2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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鈴木健太氏:それでは「新卒入者から1500人規模のCTOに、エンジニアが圧倒的に成長する3つのコツ」というテーマで、これからの未来をつくる学生エンジニアのみなさんに向けて、CARTAのCTOの鈴木健太こと、すずけんが話をしようと思っています。よろしくお願いします。
簡単に自己紹介をしていきます。僕は2011年の頃、学生の時にスタートアップのCTOをしていたのですが、2012年にVOYAGE GROUP、今のCARTA HOLDINGSに入社して、それからずっとソフトウェアエンジニアとして働いてきました。
子会社のfluctに配属されて、そこで広告系のシステムを作っていました。バッグエンドとかデータエンジニアリングとかいろいろやって、CTOをやって。2022年からCARTA HOLDINGS全体のCTOを務めています。そんな感じの経歴です。
得意なことは、データエンジニアリング、Web技術全般ですが、Goの本を書いたり、データ分析基盤を作る本を書いたり、そんなことを昔はしていました。Twitterは、「@suzu_v」でやっています。それから、技術系のポッドキャスト「ajitofm」もやっているので、興味あればぜひ聞いてみてください。
簡単にCARTAの紹介をさせてください。ネット広告領域を中心に、デジタルマーケティング支援、広告プラットフォーム運営など、幅広く事業をやっています。みなさんが今見ている「技育祭」もそうですが、サポーターズもCARTAの事業の1つです。みなさんを支援する事業もやっている会社です。
タイトルにもあるとおり、従業員は1,500人超えです。(スライドを示して)売上総利益、営業利益あたりはこのくらいの規模でやっています。
どんな会社かを象徴するものをもう1枚持ってきました。CARTAのテクノロジーの組織は、「人にもっと、創造的な仕事を」という、TECH VISIONを掲げています。価値観は、「本質志向」「共に信頼し、共に創る」「価値を届け続ける」。こういったものを、テクノロジーに関わるみんなが持って、力強くこの創造的な仕事を実現していく。そういうことを考えている組織です。
せっかくの技育祭なので、みんなのキャリアや、これからの人生、これからどんなエンジニアになっていくかという未来に向けて、僕からなにかプラスになることを話せればと思っています。
タイトルに「成長のコツ」と書いていますが、今日は、主にマインドの話をしようかと思っています。テクニカルな話ではなく、どういうふうに仕事や、ソフトウェアエンジニアリングに関わっていったらいいのか。そういうところを中心に話していこうと思います。
なので、今日は難しい話はぜんぜんしません。何の変哲もない内容に感じるかもしれません。もしかしたら、みんながすでにやっている内容もあるんじゃないかと思います。でも、僕自身がこの10年間、CTOを3回やっていろいろなプロダクトに関わってきた中で、拠り所にしてきたエッセンスを3つのコツにしたので、今日はリラックスして聞いてもらえたらうれしいなと思っています。(みなさんが)かっこいい大人になれるように、と願って話していきます。では、一緒に見ていきましょう。
というわけで、「エンジニアが圧倒的に成長する3つのコツ」。実体験を基に話していこうと思います。3つのコツはこちらです。「好奇心」「一日一歩進む」「信頼」。この3つについて今日は話そうと思っています。非常にシンプルですね。
まずは1つ目の「好奇心」について、話をしていこうと思います。みなさんは、いろいろなツールを触ったり、興味持ったりしていると思いますが、最近おもしろいなと思ったツールはありますか? Zoomのチャットに書いてみてください。
(コメントを見て)ChatGPT多いね。「Notion」。いいですね。ChatGPT率めちゃくちゃ高いね。ありがとうございます。いいですね。SQS、渋いですね。いいですね。
次の質問です。そのツールを自分で動かしてみましたか? みんな動かしてみましたか? (コメントを見て)「もちろん」。さすが。いいね。技育祭、いいですね。できていないっていう人もいるね。
