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Meets Professional #4 Qiita 1位のアウトプットの達人が語る、良質な技術記事を量産する秘訣(全4記事)

年間で「ブログ約50本」「Qiita約30本」を執筆 「助かった、ありがとう」の“無限連鎖”を目指す、伊藤淳一氏の原動力

ITエンジニアにとって大事な「アウトプット」。大事だと思う一方、アウトプットの仕方がわからず、悩んでいる人も多いのではないのでしょうか。「Meets Professional #4」に登壇したのは、Qiitaでユーザーランキング1位(2023年1月現在)の伊藤淳一氏。良質な技術記事を量産する秘訣を語りました。全4回。1回目は、伊藤氏がアウトプットをし続ける理由について。

Qiitaのユーザーランキング1位・伊藤淳一氏

伊藤淳一氏:では「Qiita 1位のアウトプットの達人が語る、良質な技術記事を量産する秘訣」という発表をいたします。

簡単に自己紹介します。伊藤淳一と言います。ソニックガーデンという会社で、Railsのプログラマーをやっています。あとは、プログラミングスクールのフィヨルドブートキャンプでメンターもやっています。出身は大阪で、今住んでいるのは兵庫県西脇市です。この発表も西脇市の自宅からお送りしています。趣味はギターで、暇な時によく弾いています。Twitter、Qiita、ブログ等々をやっていますので、良かったらフォローや購読をよろしくお願いします。

(スライドを示して)今日は僕しか登壇者がいないので、僕のことを比較的知っている人が多いのかなと思いつつ、自慢話というか現時点における実績みたいなものを少し挙げておきます。この登壇のタイトルにもあるように、今のところQiitaのユーザーランキング1位みたいです。

あとはブログの購読者が2,000人以上いたり、Twitterのフォロワーも1万人以上いたり、『Software Design』という雑誌に寄稿していたり、『プロを目指す人のためのRuby入門』という通称チェリー本を書いたりしています。別に狙ってここまでやってきたわけではないのですが、こういった実績だけを見てみるとなかなかこういう数字を持っている人は日本のITエンジニアでもいないんじゃないかなと思っています。

2022年はけっこう忙しかったんですよね。もっといっぱいブログを書きたいな、もっとQiitaを書きたいな、書けなかったなと思っていたんですが、年末に数えてみたらブログも40本以上、Qiitaも30本以上、登壇を7つぐらいやっていて、「俺、意外とやっていたじゃん」と思いました。今日この話を聞いているみなさんで、この数字を超えてくる人はなかなかいないんじゃないかなと思います。

なので僕ぐらいになると、息をするようにブログや記事を書いているのかもしれません。この発表をするにあたって、そもそも僕はどれぐらい昔からブログやQiitaを書いていたのかなと調べたところ、ブログが14年、Qiitaが11年。どちらも10年以上やっていました。ここ最近だとブログは毎年50本前後、Qiitaは30本前後書いているみたいです。このへんの数字もあまり超えてくる人はいないかもしれませんが、いかがでしょうか?

本日のアジェンダを紹介

今日のこの勉強会は、N2iさんの主催です。N2iの社内勉強会に僕が呼ばれて、外部にも公開しているという建て付けになっています。

(スライドを示して)事前に「どんな話を聞きたいですか?」と聞いたところ、こんな質問をいただきました。「アウトプットを始めたきっかけは?」「なぜRubyを主軸にアウトプットをしているんですか?」「PV数が少なかった時にどう折り合いをつけていますか?」「本を書くきっかけはなんだったんでしょう?」「知識はどこからインプットしたんですか?」等々ですね。

このへんの質問に最初は1つずつ答えていこうかなと思ったんですが、回答を考えていたら「それは自然にやっていますね」とか「なんか勝手にそうなりました」とか、そういう回答になっちゃって「あれ? 僕はいったいなんなんだ? そんな発表をしても仕方ないな」と思いました。

