2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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細野康男氏(以下、細野):みなさまこんにちは。デジタルハリウッドの細野と申します。お忙しい中、お越しいただきありがとうございます。今日は貴重なお二人をお招きしまして、お時間を取っていただきました。尾原先生、デジタルハリウッドへの来校は初めてですか?
尾原和啓氏(以下、尾原):この校舎は初めてですが、旧校舎の時代に大学院で何回か講師をさせていただいたことがありました。
細野:そうですか。
尾原:こんなきれいなビルに入っていると思っていなかったので、びっくりしました。
細野:今回はこういうかたちでお招きできて、本当にうれしく思います。ありがとうございます。
尾原:ありがとうございます。
細野:橋本先生、(ChatGPTを活用した)プロンプトエンジニアリングのコースは、お客さまから非常に好評をいただいております。ご一緒できて大変うれしく思います。
橋本大也氏(以下、橋本):ありがとうございます。
細野:先生は、どういうきっかけであれを作ろうと思われたんですか?
橋本:GPT自体は2021年ぐらいからやっているんです。
尾原:そうですね。GPT-1。
橋本:それがやっとだいぶブレイクして、「これはいよいよおもしろくなってきたな」と思ってハマっています。それでeラーニングの教育プログラムを作って、今回BUNSHINという新会社を立ち上げました。私はCEOです。
その教育プログラムをデジタルハリウッドに提供しているということで、ハマり具合を学長が見て「橋本くんは10年前にもこのイベントに出ているけど、もう一回出せ」と事務局にリクエストしたらしく、それで私は呼ばれたんです。ただ、私一人ではなと思って、尾原さんに来ていただきました。
尾原:AIマニア仲間。
橋本:そうです。
細野:そうですね。2014年に橋本先生にメインスピーカーとしてご登壇いただいて、「Life In Data」をお話しいただいて、あっという間に10年経ってしまいました。
細野:ということで、まずはAIの歴史からひもといていきたいなと思っています。「近未来教育フォーラム」と銘打っているだけあって、前編は「教育」というキーワードをもとに、お二方と議論できたらと思っております。よろしくお願いいたします。
では、さっそくお二人のお話を中心に持っていきたいなと思っているんですが、まず簡単に、それぞれ自己紹介をお願いできたらと思っております。尾原先生からお願いいたします。
尾原:あらためまして尾原と申します。僕自身は、海外では(自分のことを)「プロフェッショナルコネクター」「カタリスト」という言い方をしています。
ネットでつながることによって、新しいものを作っていく。特にその中で人間らしさが引き出されて、自己実現が加速することを信じて、海外でいろんなカンファレンスの裏方をやったり、講演をしてます。
先ほど簡単に自己紹介がありましたが、僕は人間としてはどっちかというとクズで、今まで13回転職しています。主なものを挙げると(スライドに出ている会社で)、ネットによってつながり、そのつながりのマッチングの中で何かが生まれていくという領域をずっとやっています。
例えばNTTドコモのiモードでは、モバイルでつながることを実現したり、リクルートが紙からネットになる時に「人生の選択肢」を加速したり、Googleでは新規事業開発をしたり。
あと、まさにGoogleのAIサービスである「Google Now」の、日本の立ち上げの事業開発責任者をやらせていただいたり、楽天では執行役員をさせていただきました。リアルとネットをどう接続するか、それがモジュール化することによって、AIがつなげていくということを(専門に)ずっとやってました。
尾原:それ以外にも、今まで14冊の本を書かせていただいてます。今日の文脈だと、例えば『アフターデジタル』という、「リアルをモバイルが包むから、リアルに関してのUXが全部モバイルになっていくよ」という本を書かせていただいて。
元経産大臣の世耕(弘成)さんからは、「日本が進めるべきデジタル化の道しるべはこれだ」と言っていただいたりしました。
最近で言うと、NHKさんでChatGPTの解説をしたり、日経さんで出た本の中で、深津(貴之)さんと対談したり。というのも、先ほど少しお話がありましたけれども、もともとバックグラウンドとして、京都大学の修士で応用人工知能をやっていました。
それこそ杉山(知之)学長がMITメディアラボの研究員で行かれている頃には、今のGPTの根本になっている、マービン・ミンスキー先生のニューラルネットワークのバックプロパゲーションや基礎原理の研究をしたり。2022年には内閣府で新AI戦略検討会議をさせていただいたりしています。
