
2025.02.06
ポンコツ期、孤独期、成果独り占め期を経て… サイボウズのプロマネが振り返る、マネージャーの成長の「4フェーズ」
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加川申祐氏(以下、加川):一息ついたので、次に最後のテーマに行けたらなと思っています。「今後エンジニアのキャリアはどのように変わっていくと思いますか?」というところで、今回は順番を変えて、武藤さんいかがですか?
武藤悠輔氏(以下、武藤):そうですね。キャリアでいうと、最近はいろいろなサービスやツールに衝撃を受け続けていて。直近では「Figma」のアップデートに衝撃を受けているんですね。(そのことから)感じたのは、便利になってくると、良い意味で仕事というか役割の幅というか、境界の部分が取り払われていくということです。
我々の業務でも、お客さまのサプライチェーンの計画業務に最適化しようとする人がいるんですが、部門がけっこう細かく分かれていたりするんですね。なぜ部門が分かれているかはそれぞれが複雑過ぎて難しくて、専属で付かないといけないから分かれているみたいです。ただ、それがちょっと計画が楽になると横に広がっていって、計画業務という横軸の業務ができるのが現実としてあって。エンジニアの世界も似たところがあるんじゃないかなと思っています。
もちろん細かいところでエンジニアとしての能力が必要とされる、プロフェッショナルな領域はいつまでも残ると思っています。一方で、ジェネラルな領域というか、価値を出すためのビジネスロジックを作る部分に関しては、かなり領域が取り払われていて。
それこそバックエンドやフロントエンドという軸も、フロントに近いデータベースの形式など、新しいアーキテクチャも出てくる中で、徐々に曖昧になってくるんじゃないかなと思っています。
なので感覚としては、エンジニアのキャリアでは、すごく深いある部分でのプロフェッショナル、「深さを持つハードウェアをしっかり理解する」みたいなレベルの深さのほうと、あとは顧客価値に直結するエンジニアリング領域の二極に分かれていくんじゃないかなというのが感じているところです。
三上悟氏(以下、三上):これもすごく共感できます。
都筑友昭氏(以下、都筑):そうですね。
武藤:他の方はどうですか?
三上:僕が話しますね。僕は4つの道があると思っています。1つはエンジニアが組織を作っていく道ですね。これはVPoEやEMと言われるところがあって。エンジニアを採用してその人たちと一緒にプロダクトを作っていく組織作りをしていく。そういった道があるかなと思っていて。人がすごく好きな人には向いている道かなと思っています。
2つ目はスペシャリストの道ですね。最近はスペシャリストがどこにポジションを置くかというと、ミドルウェアの開発やSaaS事業者です。最近はほとんどのサービスがSaaSを使っていることが多いと思います。その中で働くというと、そういったサービスをやっているところは基本的にほぼ独占だと思っているので、ナンバーワンになる会社で働くとか。これが本当にエンジニアらしいところだと思いますが、そういったところでアーキテクトやスペシャリストの道(を進むの)が2つ目です。
3つ目はPdMですね。ソフトウェアのサービスを作っていく(ことがやりたい)、自社サービス(を作っている企業)に入りたい方はここ(を目指すの)だと思うんですが、開発をしながらサービスやユーザー体験など、ビジネスとエンジニアリングを組み合わせてちゃんと事業として伸ばす道です。エンジニアリングの知識もあるし、そういったカスタマーサクセスの経験もあるしみたいな感じでサービスを作っていくポジションが3つ目です。
4つ目は、たぶんスタートアップなどに通ずるんですが、外から技術を借りまくってサービスを作る道ですね。リードエンジニアやテックリードでもいいんですが、最近はGitHub CopilotやChatGPTのAIも使いこなせるようになってきちゃっているので、そういったところをAIにお願いするのか、ライブラリやSaaSを使うのかみたいな。編集者的なポジションで、0→1を立ち上げるのが得意な人が僕は活躍するのかなと思っているので、このキャリアがいいんじゃないかなと考えています。
武藤:ちなみにそこで言うと、三上さんはどちらの道なんですか?
三上:どこなんですかね?
