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登壇者鼎談「ChatGPTの時代にコーポレートIT部門はどう生きるべきか」(全3記事)

コンサル業務はChatGPTによって駆逐される可能性がある “事実上のコンサル”がいる時代、勝負の肝は「ファインチューニング」

ChatGPTはコーポレートITの仕事をどう変えるのか、どんな向き不向きがあるのか、ChatGPTを織り込んだ上での組織戦略をどう考えればいいのかを考える、Darsana・AnityA主催の「ChatGPTの時代に『コーポレートIT部門』はどう生きるべきか——変化をチャンスに変える方法とは」。登壇者鼎談ではアルプ株式会社の山下氏と相野谷氏、株式会社 AnityAの中野氏が登壇。続いて、ChatGPTがコンサルタント領域に与える影響について話します。前回はこちらから。

ChatGPTがコンサルタント・アドバイザリー業務に与える影響

中野仁氏(以下、中野):前提が変わっていて。やはりコーディングというものづくりのところ、実装系のところは、もうかなりのインパクトが出るということは確定しています。

一方で何をやるか、いわゆるコンサルタントとかが入っていくような領域。分担でいうとたぶん山下さん(山下鎮寛氏)の領域だと思うんですけれど、そこでの変化みたいな、インパクトみたいなところはどうですか? 

先ほど、販売システムとかの「要件定義書を作って生成してくれちゃうじゃん」みたいな話も十分ドン引きだったんですが。最初に山下さんと話した時に「これも作れちゃいますよね?」みたいな話(がいろいろと出てきた状態)だったんですが、そこはどういうインパクトが(出てくることが)ほぼ確定している感じですか?

山下鎮寛氏(以下、山下):正直、コンサルタント・アドバイザリー業務における人月商売がかなり成り立たなくなるんじゃないかなと感じるようなインパクトがありました。今まではしっかり手間かけて作っていること自体に人月としてお金をもらっていたところでしたが、「もうここは自分でできちゃうよ」とか「スピード速くできちゃうよ」みたいなところがあります。

正直、今はまだユーザー企業の方々がそこまで詳しくないので、コンサルタントはある意味「これで時間を節約していろいろな案件を受けられる」みたいな効率化になっているかもしれないんですが、これが一般的に広がっていくと、「どこで価値を出すんだっけ」という部分だったり、本当に廃業しかねないようなインパクトがあるなというのが正直なところですね。

先ほどお伝えしたように、しばらくはデータの基盤を整えるとか、いろいろなものを連携させないと正確な価値を出せないと思っているので、そこの部分のコンサルティングは残ると思います。

しかし、「それができました」「LLMが投入されました」となったあとに、ビジネス職のコンサルティング・アドバイザリーみたいなことをやっている人間が何をしていくのかというのは、どんどん先鋭化されていくだろうし、多くのコンサルタントやそういう業務は駆逐されていく可能性があるなというのはひしひしと感じています。

中野:アウトプットを作るために、リサーチしてそれを握って、最終的に出てきたアウトプットを、例えばアソシエイトやコンサルタントみたいなのがいて、がんばって「うおーっ」ってやって。あ、でも最近は「うおーっ」ってやらないのか。ちゃんと帰るのか、みんな。

(一同笑)

ちゃんと帰ったり帰らなかったりし(てでき)たパワポをディレクターとかが、シニコン(シニアコンサルタント)とかをチェックして納品して。「これだけのアウトプットを出しました」「人月でいくらでした」みたいなことはちょっときつくなるというか。そもそもあまり成り立たなくなるというのは、ありますよね。

小さなチームでも大きな仕事を引き受けられるようになるかもしれない

山下:逆を言うと、今までそれだけの稼働ボリュームが確保できないとやれなかった案件みたいなのもあって。そういうのは大手SIerさんや大手システムコンサルみたいなところしか受けられなかったと思います。

しかし、そういった手作業の部分のプロセスが圧倒的に効率化されることによって、すごく優れたコンサルティングができる個人が、今まではチームや組織に所属していないとできなかったところを1人でも受けられるようになっていくんじゃないかなというのは、やっていて思うようになりましたね。

中野:チームとしてかなりちっちゃいコンパクトなところは、なんていうのかな、台頭するというか、成り立っちゃうような気がするんですね。ちっちゃいチームでかなり大きな仕事とかを受けるみたいな話は、たぶんできるようになる気がするんですよね。

なので、労働集約性が高いというか、どうしても人手がいないとパワーをかけてしかやれなかった部分は、たぶんちっちゃいチームでもやれることになる。

もっというと、かなりの部分を依頼しなければできなかったようなものも、内部でうまく使うとできるようになるみたいなかたちで。要は全体的な動きとしてコンパクトになっていくんじゃないかなと思うんですね。

勝負の肝になるのは「ファインチューニング」

あと、今日も山下さんの話をあらためて聞いていてすごく思ったんですけど、このLLMはたぶん、今はみんなプロンプトエンジニアリングでプロンプトを投げて「うおー、すげー!」と言っている話だと思うんですが、ファインチューニングでいわゆるクローズドデータみたいなものをどんどん学習に放り込み始めてからが本当の本番のような気がしています。

下手な、業界のことをわかっていないとか、会社の情報や文脈も理解していないコンサルタントが「うおー!」ってすごい短期間で(仕事を)やっても、結局一般論に近いようなレベル、「まぁ言ってることは正しいんだけど」みたいな話になります。(でも)ここに対してちゃんと定型情報・非定型情報を合わせてちゃんと学習で放り込んでいたりすると、自分たちのことをすごくよく知っている、事実上のコンサルみたいなものが発生してしまいます。

しかも、「ケースを100個考えろ」みたいなパワハラに対してもぜんぜん余裕で答えることがたぶんできるので、当分はやはりファインチューニングがけっこう肝なんじゃないかと私は思うんですけど、どうでしょう?

