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【Voicy×B/43】急成長スタートアップのプロダクトマネジメントの裏側(全5記事)

「新たな市場を作る難しさ」「金融プロダクトならでは難しさ」 プロダクトマネジャーが語る、良い体験を作るための“制約”

Voicyとスマートバンクのプロダクトマネージャー2人に、それぞれのプロダクトにおけるプロダクトマネジメントのおもしろさや組織編成について話を聞く「【Voicy×B/43】急成長スタートアップのプロダクトマネジメントの裏側」。ここで株式会社Voicyの大枝氏、株式会社スマートバンクの森口氏が登壇。続いて、それぞれのプロダクトの難しさと楽しさについて語ります。前回はこちらから。

「Voicy」の楽しく難しいところは“新しい市場を作っていく”こと

小城久美子氏(以下、小城):では、ここから3つテーマを用意しています。ここまでは私がファシリテートしましたが、ここからは3人でワチャワチャと話をしながら進めていきたいなと思っています。

各テーマ10分ずつで区切って、3つのテーマのお話をしようと思っています。3つのテーマが終わった後、最後にみなさんからの質疑応答を受け付けようと思っているので、Twitterハッシュタグ「#VoicyB43」でぜひ投稿をお願いします。

では、さっそく1つ目のトークテーマからいこうと思います。1つ目のテーマは、「今のプロダクトならではのおもしろさと難しさ」についてお話をしていこうと思っています。どちらからお話ししてもらおうかな。じゃあぜひ、森口さんから……。

大枝史典氏(以下、大枝):僕からいきましょうか?

小城:あっ、じゃあお願いします。

大枝:そうですね。おもしろさと難しさで(言うと)、まず音声というところですよね。音声というジャンルがまずそこに当たるかなと思っています。

やはり新しい市場を作っていくところなので。動画やテキストはわりと成熟していると思いますが、海外を含めて、音楽ではなく音声というところのプロダクトは、あまりモデルケースがないので、そこが難しい部分ではありますが、すごくおもしろい部分かなと思っています。

UIとかUXとか、そういったところが「これが正解だろう」みたいなものが本当になくて、僕たちも市場に問うていくようなかたちで作っています。

ただ、世界規模で見るとやはりPodcastのマーケットがすごく拡大していて。SpotifyとかGAFAみたいなところもPodcastアプリを提供していたりしていて、この市場は本当に熱いなと。ほんでおもしろいところだなと思っています。

森口貴之(以下、森口):僕も音声アプリを使う機会が増えたなと思っていて。スマートフォンとかを日々触っていると、情報がたくさんインプットされるのに慣れてしまって、皿洗いとか洗濯物を干したりしている時も、つい情報が欲しいなと思っちゃう。

そういう時にPodcastとかをよく流したりするので、僕はよく手を使っていない時に音声の情報を聞いたりしますね。

大枝:そうなんですよね。車で聞くことはなんとなく考えられると思うんですけれど。あとは子育てで言うと、僕は子どもがいるんですが、子どもの世話をしている時って、手は離せないけど「時間がもったいないな」みたいな。もったいないと言ったらアレなんですけどね。そういう時間を有意義な時間に変えられるのは、体験としてすごくいいのかなと思っています。

小城:人の生活をより豊かにされているところが素敵ですよね。

大枝:そのとおりですね。我々も会社の中で「豊かにする」というキーワードがよく出てきます。

「B/43」の楽しくうれしいところはフィードバックを得やすいところ

小城:「豊か」のキーワードで言うと、B/43さんも生活を豊かにされているのではないでしょうか?

森口:そうですね。金融系でお金に関わるプロダクトなので、本当に生活と切っても切れないというか、日々の生活にすごく密着したサービスを作れている実感があります。

うれしいところと楽しいところで言うと、友人とか親みたいな、そういう人たちに「使っているよ」って言ってもらえたり。身の回りの人からのフィードバックを得られるし、自分もユーザーとして使って「こういうところをもうちょっと使いやすくしよう」とか、そういうのを発想しやすいのが、やはりtoC向けのプロダクトの楽しいところの1つなのかなとすごく思いますね。

小城:電車の中で使ってくれている人を見た時の感動、ヤバいですよね。toC(は)。

大枝:そうですね。

森口:弊社内でもVISAカードを発行しているので、「野良のB/43カードを見かけたぞ」とSlackに貼って、それで盛り上がったり。レジで「このカードかっこいいですね」って言ってもらったり、そういうのが社内ではうれしくて。そういう話をしていたりします。

小城:素敵なお話をありがとうございます。

音声コンテンツは拡散力が低いが、炎上しにくいメリットはある

小城:おもしろさの話はだいぶ聞けたので、難しさのお話も聞いてみたいなと思うのですが、「ならでは」の難しさってなにかありますか?

大枝:そうですね。僕からいきましょうかね。

小城:お願いします。

大枝:先ほど音声と言いましたが、例えばSNSで見た時に、やはり音声はコンテンツの情報があまりないので、そこの広がりがほかのコンテンツと比べて弱い特性もあります。

そこでいうと、(難しいところは)マッチングですね。いろいろな音声コンテンツをどんどん聞いていくみたいなところは、ちょっとやりにくいのかなと思っていて。そこは本当にいろいろな手法を使って、どうやったら音声でいろいろアプローチできるのかを考えたりはしています。

ただ一方で広がりにくさでいうと、配信者からすると炎上しにくいようなところがあったりするんですよね。なので、インフルエンサーの方が音声を始めるきっかけにもなっていて。ファンとコミュニティを作っていくとか、エンゲージメントを高めていくみたいなところで、すごく活用していただいているような感じです。

小城:テキストのコンテンツと音声のコンテンツで、インフルエンサーの方は使い分けをされているようなイメージなんですか?

