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インターネットの歴史から紐解く、web3(全3記事)

web3は「巨大プラットフォーマー」へのカウンターカルチャー インターネットの歴史から紐解く「経済圏」の変化

TOKYO創業ステーションの6周年を記念したスペシャルイベントの模様をお届けします。テーマは「web3×起業」。web3領域のスペシャリストをゲストに迎え、世界的に注目されるweb3を深掘りしていきます。本セッションではアル株式会社代表取締役のけんすう(古川健介)氏と株式会社ナナメウエ代表取締役の石濵嵩博氏が登壇した『インターネットの歴史から紐解く、web3』の模様を届けします。

web3とは「カウンターカルチャー」である

けんすう氏(以下、けんすう):今日のトークテーマは「インターネットの歴史から紐解くWeb3」というのをやりたいなと思っています。

せっかく石濵さんもweb2.0時代というか、もうバリバリのコミュニティサービスとかを長らく作ってきたので、ぜひ話したいなぁと思ってるんですけど。なんでこっからするかというのをちょっと話したいなと思っています。

お聞きの人、まだweb3とかよくわからないっていう方も多いと思うので、やってます。これ、何かというとですね。「web3とは何ぞや」って話、する時に、いろいろ迷った結果、僕は「カウンターカルチャーです」っていう説明が一番わかりやすいなと思ってるんですね。

「これどういうメリットあるんですか」という話から入ると、意外とみんな理解できないっていうのがわかったので。カウンターカルチャーなので、メインカルチャーを知りましょうっていう話のほうがいいかなとちょっと思っています。

そもそもweb1.0って何かっていうと、いわゆるマスメディアとかがあって、そこから情報が来るっていう感じですね。なので、これインターネットと言えども、実際はほぼ一方的に情報をもらってたみたいな感じかなとちょっと思っていたりします。

要はポータルサイトとか、ニュースサイトとか、ECサイトとか、この時代に生まれたものですね。何がすごかったかというと、やっぱりインターネット以前のこと、みなさんあんまり覚えてないかもしんないですが、やっぱり基本的にテレビとか雑誌とかマスメディアの時代だったのが、インターネットで発信しようと思った人が発信できるようになったみたいな感じが革命的だったかなと思っています。

web2.0で起こったのは「巨大なプラットフォーム」の台頭

けんすう:一方で、基本的には発信したい人ぐらい、一部の人しかやんなかったので、まあ、ある意味大差ないといえば大差なかったかなと思っています。じゃあ、web2.0は何かというと、これ。便宜上の区分なので、バージョンアップではなくて。これも誤解されがちなので書いているんですけど、当然重なってる感じですね。

だから当然一方通行のメディアもぜんぜんありますし、web2.0的なものは2004年ぐらいから爆発的に増えたって感じです。web3も同じような感じで、web2.0がなくなるわけではないっていうのだけちょっと覚えといてください。

いろんな出来事あったんですけど、まあこんな感じでいろんな出来事あって、だんだんと相互に情報をやりとりするようにしたよっていうのが、まあ、web2.0かなと思ってます。

web2.0の起こったきっかけ、これもさらりといきますが、オライリーメディアの人が言ったっていうのがポイントです。これ、基本メディアの人が言ったんだなぁっていうのが、僕の中でちょっとポイントだったので書いてます。

この相互にやりとりするようにしたよっていうのがweb2.0で、「Cookpad」みたいにレシピ書く人と読み手がいてマッチングしたりとか、お互いにSNSとかみたいに情報を読んだり書いたりするっていうのがポイントかなと思ってます。

こんな感じですね。SNSとかいろいろあったよねと。まあ、こういう技術的な変化がありましたという感じなんですけれども。何が起きたかっていうのがたぶんポイントで。これ、やっぱり巨大なプラットフォームが出現して、圧倒的にシェアを伸ばして独占するっていうのが起きたっていう感じですね。

よく言われるのが日本全体よりもいわゆるGAFAと呼ばれる4企業のほうが時価総額が高いよねとか言われるんですけど、ここ10年ぐらいでもう圧倒的に勝ちましたっていう感じになってます。

「圧倒的な中央集権の独占的なプラットフォーム」へのカウンターカルチャー

けんすう:これ、中身はあんまり理解しなくていいんですけど、要はプラットフォーマー、強いMOATと呼ばれる、競合を排除する溝みたいなものを持っていてっていう状態なんで、もう新規参入者が勝つことが難しいんですよ。

GoogleとかFacebookを作ろうとしても、もう絶対無理みたいな状態になりやすいっていう。勝てるとしたら、もうシリコンバレーの企業ぐらいで、ここもシンプルに投資額が100倍ぐらいあるので。