その次の質問は、自作のプログラム、あるいは自作のソフトウェア、ツール、プロセス、そういうところに組み込んでみましたか。そこまでやっていますかね。(コメントを見て)半々ぐらいかな。
みんな興味を持って、いろいろなツールを実際に触ってみたり、あるいは自らのツールに組み込むことを考えたりしていると思います。ここでみんなにも反応してもらったように、やはり使っていけば使っていくほど、興味が湧いてくるし、おもしろくなってくると思うんですよね。
今日の1つ目のコツとして好奇心の話をしますが、好奇心って、それ自体は「おもしろい」と思う気持ちで、やってみるとどんどんどんどん大きくなりますよね。やればやるだけ、あっちも知りたいな、こっちも知りたいなっていうのが出てくる。それが好奇心です。
「知っている」と「実際触ってみる」と、さらにそれを「自分の道具として使っていく」というところに段階がありますが、好奇心というものをどういう方向に、どういうふうに大きくしていくか。そういう話を少ししようと思います。
先ほど、自分のツールに組み込んでみましたか? という、すごくシンプルな質問をしましたが、まず「縦に深く掘る」という話をします。
あるライブラリがあった時に、1つ目に聞いた質問は、「知っていますか?」「興味があるものはありますか?」「おもしろいと思ったものはありますか?」でした。
Twitterやブログを見たり、友だちに聞いたり、いろいろあると思う。そのあとに実際にその公式のドキュメントを読んでみたり、使ってみたり。動かしてみたら、なんかうまく動かない、どうなってるんだろうと仕組みが気になって、実際にソースコードを読んでみる。
さらにその先は、もっともっと踏み込まないといけない。他に使ってる人たちは、どんな課題を感じているんだろうな、この開発者の人たちってどんな問題にトライしてるんだろうなとか。
そういうのはGitHubのissueやパッチを見るとわかるし、もっと深く使っていく中で「ここが使いにくいんだよな」とか、「ここにちょっとバグがありますね」とか、そういうことissueとして書いてみる。
そして、Pull Request。実際にその問題を解決するところまで出す。もちろん小さなものから大きなものまでいろいろありますが、みんなどこまでやっているでしょうか? やはり深くなればなるほど、好奇心というのはさらに深いところまで、掘っていっているんですよね。だから、最初の「知った」というところと、やはり(issueを)書いて、「なにかを変えている」ところにはすごく違いがある。
この深さをすごく大事にしてほしいと思っています。みんながこれからエンジニアリングの世界に入っていく中で、どこまでの深さに行けるかというのは、やはりベンチマークになってくるんじゃないかなと思っています。
だけど、深さだけじゃないなとも思うんです。深くが縦という方向性だとするならば、「探索」というものもあるだろうと(思います)。つまり、横へ行くということ。ChatGPTに興味を持って、どんな仕組みなのか、LLMってなんなのか、ディープラーニングってなんなのか、機械学習ってどうなっているのか。下の方向に仕組みを掘っていって、論文も読むという方向もあれば、探索というのはどういうことでしょう、ということですね。
エンジニアリングは、深く行くことだけに着目されがちですが、実際にみんながこれから人生を通じていろいろなものを学んでいく中で、やはり横に行くこともすごくたくさんあると思うんですよ。
例えば他の言語で書いたらどうだろう、あるいは似たようなツールはあるかな、オープンAIはこういうふうにやっているけど、別のツールだとどうなんだろう、あるいは別の分野は、ちょっと想像しにくいかもしれないけれど、フロントエンドではこれが定番パターンだけど、バックエンドだとどうなんだろうもそうだし。
あるいは、本当に領域を変えて、例えばソフトエンジニアリングではこういうパターンがあるけれど、建物を建てる時にはどうなんだろうとか。あるいは他の会社だとどうなんだろうとか。
これは実際に働いていくと思うことですが、まったく同じ領域の問題を解こうとしても、まったく同じプロダクトは出てこないんですよ。絶対に会社によってアプローチが違うし、成果物が違うし、環境も違うし、チームも違うんですよね。
他の会社も似たような問題にアプローチしているんだけど、やり方が違う。これもやはり横に探索することなんですね。(コメントを見て)そうそう、深さ優先と幅優先ですね、まさに。そう。もっとシンプルにするならとか、今、Macの上で動かしているならこうだけど、WebAssemblyで動かすならどうするんだろうとかね。あるいはラズパイで動かすならどうなんだろうとかね、いろいろな想像ができますよね。
