2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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岡嵜禎氏:みなさまこんにちは。日本マイクロソフトの岡嵜です。私からはAI・クラウドの発展によって、開発者のまわりの世界がどのように変化するのか。その観点で、みなさんにお話をさせていただければなと思っています。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
今回のセッションでもいろいろ話題になっていると思いますが、まったく新しいAIテクノロジーが台頭しています。日々のニュースであったり新聞であったり、さまざまなところでいろいろな記事が出ているので今さらとは思いますが、かなり多くのメディアから注目されている状態です。おそらく開発者のみなさまもすごく関心を持って、もしくはチャンスだと思って、こういった記事を読んでいるのではないかなと感じています。
今、AIが盛り上がっていますが、みなさんのご認識のとおり、AIにはそれなりの歴史があります。1956年ぐらいから人工知能というものが言われ出して、それが大きく変わったのが1997年です。機械学習・マシンラーニングというかたちで、主にデータをベースにした、AIが判断するアルゴリズムを作れるようになったのが1997年。そして、人の知能の考え方をモデルにしたディープラーニングの考え方が発展したのが2017年です。このあたりで、画像認識や音声認識が発展したと思います。
今は、2021年のジェネレーティブAIというところで、これは文章、動画、音声を生成することができます。また、発生されるものはバラバラではなく、例えば人の会話のコンテキストを理解しながら文章が生成されるので、恐ろしくナチュラルな会話が成立するようになったというところで多くの方が注目をしていると思います。
今までもいろいろなテクノロジーの進化・発展があったと思います。その中でも今回のジェネレーティブAIの台頭は、インターネット、スマートフォン、クラウド、そういったものに匹敵する大きな変化を世の中にもたらすのではないかと言われています。
我々の創業者であるビル・ゲイツも「Windows 95以来の革命になるんじゃないか」と言っています。みなさんご認識のとおり、Windows 95になった時は、コマンドラインでやっていたことがいわゆるGUI、Graphical User Interfaceベースで操作ができるようになって、ユーザー体験が恐ろしく変わりました。
今回このジェネレーティブAIによって、そういったユーザーに対する体験がまた劇的に変化をする。そういった期待値が込められています。
その中の中心にある、OpenAI社が作っている、大規模言語モデルの1つであるGPTも、進化を遂げてきています。実際に注目をされ出したのは、GPT-3の頃かなと思います。このあたりから、かなりいろいろなことができるような感じがする、実際に会話をしても、それなりに遜色ない返答をすると、すごく注目されるようになりました。
そして、大きく進化をしたのがGPT-4で、ここでかなり精度がさらに上がって「これは本当にすごいぞ」となっているのが昨今の流れかなと思います。いろいろな喩えがあると思いますが、一般的には、GPT-3の知能は小学生高学年のちょっと賢いかなというイメージに対して、GPT-4は大学生レベルのような知能を持っていると言われています。
司法試験など難しい試験にもGPT-3やGPT-4は合格する。GPT-3であれば、下位10パーセントぐらいの合格率に対して、GPT-4だと上位10パーセントに入ってきます。そういった意味では、「私以上に賢いかな」と思ったりもするのですが、それぐらい領域によっては多くのことが処理できるようになったというのがポイントかなと思います。
生成AIの登場後、さまざまなところから極めて大きい反響が出ていると思います。実際に、みなさんもいろいろなニュースで見ていると思いますが、例えばすごく1個話題になっているのは、さまざまな法規制ですね。AIをどのようなかたちでうまく世の中に適合していくかというところの議論が活発に行われているのがポイントにあるかなと思います。
実際にG7の中でも、AIに対する取り組みを世界レベルでどうしていくかという議論が挙がったというのは目新しいところだと思います。
あと、実際に多くの企業が、生成AIを自社に取り入れていて、ナレッジの獲得もすごく急激に進んでいると思います。
連日のように、「自社にジェネレーティブAIの仕組みを取り入れて、全社員が活用できるかたちになりました」というニュースが流れていると思います。我々がこの流れをどう見ているかというと、おそらく効果やメリットをもうみなさん直感的に「これはある」と感じられているから、それが進んでいるのかなと思います。
一方で、具体的にどういうかたちで適用できるのか、イメージはなかなか持てなかったりするので、そういった意味では、社員のリテラシーだったり、どういったかたちで使うのか、開発者が学習できる環境を整備していくことが急激に進んでいると思います。
エンジニア観点では、プロンプトエンジニアリングがすごく注目を浴びていると思います。実際にAIを活用して、どのように正しい結果を返してくるかにおいては、いかにそのAIに仕事をさせるかが大事です。そういった分野で、プロンプトエンジニアリング領域がすごく発展をしていて、それができるエンジニアがどの会社でも不足をしている状況ですね。
