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カミナシ講演「話を聴く技術」(全3記事)

傾聴力や質問力を伸ばせるリスニングテクニック 「アクティブリスニング」「パッシブリスニング」の基本動作

「個人の成長を促すEMのコミュニケーション術」は、個人の成長に向き合うことにフォーカスした勉強会です。ここで株式会社カミナシの吉永氏が登壇。最後に、リスニングテクニックについて話します。前回はこちらから。

コミュニケーションにおける「一般的不協和音」

吉永聰志氏:ここまでは話を聴く時に大事な姿勢について話したのですが、ここからは、もう少し具体的なテクニック寄りの話をしてみようかと思います。

というわけで、コミュニケーションの難しさを実感しましょうというコーナーです。この発表の最初に、オーナーシップという言葉を使いましたが、今、あらためてどういうものをイメージできているでしょうか。ちょっと考えてみてほしいです。

たぶん、ここまでの話を聴く前の時点では、イメージしているものが、みなさんそれぞれバラバラだったのではないかなと思います。一方で、ここまでの話を聴いて「オーナーシップってこういうことね」みたいなバラつきが徐々になくなってきているのではないかなとも思います。

実は、この現状に名前がついていて、一般的不協和音と呼びます。このスライドを作るにあたって初めて知った名前ですが、同じ言葉を使いながら違うイメージを持ってコミュニケーションを交わしている状態のことで、メチャクチャよくある話ですよね。日常生活のありとあらゆるところ、仕事でもそうだし、プライベートにおいてもしょっちゅうだと思います。

この不協和音は、同じ時間を過ごし、経験や体験を共有できている状態だと発生しにくく、イメージを共有する道具として言葉がちゃんと機能するのですが、逆にいうとそうではない場合、言葉がイメージを共有するためにはけっこう工夫が必要になるということでもあります。

「アクティブリスニング」でずれを確認する

なので、僕が対応する時は一般的不協和音が存在することを認識して、「あれ? 今、この単語、どういうニュアンスで使ったんだろう?」ということを確認しながら聴くことがあります。

これは、イメージがずれたまま会話が進むことを避けたいと思っているからです。ある単語に対して相手がどんなイメージを持っているか注意深く聴き出すとともに、「自分はこういうイメージでしたよ」ということを相手に共有します。

ここでイメージにずれがあったら良くないというわけではなくて、「ずれていましたね」ということを確認できることがなにより大事かなと思います。「ある言葉に対して見えている景色が違ったんだな」と。それは、一方が正解で一方が間違いというわけでもなく、異なる視点で同じものを見ても違うように見えているということを、コミュニケーションをしながら確認し合うことが大事なんじゃないかなと思っています。

こういうスタイルにも実は名前がついていて、アクティブリスニングと呼ぶらしいです。いわゆる傾聴姿勢というもので、心を汲みながら相手の話を鏡のように告げ返していく技術になります。

会話をする際に、相手の話をただひたすら聴き続けるのではなく、相手が伝えたい本質的なことや感情を汲み取って主体的に内容を把握するやり方で、先ほどの認知的不協和を取り除きながら進めていくと、うまくいくように思いますね。

実は、リスニングテクニックは、マネジメントを行う時に必要なスキルが効果的に強化されると言われていて、特に傾聴力や質問をする能力を伸ばすことができます。確かにこの能力があれば、1on1だけでなく、面接の場でも効果的に使えそうで、マネージャー向けの能力と言えそうですよね。

リスニングテクニックの基本動作・やらないこと

(スライドを示して)その基本動作ですが、僕がよくやっているなと思うものを3つほど紹介します。まず「繰り返す」ですね。これは、相手に「聴いていますよ」という姿勢を示すとともに、自分の理解を深めるという2つの効果があると思います。

次に「意味を確認する」です。先ほど紹介した認知的不協和音の対策で、言葉のイメージを共有します。ここで、ほかの言葉に言い換えてみるみたいなことは、けっこう有効だったりしますね。イメージのずれが起きにくい表現を探ってみるんですよね。

このあたりは、コードを書いている時に「もっと良い命名ないかな?」と思いをはせているのとだいぶ近い感覚があります。なので、誤解の生じにくい表現にたどりつけると、非常にすっきりとした気持ちになります。「イメージがそろったな」という感覚になります。

あとは「整理する」ということがあります。整理というのは、要らないものを捨てて、必要なものだけ残すことですが、相手の考えがまだまとまりきっていない時とかに有効です。

相手の考えていることを相手以上に深く理解しようとして、考えの本質に近い部分だけを抜き出して、「まとめるとこういうことが言いたかったのかなと思うんだけど、どうかしら?」みたいな確認をしながら整理することはよくやっています。

あと、やらないこともあって、聞き手側が結論は出さないということがあります。これは「繰り返し、意味を確認し、整理する」を進めると、話し手の中で新たな発見が見つかることがあります。これが、話し手がもともと自分の中にあったけど、うまく言語化できなかったことでもあります。

自分の中にあった考えをうまくすくい出せて見つけられたことなので、納得感がメチャクチャ高い結論になりやすいんですよね。なので、聞き手の考えとは違う結論になることもあるのですが、それはそういうもんかなと割り切って考えています。

