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プロダクトオーナーのための、ふりかえりが日常に溶けるチームのつくりかた(全4記事)

ふりかえりがチームの日常に“溶けた”ことで生まれた効果 仕事の中でも、雑談の中でも、当たり前に「ふりかえる」

「スクラムフェス仙台」は初心者からエキスパートまでさまざまな参加者が集い、学び、楽しむことができるアジャイルコミュニティの祭典です。ここで登壇したのは、森一樹氏。ふりかえりを日常とするチームができるまでを「プロダクトオーナー」という観点でふりかえり、それを再現するために必要だった要素について話しました。全4回。4回目は、ふりかえりが日常に溶けたことによって生まれた効果について。前回はこちら。

今は「ふりかえりをしよう」ではなく「立ち止まろう」フェーズ

森一樹氏:ここが最後のフェーズです。チームが立ち直ってからチームがさらに集まってくる状態が今です。出会いと別れがあります。今まで事業を作って一緒にがんばってきてくれたメンバーが、いろいろな事情で他のチームに行きました。それとはまた別に、リファラルやコミュニティのつながりで、「一緒にやろうぜ」と言って金山さんと滝川さんに弊社に来てもらって、チームの形がまた変わりました。

結局初期メンバーの3人の中で残ったのは私だけなんですよ。チームメンバーは残らなかったのですが、プラクティスとイズムはずっと継承されてきています。例えば、フラクタルスプリントや相互にフォローし合う文化、あとは「いのちだいじに」。これは私がいろいろな人に言っているのですが、私もいろいろな人からよく言われます。

やはり自分の体、子ども、家族などを最優先してくださいね。うちの文化では、37度くらいの微熱があると「休め」なんですよ。「来るな」「なんで来てるの?」と言われるぐらい。そういうところとか、あとは分散とモブ。私たちのチームだとモブでやり始めて分散を経験して、そのあとは分散とモブを両方使い分ける状態になっています。

モブが必要な時にモブで集まります。基本的には全員同じZoomルームにいるけれど、ちょっとモブをしたいから○○さんと私でブレイクアウトルーム1に行こう、などとやります。あとは全員がオーナーシップを持つこと、実験の精神、ふりかえりをする意識、そういったプラクティスやイズムは、ずっと継承されてきています。

そして今は、「ふりかえりをしよう」ではなくて、「立ち止まろう」なんですよね。1回の仕事区切りで、1時間に1回「立ち止まるぞ!」と言って、みんな雑談に入るわけです。頭の整理をしたり、その中でふりかえりをきちんとする人もいます。私はきちんとふりかえりをする派です(笑)。そうすると、立ち止まる時間以外にもなにかあれば自然と集まるんです。

「お客さまと打ち合わせをしてきました。こういう話をしたんだけど、次はどういう話をする?」「どう話せていればよかったかな? 次はこうしてみようか」というふりかえりがメンバー間で自然に行われます。ふりかえりの時間じゃないんですよ。言われてふりかえるのではなくて、自然と立ち止まったら勝手にふりかえる。なにかの区切りごとに立ち止まってふりかえる文化ができてきていると思っています。

(スライドを示して)これが約2年間のふりかえりで、毎週ごとにMiroで続けてきたものです。過去のものを見ていくと、こういうこともあったなと思います。私たちはこういうことをしたいなというのが、徐々に見えてくるわけです。

一番大事なのはふりかえりそのものを楽しむこと

ここまで話をしてきた、「日常へ溶けるふりかえり」はなんだったのかというと、仕事の中でふりかえるし、雑談の中でもふりかえるし、もちろんふりかえりの時間の中でもふりかえります。すべての中で、いろいろなところにもふりかえりが当たり前に存在している状態になっていると思います。

では、ここまでをふりかえってみます。ここまでの2年間、私がここまで話してきた内容を振り返ると、ふりかえりの中だけでふりかえるのではなくていいんです。あとは、ふりかえりの中でもプロセスだけではなく、プロダクト、事業、チーム全体のことなどいろいろなところでみんなで話し合い続けるということです。

