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事例から紐解く”活用される”データ基盤のつくり方(全4記事)

自社のデータを活用するのはなぜ難しいのか? 「データ活用が盛んに行われる組織」との比較から考える

データ活用基盤の導入において、顧客が目指すゴールを認識した上で、発生し得る課題や障壁を特定し、最適な提案をするメソッドについて、JSOL社のAWS「データ活用・AI基盤」導入における体験談を踏まえてお話しする「活用されるデータ基盤のつくり方事例から学ぶ、エンジニアに知ってほしい顧客の課題」。ここでDX技術部の坪内氏が登壇。まずは、組織におけるデータ活用・データ基盤活用の流れと、その流れにおける課題について話します。

より使ってもらえるデータ基盤を作成するにはどうすればいいか

坪内進史氏:それでは坪内から本日のメインテーマである「活用されるデータ基盤のつくり方」というテーマでお話しします。

おそらく今回はエンジニアの方が比較的多く参加しているかと思います。また、データ基盤に関わっている方も多くいるかと思いますが、そういった方々が、より使ってもらえるデータ基盤を作るにはどうしたらいいかを、我々のこれまでの経験などを基に、事例とともに紹介して、みなさまの今後の業務に少しでも役に立つことができればというところでお伝えしたいと思います。

そもそもデータ基盤とは

始めにデータ基盤について、念のためみなさまと共通認識を作る時間を取りたいと思います。データ基盤に言及しているもので、おそらく一番公的で精度が高いものだと私が認識しているのが、IPAの『DX白書2023』です。これに記載された「データ活用基盤」が該当するかなと思います。

念のために読み上げますが、「社内外のさまざまなデータを収集して、分析しやすいかたちに整形・蓄積して、活用を行うシステム群」。(スライドを示して)これを「データ活用基盤」と呼んで、イメージ図にあるような、その基盤がどういう組織にどう使われているかや、またそのデータ活用基盤がどういった構造を持っているかを示しています。

本日参加している方々が思い描くデータ基盤におそらくかなり近いものではないかなと思っています。本日は、データ基盤といえばこういったものを指して伝えているということを、みなさまのほうでも認識してもらえればと思っています。

ちなみに『DX白書2023』は私も何回も読み込んでいて、こういった領域について学習したい・勉強したい方にとっては非常に重要なリファレンスになるかなと思うので、ぜひ興味がある方は見てもらえればなと思っています。

また、JSOLではこのデータ活用基盤を導入するソリューションを企画して、各社さまに提供しています。本日は、このソリューションを各社さまに我々が提供する、導入を支援する中で発生した課題、ないしそれをどう乗り越えていったか。あとは我々の気づきみたいなところを題材に事例紹介をできればなと思っています。

事前に2点ほどお断りを入れたいと思っています。大変恐縮ですが、我々のこのソリューションは、基本構成としてAWSを前提にしたソリューションとなっています。参加している方の中には、あまりこういった領域に明るくない方もいるかなと思います。内容をできるだけ汎化してお伝えできればなと思っていますが、事例紹介の中でこういった要素が一部強く出てしまうというところは、恐縮ですがご了承いただければと思います。

また、本日は販促活動のイベントではなくて、みなさまとの勉強会なので、このソリューションについての内容を全般的に紹介するということはしません。代わりに、事例紹介の中で、紹介するにあたって必要な最低限のものだけはちょっと紹介するというところで、こちらもご了承いただければと思います。

もしソリューションに興味のある方がいましたら、我々にコンタクトを取ってもらえればと思っています(笑)。

組織におけるデータ活用の流れ

ではすみません。前置きがちょっと長くなりましたが、内容に入っていきたいと思います。

事例の中に入っていくにあたり、みなさまの中にもしエンジニアの方がいたら、まず少し目線を上げていただくために、組織という文脈でこのデータ活用ないしデータ活用基盤がどういう位置付けにあって、かつその中でどういう課題があるのかをお伝えできればなと思っています。

その課題を掘り下げるにあたって、組織におけるデータ活用の流れをまず把握していただきたいなと思います。(スライドを示して)左に初期、右に将来像とありますが、初期のほうが「これからデータ活用を会社・組織で進めていくぞ!」という号令がかかり始めるようなタイミング・状態の組織と認識してください。