アメリカでは、プロンプトエンジニアリングをできる方は、年収3,000万円とか4,000万円レベルになるということなので、ぜひみなさんも取り組んでいただければおもしろいんじゃないかなと思います。
AIの話をした時に、「今までも同じようなことってできたんじゃないの?」「我々もすでに取り組んでいるよ」という話をされるケースがあります。その時に1個ポイントとなるのは、今のジェネレーティブAIは(スライド)右側の大規模言語モデルがさまざまな用途に使える汎用的なAIであることです。そういったところが大きな特徴として挙げられるかなと思います。
今までも同じような処理はできていたのですが、基本的にはある特定領域の問題解決するためにきちんとデータを揃えて、きちんと精度が出るように学習をさせて、近い結果が出るというかたちでやっていたと思います。それで精度が出るのはいいのですが、やはり時間もかかるし、そこに対するコストもかかる。
今は汎用的な処理であれば、ある程度学習をさせなくても、ジェネレーティブAIが対応してくれる。大規模言語モデルであれば、けっこう複雑な問題も、それほど学習コストなしに解いてくれるというのが大きなポイントではないかなと思います。
なので、これからの変容というところに関しては、今まではクラウドの適用がどんどん進んでいったことによってDX、デジタルトランスフォーメーションが進んでいったと思うのですが、AIを活用することによって、DXがさらに加速すると思っていて、AIトランスフォーメーションが本格的になっていくというのが我々が考えたところです。
おそらく、あらゆる分野でAIが劇的な変化をもたらすことになっていくと思います。特に今回の大規模言語モデルは、言語系ですよね。言語系は、あらゆる仕事のインターフェイス、作業に適用されているものなので、ユースケースは無限大、あらゆることが考えられると思います。
それぐらい適用領域が広いので、あらゆるビジネス、あらゆるインダストリー、あらゆるソリューションが、おそらく今後劇的に変化をしていく。我々はそのように考えています。
そういった変化は無限にあるのですが、今日はもう少しスペシフィックに、例えば働き方がどう変わるかや開発者の体験がどう変わるか。そういった観点で、もう少し掘り下げてお話をしていければなと思います。
まずは働き方の部分ですね。昨今の流れという話になりますが、ハイブリッドワークが浸透しています。コロナがあって、アフターコロナになっても、デジタル化は劇的に進みました。あとはリモートでのハイブリッドな働き方を企業も取り入れて、柔軟に働けるような、従業員の満足度を上げていくような取り組みがここ数年で一気に進んだ。これは間違いないかなと思います。
一方で、それでみんながすごくハッピーなのか、幸せなのかというと、それによってまた新たな課題が出てきているよねというのが、我々が取っているサーベイからわかっています。マイクロソフトでは年に1回、「Work Trend Index」というかたちで、今の働き方に関するアンケートをお客さまなどに質問をしてサーベイを取っています。
その中で1個、話題にさせてもらったのがAIに関する質問です。いくつかのデータを取らせていただきました。見ていただくとわかるのですが、一番下のポイントである49パーセントの人が、AIに自分の仕事を代替えさせられるというリスクを感じているというのは、なかなか興味深いことだと思います。
このAIの変化によって、「いよいよ自分たちの仕事も安泰じゃないんじゃないの?」と、もうみなさんけっこうわかってきているんですよね。今、セッションを見ている方も頷いておられますが(笑)。やはりなんらかのかたちで自分たちの仕事が変わってくるんじゃないかと薄々感じている。人によってはそれをチャンスだと思うケースもありますが、それが不安だという方もいるということです。
(スライドの)一番上のデータを見ていただきたいのですが、一方で、70パーセントの人たちは非生産的な単一業務や反復作業はAIに任せて、他のことに集中したいと感じているというデータがあります。例えば60パーセントの役職者は、社員にもっとクリエイティブな仕事をしてほしいと感じているというデータがありますが、これも注目すべきところかなと思います。
我々は「デジタル布石」という言い方をしていますが、デジタル化でハイブリッドワークなどが進んだことによって、おそらく処理しないといけない情報量・データ量は爆速的に増えていると思います。
いろいろなところから情報が入ってきます。さすがに電話で入ってくるケースはもう少ないですが、デジタルでメール、ソーシャル、社内のSNSなど、いろいろなところから、いろいろな依頼や情報が入ってくるので、「あれ? どこでどの話をしていたっけな?」「あれ? あの時ああいった情報があったんだけど、どこにあるかな?」みたいなことを処理したり探したりということに私たちはすごく時間を取られています。
あとはビデオ会議などが増えたことにより、どこでもスピーディに会議ができるからこそ会議も増えて、その情報量がどんどん増えていく。でも処理するのが人の脳でいいのかというと、そこにだんだん限界を感じている。もしくはなんらかのストレスを感じているところがあるんじゃないかなと思います。
そういったことを考えれば、やはり人の働き方もこのAIを活用することによって、もっとクリエイティブに、もっと生産的にすることを考えていくというところが1つ、今後を開いていく大きな可能性になるのではないかなと思います。
(次回へつづく)
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