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夏の終わりに、プロダクトも組織もちょっとよくなるベイビーステップ(全1記事)

プロダクト開発のあるあるは「価値観の違い」と「構造上の問題」から生まれる アジャイルコーチが教える“限定された合理性の排除”の重要性

「大企業PM集合!社内にプロダクトマネジメントを取り入れるため工夫した話【開発PM勉強会vol.22】」は、大規模組織のPMが社内にどうプロダクトマネジメントを浸透させていくか について語るイベントです。ここでレッドハット株式会社の長尾氏が登壇。プロダクトのスモールスタート時に起こる問題について、その原因と対策について話します。

プロダクト開発の「あるある」から半歩でも進めるために

長尾脩平氏:それでは始めていきます。よろしくお願いします。まずは自己紹介からします。あらためて、長尾と申します。

経歴としては、二次請けのSIerで金融業界や放送業界のシステム開発を行っていました。その後は転々として、福岡の大手銀行でアジャイルコーチやスクラムマスターをしていました。2022年にレッドハットに入社して、さらにアジャイルコーチを極めていこうとしています。

資格もいくつかあるということで、たまにイベントに呼んでもらったり、登壇もしています。

「個人の見解なので」みたいなものをスライドに差し込んでおけばよかったなと思っていますが、今回の話です。「プロダクトも組織もちょっと良くなるベイビーステップ」というところで、みなさんに小さく、何かの変化が訪れるといいなと思っています。

「持ち帰っていただけるといいな」というものは、こういうものを想定しています。10分ぐらいの時間ではあるのですが「プロダクト開発のあるあるだよね!」みたいなところを、みんなで共有して帰れたらいいのかなと。

その「あるある」が起こる背後、そもそもの根本的な「なんか違いがあるよね」みたいなところを伝えられたらいいかな。そこから「じゃあどうやって一歩、いや、半歩でも進むといいのかな」というところを共有できたらいいなと思っています。

プロダクトのスモールスタートをしようと思ってもたくさんの苦労がある

事件です。ということで、例えば私がプロダクトオーナーになったとします。スモールスタートするのにも苦労することがあるんですよね。

(スライドを示して)「なんでこんなことが起きるんだろうな」ということを並べてみています。最初に、企画しようと、新しいことをしたいなと思っているのに、なぜか同業他社の事例だったり、過去の実績で成功しているのかを聞かれたりします。「他社事例ありますか?」みたいなことを言われたりするんですね。

この企画を通そうといろいろな担当の人にアリかナシかを聞いていったら、本当になににおいてもネゴ(ネゴシエーション)に時間がかかってしまう。部署、担当者、いろいろなところを回らなくちゃいけなくて、さらには担当者によって「言っていることがぜんぜん違うよ」みたいなこともあるかもしれません。

やっと「作るぞ」ってなると、「いつできるの?」しか言われなくなってくる。誰かの鶴の一声で決まった納期と機能が、いつの間にか必達事項として襲いかかってくる。すごく圧力がかかっていたのに、終わらないとわかった途端に緩くなるみたいなこともありました。

そして開発してもらおうとすると、言われたことしかしない開発者の方に出会うことがあるかもしれません。「設計書に書いてあることしかやりません」みたいな状態ですね。

「プロジェクトの特性」と「プロダクトの特性」から生まれる価値観の違い

「この話、なんでかな?」というところを考えていったのですが、「そもそもの前提が違うんですよ」というところになります。どういうことかというと、これは「プロジェクトという特性」と「プロダクトという特性」の違いで生まれているのかなと思います。

例えば、プロジェクトは終わりがあるもの。プロダクトとはなにかしらの理由によって会社として止めることになるまで、ずっと生き続けるものです。

これによって価値観が変わってきます。終わりがあるかないかだけなのに、価値観が変わってきます。

プロジェクトの価値観としては、「納品をしよう」ということになります。計画を大事にする価値観が生まれてきます。プロダクトはずっと続くので、どうやったら価値を提供していくかがより重要になってきて、その一つひとつにどんな効果があるのかが大事になってきます。

プロジェクトやプロダクトの「スキ」と「キライ」

さらにこのプロジェクトやプロダクトの「スキ」なことはなにかというと、プロジェクトは終わりがあるので、できる限り正確に仕様に沿って作ってもらうことがより良い。工数も正確であってほしいし、契約を守る。そういうことが「スキ」になってきます。終わりがあるからです。

プロダクトはずっと生きていくので、良いものを作ろうとするところが大事になってきます。変化も起こってくるので、それに適応することが必要になります。ずっと生き続けるので、ムダなことはあんまりしたくないという考えになってきます。

じゃあ「キライ」なものはなにかというと、逆のような部分が言えると思います。プロジェクトは終わりがあるので、終わるためにはやはり変更をあまり受け付けたくない気持ちになると思います。さらに、終わらない可能性を生む想定外のことも「キライ」かなと思います。

プロダクトはずっと生きるので、より価値が高いものではない、例えば「価値を生まないもの」「少ないもの」の生産活動がどんどんイヤになってくるかと思います。「ずっと高稼働はイヤだよね」というような感覚になってくると思います。