10年ということで言うと、新AI戦略検討会議が2022年の3月で、画像生成とかのDiffusion Modelが来るんだけど、このタイミングはまだGPTの3しかなかったので、ニュースを作るといったことにしか使えなかった。
インストラクション、人間とのインタラクティブなところがまだ弱いので、「(AIが)来るとしてもあと3年だよ」という話をしてたら、こんなに時計の針が早くなるとはという感じなので、いかに当てにならないかというお話なんですが。そのへんの反省も含めて、今日はお話しできればと思います。
細野:ありがとうございます。
細野:では、橋本先生からもお願いいたします。
橋本:私は特にバックグラウンドはなくて、学生時代に最初の会社を作って以来、自分の会社だけをやってきている人間です。2000年から2016年まで、2000年に作ったデータセクションというAIとビッグデータの会社で、社長と会長をやっていました。現在は顧問で、今はマザーズに上場している会社です。
初期は自然言語処理で、比較的最近はディープラーニングの技術をコアにしたいろんなサービスの開発をBtoBでやってきています。2016年からはこの会社の顧問になって、デジタルハリウッド大学の教授職をメインの仕事にしていて、今はデジタルハリウッド大学のメディアライブラリーという、図書館長を兼ねています。
尾原:へえ。
橋本:(正面を指さして)向こうにリアルなやつがあって、けっこういい感じです。
尾原:すげえ。
橋本:ここ以外だと、多摩大学の大学院で教えています。本を書くのはけっこう好きでいろいろ書いているんですが、2023年はGPTの力をフルに借りて(笑)、2023年4月に『英語は10000時間でモノになる』(という本を出版しました)。
尾原:これ、すごくいい本ですよね。
橋本:どうもありがとうございます。今、5刷目が売れています。あとは『アナロジア AIの次に来るもの』という、初めての翻訳書も出しました。
尾原:(ジョージ・)ダイソンの。
橋本:「デジタルの次はアナログだ」というすごい予言書なんですが、これもGPTを活用して執筆とか翻訳を行いました。
実は3冊目を出す予定だったんですが、(2024年)1月にずれそうです。今はGPTそのものの本を書いていますが、ぎりぎり間に合わなかったです。ですが、GPTで生産性が倍増したから3冊ぐらい書けるというのは、すごく実感している日々です。
尾原:このアナロジアの本とかは、まさに後半戦で話したい領域にも入る話ですよね。「クリエイティブの未来」みたいな。
橋本:そうですね。
細野:ありがとうございます。
細野:視聴されているみなさま、YouTubeやSlidoにもご質問を投げていただければ、拾ってディスカッションを深めていきたいなと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
お二方の今までのご経歴をお聞きした上で、いろいろお聞きしていきたいなと思っています。ここ10年のAIの変遷と、特にニュースでもいろいろ盛り上がってますが、AIブームについて。お二方のそれぞれのお仕事の立場から解説していただければうれしいなと思います。では、橋本先生から。
橋本:10年前にこのフォーラムに出た時は「Life In Data データ・クリエイティブの時代〜これから活躍する新たな人材像〜」というテーマでやりました。9年前の2014年の11月20日の近未来教育フォーラムで、当時は杉山学長と対談するかたちでやっていました(笑)。
尾原:すげえな。
橋本:当時のブログがあったので、そこから(イベントのタイトルを)持ってきたんですが、こんな感じでこのホールでやっていました。
当時、私はデータセクションという会社で、ソーシャルメディアのデータ分析ツールを主な事業にしていました。
お客さんはけっこういっぱいいて、企業にもたくさん使っていただいて、『ワールドビジネスサテライト』でも取り上げていただきました。こんなふうに口コミが見られるようになったというビッグデータの分析の特集とか。
フジテレビの『ニュースJAPAN』で、2013年の流行語大賞を本家が大賞を発表する前に、データセクションがTwitterを分析して発表したことがあって(笑)。たまたまこの年は(大賞が)複数出たので、ある程度は合っていた。26億6,400万ツイートを分析して、「これだ」みたいなのをテレビで特集をやってもらったり。
橋本:TBSの番組と提携していたので、テレビ局の番組のツイートを分析したり。あとは選挙ですね。ビッグデータで世論を分析する仕事を会社としてやっていました。当時作った「選挙ウォッチャー」で、どんな政治の口コミがあるか、自民党とか党別に分析してみたり。
