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DeNA役員が考えるどこでも活躍できるエンジニアになるための3つの戦術(全5記事)

IT技術で「エンタメ領域」と「社会課題解決」にシナジーを 事業の枠にとらわれずチャレンジできる、DeNAのおもしろさ

技育祭は「技術者を育てる」ことを目的としたエンジニアを目指す学生のための日本最大のオンラインカンファレンスです。ここで登壇したのは、株式会社ディー・エヌ・エー 常務執行役員の小林篤氏。どこでも活躍できるエンジニアになるための3つの戦術について話しました。全5回。1回目は、小林氏のキャリア変遷とDeNAの会社紹介について。

株式会社ディー・エヌ・エー常務執行役員の小林篤氏

小林篤氏:では、今からDeNAの小林がお話をいたします。よろしくお願いします。今日は40分程度お話をするのですが、ぜひみなさんからの質問にもインタラクティブにお答えしていきながらやれればと思っています。話の内容や気になること、興味のあること、ちょっとここを聞いてみたいとかというものがあれば、コメントをチャットにいつでもいただければ随時拾っていきます。よろしくお願いします。

今日は「DeNA役員が考えるどこでも活躍できるエンジニアになるための3つの戦略」というかたちでお話をしていきたいと思っています。ではまずお話をする前に、どのような人が話すのかというところで、自己紹介を簡単にします。

今、株式会社ディー・エヌ・エーで常務執行役員として技術領域を担当している小林といいます。Twitterなどインターネットは、だいたいこの「@nekokak」というアカウントでやっています。オープンソースコミュニティのつながりでDeNAに入社したこともあって、社内でも@nekokakと呼ばれることが圧倒的に多いです。うちの社長とかファウンダーの南場(南場智子氏)とかからも「ねこかくさん、ねこさん」という感じで呼ばれています。

私自身、法学部法律学科という文系出身のエンジニアです。ちなみに、この前のセッションでも、文系コンプレックスみたいな方がいるという話がありました。僕も文系出身で、ぜんぜんコンピューターサイエンスとかをやっていなかったのですが、ぜんぜんやっていけるので、文系のみなさんも「ぜんぜん俺もやっていけるぜ!」と思ってもらっていいんじゃないかと思っています。

ハンドルネームで呼ばれる文化なので、実際に入社した人でインターネットで活動していたり、いろいろなカンファレンスにハンドルネームで登壇している人は、入社したあともけっこうハンドルネームで呼ばれたりします。例えば、すたぜろさん、ウホーイさんという感じで、「本名はなんだっけ?」とわからなくなっちゃうんですが、そういう文化の会社です。

小林氏のキャリア遍歴

私は2011年3月にDeNAに入社しました。DeNAに入社してから、(スライドを示して)こちらにある年表のようにいろいろな経験をしているのですが、まずMobage OpenPlatformというゲームのプラットフォーム開発をするエンジニアとして入りました。

2011年に入社して、2012年の途中からマネジメントをやるようになりました。Mobage全般を見たり、任天堂さんとの協業案件を立ち上げたり、あと、日産さんとの自動運転プロジェクトの立ち上げをきっかけにオートモーティブという事業領域の開発責任者をやったりしました。

2018年からは、執行役員として経営のことにもかかわりながら、システム本部という横断組織のマネジメントをやりました。2019年から常務執行役員・CTOをやって、DeNA全体のモノづくりを強化することなどをやっていました。

2021年の途中から新規事業に携わるようになりました。どちらかというと、2018年から2021年までは守りが多かったんですね。社内のよくないところを解決していくとか、そっち系が多かったです。私自身、新規事業を立ち上げていくことを多くやっていたので、2021年の秋ぐらいから、もう1回そんなチャレンジをしたいなぁと思っていました。そんな中で、いろいろなご縁があって、2022年にリゾートトラストという会社さんとジョイントベンチャーを立ち上げて、そこの役員などもやっています。