右側の将来像が、それが浸透した上で、データ活用が盛んに行われているような組織。そこでどういうやり取りが起きているかみたいなところを簡単に描いたものとなっています。

(スライドを示して)「そうだよね」となってくれる方がいたらうれしいのですが、初期において、矢印が示すとおり、トップダウンである程度物事が進んでいくさまが見て取れるかなと思います。

経営層の方が他社であったり競合他社であったりマーケットを見た上で、「データ活用待ったなし」というかたちで、それを基に自分たちのビジネスを伸ばしていきたいというモチベーションが生まれます。ただ、当然この方に専門性があるわけではないので、比較的専門性のある情報システム部であったり、またはそういった専門の組織を立ち上げる。

(スライドを示して)例えばここに書いているようなDXの推進部門。DX推進室・DX推進部みたいなところにそういった企画を依頼するという流れが一般的かなと思います。

ただ、DX推進部門ないし情報システム部の方もなかなかこういった領域にこなれていない中で……。例えば企画をするにあたって、この領域の予算策定をどうすればいいのか。あとは、情報システム部に閉じて話が進んでいるわけではなくて、現場部門をかなり巻き込んでいかないと進めることはできないので、巻き込んでいきたいというモチベーションがあるかにもよるかと思うんですが、誰に何を相談したらいいかわからないみたいな状況も、初期は当然あるかなと思います。

また、現場部門も「いきなりデータ活用と言われても」と戸惑ってしまうチームもあるかなと思います。その背景には、「まず自社に何のデータがあるんだろう」ということであったり、それをどうやったら使えるのかみたいなところもなかなかわからない。ナレッジがない状況からのスタートかなと思っています。

そこと対比して将来像、みなさんの目指す姿がどうなっているかというと、今度はボトムアップで話が進んでいくところを見て取ってもらえるかなと思います。

現場部門から自律的に「このデータとこのデータを組み合わせて、こういうふうに活用すれば例えば解約率を何パーセント低減できます」というような、ビジネスに寄与するアイデアが出てくる。

それを受け取ったDX推進部門などが、例えば追加でそういったシステム基盤の整備が必要だとなったら、上がってきたその効果を基に実際の予算の調整をした上で経営層に上げていき、費用対効果もかなり透明性が高い状態、わかりやすい状態で予算が承認されて、どんどん話が進んでいくのが理想像であるかなと思います。

この2つの間にギャップを生んでいる課題があるかなと思います。

データ活用・データ活用基盤における組織の課題

私が思いつく範囲でザッと書いていますが、例えば経営層だったりDX推進部門で発生している課題としてROI、投資対費用効果が見通せなくて投資判断が難しい状況が生まれていたり。

その背景にあると思いますが、組織としての共通言語ですね。自分たちのビジネスにとって何が良いのか、グッドなのかみたいなところの拠り所になる指標であったり、その指標を基にした目標、いわゆるKGI・KPIみたいなもので表されると思うんですが、そういったものが未設定であったり。

あとはスライドの左にある「現場部門に相談したいけど……」みたいな、現場部門とのコミュニケーションにおける役割や体制が未整備。例えばデータ活用の領域で言うと、データスチュワードを配置していくみたいなものがベストプラクティスとしてあったりしますが、現場部門にそういった人を配置できていなかったりとかもあるかなと思います。

また、データ資産が不明というところで、自社にどういったデータがあるかわからなかったり、実際にデータ活用のアイデアを生むための専門性が不足していたり。あとは、データを使っていくためのシステム環境が未整備といったような状況があるかなと思います。

データ活用基盤を使用してもらうためには、課題の解消が必要

総じて言えることは、これらの課題を放置したままにしていると、先ほどお話しした将来像には至れず、かつ、我々が作るデータ活用基盤が使われないといった状況になるかなと思います。または、これは我々が直面したことが多いんですが、そもそも作られないようなケース。作る意思決定ができないような状況に陥ることもあるかなと思います。

なので、やはりこの課題を解消していく。データ活用基盤をより使ってもらうとか作っていくためにはこういった取り組みが必要だというところで、「そうだね」と言ってもらえると非常にうれしいんですけれど(笑)。みなさまとこのような共通認識を作らせてもらえればなと思います。

この課題を解消していく上でいくつか取り組みがあるんですが、それを事例ベースで本日は紹介したいと思います。

(次回につづく)

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