2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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財部優一氏(以下、財部):今日はちょこちょこ質問も見ながら進めていければと思っています。(質問を見ながら)おもしろい質問が来ていますね。
佐々木真氏(以下、佐々木):(笑)。メチャクチャおもしろい。
財部:これをちょっと聞いてみたいですね。「プロダクトマネージャーって稼げるんでしょうか?」。
佐々木:いやー、それ聞いちゃいます? 聞いちゃいますか?
財部:(笑)。どうなんでしょうね。
佐々木:いろいろな会社があるので、あまりこういうことを言うとアレなんですけど、メチャクチャ稼げます。
財部:そうなんですね。
佐々木:仕事が過集中します。僕はこの間、1年ぶりぐらいに顧問先の募集を再開したんですよ。自分以外の開発現場が見たいなと思って顧問先を募集したんですが、20件ぐらいの企業から応募がきて、今はそのうちの4社ぐらいの顧問をやっています。プロダクトマネジメントで独立している人で、年商1,000万円超えがザラなんですよね。法人で受けているので年収じゃなくて年商ですが。
財部:独立している方がいるんですね。
佐々木:僕の友人はみんなそうなんです。優秀な人は自分で仕事を受けていて、「サラリーマンは給料が安すぎるから戻る意味がないよね」とみんな言うんです。それは本当にそうなんだよね。だからよほど合わない限り、給料を下げてでも(企業に)行きたい理由がなくなります。そういう過集中する人と、まだ経験がなくてこれからがんばりたいという人の、ここのギャップがすごくて登れないんです。なので稼げるかでいうと、明確に超いいです。
財部:過集中する人ってどういう条件……先ほどの定義書でいうと、どのPMですか?
佐々木:独立をおすすめするのはレベル4以上ですね。
財部:レベル4以上、シニアPM以上ですね。
佐々木:レベル3でもできるけど、単価交渉がちょっと弱いので、「それだと別にサラリーマンとそんなに変わらないよね」となると思います。
財部:この表は公開されているんですよね。
佐々木:そうですね。
財部:じゃあ、この中のレベル4以上を目指せば稼げるんじゃないかということですよね。
佐々木:そうですね。僕よりずっと稼いでいて、年商3,000万円以上の人もいます。
財部:そうなんですね。
佐々木:そういう人は嫌味になるので大っぴらに言わないだけです。CPOの友人とかと飲むと、「いやー、(年商)これぐらいなんだけど、はっきり言って仕事楽だよね」と、みんな言っているんですね。
財部:なるほど。
佐々木:僕はそんなに多くの顧問を受けていないのでそんなに稼いでいないし、事業を作るほうが楽しいんですけど。プロダクトづくり人材は、それこそデジタル庁がIT人材と言っていますし、メチャクチャ(給料が)高いんですよ。今はDXという文脈や、内製化の文脈でプロダクトマネジメントで働くことはありますが、マジで間違いないです。
エンジニアがPMになっておけば、たぶん一生食っていけます。もちろん勉強はし続けないといけませんが、稼げます。
財部:なるほど。
佐々木:おすすめです。PM ClubやPM Schoolを使ってもらえると稼げるかも。
財部:なるほど(笑)。
佐々木:僕は今は仕事を明確にお断りしています。時間がなくてもう無理なんです。
財部:これも非常に気になる方が多いんじゃないですかね。「ユーザーの課題を特定するのを細分化して知りたいです」どんなスキルが求められるか、ということですね。いかがですか?