2022年10月からまた少し役割が変わりました。常務執行役員と技術統括部長。さらに、DeNAの中にメディカル事業本部が立ち上がりました。そこの副本部長もやっています。なので、DeNA全体の技術領域全般のマネジメントをしつつ、メディカル本部の担当をしています。

今日はそのへんのお話にも簡単に触れたいと思っているので、楽しみにしておいてください。見ていただいている人の中に法学部法律学科の方がいるということで、エンジニアはおもしろいのでぜひがんばりましょう。

そんな感じで、私自身、法学部法律学科を経て社会人になって、未経験からエンジニアを始めました。1社目では受託開発をやって、2社目と3社目がベンチャー。4社目がDeNAで、今ここという感じです。複数の会社、多くのプロジェクト、いろいろな人とかかわってマネジメントをする中で、「あ、なんかこういう人が成長するな」とか「やはりこういう人と一緒に仕事していたら楽しいな」と感じることが数多くありました。それを今日、集約しながら話していきたいと思っています。

技術×多種多様な事業を展開する会社

まず、DeNAがどのような会社かという紹介もちょろっとしてみたいと思っています。(スライドを示して)これを見ていただいたとおり、横浜DeNAベイスターズという球団を持っている会社です。コロナ禍でなかなかこんな感じに満員にならなかったんですが、2022年は多くのお客さまにまた戻ってきてもらい、試合を見てもらっています。

2022年、クライマックスシリーズを勝ち進むことができなかったのがちょっと残念だったのですが、社内は大盛り上がりでした。従業員の多くが……「多く」というのは難しいんですけど、応援に行っていました。一緒に仕事をしているパートナーさんの中にも、「応援したいです」という方が多くいました。来年はぜひ優勝したいと思っています。

DeNAはITの会社で、技術と多種多様な事業を組み合わせながら、さまざまな事業を進めています。その中で、やはりテクノロジーカンパニーとして技術の力はすごく重要になっています。

DeNAはエンタメと社会課題解決の両軸を推進している会社です。1つの会社で1つの事業、1つの領域の事業というのがよく多いですが、DeNAはそういった枠にとらわれずに、チャレンジすべきところをその時々で見定めながらいろいろなチャレンジをしています。

なので、ゲーム系の事業をやっているかと思えば、最近ではメディカル系の事業をやるとかですね。ぜんぜん方向性が違うんですが、そういったチャレンジできる会社だと思ってもらえるといいと思います。

(スライドを示して)こんな感じですね。エンタメ領域と社会課題領域というかたちでいろいろな、ぜんぜん違うセグメントの事業領域があります。「適応する技術とかノウハウとかがぜんぜん違うじゃん」と思われる方も多いかもしれません。

これもこの後の話で出てくるのですが、実はぜんぜんそんなことはありません。エンタメ領域で獲得したナレッジ、スキルが社会課題領域で活きる。また逆もしかりというかたちで、それぞれの経験がシナジーを起こしていけるというのが、これをやっていて本当におもしろいところだと思います。

(コメントを見て)「多くの技術を経験できそうですね」とありますが、まさにそのとおりです。さまざまな技術を学んでいくこともこの会社ではできると思っています。

クオリティ・セキュリティ・インフラに注目しながら開発を進めている

モノづくりをする中で、開発とデザインとプロダクトがフォーカスされていろいろ話されることが多いです。けれども、DeNAの中では(スライドを示して)この赤丸になっているクオリティ(Quality)とセキュリティ(Security)とインフラ(Infrastructure)にも注目しながら開発を進めています。

今日はこの中の一部分だけ簡単にお話をしてみたいと思います。例えばインフラです。DeNAは多くのサービスを提供していて、だいたいデイリーで50億リクエストあります。1日ですね。1日で50億リクエスト以上のトラフィックや、データ量がペタバイト級になるようなリクエストを受けています。

