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カミナシ講演「話を聴く技術」(全3記事)

EMはなぜ「話を聴くこと」が大事なのか 組織作りでオーナーシップを持つために必要な“人と向き合うこと”

「個人の成長を促すEMのコミュニケーション術」は、個人の成長に向き合うことにフォーカスした勉強会です。ここで株式会社カミナシの吉永氏が登壇。まずは、EMをする上で、なぜ話を聴くことが大事なのかについて話します。

吉永氏の自己紹介

吉永聰志氏:では、「話を聴く技術」というタイトルで発表します。よろしくお願いします。まず簡単に自己紹介です。私は吉永と申します。よろしくお願いします。株式会社カミナシでエンジニアリングマネージャーを務めています。カミナシの会社紹介スライドを差し込むのをすっかり忘れていて、いきなりアドリブで会社のことを軽く紹介します。

カミナシという会社は、「ノンデスクワーカーの才能を解き放つ」というミッションの会社です。いわゆる工場のような”現場”で働く方のお仕事を、デジタルの力で、より生産的でおもしろくてやりがいのある仕事に変えていくということを本気で思っている会社で、そういう人たちが集まって一緒に仕事をしています。

私はカミナシでエンジニアリングマネージャーを務めています。以降はEMと略して話しますが、2010年ぐらいはスタートアップ企業で、本当にいろいろなことをやっていた経歴があって、その中には採用や評価といったものも含まれていました。そして、2016年ぐらいから、いわゆるEMが担当する仕事の割合がぐっと増えてきました。

ちょうどその頃ぐらいに、EMというラベル自体も世間的に認知され始めるようになったかなと思っています。私自身も、「あっ、自分ってEMだったんや」とか、「同じような仕事をしている人が、仲間がいるんだな」みたいなことを当時思った記憶があります。

今はプレイヤーとしての動きではなくマネジメントを専業にやっていて、マネジメントによって組織や事業に貢献したいと思っています。

カミナシには2022年12月に入社したので、そろそろ1年になるかなといったところですね。本日はよろしくお願いします。

「話を聴く技術」をテーマにテーマに選んだ理由

「話を聴く技術」というテーマで話した人は今までいないんじゃなかろうかと思っています。今日はなんでこんなテーマで話そうかと思ったのかというと、きっかけは、カミナシに入社してからもらったいくつかのフィードバックです。

入社して、何名かの方から私の話を聴く姿勢についてフィードバックしてもらうことがあったのですが、「よく話を聴いてくれそう」とか、「なにかを決めつけずに聴いてくれるのはいいですね」という感想をもらったんですよね。

そこに自分の特徴があるという自覚がまったくなかったので、驚きがあって。「話を聴くことに上手いとか下手とかないんじゃない?」ぐらいの感覚があったのですが、実はこれまでのマネジメント経験を経て身につけることができたスキルだったのかもなと思い返しました。

話を聴くということは、マネージャーにとっても大事な基本動作なのかなと思って、今回のイベントテーマともぴったり合うというところもあり、テーマに選んでみたという感じです。

「聞く」と「聴く」。この2つの漢字があると思うんですが、今回は後者の「注意して聴く、意図的にちゃんと耳を傾ける」聞き方のことを指しています。スライドでも、なるべく使い分けていこうかなと思っています。

なぜ話を聴くことが大事なのか

では「なぜ話を聴くことが大事なの?」というところを掘り下げて話してみようかなと思います。こちらは、あくまでも僕の経験や考え方をもとにまとめてみたものです。

(スライドを示して)大変唐突ですが、オーナーシップという単語を出してみました。メチャクチャ唐突で、「これは何なの?」という感じになっていると思うのですが、みなさんはオーナーシップと聞いて、どういうものを想像しますか? ちょっと考えてもらえますか。なにかイメージできるものはありますかね?

自分事として主体性を持って物事に向き合う姿勢のことをオーナーシップと表現するのですが、実はカミナシでは、オーナーシップをとても大切にしています。また、僕自身もオーナーシップがいかに大事であるかということを、自分の経験上、よく理解しているつもりです。

(スライドを示して)こちらのトリさん、(原トリ氏)CTOのブログにも「すべてはオーナーシップ」というセクションがあります。後でこの資料を公開するつもりなので、気になった方はぜひそこからリンクを踏んでもらえればなと思います。

大切にしているオーナーシップを発揮するために必要なことがあるのですが、それは何かというと、オーナーシップを発揮する対象のことをよく把握して理解しておくことです。よくわからないものに対して発揮できるオーナーシップはないと思っていて。オーナーシップを持ちたいと思えば、自然と対象に対する理解を深めようとするのが普通というか、そうするんじゃないかなと思います。

(スライドを示して)この右側のベン図は、オーナーシップを発揮するために、知識、権限、責任の3つが必要であるということを示しています。その中の、「知識を得るために対象の理解を深めることをしますよね」という話を今しました。

引用:6 Archetypes of Broken Ownership(https://blog.alexewerlof.com/p/broken-ownership)