佐々木:とてもこの場で説明しきれるものではないので概要だけになります。例えば、「ユーザーヒアリングが仕事です」と言われて、「わかりました、やりましょう」となるわけですが、そうなった時にほとんどの人が「何を聞いたらいいのかがわからない」と言うんですよね。
(ユーザーに)どう聞いたらいいかがわからなくて、ありがちな失敗が「アンケートを取ること」です。アンケートは絶対におすすめしないユーザーヒアリングの1つです。「はい・いいえ」とか、10段階中いくつかみたいなのはほぼ役に立たないです。
ほかにあるのが、「ユーザーヒアリングに対して課題を直接聞く」ことです。「課題がありますか?」と、聞くんですが、あるかないかで言ったら、あるに決まっているじゃないですか。
大事なのは課題があるかないかではなく、ある前提で、それがどれくらい大きいかです。要はお金を払ってでも解決したいのか、それとも別に課題ではあるけれどExcelでいいやと思っているのかで、ビジネスになるかどうかの前提条件が変わります。しかし、そういったことはほとんど体系的になっていないんですね。
本などはあって、僕はユーザーヒアリングというタイトルで売っている本は片っ端からだいたい全部読んだのですが、ほとんど役に立たないんですね。役に立たないというのは無駄ということではなくて、トゥーマッチなんですよ。情報が多すぎて、これを実践できるのはもうすでにユーザーヒアリングができている人なんですよね。
いろいろな手法があるんです。ヒューリスティック分析やUXデザインなどがありますが、それらを実現するのはほぼ不可能だと思っていて、僕も無理だなと思います。課題を特定するという目的なので、そんなことをしなくてもヒアリングはできます。ただ、秘伝のタレ的にできる人はできるけれど、そういうのは再現性がなかったりします。
なので、そういうことをPM Schoolではやります。簡単に言うと、ユーザーの言うことを鵜呑みにしてはいけません。僕は顧問先で「まずはファクトを集めろ。そのお客さんの状態を知れ」と毎回言います。そしてその上で推測します。お客さんは自分が欲しいものをわかっていないんですよ。説明できないままなんですよね。
初期にiPhoneが受け入れられなかったのと同じなんですよね。「誰もスマホなんか使わない」と言っていたのに、今は誰がそんなことを言うかという感じなんですよ。それをなぜ想像できないかというと、使ったことがないからです。SaaSもそうで、使ったことがないソフトウェアは想像ができないんですよね。それは人間なので当たり前なんですよ。
そんな状態で直接(ユーザーに)使うかと聞くと「使わない」と言われるけれど、それは嘘の可能性が高いんですよ。「だって体験してないじゃん」となるわけですよ。そうなった時に、まずは情報を聞いて、状態を聞いて、課題を知って、その上で自分でその課題を当てにいくんですよ。
それがプロダクトマネージャーの仕事です。それを具体的にお話しすると、3時間ぐらいかかるのですが、質問の答えとしては、そういうことをやって課題を特定するのが仕事です。
財部:ありがとうございます。
財部:やっと①が終わって、あと②から④まであるので、ここからちょっと巻き目になるかもしれませんが、進めていきましょう。
PMのバックグラウンドですね。今ちょっと話に出たと思いますが、プロダクトマネージャーの職業ですね。PMになる上でどの職種、どんな経験を積んでいるといいのか。これまでのバックグラウンドごとに意識することは何なのか。そのあたりをおうかがいできればと思っています。
(スライドを示して)これは弊社が出している『Japan Product Management Insights 2022』というレポートの結果で、PMに就任する前にどんな職種に就いていたかです。やはりエンジニアの割合は多いですね。ただ、それ以外の職種の方もけっこういます。そこで、「そもそもエンジニア経験は必要なんですか?」と、これも本当によくいただく質問だと思います。このあたりはいかがですか?
