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エンタメのための新しい広告サービス「pixiv Ads」について(全1記事)

純広告と第三者配信広告の“いいとこ取り” 「pixiv Ads」のメリットと課題

完全招待制のオンラインカンファレンス「PIXIV MEETUP 2023」。「創作活動を、もっと楽しくする。」というミッションを遂行するために、メンバーが普段行っている業務について、自らの言葉で語り、その想いと技術を共有する場です。rukapi氏は、エンタメのための運用型広告「pixiv Ads」の開発について発表しました。

登壇者の自己紹介とアジェンダの紹介

rukapi氏:みなさま、本日はよろしくお願いいたします。今から、エンタメのための新しい広告サービス「pixiv Ads」についてお話しします。

あらためて、名前はrukapiと申します。ピクシブの広告事業部には、2021年8月に配属になりました。前職はWebの広告代理店で、主にゲームや電子書籍アプリの広告主さまに向き合いながら、GoogleやFacebook広告などのさまざまな広告媒体の運用に携わっていました。

ピクシブでは、pixiv Adsのプロダクトマネージャー兼pixiv Adsチームのチームリーダーとして働いています。

(スライドを示して)ふだんのお仕事は、こんな感じです。エンジニアリングと営業は正直できないのですが、エンジニア、セールスメンバーなど、さまざまなメンバーに支えられながらプロダクトマネージャーとして、それ以外の仕事をなんでもやるぞという気持ちで日々働いています。

本日のアジェンダは(スライドを示して)こちらです。まずは、Web広告の概要とpixiv Adsが生まれた背景についてお話しします。

先出しすると、pixiv Adsとは、pixivに広告主が直接出稿できる法人のお客さま向けの運用型広告プラットフォームです。その後、pixiv Adsの概要、特徴的な機能、支える技術についてお話しした上で、今後の展望をお話しし、本日のまとめで締めたいと思います。

掲載期間や量が保証されるが、人的手間がかかる純広告

ではさっそく、Web広告の概要とpixiv Adsが生まれた背景についてお話しします。

多くのWebメディアにおいて、一般的なWeb広告のマネタイズ手法は、大きく2つあります。純広告と第三者配信広告です。

純広告とは、メディアの営業担当が広告主と直接やり取りして販売する広告です。多くはプロモーションの認知度を拡大する目的で活用され、トップページなど目立つ場所にある広告枠が販売される傾向にあります。

純広告のメリット、デメリットは、(スライドを示して)こちらです。メリットは、特定メディアや枠への掲載期間や量が保証されること。ジャックメニューなど、ユーザーが盛り上がるようなプレミアムな広告メニューもあります。

デメリットは、人的手間です。対面でのやり取りと入稿。入稿というのは、広告の掲載内容を設定する作業になりますが、この工数が広告主とメディアの双方にかかります。

広告効果を最大化できるが、ハンドリングが難しい第三者配信広告

もう1つの、第三者配信。第三の広告配信事業者を介して、膨大な案件数の広告を掲載するものです。ピクシブでいうと、常時20社から30社の事業者を導入しており、枠ごとの配信比率を調整するなどの最適化を行いつつ、システマチックに収益を創出しています。

(スライドを示して)第三者配信のメリット、デメリットはこちらです。まずは、オークションによる入札や配信最適化機能というものがあり、広告効果を最大化できます。また、広告主にとっては、配信面を選ばなければ膨大なボリュームの広告を配信可能です。

デメリットとしては、掲載メディアや面における配信量の保証が難しいこと。広告主やメディアではない第三者の事業者のため、近年の情報取得規制のあおりを受け、広告配信や計測に使えるデータが減少していること。また、掲載面のハンドリングが難しく、親和性が高くない広告や悪質な広告がユーザーに出てしまう場合があるなどが挙げられます。

両方のいいとこ取りをした中間的ソリューション「pixiv Ads」

ここで、pixiv Adsが生まれたきっかけについてお話しします。あれは、2018年のある日の出来事でした。

ある時、当時、広告事業部に在籍していたとあるエンジニアがこう言いました。「純広告と第三者配信、両方のいいとこ取りをした中間的ソリューションを……作ってきました」。