まぁ中国とかインドとか日本が束になっても、シリコンバレーの投資額には叶わないので。まあ、作ろうと思っても無理っすよねみたいなことが起きてきているっていうのがあると思います。

なので、web1.0は一方通行で、web2.0が双方向になっていたよねみたいなのが歴史なんですけど。重要なこと、web2.0時代に圧倒的な中央集権の独占的なプラットフォームができたよねっていうのが、僕はポイントだと思ってます。

石濵嵩博氏(以下、石濵):うん。

けんすう:これのカウンターカルチャーとして出てるっていうのが、個人的にはおもしろいので、ちょっと紹介しました。

こっからweb3の話まで行こうかなと思ったんですけど、そこまで話すと本当に時間がなくなっちゃうので、実際に2人で話していきたいなと思ってます。

「巨大プラットフォーマー」は企業だけではない

けんすう:石濵さんとディスカッションしたい1つ目として、web2.0までの時代と、web3の一番大きな変化は何かっていうのをこっからちょっと自由に話したいんですけれども、思いつくものありますか。

石濵:まあ、でもさっきちょっと僕のプレゼンで述べさせていただいたようなインターネットみたいな自律分散ネットワークっていうもの自体が、やっぱり価値をつけられなかったっていうところ。

要はいくらですかっていうような、実際の具体的なプライスみたいなものをつけられなかったところが、トークンの仕組みによって、そういうちょっとふわっとした、けど、「めちゃくちゃ価値があるよね」って言われるものに対しても、正確に価格づけっていうのができるようになったので。

それ自体が流動する世界っていうのは、非常におもしろいことができるんじゃないかなって思っているっていうのが、まず1つ。

2つめ。さっき聞いて、ちょっと思ったのが、巨大プラットフォーマーって、企業だけじゃなくて国とかもそうだなって思っていて。

けんすう:はぁ、はぁ。なるほど。

石濵:例えば僕とかって今32歳なんですけど、まあここまで言うとどうなんだっていうところはありますが、ちょっと過激めに言うと、僕たちがどんだけすごくがんばって、この経済を盛り上げようとしても、たかが知れてるかなって思っていて。

小さい力だけだと、要はマクロの環境。例えば財政状況だったりとか、少子高齢化の波みたいなものっていうのは変えられないものがあって。

僕たちがどんだけがんばっても、日本円の価値が上がっていくか、あるいは日本の時価総額が上がっていくかっていうと非常に難しいみたいなところがあるなって思った時に、じゃあそれをコミュニティに切り出して、自分たちがまず一番最初コミュニティに切り出した小さいところで為替をつりあわせますと。

日本円でいくら、僕たちのコミュニティのトークンがいくらです、みたいなかたちでつりあわせて、そのあと僕たちのコミュニティが大きくなればなるほど、いろんな人を巻き込んで、経済性を持ち込んで1つの国を作るっていうことをすることによって、価格だったり価値だったりっていうのが自分たちの努力だったりとか、自分たちのコミットメントによってやっぱり上げられるよねって思っています。

そういうもの、要は自分たちの力によって影響が出せるっていうか、良いメリットが僕たちも享受できるし、そのコミュニティのみんなも享受できるよねっていうところが、新しいこのトークンの価値だなと思っています。

自分たちが作るコミュニティで経済性が生まれる可能性

けんすう:そのブロックチェーンの仕組み自体に貢献できるみたいな感じなんですか? イーサリウムだったり、イーサリウムに貢献できるっていう、その実感がけっこう大事というか。

石濵:あ、そうです。おっしゃるとおり。「Yay!」だったら、「Yay!」のコミュニティでいいです。「Yay!」のコミュニティがより良くなるように作っていけば、人が増えるじゃないですか。さらに、そこに対していろんな人が入ってきた時に、その中で経済性が生まれるかもしれない。

仮に経済性が生まれていって、コミュニティがどんどん大きくなっていくと、最初使う人は5,000人、でも、1ヶ月後に5万人になって、50万人になって、500万人になって、1,000万人になるっていった時に、その時のコミュニティが持っている価値って、相当に大きいものだと思っています。

これを日本国でやるのって非常に難しいなって思っていて。要はやれることが限られる。さっきのプラットフォームと一緒で、Appleとか、要はGoogleとかがある中で、じゃあ僕たちがそんなことができるか。資金的な問題もあったりとか、いろんな問題があってやりにくい。