オーナーシップについてのコンテキストを少し補足すると、実は、先ほどのベン図は2023年8月ぐらいにインターネットで話題になった記事からもらったもので、こちらの記事はとても良いものなのでぜひ読んでみるといいかなと思います。

どのぐらい良かったかというと、CTOのトリさんが「これ、めっちゃええ記事やん」と感想になった勢いで、社内限定の超訳の記事を書いて、社内でもすごく評判になったというすばらしい記事でした。

こちらの超訳記事はさすがに共有はできないのですが、気になる方は懇親会でお話ができるといいかなと思います。

ソフトウェアエンジニアがオーナーシップを発揮する時にやっていること

ソフトウェアエンジニアが担当するサービスやシステムに対してオーナーシップを発揮する時にどんなことをやっているかを考えてみると、とにかくいろいろなものを読んで把握しようとしていますよね。

わかりやすいところでいうとソースコードがあるかなと思いますが、どんな実装になっているのかを見にいくと思うし、機能を追加する時に周辺のコードを読まずにプルリクを作ることはできないですよね。

そして、過去の経緯を知りたい時はコミットメッセージを読んだり、そこからプルリクをたどったり、とにかく読みまくってIssueも見ます。

プルリクにドキュメントのリンクが貼ってあったら、「あっ、なんてラッキーなんやろう」と思いながらDesign Docを読んだり、ADR(Architecture Decision Records)やPRD(Product Requirements Document)といった設計や要求に関する「なぜ?」とか背景や経緯みたいなものを理解することができます。

また、OSSや外部のサービスを使うことが非常に当たり前になっていると思いますが、Getting Startedだけ読んでわかった気になるのはとにかくヤバいですよね。なので、ドキュメントを読んで、「自分たちの目的に合った使い方はどうだろう」ということを探りにいくかなと思います。

「システム開発」と「組織作りの世界」の違い

では「良い組織を作るにはどうすればいいの?」というところですが、ソフトウェアエンジニアからマネージャーに徐々に役割が変化していく中でも、オーナーシップを大事にしたいという思いは私はあまり変わりませんでした。システムではなくて組織に対しても同じようにオーナーシップを感じていたいと思っています。

当然、組織を構成するメンバーは僕の所有物ではないので、オーナーシップという表現は決して適切ではないのかもしれないですが、少なくともチームの持ち物であるシステムやコードに対して、オーナーシップをモリモリに発揮している状態を目指したいなと思っています。

マネージャーとして大事な心構えは人と組織や事業の可能性を信じていることですが、特に人に対して真摯に向き合って理解しようとする姿勢を持てていたのかなと思います。

ただ、システム開発と違って、組織作りの世界では「これを読めばこの人のことがよくわかりますよ」というドキュメントは、存在しないんですよね。

自分の取扱説明書を書いて共有するような、チームに溶け込むためのプラクティスはあるのですが、基本的にはメンバーが過去に経験したことや、そこから作られたであろう価値観や考え方は、コミュニケーションを取らないと知るすべがないわけですね。

そして、人というのは、意外と自分のことをよくわかっていません。例えば僕が聴くことがうまいということを、人から教えてもらって初めて気づくみたいな。そういうことがあります。

ただ、組織の成果などを最大化するために一人ひとりのことをよく理解したいというモチベーションというか欲求みたいなものがあって、そこから聴くことを大事にできたのではないかなと思っています。

人は千差万別であり、変化していく

今度はシステムと組織の違いについて少し話します。システムの世界では、「このスペックのコンポーネントが欲しいな」と思ったら、基本的にはカタログを見て、それを注文して、カタログどおりの仕様のものが使える世界かなと思っています。

ただ、組織作りにおいて、人は本当に人それぞれで、千差万別であるということを実感します。例えば「慎重な人」というように、人をラベルやタイプで分けることがよくあると思うのですが、そのラベルがその人のすべてを表すわけではないんですよね。「そういう側面を持っている人」というだけなんですよね。

ラベリングに頼りすぎると、一人ひとりのことを理解しようとすることの妨げになる感覚が僕にはあって、「ラベルは使うけど、ラベルがすべてではないよ」という考えは、意識的に持つようにしています。

また、システムと違って、人はどんどん変化していくということも異なる点かなと認識しています。マネージャーをやっていると、時々メンバーの成長を感じ取ることがあるわけですが、そういう瞬間は僕にとって非常に大きい喜びが伴う驚きで、「マネージャーをやっていてすげぇよかったな」と思える瞬間でもありますね。

なので、ある時点で把握することが完了するということがなくて、それぞれの人がそれぞれ変化していっているという前提に立って、新鮮な気持ちで話を聴こうという考えを持っています。

組織に対してオーナーシップを感じられるように、人と向き合いたかった

(スライドを示して)というわけで、冒頭の問いに対して答えるとこんな感じですかね。組織に対してオーナーシップを感じられるように人と向き合いたかったから、聴くということが僕にとって大事だと思ったというところです。

(次回に続く)

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