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サービスの成否を分けるプロダクトマネジメント“スキル”の鍛え方(全2記事)

「世界時価総額トップにはプロダクトカンパニーが並んでいる」 及川卓也氏が語る、今の時代に求められている“プロダクト”

プロダクトマネージャー育成の第一人者であるTably社代表取締役の及川卓也氏が「サービスの成否を分けるプロダクトマネジメントスキルの鍛え方」について講演する「【DX推進・新規事業担当者向け】 サービスの成否を分けるプロダクトマネジメント“スキル”の習得法」。まずプロダクトの重要性について話します。

プロダクトマネジメントの支援などに携わる及川氏

及川卓也氏:あらためまして、Tablyの及川と申します。本日は冒頭に私から「サービスの成否を分けるプロダクトマネジメント“スキル”の鍛え方」という題で話をしたいと思います。先ほど簡単に司会の方からも紹介していただきましたが、私はもうこのIT業界に30年以上いるベテランの域に達する人間です。

もともと、もしくは今でも技術者である自負はあるのですが、いわゆるソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートした後、プロダクトマネージャーやエンジニアリングマネージャーという立場で、プロダクト開発やプロダクト開発組織、エンジニアリング組織のマネジメントなどを行っていました。

外資系での勤務が長く、みなさまが知っているところでいうと……。最初の会社も本当は覚えていてほしいのですが、もうない会社なので今日はあえて説明しません。MicrosoftやGoogleに勤めて、そこでプロダクトマネジメントをいろいろ経験させてもらいました。

それをもとに、現在ではいろいろな会社の、スタートアップからそれこそ大企業まで含めて、プロダクトマネジメントの支援やプロダクト開発組織作りのお手伝いをしています。

(スライドを示して)他にもスライドにはいくつか書いてありますが、いろいろな会社の顧問といった肩書きも持っています。

本セッションのコアになる部分

(スライドを示して)今日は冒頭に今回の話のコアになる部分、このあとのパネルディスカッションに続く部分のような、基の部分の話をしたいと思います。

1つ目は、プロダクトマネジメントがなぜ重要か。今日来ている方は、もしかしたら知っている方も多いのかなと思いますが、あらためてこの重要性について話をできればと思います。

次にその中心となるプロダクトマネージャーにどんなスキルが必要か、最後にプロダクトマネージャーを目指すためにはどのような道筋があるかという話をしたいと思っています。

そもそも「プロダクト」とは何か

まず、プロダクトマネジメントがなぜ重要かという話をします。その前に、そもそも「プロダクトマネジメント」というものはカタカナや英語からもわかるとおりプロダクトをマネジメントすることですが、ではその「プロダクト」とは何だろうというという、みなさんで共通理解を持っておきたいと思います。

(スライドを示して)「プロダクト」というの(について)は、実はいろいろな人がいろいろな定義をしていますが、私たちの会社ではここにあるような定義をしています。「プロダクトとは市場に提供され、なんらかの個人や団体の需要を満たすもの」です。

極めて当たり前だと思われる方も多いと思います。そのとおりです。でも、まずは当たり前のことを当たり前と理解することも重要ではないかと考えています。

これは前半と後半に分けられるかなと思いますが、わかりやすい後半の部分から説明します。「なんらかの個人や団体の需要を満たす」とは、何度も言いますが当たり前の部分で、要は、プロダクトは個人や組織、企業やある部署が求めているものをきちんと提供できないといけないという話をしています。

当たり前といえば当たり前ですが、これができていない、もしくは整合性が取れていないものがあるなら、それはプロダクトではありません。もしくはプロダクトと言い張っていても、実際にはプロダクトとして使われていないものになってしまうので、この部分が本当に一番大事なところです。

この(後半の)当たり前なところはいいのですが、前半部分の「市場に提供され」というところが、このあと説明するところにもつながるところで、けっこう重要です。ここには2つほど意味があります。

1つはまず市場。マーケットや市場みたいなものを考えてほしいです。例えば市場みたいなところ(を考えてもらうの)でもいいのですが、どういうやり取りがされているかというと、1対多のやり取りです。

例えば野菜を売っている業者さんがいるとしたならば、採れた・生産されたキャベツをある1人の方だけに売るのではなく、市場にきて、興味を持った方。その方々に販売するかたちで、1対多の需給のやり取りが成立しているわけです。

キャベツも、もしかしたら1品ごと若干異なるかもしれないけれど、ざっくり“キャベツ”ということは同じで、いわゆる汎化・汎用化されている、多くの人が求めるであろうキャベツを、1対多で販売しているというのが、市場で提供される条件になるわけです。

もう一方で「市場で提供される」というところでは、キャベツならキャベツを売る、お客さんからすると買うというところで、その対価を支払うという、経済的なやり取りがされるわけです。なので(プロダクトは)1対多で、かつ、きちんとその価値に対してお金が支払われるようなものです。

プロダクト(の中)は実際には収益に関わらないものもあるのですが、多くの場合は間接的にでも収益に関わるようになります。なので、しっかりとお金を払ってでも使いたいと思っていて、1対多のかたちで成立するものがプロダクトであると考えたいと思います。