(会場笑)

事業部長は、こう言いました。「おもろいやん」。

誤解を恐れずに言いますと、こうして生まれたのがエンタメのための運用型広告、pixiv Adsです。

きっかけは唐突なものではありましたが、ビジネス的には合理性があり、優秀なモデルであること、また、近年高まる情報取得規制にも対応できるソリューションであることから、その後タスクフォース化され、本格的に開発が始動します。

紆余曲折ありましたが、2021年にクローズドベータ版がリリースされ、約2年にわたり10社の広告主さまにご協力をいただきながら、配信ロジックやターゲティングの改善、新機能や広告フォーマットなどの追加の改善を重ね、2022年11月に正式リリースする運びとなりました。

pixiv Adsのメリットと課題

次に、pixiv Adsの概要についてお話しします。

あらためてですが、pixiv Adsとは、pixivに直接出稿できる法人向けの運用型広告プラットフォームです。

2022年の正式版リリース時には、「MarkeZine」さんなど、さまざまなメディアにも取り上げていただきました。

pixiv Adsのメリット、デメリットは記載のとおりです。

メリットとしては、まずは純広告と同様に、pixivというメディアへの掲載を保証しています。また、ファーストパーティーデータである広告配信や計測に使えるデータが多く、ユーザーに最適な広告表示を行います。さらに、すべての掲載内容を事前にpixivが人の目で確認しているため、安心な広告のみの掲載が可能になっています。

デメリットというか課題なのですが、まだ走り始めのサービスのため収益性については進化段階となっています。そのため現状は大規模な拡大が難しく、配信規模の小ささも課題として挙げられます。

純広告と第三者配信のいいとこ取りではあるものの、収益性と配信規模にはまだ課題があるというのがpixiv Adsです。

アカウント開設は2ステップ、すべての操作が管理画面で完結

pixiv Adsを実際に見ていきましょう。

まず、特設サイトの開設フォームから申し込みが可能です。申し込みと、弊社側の審査の2ステップでアカウント開設が完了します。(スライドを示して)発行されたアカウントがこちらです。キャンペーン、クリエイティブ、メディアの作成や管理、ダッシュボードなどの閲覧、トラッキングタグの発行、お支払いやメンバーの管理などがこの画面で一括で行えます。

ここでの設定に応じて、pixivや関連サービスのPC版、スマホ版、アプリ版に広告を配信できます。

特徴的な4つの機能を紹介

pixiv Adsの特徴的な機能について紹介します。

今回ご紹介するのは4つ。ジャンル、キーワードターゲティング、リアルタイムなレポーティング、CSVでのクリエイティブ一括入稿機能です。

1つ目は、ジャンルターゲティングです。これはユーザーのオーディエンスデータを独自に解析し、提供しているターゲティング機能です。管理画面上で、広告主がRPGやアクションなどの作品ジャンルを選択でき、ユーザーの嗜好に合わせた広告表示を可能にしています。

2つ目、ジャンルターゲティングよりもさらに細かい粒度でユーザーに届けられるのが、6月にリリースされたキーワードターゲティングです。全5,000件程度のアニメ、マンガ、ゲームなどのタイトルを選択でき、よりユーザーの嗜好に合わせた広告表示を可能にしています。

3つ目は、リアルタイムなレポーティング機能です。キャンペーンやクリエイティブ、オーディエンス属性など、さまざまな粒度の切り口でのレポーティングが可能です。広告主は、このレポートを見て、入札や広告内容の調整を行い、よりユーザーの好みに合わせた広告を配信できます。

4つ目は、6月にリリースされたCSVでの一括入稿機能です。CSVのシートにメディアID、広告テキスト、計測URL、Call To Actionなどを入力してアップロードするだけで、大量のクリエイティブが一括で入稿できます。