2011年は東日本大震災でしたから、当時はまだ原発の話題が大きかったんですね。年代や性別を自然言語から推定して、「この党のこのテーマを語っているのはこの層だ」とか、ネガティブ・ポジティブとか、年代測定をやっていました。
それから当時「データエクスチェンジ・コンソーシアム」を立ち上げて、理事長に就任しました。「ビッグデータ 300社連携」といって日経新聞の1面に出て、大臣からも問い合わせが来たりしたんです。会場はここで、企業間のデータ連携のコンソーシアムというのをやったりしました。
その年(2013年)に出した本が『データサイエンティスト データ分析で会社を動かす知的仕事人』です。たぶん、これを出したので学長が注目して、さっきのイベントで対談相手になったという経緯です。
細野:(笑)。これにつながるわけですね。
橋本:それが10年前ですね。この本を書いたのは、「データを科学的に分析してビジネスの課題を創造的に解決する人材」が求められているから。3つの能力として、「統計とITの能力」「ビジネスの問題を発見して解決する能力」「創造的な提案を行う能力」が必要だと思ったからです。
ただ、それを全部持っている人はなかなかいないので、バランス良くその3つを持っていく必要があるんじゃないか、とか。
ビジネスのデータ分析だと「お客は何を言っているか」「お客は実際に何をしているか」「(お客は)なぜそうしているのか」という顧客インサイトを、データを使って形式知も潜在的な暗黙知も分析していくのが、新しいデータサイエンティストという人材だよという話を書いていたんですね。
橋本:データサイエンティストという人材は、当時は人間の役割だったんですが、2013年からこの10年でこのように(「AIの役割」に)変化しました。
尾原:全部ね。
橋本:ほとんど全部ね(笑)。
尾原:Advanced Data Analysisで十分じゃないかという。
橋本:そうなんですよ。当時、少なくとも私の本に書いていたデータサイエンティスト像は、もう99パーセントぐらい(AIに)移管できるので、そういう大きな変化があったのがこの10年かなと思います。
細野:ありがとうございます。尾原先生からも。
尾原:そうですね。これは、(東京大学の)松尾豊先生が2012年か2013年ぐらいに、これからのAIの予測を出したものなんですが、実は2013年ってGoogleがDeepMindを買収した年なんですよ。
僕がまだGoogle Japanの検索事業開発のヘッドをやっていた頃です。2009年にシンギュラリティを提唱されたレイ・カーツワイルさんがGoogleに入社して、まさにこれからどんどんAIが進化して、「2045年頃にはコンピューターが人類の能力を上回る」みたいなお話の中で、Googleのフェローをしてくださったタイミングだったんです。
恐ろしいことに、このタイミングでは「言語の意味理解が2025年から始まって、大規模な知識理解が2030年に来る」という予測だったのが、(実際は)7年前倒しになっちゃったわけですね。
尾原:Google Brainから2019年に出た「Attention is All You Need」という論文があったんです。
これによると、2014年にGoogleが買収したDeedMindで出たディープラーニングの基になっているCNNやRNNという学習方式に対して、TransformerというGPUとむちゃくちゃ相性がよくて並列的に大量学習ができるものが出て、一気に進んだという話なんですよね。
これはポイントがあって、松尾さんとも話したんですが、言語の意味理解は進んでいるんですけど、意外と運動の習熟がまだ進んでいないんですよ。
ただ、恐ろしいことに、今回GPT-4Vで完全に画像を解析させたり、DALL·Eがつながって画像の創造がGPTでできる時に、実はGPT-4ってテキストだけじゃなくて画像でも学習しているんですね。
だから、実はGPT-4を使った自動運転みたいなかたちで、車の車載カメラからの入力を置いて、「あなたは運転手です。さあ、次の運転はどうしますか?」とやると、けっこう指示をちゃんと返してくるんですよ。
「グラウンディング」と言うんですが、実はGPT-4は画像とテキストを両方認識しているから、リアルをちゃんと認識するぐらいの性能が出ているんじゃないかという説があって。
リアルを認識できると、あとはロボットを動かすためのプログラミング言語を吐き出せばいいので、レスポンスタイムの問題を除けば、GPT-4は運動への習熟までいけるかもしれない、みたいなところが見えてきたりしていて。
そういうふうに、GPUの圧倒的な発達と、GPUを前提とした並列処理に向いたTransformerが出たことで、時計の針が7年進んじゃったというのがものすごく進化したところですかね。
細野:ありがとうございます。
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