今話したように、明確なのは「プロダクトではないものは何か」ということです。つまり、1顧客のみに提供されるものはプロダクトではありません。

なぜプロダクトが重要か

(スライドを示して)なぜこのプロダクトが重要かを考えてみたいと思います。まず提供者側。プロダクト事業を行っている企業側から考えてみた場合、先ほどお話ししたように、1対多の関係性が生じるわけです。つまり、1つ作ったならば、1つのものが多くの方々に利用される。利用してもらって、そこで収益が上がることになるわけです。

なので、1品1品作るよりも非常に収益性が高いものになります。これが提供者から見た時に、プロダクト事業を行ったほうがいい理由で、プロダクトで重要になっている理由になるわけです。

一方で利用者から見た場合は、考え方によってはそういった汎用化されているプロダクトを使うことで、自分たちが本当にほしいものに手が届かない、かゆいところに手が届かないものに見えてしまうかもしれません。しかし、長期的に見た場合にはコスト的なメリットがあり、かつ集合知的進化を期待できるというメリットがあります。

コストメリットというのは簡単で、要は1品ずつ作ってもらうとしたら、極端な話はスクラッチから作り上げてもらうことになるので、その分のコストがかかります。

しかも、長期的な視点で考えた場合。例えば追加機能が必要になった時、しかも(それが)自社理由ではなく、例えば会計システムのようなものがあって、電子帳簿保存法ができたとか、インボイス制度ができたという時に、制度が変わったからという理由で、もう一度自分たちで発注をかけ、機能追加をしてもらわなければいけなくなるということで、継続的にコストがずっと発生していく。開発のコストが発生するわけです。

一方で汎用製品やプロダクトを使った場合、今のリカーリング、SaaS的なものには利用料が必要になりますが、それを払っていたなら、例えばそういったレギュレーションや制度が変わった時は、自然とそのプロダクトに反映されたり追加されたりする。なので、自分たちがわざわざ追加注文をしなくても、プロダクトが勝手に進化していく。それを享受できます。

今言った(ような)「制度が変わった」というだけではなく、プロダクトは進化し続けないと継続的に契約してもらえない・使い続けてもらえません。競争も激しいので、黙っていてもどこかの誰かが「ほしい」と思ったものがどんどんプロダクトに加わっていき、どんどん使いやすくなっていく。機能が増えていく。価値が高まっていくことになります。これを享受できるところは、利用者からしてみてもメリットがあるわけです。

この両方を考えて(具体的に)どういうメリットかというと、スケールするわけですね。収益性がスケーラビリティあるかたちで向上していく。利用者から見てもプロダクトがどんどん進化していく。スケール的に価値が向上していくところが、両者にとって双方良しのかたちになっています。

(スライドを示して)結果として、私は「今はプロダクトの時代だ」とあえて言っているのですが、例えばMicrosoftという私も昔いた会社の営業利益率はとんでもなく高いんですね。ずっと40パーセントを超えています。これは先ほど言ったように、1回作ったものが多くの方に利用されているからということに他ならないわけです。

世界時価総額トップの企業を見ると、テクノロジーカンパニーが多く含まれているのと同時に、そのテクノロジーの活かし方はいわゆる一社ごとに作り上げるような、日本でいうSIer的なものやコンサル的なものであるより、プロダクトカンパニーが世界時価総額のトップのほうに並んでいるのも、やはりプロダクトが今求められている理由を示しているのではないかと思います。

「プロダクト」と「ソリューション」

今お話ししたように、日本ではSIerという業界もあり、この方々がやっていることを私は否定するつもりはまったくありません。こういった方々がやられている事業は、ソリューション事業と呼ばれることもあります。これは呼び方は各社によって違うのですが、ここではあえて「ソリューション」と呼びます。

(スライドを示して)このプロダクトとソリューションについては細かくは説明しませんが、見てもらってわかるように、プロダクトは1対多で汎用性のものがあり、利用者が一種合わせるようになるけれど、多くの利用者が必要となるものが入っているので、ほとんどの場合はこのプロダクトで満足してもらえるというものです。

利益率も高く顧客のコストは小さく、継続的に払うけれども、トータルで見ても十分にコストメリットがあるものになっています。一方で、ソリューションはその逆のかたちになっていて、これを全否定するわけではないのですが、プロダクトとは真逆のかたちになっているわけです。

本来のベストなもの(として)は、プロダクトをベースにしながら、その上にプロダクトにカスタマイズレイヤーみたいなものがあり、そこでソリューション的なものを行うことがあれば両方をうまく合わせたかたちの提供もできるし、利用もできるかたちになります。

ただ、いずれにしてもやはりプロダクトを核にして考えていくことが、今の時代に求められているのではないかと感じます。

このようにプロダクトが重要になってきている中で何が必要かというと、プロダクトマネジメントです。今まで以上に成功する・成長し続けるプロダクトが難しくなっている中で、プロダクトマネジメントが重要になってきています。

(次回に続く)

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