でも、じゃあ自分たちが作るオリジナルのコミュニティだったら、僕たちが決定権を持っていて、まあ、僕たちがって言っちゃうと、ちょっと中央集権的なんですけど。要はガバナンストークンを持っている人たちの、DAOによって決めることができて。協力して成長させていけるので。

自分たちのコミットメントがそのまま自分たちのインセンティブだったりとか、評価につながっていくような世界線っていうのが作れるんじゃないかなって思っています。それはおもしろいなと思います。

けんすう:例えばweb2.0の時、僕、Wikipediaとかたまに書いてたんですけど、初期に書いてたのは、価値があるけど、それのインセンティブって一切もらえてないみたいなのじゃないですか。

石濵:そうですね。

けんすう:ただ「食べログ」とか「クックパッド」って、中の人に聞いたんですけど、やっぱりトップ100ぐらいの力がめちゃくちゃ重要で。「ぶっちゃけもうトップ100でトラフィックの8割ぐらいです」みたいに言うんですね。

でも、その人たちって、要は初期から支えてたとしてもインセンティブないし。逆にお金払っても変じゃないっすか。

「10万円あげます」とか言われると逆に萎えるので。これ、プラットフォーマーが搾取しているとか単純な話じゃなくて、プラットフォーマー的にもお礼が言えないし、ユーザーもそれをもらいづらいみたいなのがあったのが、解決しそうな感じはしますよね。

石濵:それが、ウォレットが入って、ナチュラルに貢献によってトークンが支払われるよねみたいなものが当たり前になっていくと、そこの幅ってすごく広がるんじゃないかなとは思いますね。

けんすう:いや、おもしろい。

インターネットの「安全性」と「自由度」の問題

けんすう:逆にデメリットじゃないですけど、その世界が来ることによってここは失われるんじゃないかみたいなのってあったりしますか。

石濵:まあ、でも、要はweb2.0時代のインターネットの世界って、言わば守られてたわけじゃないですか。ただ、Appleとかにエロサイトってないじゃないですか。とかまあ、なんなら「漫画村」みたいな(違法性が高い)サイトとかもないと思ってて。

なんでかっていうとAppleが審査してくれて、そういったものを排除する。でも、インターネットって、web1.0時代のインターネットはどうなのかっていうと、まあ、そういうのがあるじゃないですか。

けんすう:うん。

石濵:そこら中にいっぱい。なんでかっていうと、要はインターネット自体は自律分散ネットワークで、僕たちが決めて僕たちの責任のもと参加して、それが違法なものだったら僕たちが捕まるっていうようなルールでやられているので。

いわゆるプラットフォーマーが管理する世界って、まあ、そういったものから守られるっていうものもあります。ただ、自由度が減ります。

要はAppleに対して競合するようなサービスは出せませんとか、あとは何かユーザーが使う時に、課金が3割プラスですと。なんでかっていうと30%は税金としてAppleに納めなきゃいけませんとか。

あとAppleの審査で、「通るかな、通るかな」ってやんなきゃいけないみたいな。まあ、そういうところがなくなるっていうところはあるんですけど。

一番大きいところでいくと、彼らは彼らでプラットフォームを守っている部分があったので。まあ、そこの守っている部分が享受された、web3の世界だとまあ使いにくいところはあります。

Twitter社の中央集権的な役割のメリット・デメリット

けんすう:確かにweb3のSNS、完全分散型みたいなのが出た時に、誰の責任で削除するんだとかめちゃくちゃ難しいっすよね。

石濵:めちゃくちゃ難しいっす。めちゃめちゃ難しくて、そことかはすごく大きなテーマで。結局今のweb2.0の時って、表現の自由みたいなものが問題になるんですけど。

表現の自由にあふれているようなソーシャルネットワークサービスを作ると、今度はヘイトだったりとか、不適切コンテンツだったりとか、ウイルスのリンク、エロサイトへのリンクみたいなものであふれることは容易に想像できるんで。

そこをどうバランスしていって、しっかりとその参加者できれいにするとか。コンテンツモデレーションとかを中央でやるんじゃなくて参加者が行うみたいなこととかをやるような、そういうソリューションとか出てくるだろうなとは思うんですけど。

けんすう:そうですね。

石濵:めちゃめちゃ難易度高いと思います。普通。

けんすう:難易度高いですよね。アメリカでトランプ支持者と反トランプ派の人が半々ですみたいな時の、この難易度の高さ。やばいですよね。

石濵:いや、半端ないっす。web2.0で「こんなんやって削除された!」とか「削除されてない!」とか「凍結された!」とか、ま、そういう話はもちろんあって。要はTwitterって、じゃあトランプさんを凍結してよかったのかっていうと、そこはいっぱい議論があって。

