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Meets Professional #4 Qiita 1位のアウトプットの達人が語る、良質な技術記事を量産する秘訣(全4記事)

“良質な記事”とは「3日前の自分が大喜びする記事のこと」 伊藤淳一氏が技術記事を書く時に大切にしているポイント

ITエンジニアにとって大事な「アウトプット」。大事だと思う一方、アウトプットの仕方がわからず、悩んでいる人も多いのではないのでしょうか。「Meets Professional #4」に登壇したのは、Qiitaでユーザーランキング1位(2023年1月現在)の伊藤淳一氏。良質な技術記事を量産する秘訣を語りました。全4回。3回目は、良質な記事の定義や、同氏の技術者としての目覚めなど、視聴者からの質問に答えました。前回はこちら。

「最先端のトレンドだから」という理由だけで追いかけてもあまり続かない

篭橋裕紀氏(以下、篭橋):僕もブログとかを書く時に「どういう記事にしよう」と思ったりします。「3日前の自分に書くブログ」が意外とライトだし、響くなというのがあって、確かになと思いました。さっそく「アウトプットをしたい」「参加レポートを書きます!」とコメントがいっぱい来ています。

伊藤淳一氏(以下、伊藤):おぉ、うれしいです。

篭橋:ではここからは、Q&Aのタイムにしたいなと思いますが、先にN2iのメンバーからの質問にいきたいなと思っています。よろしくお願いいたします。(スライドを示して)最初に、「伊藤さんのお話を聞きたい!」と熱望していた、岡部さんの質問からお願いできたらなと思っています。

「今から、世間から認知されるRubyのプロフェッショナルを目指すのは戦略的に可能だと思われるでしょうか。時代のトレンドを意識した戦略が必要だと思うのですが、今だとTypeScript、Rust、Goなどはどうでしょうか」という質問が来ています。

伊藤:前半と後半で質問が少し分かれている気がします。前半の「戦略的に可能だと思いますか?」というのは、ぜんぜん可能だと思いますよ。ぜんぜんいけると思いますよ。

Ruby会議とかでドーンっと発表をすれば、けっこうそれで知名度がドーンっと上がったりするので、実績を残していけばRubyの世界でも認知されるプロフェッショナルになれると思います。

後半の「時代のトレンドを意識した戦略」……意識ね。ここはなんともなんですよね。YESでもあるしNOでもあるしというか。

一般には、最先端の技術を追いかけるべきという話はあるので、それがいいんだろうなと思いつつ……TypeScriptが好き、Rustが好き、Goは楽しいというのであればぜんぜん良いと思うのですが、別にしっくり来ないんだけど最先端のトレンドだからという理由だけで追いかけるのは、あまり続かないんじゃないかと思います。

「無理をしなくてもいいぜ」という、そんな気持ちで僕は思っているし、僕自身はけっこうRubyが好きで、最近のはやりもわかるんだけど、じゃあ「Goが好きか?」と言われると「別に、Rubyのほうがやりやすいな」と思ってしまうので、僕はそう思っています。

篭橋:岡部さんどうですか?

質問者1:今日はすてきな話をありがとうございます。どうしても今後のことを考えてしまうんですが、今日のお話の中で別にRubyを選択してきたわけじゃないとか、気づいたらそうなっていたというのが、本当におっしゃるとおりだなと思ったので、自分が無理なく続けて楽しいと思えることをやりたいなと思いました。ありがとうございます。

“良質”な記事の定義とは?

篭橋:次は私たちの会社の新卒の和田さんです。「伊藤さんの考える『良質な記事』の定義とはなんでしょうか?」ということですが、いかがでしょうか?

伊藤:確かに。記事タイトルに「良質」と入れておきながら、良質の定義は何ぞやというのは語っていませんでしたね。良質の定義は、やはり読んだ人が「すごくわかりやすい」と思って「助かった」と思ってくれるような記事だと思います。

わかりやすく書くためにはテクニックがいろいろあるのですが、テクニック編は今日はしゃべっていないので、発表の中でもチラッと言いましたが、3日前の自分が大喜びする記事ですね。そういったものが良質な記事だと思っています。

質問者2:ありがとうございます。「良質な記事がどういうものか」というイメージはすごくついたのですが、やはり経験がないとなかなか良質なものが精査されないのかなという気がしています。自分が気になって調べていく中で、結果的に良い記事が出来上がったというイメージだと思うのですが、やはり時間はかかるものですよね?

伊藤:かかりますね。僕もブログを14年、Qiitaを11年書いていますが、最初の頃に書いた記事は「なんじゃこりゃ。ショボ」と思うような内容だと思うので、そのへんは徐々にうまくなってくるものだと思います。ただ可能であれば最低限意識してほしいのは、読んでくれる人の視点で書くこと。これはすごく大事だと思っています。

自分視点で「俺はわかった。だから書いてアウトプットして終わり」というよりかは、知らない人が読んだらどう思うかというのを常に意識しながら書くのが、僕の中で1つの重要なポイントかなと思っています。

質問者2:ありがとうございます。そのあたりがちょっと自信がなかったので、今日の話を聞いてあまり気にせずにやろうと思いました。

伊藤:そうですね。がんばっていきましょう。

篭橋:ありがとうございます。「1記事をどれぐらいで書きますか?」という質問がけっこう来ています。最初の頃と今で、調べる時間と書く時間はだいたいどれぐらいなんですか?

