO ARTISが着目したのは「AtCoder」という競技プログラミングサイトにおけるヒューリスティックコンテストです。このコンテストの中で日々競われながら進化し続けている技術を計画問題に適用することにより、お客さまが満足するレベルの最適化AIを作ることに成功しました。

就職企業人気ランキングにもランクイン

(スライドを示して)こちらを見ていただきたいのですが、ALGO ARTISがすでに断トツのものがあります。これは何かというと、先ほどのヒューリスティックコンテストのランキング上位者の所属数です。

さらに、我々の認知も広がってきています。(スライドを示して)こちらはAtCoderが2023年11月の初めに発表した就職企業人気ランキングの中の1部門です。

GoogleやMicrosoftなど名だたる企業が並んでいる中で、ALGO ARTISは2位にラインナップされています。このように、ALGO ARTISは創業から2年で着実に成長を続けてきており、もうすでに世界最強と言っても過言ではない最適化集団を構築してきました。このようにして価値を構築することはできたのですが、これをお客さまに届けるためには厳しいセキュリティへの挑戦が必要でした。

重要インフラのセキュリティに対する取り組み

ここからは、セキュリティについてお話しします。顧客は内閣サイバーセキュリティセンターによって指定される重要インフラと言われるものなのですが、生活のインフラを支える重要な産業であるため、セキュリティへの要求が高いです。我々は、創業当初から脆弱性診断の徹底、ISMSの構築など、さまざまな取り組みを行ってきました。

さらに現在は組織のスケールに備えて、CSIRT組織の立ち上げやDevSecOpsの導入など、厳しい基準を満たしながらも生産性を損なわないものづくりを行っています。このようにALGO ARTISでは、技術的挑戦を通してお客さまへの価値提供に成功してきました。今も、次のステップへ進み、プロダクトのスケーラビリティやソフトウェア組織のスケールに向けて技術的挑戦を続けています。

この挑戦を通してALGO ARTISは、ミッションの「社会基盤の最適化」を実現したいと考えています。さまざまな産業のさまざまな業務をしっかりと最適化していくことにより、社会基盤全体の最適化を実現したいと考えています。私はエンジニアが高い技術力を本気で社会のために活かそうとするからこそ、未来の生活がより豊かでより明るいものになると信じています。最適化を諦めない。ALGO ARTISでした。

(会場拍手)

CTOではなくVPoEを名乗っている理由は?

司会者:ありがとうございました。それでは質疑応答のお時間に移らせていただきます。藤本さまお願いします。

藤本真樹氏(以下、藤本):ありがとうございました。エンジニア的には解くべき問題がすごくクリアで、それをがんばれば絶対に成果が出るというのはそれだけでメチャクチャ楽しいというのはすごくわかるし、そういう意味ではすごくいいなと思いました。

それこそ身近なところだとアレですよね。電車のダイヤ問題も意外に人手問題なので、ああいうのも解決されるといいなと勝手に期待しております。

1個すごく興味深かったのが武藤さんが取締役でVPoEということ。こういうコアテクノロジーで勝負する会社でVPoEとしてやっているというところがすごく特徴的だしおもしろい。

普通だとCTOとしてその技術をどうやってビジネスにしていくかというところの責任を持つ感じじゃないですか。そこがなんでそうなっているのか、VPoEとしてのあり方をおうかがいできればと思いました。お願いします。

武藤:ありがとうございます。確かに重要なポイントだと思っています。CTOではなくVPoEを名乗っている理由はいくつかあるのですが、最初で言うと4人から始まった時に全員がCxOと付いているのがちょっと恥ずかしいみたいなところから始まっている面がありました(笑)。

一方で、私は実は最適化アルゴリズムを作るエンジニアではなくて、ソフトウェア全体を作るエンジニアなので、この中で、いかに強い技術を持った人たちが活躍できる環境を作るかにこだわりを持ってものづくりを進めたいと思っています。

さらに、自分よりも優秀なソフトウェアエンジニアを採用できる状態を作っていきたいという思いがけっこう強くあるので、自分が適切にCTOに近い存在になるように努力しつつも、より強い組織を作っていくために優秀な人を採用できる状態を保ちたいというのが目的で、このような肩書きを名乗っています。

藤本:ありがとうございます。引き続きよろしく……。違うな、なんだろうな。

(会場笑)

武藤:よろしくお願いします(笑)。

藤本:よろしくお願いします。

失敗のリスクと責任の所在は?

司会者:ありがとうございます。はい、竹内さま。お願いいたします。

竹内真氏(以下、竹内):ありがとうございます。2つ質問をします。計画業務という、人が担っていてしかも大きな責任を伴うものということで、ここのその計画業務がうまくいった時は、数字である程度の結果が出るのかなとは思うのですが、その失敗のリスクと責任の所在みたいなところ。導入した会社がどういうふうにやられているのか。「御社はこういうふうにすると、そこの問題がクリアになるよ」というソリューションがあるのかというところ。

あとは、計画をしたように動いているのかどうかというところ。たぶん分岐する問題などが出てくると思うのですが、そのあたりは今どのようにされているのか。もしくは未来はこういうふうに考えているよというのがあれば、ぜひ教えてください。

武藤:はい。1つ目については、我々は、自動化するような計画の最適化ではなく人が意思決定をする計画業務を自動で計画を見立てるということを提案しているので、あくまでもこの出した計画に対して現場の方が判断するという状態を作っています。

もともと現場の方が組み合わせ問題みたいなものを解くのを必死にがんばっている状態を、「そこはもう最適化(AI)が出します」と。その上で人が注力すべき意思決定に集中できる状態を作ろうというのが、ALGO ARTISのプロダクトのベースになっていて、そういう意味ではうまく責任が分担されていると判断しています。

一方で、当然プロダクトとしての責任もあるので、使えない計画ばかり出しても意味がありません。そういう中では、ユーザーインターフェースにもしっかりこだわってものづくりをしています。今日はちょっとお見せできなかったのですが、人の手による修正もやりやすい状態をしっかりと担保して、この責任を果たしている状況です。

すみません、2つ目の質問が、ごめんなさい。ちょっと忘れちゃって……。

竹内:計画を実行されていく中で、計画どおりにいかないところとか。それこそソマリアで船が拿捕されたとか(笑)。いろいろあると思いますが、その時にはどうされるのかなというところです。

武藤:ちょっと1つ目の回答と混ざっているところでもありますが、まさにその直近の予定は、トラブルやインシデントによって影響されやすいので、そこは人手でしっかりと調整しやすい状態を作って、その先々の状態で最適化をすぐに修正できる状態を作る。BCP(Business Continuity Plan)を自動で立てるみたいなものを提供しているイメージになっています。

竹内:ありがとうございます。

司会者:ありがとうございます。それではお時間となりました。審査員のみなさまありがとうございました。発表していただいた武藤さまにも盛大な拍手をお送りください。

(会場拍手)

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