あとは、そういう実験や発言がしやすい心理的安全性も大事です。ここからはふりかえりの話ですが、なんとしてでも「止まる」ことです。短いサイクルで立ち止まる。なにかあったらすぐにふりかえる。ここが今日私が一番伝えたいことです。「ふりかえりそのものを楽しむ」ことが、一番のコアだったと思います。

私たちのチームにはいろいろな活動の根幹にふりかえりがあって、ふりかえりの中でインセプションデッキといろいろな活動をしているんですね。その活動のすべてを楽しみながらやります。「別に失敗してもいい、ふりかえりだからさ」という感じで、どんどん新しいことにチャレンジしていこうというのにつながるわけです。

スクラムマスターの中には、ふりかえりというと難しそうとか、堅苦しく捉えてしまっている方もいると思います。ふりかえりなんて失敗してもいいんですよ。ふりかえりが1回、2回失敗してもいいじゃないですか。スクラムマスターからすると「失敗させちゃった。うまくいかなかった、申し訳ない」と思うかもしれないですけど、あなただってチームの一員なんです。

チームの一員として、みんなで失敗してみんなで成長していけばいい。私もアジャイルコーチをやってきた経験をすべて取り払って、わからないことをみんなでやろうとしている、という姿勢がやはり大事だったと思っています。

これは反省点なのですが、忙しくなってもコミュニケーションのための時間はどうしても確保すべきだったと思っています。忙しくなった時ほど、1分でいいからきちんと雑談をするとか、そういった時間を作るべきだったと思っています。

いろいろな内容をいろいろな場面で楽しくふりかえって、それが文化を作って、イズムになってプラクティスになっていきます。きっと私がいなくなっても、このオキザリスの文化は続いていくと思っていますし、周りにも良い影響を与えていけると思っています。再現するというのは、きっとそういうところなのかなと(思います)。

ふりかえりが日常に溶けるチームのつくりかたのふりかえり

ここまでお話ししてきた内容、(スライドを示して)私たちのオキザリスの花っぽくしていますが、やはりいろいろなことをやってきたというのはあります。ここまでのまとめをしましょう。ふりかえりをしましょう。

プロダクトオーナーのためのふりかえりが日常に溶けるチームをどう作ってきたかというと、ふりかえりを事業とチームの土台にしてきました。この中で、ふりかえりから始める。未知の領域に挑戦する時にはまずふりかえり。

ふりかえりの中で対話をするということ。対話をしながらいろいろな価値観をぶつけあって、「あなたはこう思うのね」「私たちはこうしたいよね」というゴール像を共有しておくこと。

そして、「チームのために」が合言葉です。私たちはチームのためにどうするのか。あなたがどうしたいというのもあるかもしれないけれど、チームのためにみんなはどう動くのかという話です。そうすると、オーナーシップも醸成されます。

そして、なんとしても立ち止まるということ。立ち止まって、変化をちょっとずつでもいいから起こしていく。厳しい時ほど立ち止まってふりかえりです。

そして最後に、「ふりかえりを楽しむ」ですね。そうするときっと、イズムやプラクティスが生まれてくると思っています。

というところで、私の話はこれで以上になるのですが、今日はふりかえりのチャンネルがDiscordにあります。ここまでの話のふりかえりや、このあともセッションがありますので、聞いたらぜひそこでふりかえってみてください。

ふりかえって話すことで、なにか新しいものがきっと生まれるはずです。わたしたちのチームの今後については、三河でチームメンバーみんなとお話をします。私視点の話は今日したので、チーム視点の話をします。あとは、「XP祭り」ではひたすらふりかえりの手法だけを話すので、そちらでもぜひお会いできればと思います。ちょっと長くなってしまいましたが、ここまでご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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