ただ、自分の考えはいったん押し殺しておくので、もしかしたら聞き手にとって若干ストレスを感じやすい側面もあるかもしれません。

なので、アクティブリスニングは、相手の言語化をサポートするような効果もあるように思っています。言語化するって、コストがメチャクチャ高いですよね。コミュニケーションにおいて最もコストが高いのは、言語化する部分だと僕は思っています。

パッシブリスニングの基本動作

アクティブがあればパッシブもあるでしょうということで、パッシブリスニングについても軽く触れておきます。先ほどに比べてこちらの主体性をぐっと抑えるので、必然的に非言語のコミュニケーションの影響が大きくなります。

相槌や目線、声の抑揚もそうですかね。リモートワークとかだと、そのあたりが伝わるように工夫したほうがいいかもしれませんね。「カメラの映り方がいいかな?」とか「マイクのセッティング、大丈夫かな?」とか、時々気にしてあげると良いでしょう。

パッシブのほうは、とにかく相手が話したいことを最後まで聞き切るのが大事だと思います。人間には、誰かにとにかく話したい時がありますよね。特に感情が不安定な時とかは、そういう時になるのかなと思います。こういう時は、とにかくパッシブに聴くことが有用だったりします。

一応こちらの基本動作があるのですが、1つ目は「沈黙」です。沈黙はメチャクチャ気まずいですよね。だからついついなにかをしゃべりたくなってしまうのですが、パッシブモードではぐっとこらえるのがいいと思います。考えたり、それをまとめたりする時間や環境を相手に用意しているという気持ちになってこらえてみましょう。

次は「相槌」です。コミュニケーションは基本的にキャッチボールのかたちをしています。一方的に話すのはちょっと考えにくいですからね。なので、適度に相槌を打って、頷きなどの非言語コミュニケーションも上手に使いながら、会話のキャッチボールのかたちを作っていく感じです。

最後は、思いや感情を引き出す言葉です。相手の言おうとしていることをより深く理解しようとする姿勢を示すことで、「全部話し切れたな」という感覚を持ってもらいやすくなるかなと思います。特にどういう感情を相手が感じていたのか共感ができるとうまくいくんじゃないかなとは思います。

感情を伝えるコミュニケーションにおける関連研究

非言語コミュニケーションが出てきたので、関連する研究内容をちょっと紹介しようかなと思います。(スライドを示して)「3Vの法則」というものがあるのですが、言葉と伝え方、表情や態度に矛盾があると、言葉そのものの意味や会話の内容は、なんと実は7パーセントしか伝わらないという研究結果です。

例えば「楽しいね」と言いながら目は死んでいるとか、声は暗いという様子だと、「本当に楽しいんかい」という気持ちになるかと思うのですが、それは至極当然のことなんですね。

こちらは1971年にカリフォルニア大学の心理学者が実験でこの法則を見つけたようです。なので、視覚情報や聴覚情報はこういう状況下においてはメチャクチャ影響します。

ただ、この結果は「あくまでも感情を伝えるコミュニケーションにおいて」という限定的な状況下で得られた結果なので、一般的なものではありません。

とはいえ、この法則が日常では活かせないというわけではなく、コミュニケーションにおける発信を、視覚、聴覚、言語の3つに分けて捉え、この3つの部位を一致させることで、相手に的確に感情を伝えられるということを示した点が、この研究の価値かなと思います。

例えば、相手が自分の話に対してつまらなそうな顔で相槌を打っていたら、誰もいい気持ちにはならないですよね。話の内容そのものが重要であることに間違いはありませんが、身だしなみや態度、表情、ボディランゲージといった非言語コミュニケーションを合わせることで、メッセージをさらに強化して齟齬なく伝えられるというのが、この法則の本質的な部分かなと思っています。

聴く技術をどうやって習得するか

最後に、「この聴く技術をどうやって習得するの?」みたいなことを話そうかなと思います。

僕は、この聴く技術は、やはり経験から後天的に身についたものではないかな、最初はたぶんできていなかったんじゃないかなという考えがありますね。

座学ではマネジメント研修であったりコミュニケーションに関する書籍を読むことがあったし、実践においては1on1や採用面接をはじめとした、ありとあらゆるコミュニケーションの場があるので、今日聞いたことを、頭の片隅に置いて、話を聴くということをやってもらうといいんじゃないかなと思います。

特にEMをやっている方は実践の機会に恵まれていると思うので、そこでたくさん経験して身につけていけるんじゃないかなと僕は思います。

きっと身につけられるものなので、地道にがんばっていきましょう

(スライドを示して)では最後にまとめですが、こんなところが今日伝えたかったメッセージです。組織を形成する人に一人ひとり向き合い、話を聴こう。聴けない状態とはどういうことかを知って、聴くための姿勢を身につけよう。それを実践するためにも、まずは自分自身が安心を感じているかどうか確認しましょう。

そして、リスニングに関する概念やテクニックがあるので、それを学んでいきましょう、というところですね。それらはきっと身につけられるものなので、地道にがんばっていきましょう、ということです。

では、「話を聴く技術」というテーマで発表しました。ご清聴いただきまして、ありがとうございました。

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