伊藤:まぁものによりますけどね。雑でもいいからパッと書いてしまいたいという時は1時間ぐらいで書けますが、「これはしっかり書くぞ!」という時は、だいぶ時間がかかります。日単位で、何日かかかりますかね。

最初に頭の中で構想して、だいたいこんな構成でいこうと見出しレベルのアウトラインをEvernoteに書いて、その内容をミートするために調べて、サンプルコードを書いて、Qiitaに記事を書いていって、数時間かかって出来上がって、それを読み直して……ということをしていると2、3日の仕事になることもあるので、幅はけっこう広いですね。

篭橋:なるほど。ありがとうございます。短時間の時もあるし、何日もかかっちゃう時もあるんですね。確かにそうですよね。

次は大石さんの質問です。「伊藤さんの記事はまとまっていて内容が頭に入ってくると感じています。情報を外部に公開する時に心がけていることはありますか」と「モチベーションはどこにありますか」ですね。

伊藤:そうですね。先ほどと同じ話になりますが、読者の視点で考えながら記事を書いていくということを一番大事にしています。情報発信に関するモチベーションは、発表の中でしゃべったとおりなので割愛しようかなと思います。

質問者3:ありがとうございます。

オブジェクト指向が大好きだからRubyに興味を持った

篭橋:ありがとうございます。次が若杉さんから。「Rubyを始める前は、JavaやC#で作っていたとお聞きしました。Rubyで仕事をしてみたいと思ったきっかけはなにかあったのでしょうか?」(スライドを示して)この質問ですね。

伊藤:Rubyを始める前はJava、C#を使っていました。Rubyで仕事をしたいと思ったきっかけは……もう10年ぐらい前の話ですが、当時、Ruby on Railsはけっこう新しいWebフレームワークで、Ruby自身もスクリプト言語で、なんかすごく楽しそうだなと思っていて、Railsを書いてみたいなと思っていました。

10年前の気持ちは、なんか楽しそうだと思った・おもしろそうだと思った以外に具体的にあるかな? なんか憧れみたいなのが漠然とありましたね。そんなので伝わるかな? そんな感じです。

質問者4:ありがとうございます。当時はRubyで開発を行う企業が今よりそんなに多くないかなと思っていて、他の言語と違ってやってみようとなったきっかけが気になったので聞いてみました。ありがとうございます。

伊藤:もうちょっと言うと、僕はオブジェクト指向が大好きで、オブジェクト指向マニアでした。オブジェクト指向で書ける言語を調べていて、JavaやC#はC言語っぽい文法なんですけど、Rubyはけっこう独特で他の言語にはない発想で、「これでオブジェクト指向を書いたら楽しそう」と思った記憶がありますね。

質問者4:ありがとうございます。

伊藤氏の“技術者としての目覚め”はコードの美意識との出会い

篭橋:ちょっと毛並みが違うんですが、「伊藤さんの好奇心が記事執筆の原動力になっているのかなと思っています。源泉みたいなところはどこにあるのか」みたいな質問が来ています。

伊藤:源泉ね。源泉はなんだろうな。この業界で仕事をしている人でよくいるのが、小さな頃からプログラミングが大好き、特にゲームが好きでゲームプログラミングでゲームを作っていましたという人なんですよね。けっこうな割合いるんですよね。僕はというと、ぜんぜんそんなことはなくて、プログラミングは社会人になるまでほとんどしていませんでした。

HTMLぐらいしかやったことがなくて、プログラマーになる気もなくて、なおかつ文系だったので、そういう人じゃないんですが、パソコンを触るのだけは好きだったからプログラマーになったんですね。それでとりあえず仕事をしよう、就職しよう、パソコン好きだからプログラマーになってみようとなって、しばらく仕事をしていました。

最初に入った会社ではすごく汚いコードやぜんぜんイケていない手法でプログラムを書いていたんですが、新人だし比較対象がないからわからないんですよ。でもある日、まったく違うプロジェクトに入った時に「すごくおもしろいし、すごくコードがきれいだし、すごく書き直しやすいぞ」みたいなのを経験しました。

そのプロジェクトがメチャクチャ楽しくて、最初にやっていた頃はダメダメだったということがわかった時に、エレガントにコードを書きたいという欲求というか、そこがすごく楽しいぞと僕は思って、同じロジックでも短く書きたいとか、可読性がすごく高いとか、そういったコードの美意識みたいなところにすごく駆られて、そこからコードを極めるところに進んでいきましたね。

好奇心の源泉というか、技術者としての目覚めは、たぶんそういう経験をしたからじゃないかなと思っています。

質問者5:ありがとうございます。僕はエンジニアじゃないのですが、みなさんがおっしゃることにかなり近いところに、みんな収れんしていくなと感じていて、その源泉を聞ければなとおうかがいしました。ありがとうございます。

(次回へつづく)

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