あらためて、プロジェクトとは終わりに向かって進めていくこと。プロダクトは常に生き残っていく、どうやって生き残るかを考える。そういう価値観の違いがあります。

作る人の視点、使う人の視点

これを作る人の視点から考えてみます。どういうふうになるかというと、プロジェクトは、やはり「終わるためにどうやるか」ということをやりがちかなと思います。それがミッションなので。

プロダクトだと「ずっと続くんだから、効果の高い開発をしたい」「もうムダなことはしたくないんだよ」となると思います。

じゃあ「使う人の視点ってどうなのかな?」と考えると、「ユーザーはそもそも、プロジェクトとして終わって納品されたら満足なんですか?」といったら、きっとそうではないはずです。

ユーザーは自分の課題を解決してほしいんですよね。プロダクトを利用すると、自分の課題を解決してくれる。だからプロダクトを使うということが言えると思います。

「ジョブ理論」というやつですね。(この発表では)たまにキーワードを入れていきます。

なので、納品、いわゆるアウトプットをして、それで終わりじゃない。ユーザーに使い続けてもらうためにも、プロダクトを継続してどんどん改善していく必要があります。プロジェクトという考え方自体を否定するわけではなくて、大事なことです。

基本的には「生き続ける」世の中になってきているので、プロダクト開発という視点で強く進めないといけないですよね。

必要なものを必要な時に必要なだけ提供していけると良いということです。

アジャイルの言葉では、こういうことが言われます。「例えばアウトカムというもの、価値をどんどん増やしていこう。アウトプットに当たるもの、どんどん物を作っていくのは、減らせると楽だよね。ちょっとの改善で大きな効果を得られる世界を作っていきたいよね」というのがアジャイルの世界では考えられております。

価値につながらない活動が多くなってしまう構造上の問題

今までは価値観のお話でしたが、今度は構造上の問題でなにがあるかを説明します。先ほどの「なんでこんなことが起きるんだ」というところなのですが、「他社事例がありますか?」とか「担当によって言っていることが違う」とか、いつの間にか「いつできるの?」しか言われなくなっちゃうとか「言われたことしかやってくれない」という状態がなぜ起きるのか。

なぜ価値につながらない活動が多いのかというところですね。すべてとは言いませんが、どうしても構造上、縦割りだったり横割りだったり、請負という構造のせいでなにかが生まれているかもしれません。これは、アジャイルの下だからというわけではなくて、そもそもこういう理論があります。

念のため言っておきますが、みんな正しいことをしてくれています。けれども「なにか違う」というのは「モラルハザード問題」「プリンシパル・エージェント問題」だったりすると言われています。

どういうことか。(スライドを示して)左の絵があるのですが、例えば管理者とメンバーがいて、管理者は「今日もしっかり働いてね」と言い、メンバーは「バレないからサボりたいな」みたいなことが起こる。

なぜかというと、この2つの関係において目的の不一致があるから。目的が違って、さらに情報の非対称性、情報が違うことがある。なので、依頼者の依頼に対する実行者の適切な行動を阻害してしまう。そういう関係、構造にあるということを言っています。

つまり、限定された合理性によって事が行われている。さらに言うと、みんな自分から見て正しいことをしてしまっている。そういう状態です。

限定された合理性を排除する

「今からユーザーに価値を届けるにはどうしたらいいのか?」。この限定された合理性をどんどん排除していく必要があります。

例えば、人に対してどういう対策があるかというと、やはり他部の人とも方向性をしっかりと合わせる必要があります。方向性が合わないと、自分の部署の最適な答えしか出てこないことがあるでしょう。

メンバーにおいても同じことが言えて、価値観をしっかり合わせて、認識を合わせていく必要があるでしょう。メンバーそれぞれの限定された合理性を生まないようにしましょう、ということですね。

今度は構造に対してどういうことができるかというところですが、他部の人をメンバーにできる構造にできる限り近づけていったほうがいいでしょう。同じ価値観で、同じく得をする。そういう仲間になっていく人をどんどん増やすことで、この限定された合理性は少なくなっていくでしょう。

それでは、プロセスに対してなにができるかということですけど、できる限りプロダクトを運営する上では価値につなげたいので、価値につながっていかないもの、ムダになるものを排除しないといけないですよね。

プロセスのムダを特定することで、なにかが見えるでしょう。価値を生み出す流れを考える必要があります。

またキーワードですが、バリューストリームというものを考えて、そこから要らないものを見ていくということが言えます。

「なぜこのプロダクトには価値があるのか」を考える

とはいっても、人とか組織を変革していくというのはすごく大変なことだと思います。なので、「なぜこのプロダクトには価値があるのか」ということが大事だというところに着目して、まず自分だけでも「なぜ?」と考えて、それを始めてみましょう。

さらにサイモン・シネックさんの「Start with WHY」、「なぜ?」から始めてみましょうというところです。

ということで宣伝です。プロセスや人などの話をしてきましたが、人間関係がけっこう悪くて困っていることがあると思います。私は今コーチングのプロ資格を取得していて、そのクライアントを募集中です。

どういうコーチングかというと、複数人に対するコーチングをしています。人と人との関係性に焦点を当てたコーチングです。チームビルディングの効果などがあります。さらに「スクラムアライアンス」というスクラムの協会からも認知されている、そんな資格です。

最後。大事ですね。「練習生価格です!」というところで、なにか一歩始めたら、まず私を呼んでみるということが大事かもしれません。

というところで、終わりにします。ありがとうございます。

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