先ほども言ったように「忙しい」と言いながらいっぱいブログを書いていたり、狙ったわけでもないのにQiitaで1位だったり、Twitterではフォロワーさんがたくさんいたり、自分からお願いしたわけじゃないのに「寄稿してください」「登壇してください」と言われたり、本を書いたりしています。ほかにも、別に毎回反響があるわけではありませんが、反響があろうとなかろうと記事を書くことを長く続けています。

「これはなんでかな?」と、自分でも不思議なところがあって、たぶん傍から見ると、良く言えば「伊藤さんすごい」。悪く言うと「変だな」「変わっているな」「特殊だな」と、思うかもしれません。「そもそもなぜ僕がこんなにアウトプットをしているのか?」「なぜ続いているのか?」「なぜそれなりに評価を得ているのか?」というのを自分なりに自己分析してみたので、今回はそれをテーマにお話ししようかなと思っています。

ただそれだけだと、「伊藤さんすごいな」で終わってしまいます。今日ここに集まっているみなさんは、あまりアウトプットが得意ではなくて、たぶん「この話を聞けばアウトプットがちょっと得意になるかもしれない」と期待しているかもしれないので、後半はそういった方々の背中を押す話をしようと思います。

「助かった、ありがとう」の無限連鎖を目指している

(スライドを示して)なぜ僕がアウトプットをし続けているのか、いろいろ考えたところ、きっとこういうことかなという1つの答えにたどり着いたんです。これですね。「みんなで知見を共有しあって世界を良くしていきたいから」。

世界とか少し大きなことを言ってみましたが、気持ちとしてはそんな感じでやっています。これは僕1人ではないんですね。「みんな」だからみなさんですね。僕だけではなく、あなたもですね。それで知見を共有しあう。お互いに共有しあっていきたいと僕は思っています。この点についてもうちょっと詳しくお話ししていきましょう。

質問にもあった、アウトプットを始めたきっかけなんですが、僕はプログラマーを始めてちょうど20年になります。15年前や20年前はQiitaはなかったし、Twitterもあまり普及していないし、GitやGitHubもあったのかな? なかったのかな? という時代ですね。

その頃でもプログラムを書いていると変なエラーが出て、「このエラーが直らないぞ」と、困るんですよね。仕方ないからネットでググると。Googleは当時もありましたね。そうすると同じようなエラーが見つかって、そこに書いてある解決策をやってみると「直った! すごい!」とね。そこの解決策を見たら「こんな解決策は絶対に自分じゃ思いつかなかったな」と思うわけですよ。「ありがとう、助かった」と。こんな経験を何度もしました。

ちなみに余談になりますが、今は「あまりネットの情報を鵜呑みにするな」と言われますし、僕自身もそういうことを言っています。気のせいかもしれませんが、当時は今より信頼性が高かったような気がしています。

話を戻しますが、そう考えてみると、(ネットの情報は)とてもありがたくて助かります。でもネットの記事は別に湧き水みたいに勝手にポコポコ出てくるものではありません。誰か書いてくれる人がいるんですよね。その人がいるからこそ、その情報がネットにあって、すごくありがたいんです。そんな中、「もらうだけじゃ申し訳ないな、ギブ&テイクの精神で発信したらいいんじゃないか」と思うようになりました。

ネットに記事を書くのには別に免許は必要ではないので、僕もやってみようと。僕が助かったように僕も誰かを助けたいと。これを「インターネットへの恩返し」と言っているんですが、この気持ちでアウトプットを始めて、今も同じような気持ちでやっています。なので僕が目指すものは「助かった、ありがとう」の無限連鎖です。

僕自身が誰かの記事を読んで「助かった、ありがとう」と思ったから、ギブ&テイクで僕も記事を書く。そうするとその記事がまた他の人の役に立って、その人が僕に「ありがとう」と思って、僕の記事を読んだ人も、また自分で知っていることの知見を記事に書いていく……そういうことが無限に繰り返されるような世界を目指しています。

アウトプットし続けることで得られるもの

こういうモチベーションでやっていると、例えば仕事をしていて「わー! エラーが出た。こうやったら直った」とか、もしくはこれを知っていたら絶対に便利だよねというテクニックを書かずにはいられません。「書きたい」という気持ちになるんですよね。