佐々木:この「エンジニア経験は必要?」というのはメチャクチャ言われますよね。たぶんこれが一番質問としては多いし、僕も死ぬほど聞かれるんですよね。先に回答から申し上げると「NO」です。エンジニア経験は必須ではありませんが、あったほうがいいのは事実です。先ほど言ったようにテクニカルPMとかがあるので、キャリアが選びやすいというのはあります。
何が言いたいかというと、エンジニア経験に限らず自分の強みを持ったほうがいいということです。例えば、僕の場合は事業開発×PMだし、エンジニアの方はエンジニアリング×PMだったりしますが、自分の強みという意味ではなんでもいいんです。それこそセールスでもマーケティングでもいいんですね。それをプラスして掛け算するのがPMのキャリアの後半でかなり大事になってきます。
なので、エンジニア経験もあったほうがいいですが、別にエンジニア経験以外でもいいんですよ。例えば、僕は新卒1、2年目の時にRuby on RailsやObjective-Cを書いていましたが、クソコードしか書けなかったんですよね。そこで適性がないなと思ったんです。プルリクを書いたり、データベース設計もやったことがありますが、マジで適性がないなと思ったので、エンジニア経験があるようなないような、という感じなんです。
だけど、エンジニアが何をやっているのか、どういうことを依頼されると嫌がるのかはイメージが湧くんですね。そういった意味ではあったほうが役立ちます。ただ、それがないからPMができないかというとNOです。その理由は先ほど言ったように、(PMの役割は)ユーザーの課題を特定することと、その解決策を考えることで、これはエンジニアリングとは本質的には関係がないからです。ただ、助けにはなってくれるという感じですね。
財部:なるほど。エンジニアのことを最低限理解するというか、エンジニアと一緒に働いた経験があると良いみたいな感じなんですかね。
佐々木:そうなりますね。そのスキルがあるとかなり便利だと思います。
財部:なるほど。ありがとうございます。
財部:2つ目ですが、セールス出身、カスタマーサクセス出身、エンジニア出身、いろいろな種類のPMがいる中で、課題を特定して解決策を特定していくというプロダクトマネージャーに向いているのはどんな人なんでしょうか。
佐々木:これは難しいんですよね。いろいろある中で、これがもっとも大事だと僕が思うのは、言語化が強い人です。
財部:なるほど。
佐々木:なぜかというと、PMは必ず言語化をするんですよ。お客さまの課題を言語化して、その上で、どういう機能を作るのか方向性を言語化します。さらにそれをステークホルダー、エンジニア、上司などに伝えなければいけないんですね。「こういうことをやります」となった時に、もっとも必要なスキルはやはり言語化だと思っています。
もちろん他にもいっぱい大事なことはあるし、コミュニケーションスキルも大事だとは思います。けれど、言葉にできないとこれほど仕事にならないポジションは珍しいと思います。僕もセールスをやったこともありますが、セールスは聞くスタイルの人もいるんですね。そんなにしゃべらないけど売る人はリクルート時代にもけっこういたので、そういうタイプもいるんだと思いましたね。
言語化が必ずしもできなくても、人柄やキャラで売るセールスがいると思いますが、PMにはほぼ通用しないと思っています。人柄で良い機能が出るかというと、ほぼ不可能だと思うんですよね。そうなった時にやはりもっとも必要なのは言語化スキルです。そこが一番大事だし、言語化することが好きだとPMはけっこう楽しいんじゃないかなと思います。
財部:なるほど。では、職種は何であれ言語化のスキルを磨きながら進んでいけば、PMとしても活躍できる可能性があるのですか。
佐々木:そうですね。エンジニアの方で、しゃべるのは好きじゃないけれど、ドキュメントづくりがメチャクチャ好きという人がたまにいるじゃないですか。そういう方は向いていると思います。しゃべらなくても良い仕様書やPRDがあったほうが組織としては助かったりするじゃないですか。「あ、なるほど。こういうこともしたいんだね」となります。
僕なんかは、言語化お化けです。TwitterやVoicyでもそうですが、基本的に言語化大好き人間なので(笑)。
財部:Twitterでもすごく言語化されている印象があります。キャリアとしてはこれまでどうやって言語化を磨いて来られたんですか?
佐々木:僕は本当にもともと口から脊髄が生えたような人間なんですね。脳と脊髄が直結している感じの人間なのでそもそも言語化が得意でした。
僕はリクルートで「スタディサプリ」というサービスの立ち上げにも関わりましたが、事業開発の言語化がかなり大事なんですよね。戦略を言葉にできないと、伝えられないんですよ。そしてそれを言語化できないと、実行プランが立てられないんですよね。そういった意味で、事業開発も同じく言語化が必要だと思っています。デザインやエンジニアリングという手法がなくて、言葉だけというのが共通していて、事業開発が楽しいなと僕が思うのはそういうところもあります。事業開発をやりながらたまたまそこがPMとマッチしたので、僕個人としては言語化がすごく大事だなと思います。
財部:なるほど。ありがとうございます。
(次回へつづく)
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