そういうふうに横へ興味を広げる。深く行って知っていることがすごくあるかもしれないけれど、ちょっと立ち止まって、横に行ってみる。それも好奇心にとってはすごく大事なことだと思っています。
今までみんなは、プログラミング以外のこともすごくたくさん学んできたと思う。例えば、日本語をしゃべることもそうだし、なにかを人に伝えることもそうだし、書くこともそうだし、小説を読んで、その感情を読み解くこともそうだし。
いろいろなことをこれまでの人生の中で学んできたと思いますが、必ずしもレールがあって、それのとおりにみんな来たわけじゃないと思うんだよね。気の向くままに、偶然のきっかけや出会いによって、好奇心の方向性は予想しなかったところに行く。今日技育祭に来て、この話を聞くことだって、たぶんみんなにとっては偶然かもしれないし、そういう出会いがあるんじゃないかなって思っています。
だから、ただただ縦に行くことだけじゃなくて、横に行くこともどこか頭の片隅に置いてほしい。そう思っています。
例えば、バックエンドエンジニアになりたいとか、iOSのエンジニアになりたいとか、データエンジニアリングやりたいとか、機械学習やりたいとか、近い将来こういうことをやりたいという目標がなにかあると思うんですよ。
先ほど言ったように、これは偶然そういう方向になる。学校に行ったら、隣の友だちがなんかおもしろそうなことをやっているから聞いてみたら、「最近、俺Rustが超好きなんだよね」と言っていて、気がついたら自分もすごくRustが好きになっちゃうとか。そういう偶然って起きるじゃないですか。これは生活の中でもそうだし、仕事をしていく中でも、みんなが学んでいく中でもすごく楽しいことだと思うんだよね。
「計画的に偶発的に行こうよ」と言っている人もいます。クランボルツという先生がいるのですが「計画的偶発性理論」をググってもらえればいいかなと思います。
要するに、なんだかんだ8割ぐらいのことって意外と偶然に起きている。みんながこれから就職や研究をしていこうと思った時に、レールを引いて達成しようと思ったことでも、きっとそのすべての過程をみんなの先生、教授、友だち、あるいは僕だって予想できるわけじゃないんですよ。
それは自分もそう。自分だって、未来に何が起こるかはわからないし、僕だって、今CTOをやっているけれど、これから先、どんな人たちとどんな仕事をするのか、どんな未来をつくれるのかはわかりません。やりたいことはあるけれど、そこにどうやって行き着くかはやってみないとぜんぜんわからないんですよね。
そういうことを言っているのが、この理論です。僕はこれがすごく好きで、(偶然)だからこそ、自分がおもしろいなと思う気持ち(が大事で)、楽観的に行こうよと。「自分がやろうと思っている方向にあまり行けていないな」と思うんじゃなくて、やったらやったで楽しもうよと、そういうのが大事なんじゃないかなと思っています。
少し自分の話をしようかなと思います。まさにセレンディピティの話ですね。最初、CTOを3回やっていると話しましたが、僕は大学の時に、Webと人工知能の研究をしていたんですよ。リアルなWebサービスは、やはり作らないとわからないなって思って、就活中なのになぜか起業しました。何をやってんだって話なんですけど。旅行のWebサービスを作ったんですよ。サイト上で初対面の人が一緒に旅行のプランを作って、旅行するというめちゃくちゃクレイジーなサービスなんですよ、今考えると。
でも、それでなんと人が出会って、年間何百人も一緒に旅行するということが起きたんですよ。それを自分でやって初めて、「あ、webサービスってすごい可能性を持ってるな」って思って。それは「このChatGPTいいよ」って人に言われてやったのと、やはり自分がやって、その体験をするのはぜんぜん違うんですよ。
そんな経験を学生の時にして、「Webエンジニアリングの世界にやはり行こうかな」って思ったんですよね。研究でも、Webや人工知能をやっていたのもあって、データをもっと使っていい感じにするのが、これからの社会では求められていて、その方向に僕の次にやりたいことがあったんですよ。
広告はめちゃくちゃデータ使うらしいぞ! と聞いて、その当時のVOYAGE GROUPに新卒で入社しました。