私自身も検証で入稿作業をするのですが、この機能のおかげで作業時間が体感10分の1以下になったと感じています。

こういった機能も付いて、正式版リリース後1年未満で150件以上の広告アカウントを開設いただきました。中でも利用傾向の多い商材は、ブラウザゲーム、アプリゲーム、電子書籍サービス、エンタメ系ECサイト系求人です。

ターゲティングを支えている技術とは?

pixiv Adsを支える技術について触れたいと思います。トピックスを2つお持ちしました。

まずは、ピクシブ独自のターゲティングを支える技術についてです。ユーザーの好きなジャンルやキーワードの判定は、「ピクシブ百科事典」の膨大な情報をベースに人の手で日々アノテーションしているメタデータと、ユーザーの行動履歴を「BigQuery」をフル活用し組み合わせることで実現しています。

判定結果は「Bigtable」に格納され、ターゲティング機能として提供し、「GKE」経由で配信を行うことで、よりユーザーの嗜好に合わせた広告表示を心掛けています。

広告事業部でインフラの構成を管理

次に、ピクシブの広告配信基盤についてお話しします。ピクシブでは、私たち広告事業部とは別にインフラの部署が存在しており、ピクシブのさまざまなサービスを支えています。

しかし私たち広告事業部は、自部署内でGoogle CloudやGKEをフル活用してインフラの構成および管理をしています。これにより、より高速な開発とインフラからバックエンド、フロントエンドまで一貫した広告配信に最適な技術選択を実現しています。

このイベントにも登壇者2名を含めて広告事業部のエンジニアが計5人が参加しているので、興味がある方はぜひ声を掛けてみてください。見つからない場合はおつなぎしますので、私に気軽にお声掛けください。

これから目指していくこと

終わりが近づいてきました。pixiv Adsの今後の展望についてお話しします。2つお持ちいたしました。

1つ目は、「広告主により高い広告効果を」です。

これは例えば、動画広告によって実現できると考えています。現状は、1枚画像か横スワイプで画像送りができるカルーセルの広告のみに対応しています。そのため、ユーザーに刺さりやすい広告の選択肢が限定的です。また、動画広告市場は成長が著しいこと、なにより動画は広告効果が高いことから、広告主からの需要も非常に高いです。

動画広告という選択肢が増えることで、広告主が、より親和性の高い広告を出しやすくなり、広告効果を最大化できると考えています。また、広告効果を高めることで、pixiv Adsの課題である収益性の改善や配信規模の改善につながることもメリットであると考えています。

ただ動画広告は、技術的な課題だけでなくユーザー体験への影響がポイントだと考えており、慎重に検証しつつ導入を検討してまいります。

2つ目は「クリエイターへの貢献」です。こちらは、より不確実性の高いトピックですが、例えばクリエイター個人の広告出稿を考えています。

これは、ピクシブが運営するネットショップサービス「BOOTH」などとの連携を想定しています。キーワードターゲティングなどを用いて、クリエイター個人が自分の商品をより親和性の高いユーザーに届けやすくする構想です。

pixiv Adsは、現在でも出稿最低金額などの縛りがなく、数円からの少額配信が可能なため、個人が気軽に出稿しやすいというのも強みになっています。

ピクシブがうたう、「創作活動を、もっと楽しくする。」といった世界の実現の一助となりたいと考えています。

まとめ

最後に本日のまとめです。pixiv Adsとは、2022年11月にリリースされたpixivに直接出稿できる法人のお客さま向けの運用型広告プラットフォームです。

純広告と第三者配信広告の中間的ソリューションとして、よりコスパ高く親和性の高い広告をユーザーに表示できるものです。収益性と配信量には、課題があります。

夢は、動画広告やクリエイター個人による広告出稿などです。

今後も、ユーザー、広告、ピクシブ、三方よしの広告プラットフォームの実現に向けて邁進してまいります。まだまだ話し足りないこともありますが、続きは「Ask the Speaker」や懇親会などでお話できるとうれしいです。ぜひお気軽にお声掛けください。

ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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