2018年まではオンプレを中心にサービスを構築していたのですが、2018年から3年間かけて計画的にオンプレからクラウドにシフトするということをやっていました。

特に一般的に言われるのが、オンプレと比較するとクラウドはコストが高くなるということです。そういうことが言われるのですが、オンプレ時代からの技術力をクラウドでもうまく活用して、安定性とコストダウンの両立を実現しています。このあたりの取り組みは、ブログや他のカンファレンスで発表しているので、機会があれば見てもらえればと思います。

これによって、エンジニアは創造的な仕事に集中できるようになりました。例えば、オンプレで数百台、数千台を持っていると、毎日のようにサーバーが故障するんですよ。よく故障するのがCPUのファンです。それをエンジニアが交換するって、ちょっと……必要な業務ではありますが、「創造的か?」と言われると、そうじゃないと思うんですよね。

そういったことをなくしながら、よりクリエイティブな仕事にエンジニアを向かわせるということを会社の経営方針として決めて、推進してきました。

さらにもう1点、セキュリティについてです。最近だと、個人情報保護などがすごくいろいろなところで言われていて、サイバーセキュリティに対しての重要性も多く言われています。DeNAは持っているサービスの特性上、サイバー攻撃やプライバシー情報侵害に関する脅威に晒されています。

これを自分たちの技術でしっかり守っていくということで、けっこう昔に社内にセキュリティ部門を立ち上げました。データセキュリティ、外部からの不正アクセス対策、脆弱性管理、あとはクラウド化していく中での設定のミスが発生しないように自動で管理したり、自動で監査するみたいなこともやっています。

さらに、自分たちが作っているものをよりセキュアにしていくために、自分たちでもツールを作って、それをオープンソースのソフトウェアとして公開しています。(スライドを示して)この「Declang」「Packet Proxy」というものがそうです。このように、DeNAの中だけで良くするのではなく、業界全体のセキュリティ技術を向上させるかたちで取り組むようにしています。

動画配信サービス「Pococha」やスポーツ領域でAIを活用

最後に、AIの活用もDeNAはかなりやっています。例えば、「Pococha」というサービスがコロナ禍ですごく急激に成長しているのですが、安心安全にサービスを利用してもらうために(スライドを示して)ここの3点ですね。「不適切配信の検知」「不正行為対策」「プロフィールやコメントの監視」をAIを活用しながらやっています。

サービスが大きくなればなるほど、人手でやることは難しくなってくるので、AIを活用しながら効率よく安心安全を担保するということをやっています。さらに、今Pocochaは日本だけではなく、北米、インドなどにグローバルに展開しています。そちらでもやはり安心安全のプラットフォームとして提供する必要があるので、AIをしっかりと活用しながら事業を展開しています。

さらに、ちょっとおもしろいのがAIをスポーツの領域にも活用していることです。機密事項がけっこう多かったりするので、ちょっとここでは詳細はお話しできないのですが、スポーツ、主に野球ですね。プロ野球のいろいろなデータを使いながら機械学習や予測モデルを作り、いろいろな取り組みをしています。

単純にAIの人材だけでやるのではなく、実は球団の人たちと一体的に取り組みながらチーム強化をしています。AIがよくわからない野球のコーチ陣も実際にこれを使ってもらっていて「これは本当にリーグの数勝分の価値がある」と言ってもらえるぐらい、球団に活用されている感じです。

今回は一部の紹介になりますが、このように本当にさまざまな事業に技術をふんだんに活かしている会社であるということを認識してもらえたらうれしいと思います。

そんな中で、いろいろな技術に対しての取り組みもしっかりやっているのですが、特に3年スパンでさまざまな取り組みをやっています。AIも2016年からやっていて、今さまざまな事業で活用されています。最近、みなさんはWeb3.0に興味を持たれているかと思いますが、2018年頃からDeNAもブロックチェーンの技術の研究開発を行っており、最近ではいろいろなサービスを提供し始めています。「こんな会社です」というところを認識してもらえればと思います。