(一同笑)
僕は今のところ4番目ですね。僕は自分が編集者だと思っているんですよ。“編集者”というと雑誌とかの紙や出版のイメージがあると思うんですが、エンジニアリングも編集の仕事をしているかなと思っています。
最近はGPTを使って、SaaSも使いまくって(笑)。自分でコードを書いてないことのほうが全体の8割ぐらいなんじゃないかなと思っていて、パズルのように組み合わせているだけだったりするので、編集の仕事をしているという自覚で働いています。
都筑:自覚があるんですね。
三上:そういう思いで、編集者の本とかはけっこう読んでいますね。
武藤:都筑さんはどうですか?
都筑:そうですね。私はけっこう武藤さんに近いかなと思っています。エンジニアのキャリアというか、仕事としては究極的には技術を作る側と使う側に分かれていくんじゃないかなと思っています。
使う側のほうは、三上さんの言う編集者にけっこう近い考え方なんじゃないかなと思います。すでにある技術や、組み合わせたら良さそうなものを持ってきて(使う)。スタートアップ、特にソフトウェアのスタートアップは本当にそういったエンジニアがけっこう多いんじゃないかなと思います。それらを使って価値を出していく。
その中でも例えばiOSのプラットフォームにメチャクチャ詳しいとか、特定の言語に詳しいとか、フレームワークにメチャクチャ詳しいとか。使う側の中でも(どんな)レベルの技術に向くのか、それよりも応用に(向くのか)は分かれているんじゃないかなと思っています。
技術を作る側は、昔よりもハードルが高くなっていくんじゃないかなと思っています。良いか悪いかはわからないんですが、なんとなく、自分でコードを書いていて気が付いたらエンジニアになっていたというパスはあまりなくなっていって。逆に喜ばしいことかもしれないんですが、専門的なトレーニングを受けた人が高い障壁を乗り越えて作る側にガッツリ入っていくみたいな、昔であれば学者になるみたいな道を取っていた人たちが、かなり尖った技術を作って世界を変えていくキャリアが出てきているんじゃないかなと思っています。
武藤:確かにそうですよね。「ChatGPTが事業に必要だから(同じようなものを)作れるか」みたいな。それで言うと、専門領域はすでにかなり深いところまで来てしまっているような面はある気はしますね。
三上:使えるけど、中身はよくわからないまま動かしているようなところが多いんじゃないですか。
都筑:うん。
武藤:それで言うと「実はすでに自分はそうなのでは?」と思うこともあります。それこそFortranを書いていた頃は「どの配列にどの順で入れるとメモリ上にどういう領域を確保するか」みたいなことを意識してプログラムを書いていたんですが、ゲームやソフトウェアの領域を見た時に一切……。一切はちょっと嘘かもしれないんですけど(笑)。ほとんどメモリのことを考えなくなって、しかもゲームエンジンを使い始めるともう何が何だかわからないけど動く、みたいな。
(よくわからないままでも)3D空間が使えたりするので、すでにこの世界ではあるのかなと思っていて。それがより極端にキャッチアップをしないと(いけなくなった)。
理系上がりのちょっと技術がわかる人しかできなかった時代から、「作りたいものがあるけど今まで技術的に難しくてできなかったものが、できる」ほうに寄っていくという意味では、エンジニアの仕事が失われるかもしれないけれど、ものづくりという意味ではむしろ対象が広がるのかなみたいな気持ちで、エンジニアという夢はむしろ広がっていくのかなという気持ちで見ていたりもしていますが、どうですか?
三上:使う側にいくか作る側にいくかは明確に分けられて、どんどん差は開くかなと思っています。使う側のほうが、みんなに喜ばれることは確かに多いかなと思うんですが、そんなのは気にせずに作る側のスペシャリストに行くのは……。LLMのところにメチャクチャ詳しくて、そこを総取りするみたいな気持ちとか、SaaSの中の人になるとか、ライブラリやSDKのエンジンを作る側に入るみたいなところは良いと思います。
加川:ありがとうございました。このあともずっと(話を)聞いていたいんですが、そろそろ時間にもなってきたので、この場はこれで締めたいなと思います。ありがとうございました。
注釈:登壇者の希望により、登壇時の内容から一部削除しています。
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