大枝:そうですね。テキストであったり、YouTuberの方もいたりします。ちょっと説明が難しいんですが、ラジオもそうですが「そこのあなた」、テレビで言うと「(そこの)みなさん」という感じで、視聴者とのつながりはけっこう濃いと思っています。

やはり顔を見せないのもあると思うんです。スマホ1台に語りかけるようなところがあるので、そういったコンテンツが生まれるようになっているのかなと思っていて。

なので、YouTubeやテキストではかしこまった感じで配信しているけれど、ふだんの生活のこととか、そういったエンゲージメントの高いことをリラックスして配信してもらっていたり。そういったところですごく活用してもらっていますね。

小城:確かに。顔が映っていないというところもあって、私も今日はすごくリラックスをして、1人で部屋の中で語りかけているような気持ちでお話できています。

大枝:うれしいです。

小城:ありがとうございます。

金融プロダクトは外部システムとの連携上の制約がある

小城:B/43さんは、なにか難しいところはありますか?

森口:難しいところは、やはり金融のプロダクトというところです。VISAさんだったり、いわゆる決済系のシステムなど、いろいろな外部のシステムと連携しないといけないところが、やはり難しいポイントの1つになるかなとすごく実感していますね。

外部のシステムの要件や仕様みたいなものを把握しながら、ただそれがユーザーに窮屈にならないみたいな。ユーザー体験にうまく落とし込むにはどうするかみたいなところは、やはり工夫する必要があるかなと思うので。難しいながらもおもしろい要素の1つなのかなというのが1つ。

あとシステム上の制約だけではなくて、法律や資格、ライセンスみたいなところの制約もけっこうあったりして。例えば、ライセンスを取得するための取得準備や承認が下りるまでの時間がかかったり。やはりそういう制約がいろいろあったりするので、そういうものをうまくコントロールしながらプロダクトを作るところが、ほかのプロダクトとは違う難しさなのかなというのはすごくあるかなと思っています。

小城:確かにそうですよね。

難しければ難しいほど燃えるタイプ、ユーザーへの愛で燃えるタイプ

小城:なんとなく私は、FinTech系のことをされている方って、その難しさの制約があることによって楽しんでいるというか。そういうイメージも持っていたりしますが、それっておもしろさにもつながったりしませんか?

森口:あっ、そうです。本当にそうだと思います。難しいほどおもしろいみたいなものがあると思いますね。

小城:プロダクトマネージャーはいろいろなタイプがいますよね。難しければ難しいほど燃えるタイプと、ユーザーへの愛で燃えるタイプと、みたいな。

(一同笑)

大枝:燃えています(笑)。

良い体験を作るために、あえて制約を持たせる

小城:大枝さんは、何に燃えているんですか?

大枝:音声のところで言うと、難しさに燃えています(笑)。もう1つおもしろさ、難しさみたいなので言うと、僕も入る前に考えていたのは、やはりVoicyもツーサイドプラットフォームみたいなかたちになっていて、パーソナリティさん・配信者さんと、リスナーさんという二面性があるところ。

ここはサービスをやる、プロダクトマネジメントをやる上で1回は通りたいというか、すごくおもしろそうだなと思っていて。そういう軸もあってVoicyを選びました。

どうしても「鶏・卵問題」がつきまとって、「どうするんだ?」みたいなところがあるんですけれど。先ほどからけっこう「パーソナリティさん」という言葉をよく言っていますが、Voicyは、初期からパーソナリティファーストを徹底してやっている会社です。

今もパーソナリティファーストという言葉が、行動指針の中にもあったりします。というのも、音声は広がりにくいみたいな話もありましたが、いかにパーソナリティさんに楽しくコンテンツ創作をやってもらうかが、結果、リスナーに届け(られ)る価値になるので。

なので我々は、パーソナリティがうまくコンテンツを作れるようなプロダクトというところをすごく意識してやっています。そこはツーサイドの難しさだったりするんですが。これはやはりすごくおもしろさがあって、今の音声をどういう設計にするのかみたいなところもあるんですけれど。

「音声であればベストな体験は何だっけ」みたいなところは、すごく設計しています。これはライブ配信ですが、Voicyの通常のコンテンツは10分区切りで収録する体験を提供しています。これはもう初期から、創業者の人間が(この)体験を作ったかたちです。

それによってパーソナリティさんも10分で区切って配信しようという時間の目安がつくのと、リスナーさんも短くコンテンツが消費できるので。「とりあえず聞いてみよう」みたいな感じで、ポンポンとライトに聞けるというすごくいい要素があって。これは今も採用しています。

なので、こういった音声の体験をどうやるかは、ある意味「こちら側から世の中に問う」ではないですが、そういったところのおもしろさ、難しさはすごくあるかなと思っています。

小城:確かに。良い体験を作るためにあえて制約を持たせるみたいなところは大事だったりしますよね。

大枝:うんうん。

森口:ほかにあまりないプロダクトなので、「どこどこのプロダクトを参考にする」という例が少なくて、やはりそのあたりも難しそうだなと聞いていてすごく思いました。

大枝:そうなんですよ。やはり参考にしたい気持ちとかも出てきます(笑)。でも音声ならではというところで、日々考えて作っています。

小城:1つ目のトークテーマで非常に興味深いお話をしていただきありがとうございます。10分少し経ったので、そろそろ次のトークテーマに移っていこうかなと思っています。

(次回につづく)

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