ハイブリッドな働き方を極めていく

あともう少しだけ、オフィスの考え方と働き方についてご紹介します。もともと渋谷のヒカリエにオフィスを構えていて、全従業員が座れるかたちで座席を確保していたのですが、このコロナ禍で基本的にリモートで業務をするというのが板についてきました。

それに伴って、2021年8月に渋谷スクランブルスクエアにオフィスを移転しました。その時は全員分の座席を確保するのではなく、だいたい30パーセントぐらいの席数を確保したので、コロナ禍が終わって日常に戻った時に、ではオフィスにまた出社か? みたいな感じで言うと、もう物理的に席がないので、DeNAはリモートワークと出社という、ハイブリッドの働き方を突き詰めて極めていきたいなと思っています。

あとは、エンジニアの出社がさらに少なくなって、半数が出社は月1回のみというかたちで、ほとんどの方がリモートで仕事をしているという認識を持ってもらえればと思います。

その流れで、今エンジニアの地方人材採用も進めています。まだまだ首都圏のほうが多いのは多いのですが、最近であれば名古屋、大阪、あとは東北の人も増えています。

特に新卒採用という観点になった時、みなさんもそうだと思いますが、地方の大学で学ばれている方も多くいると思います。昔だったら就職するためにわざわざ東京に来て、というかたちでやらなければならず、もともと持っている生活の基盤を畳んでこちらに来なきゃいけないというのがあったと思うんです。

それも望めばできますが、「もともといるところが好きだからそこに残りたい」「そこでDeNAの仕事をしたい」ということも、今はできるようになっています。コロナ禍に入社した新卒のエンジニアはずっと大阪や愛知にいるとか、「ずっとどこどこにいる」という方も多いです。必要に応じてたまに出社する、みたいな働き方をしています。

ライフステージに応じて柔軟な働き方が可能

コメントをいくつかいただいていますが、DeNAは副業可能です。副業申請してもらって、いくつかのチェックポイントをクリアすれば副業自体は問題ありません。

DeNAが新卒学生にどのようなスキルを求めているか。ここだけでたぶん40分は話せちゃうので簡単に言うと、エンジニアとして本当にモノづくりが好きな人、技術が好きな人。かつ、チームで仕事をするのでチームでのコラボレーションがしっかりできる人を私たちは求めています。

具体的なスキルは、その時点でそんなに求めてはいません。むしろエンジニアをやりたいと思ってお会いするまでの間に、どういった経験をその方が積まれているのか、どういったモチベーションで取り組まれているかを見るかたちでお話をしています。

遠方で働くとどうしても交通費などの問題が出てきますが、月15万円まで実質支給されます。なので、こうやって地方にバラバラとなったかたちで働くことができます。

働き方という点では、本当にライフステージに応じて柔軟な働き方ができます。今はまだ学生の方が多いと思うのであまりイメージできないかもしれませんが、ある程度の経験を積んで年数がかさんでくると、例えば自分自身が病気になるとか、お子さんが生まれるとか、親御さんの介護が発生するとか、いろいろなライフイベントがあると思います。そういった時でもしっかりと働いてもらえることを目指して、私たちはいろいろな制度を設計しています。

(コメントを見て)クリアしなければならないチェックポイントという質問は、たぶん新卒採用についてのことだと思います。厳しいか厳しくないかで言うと、なかなか表現するのが難しいですが、きちんとやっていればクリアできるんじゃないのかなと個人的には思っています。答えになっているような、なっていないような気がするんですけど。ちなみに、ホストとパネリスト向けに今、コメントいただいていました。

ちょっと会社の紹介が長くなっちゃっいましたが、ここからの時間でDeNA役員が考える3つの戦術について、話をしていきたいと思います。会社のパートは巻きで話したほうがいいと思ったのでちょっと早口でしゃべってしまったんですけど、もし他にも聞きたいことがあればコメントで聞いていただければと思います。

(次回へつづく)

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