山下:いや、本当にそのとおりだとおもいますね。「いかにそのモデルを自社に向けてチューニングできるのか」みたいなところがかなりコアになってくるかなとは思いますね。

一般的なユースケース自体はプロンプトエンジニアリングのほうに寄っている感はあるのですが、業務システムの領域やコンサルティングの領域は、事情を理解しているとか解像度が高いみたいなところが本当に勝負の肝になってくると思うので、そこに関してはファインチューニングのほうがどんどん力を増してくると思います。

なにより怖いなと思ったのは、Azureは「ファインチューニングもできますよ」というものを提供してくれているので、「じゃあAzureを入れておけば大丈夫ですね」というような環境が今どんどん生まれつつあると思いますね。

中野:そうですね。

Microsoft、OpenAIとその他の企業の今後のかたちであり得ること

中野:最近Microsoftが巨神兵に見えてきたんですよね。

山下:本当に(笑)。

中野:これは火の七日間というか……。「すべてを焼き尽くすつもりなのではないか」というね。最近はMicrosoft 365のCopilotがどれぐらいいけるのかとか、あそこでルビコン川をもう1回渡っちゃうんじゃないかというところで今ドキドキしています。

ちょっとね、GitHub Copilotはいきなり最初から良すぎて。MS365も「まぁ、いわゆるコンセプト的な話なんじゃねーの、最初は?」と思っているんですけど、いきなり初手からやばいのが来たら嫌だなって。嫌だなというか「困ったにゃん」って感じ。

(一同笑)

「進行が早くてどうにもならん」みたいな感じですね。

山下:これは妄想も若干含まれるんですが、MicrosoftさんはAPI Managementというツールを出していて、いろいろなAPI、ChatGPTとかを含めていろいろなAPIに対してコールできるよ。それによって全部が連動していく世界が生まれたり。

あとやはり一番アレなのが、Teamsさんみたいな自然言語のプラットフォームを実はもう持っているので、Teamsで操作するとか、Teamsで投げるとそれら(投げたものたち)ができているような未来が、ユーザー体験としてもすごくスムーズだなと思うんですね。

中野:そうですね。

山下:いきなり何もないチャットでいくんじゃなくて、Teamsへいって、AI的キャラクターに対して「こういうことをして」と言ったらアウトプットが出てくるような世界。この世界のために必要なすべてのピースがもう、わりと押さえられているんじゃないかなというのがかなりあって。そこがすごく次の目玉というか、楽しみだなと我々が思っているところです。

中野:(スライドを示して)ここですよね。横断系、実行のためのインターフェースでなにかをやりたいということで、例えばここにTeamsが入った時に、「新入社員が入社したので、その人に必要な手続きについてリストアップして、できるものを実行してください」みたいなことやると、例えばWorkdayにちゃんと投げられたり。あとは場合によっては別のアカウント、例えばその人が営業だったらSalesforceのアカウントが作られて、権限が付与されて、というトリガーみたいな。

インターフェースにGPTやTeamsみたいな……。要はTeamsとかのチャットツール、コミュニケーションツールのところから投げたものが、ほかのシステムに投げて、できるところをやっておいたみたいな話になるということは、今日話を聞いていてあり得るなという感じだなと思いました。「確かにな」っていう。これはもうなんていうか、そうですよね。すごいですよね。ありそうですよね(笑)。

山下:今はSaaSなどの業務システムを出している各社さんが、自分たちの中にOpenAIさんのAPIを使ってプロダクト化しているんですが、一定のタイミングでおそらく逆転が起こると思っています。

いちいちいろいろなSaaSに触らずにAPIだけ提供して、「みなさんはMicrosoftさんのツールの中で指示を出しちゃうから、わざわざうちのプロダクトに来ないよ」と。メインのプラットフォームは全部MicrosoftやOpenAIがやって、我々はそこに対して計算エンジンとかなんらかのエンジンとしての存在として残っていくばかりみたい(になるよう)なところがあり得るんじゃないかという話を相野谷とかとしながら、戦々恐々としているのが正直なところです。

相野谷直樹氏(以下、相野谷):エンジニアから見ると、「我々はAPIだけで提供して、MicrosoftのCopilot君みたいな人がそれをよしなに叩きに来てくれる」という世界があって。火の七日間が終わるのかなみたいな。「APIとMicrosoftが残った」みたいな感じになるのかな(笑)。

(次回につづく)

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