みんな広告って、どれくらいデータがあるか、想像がつきますか?例えば僕のやっていたシステムだと、1日に10億回とか広告を出すんですよ。10億回広告を出すって、ちょっとイメージが湧かないですよね。秒間に広告を何万回も出すんですよ。
当然、その出した回数分だけログも溜まるし、1,000を超えるメディアへ広告を出すし、何千万人に広告を出すんですよ。そういうものがログとしてあって、ヤバい世界だなと思って。そんな基盤を作るという仕事をしばらくしていたんですね。
データの基盤を作ることはだいたいできたんですよ。いろいろあるんですけど、当時はHadoopを使ったりして、AWSに課金すればだいたいできるなとかわかってくる。
そうすると、今度はそれをもっとうまく使えるチームを作りたいなと思ったんですよね。なので、データサイエンティストのチームを作って、その時、4、5人ぐらいの解析チームをリードするマネージャーをやりました。
みんなも学祭とか部活とか、ハッカソンのリーダーとか、いろいろあると思いますが、マネジメントやると、いろいろな問題が起きるじゃないですか。
自分の思ったとおりにならないなとか、モチベーション上げなきゃなとか、課題がたくさんあるなとかありますよね。そういうのをやっていった時に、やはりもう1度プレイヤーとして、練度を上げるほうが、たぶんチームをうまく活かすことができるなと思って、もっと大きな開発チームに行きたいと思ったんですよ。
その時にfluctのチームに入って、やったという感じで、その後もCTOやったりしたのですが、こうなりたいな、やってみたいなという好奇心が、年単位でも、月単位でも、日々あるんですよ。
越えなきゃいけない、あるいはやってみたいという、好奇心が、僕のキャリアの中ではすごく中心にあります。だから僕は結局、新卒で入った会社で10年後にCTOやっているんですよ。(新卒で)入社した会社のCTOになろうっていうのは、普通に考えたらちょっとおかしい……おかしいっていうか、別にいいと思っていて、そういう人が増えてくれたら僕はすごくうれしいし、仲間だと思っているんですけど、(当時は)そんなことを思って入社していなかったんですよ。
どっちかというと、楽しそうだな、いろいろな技術をやっているなと思って入ったのですが、一貫性のない感じでやっていたら結局そうなっちゃったんですよ。でも、途中でプロダクトと向き合っていたり、人と向き合っていたり、執筆していたら、大事にしたいものや、やりたいと思うもの、好奇心が持てるものがすごく出てきました。
今はCTOとして経営をしていますが、今も学びたいもの、知りたいものがどんどん出てきているので、それが僕にとってキャリアの作り方、あり方だと、今なら言えるんです。
ちょっとコツをラップアップすると、好奇心はやればやるほど育っていくものです。みんなは今日こうやって技育祭に参加して、いろいろなことに興味を持って僕の発表だって聞いてくれているし、これまでもこれからもすばらしい発表がありますが、やはりそれらを聞いたり、見たり、やればやるほど育ちます。
縦に行くも、横に行くも、僕は自由だと思うし、それがみんなの未来をすごく豊かにすると思うので、ぜひその楽しむという気持ちをすごく大事にしてほしいなって思っています。
(スライドを示して)3つ目は、みんな考えすぎる時があると思ってるからこそ書きますが、僕はキャリアに完成はなくていいんじゃないかなと思っています。
これから面接など、いろいろな場所で「どうなりたいの?」と聞かれるかもしれません。僕もよく聞きますが、それは変わってもいいから、今この時点で「こういうこと学びたい」、「やってみたい」ということがあることはすごく大事です。それは必ずしも固定されていなくてもよくて、どんどんどんどん未来は変わっていくべきだと思うし、その時自分が一番興味を持っている「今僕はこれをやるべきだ」と思う、その衝動や大事にしたいという気持ちを何より一番大事にしてほしいなと思って、1つ目のコツに好奇心を置いてます。
というわけで。(コメントを見て)「『JUST DO IT』が脳裏に無限再生された」、いいですね。ちなみに今日はこういう感じのテンションなので、本当に情報量としてスライドがめちゃくちゃ少ないです。ちょっとラジオテイストかもしれませんが、楽しんでリラックスして聞いてくださいね。
(次回へつづく)
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