また、技術ブログは所詮は読む人が限られていて、1万人や2万人に読まれることはありません。10人、20人。少なかったら1人、2人だけでも十分です。

その人の役に立てば僕としてはうれしいので、大きくバズることを目的にしていません。記事を公開したからと言って、すぐに誰かから「読みました! ありがとう」と来るわけでもなく、数日待たないといけないかもしれません。そしてそれは半年後かもしれません。でもいつか誰かが読んでくれるんじゃないかなと、その時に役に立てばいいなと思っています。

という感じでやっていて、「早くこれは書かなきゃ」と思うので、勝手に手が動くし、反応があってもなくても特に気落ちせず、いつか誰かが読んでくれるだろうと思っているので、長く続けられます。

さらにこんな気持ちでやっていると嘘をつくわけにはいきません。間違った情報を書くと、読んだ人がまた間違った方向に進んでしまうので、間違いを書きたくないなと思います。

あとはせっかく記事を読みに来てくれたのに「なんか難しいな、わからないな」と帰ってしまうのは悲しいです。10人いたら10人ともに「すごくわかりやすい」と思ってほしい。それで助けたいと思っているので、なにか記事を書く時は、嘘を書かないようにメチャクチャ調べて、わかりやすく書こうと心掛けています。調べることで、自分自身も勉強になるし、その結果、みなさんから感謝されるのかなと思っています。

みんなに役立ちそうな情報を正しく、わかりやすく、無料で提供していると「あ、伊藤さんをフォローしているとすごく良い情報が来るじゃない」ということで、徐々にフォロワーが増えて、徐々に知名度が上がっていきます。

これは即効性はないですね。「すぐに」ではなく、あくまで「徐々に」で、数年単位ぐらいでこういうのが上がっていくと思っています。

そういった活動を細く長く続けていれば、別にバズることを目的にしていなくても20本に1本とか30本に1本ぐらいの割合で、たまにバズります。記事がバズれば企業の人やメディアの人の目に触れることもあります。そうすると「伊藤さん、登壇しませんか?」「執筆しませんか?」と声がかかります。今回のN2iさんの講演もそうですね。

技術者の世界を良くしたいから記事を書かずにはいられない

というわけで、前半のまとめです。最初のモチベーションとして、僕は知見を共有しあって困っている技術者と助け合いたい、そして技術者の世界を良くしたいと思っています。こういう目的があるからこそ「わー、このエラーの解決策は絶対に役立つぞ。同じように困っている人がいるぞ」と思ったら記事を書かずにはいられないし、嘘を書かないようにメチャクチャ調べるし、わかりやすく書こうという努力をします。

その結果、徐々に有名になっていって、長く続けていればたまにバズって、登壇や執筆の依頼が舞い込んできます。そしてそれが僕の臨時収入にもなるという感じですね。

なので、現在の僕のステータスだけを見ている人の中には「伊藤さんって有名になりたいから記事を書いているんじゃない?」とか「お金持ちになりたいからでしょ」とか「バズるのが好きなんですか?」とか「本を出したいから記事を書いているんですか?」とか思うかもしれませんが、僕からすると全部目的と結果が逆です。

あとは「エンジニアはスキルアップするために記事を書こう」とたまに言われますが、僕自身はスキルアップをしたいから記事を書いているのではなく、「わかりやすく書きたい」とか「詳しく、嘘を書かないように調べたい」と思うことで、いっぱい調べて勉強になるという感じなので、やはりここも目的と結果が逆です。そんな感じで僕はアウトプットをやっています。

最後に最近の悩みを言っておくと、何度も言っているように僕は「みんなで知見を共有しあって世界を良くしたい」と思っているのですが、この5年、10年ぐらいでそれが実現しにくくなったなと思っています。ネットを見ているとお金の匂いがする技術記事が最近増えてきた印象があります。いかにも別のなにかに誘導しようとしている記事ですね。

そういうのに限って情報の信頼性が低かったり、検索の上位に出てきたりして残念な思いをしているので、みんなで協力して本当に価値のある技術記事を上位に持っていきたいと、悪い記事を駆逐したいと思っています。みなさん協力よろしくお願いします。

(次回へつづく)

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