けんすう:議論ありますね。

石濵:僕は凍結すべきじゃないっていうような立ち位置なんですけど。とはいえ、Twitter社が中央集権的にやっていたメリットもまあ当然あるので、そこは享受しつつ。

とはいえ自分たちのコンテンツが凍結されたら失われちゃうんで。自分たちが過去やってきたこととか、積み上げてきたものとか、わーってなくなっちゃうんで。プラスとマイナスがある時に、今、それこそカウンターカルチャー的にweb3のほうっていうところが、より注目を浴びているのかなって思っています。

けんすう:なるほど、確かに。普通にアメリカ大統領凍結ってすごい話ですからね。

石濵:半端ないっすね。

けんすう:それぐらい影響与えちゃったら、けっこう本当にやばい話だなと思って。

石濵:一企業がそれをできちゃってるんで、まあ、そこは確かに問題だとは思います。

けんすう:そうですよね。今だったら、イーロン・マスクさん1人で決められちゃうってなった時に、本当にいいんだっけ? っていうのがありますよね。

石濵:そうですね。すっと決めていくんで。

web3のいいところは?

石濵:逆にけんすうさんはどう思ってるんですか。そのweb3のいいところとか、あと違いみたいな。

けんすう:いいところ。まあ、めちゃくちゃ短期的な視点で。ウォレットの中身見放題とかのところ、めちゃくちゃおもしろいなと思っていて。

石濵:(笑)。

けんすう:やっぱりユーザーがどう行動したかを、web2.0のサイトを作った時に、例えば記事投稿ができるサイトを作った時に、初めて投稿してくれた人が、これがどういう人かって僕ら、まったくわかんないんですよ。サイトの管理者は、サイトの中の行動データしかないので。

ただ、これを、もっとその人が過去、例えば「食べログ」でこういうのを書いてたとか、そういうのまで全部追えるんだったら、めっちゃおもしろいサービスたくさん作れるなって思って。これがweb3だと可視化されるんじゃないかっていう期待がありますね。

石濵:確かに。それがいわゆる言われているデータの所有が自分たちですよっていうことですよね。要は企業が、仮にバーンとかして、その人のデータを削除したとしても、結局ブロックチェーンに刻まれてるんで、個人がそれ持っているよねっていうことができるんで。

けんすう:そうですね。まあ、簡単に言うと、GoogleとFacebookがみんなのデータをめちゃくちゃ持ってるからすばらしい収益を上げていたとも言えるので。それ、自分たちの手に移ると考えると、めっちゃワクワクするなと思っています。

石濵:いや、それおっしゃるとおりです。さらに、最近だと、とはいえ全部自分たちが使ったデータが公開されるのは嫌だよねっていうような、そういう動きも出てきてるんで。

よりそのプライバシー強化されたような、イーサリアムのL2の中のソリューションとかが、まあちょろちょろと出てきていて、要はみんなに見せてもいいものと、みんなに隠したいものっていうのが、ちゃんと自分たちで選べるような、たぶん世界線になっていくだろうなって考えてます。

けんすう:いや、そうですよね。うん。「Dango tools」ってやつは、これ、僕のウォレットなんですけど。いくら持っていて、BitFlyerで作ってとか全部出るんですね。

石濵:損してるの、バレますもんね。

けんすう:そうなんです。「この人に『marimo』を10個送ってるな」とか、「この人にはこれ送ってるな」とか全部わかるみたいな。

これのデータがあった上で、こういう人にはこういうことをやろうみたいなのが細かく立ち上げられると、やっぱり新規サービスを作る人がどんどん有利になってくるなと思ってるんですよ。今までこれ、こういうデータを持っている人が有利になるっていうので、要は……。

石濵:Facebookですね。

けんすう:そうですね。格差が生まれるんですよね、サービス制作の。

石濵:おもしろいっすよね。確かにFacebookはこれが全部見れてたってことですもんね。

けんすう:そうなんすよ。まさに。ずるくないっすか? そんな絶対当たるじゃんと思って。

石濵:ずるいっすよ。だって「Azuki」持ってるんで、「Azuki」の新作とか出てきたら見せますよね。広告で。

けんすう:そうなんです。だから、GoogleとFacebookはやっぱりまあずるいって言ったんですけど、まあ、極めて有利なビジネスを展開しているっていうのが正しいと思うんですけど。

それがデフォルトで、もう設計として公開されてるのが前提ってなっているのは、やっぱりすごく大きな差だなと思っています。

石濵:確かに。

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