2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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森一樹氏:よろしくお願いします。みなさんこんにちは。
(会場拍手)
現地の方もオンラインの方も、よろしくお願いします。オンラインの方はすみません、私はだいぶ久々に現地登壇をするので、Discordのコメントを拾う余裕がなさそうです。とはいえ、コメントをもらえるとあとから見返した時にすごくうれしいので、ぜひよろしくお願いします。
今日は「プロダクトオーナーのための、ふりかえりが日常に溶けるチームの作り方」という話をします。現地にはプロダクトオーナーはいなかったみたいですが、みなさんが開発メンバーやスクラムマスターとして、またはアジャイル開発をする活動の中で、チームを作る際に参考になる点があるかと思いますので、ぜひ聞いていってもらえればと思います。
私のことを知らない方もいるかもしれないので、ちょっと自己紹介します。今日も黄色い服を着ていますが、スタッフじゃないです。スタッフみたいな色の服を着ていますが、黄色はたぶん私のほうが先です(笑)。ふりかえりのエバンジェリストとして、いろいろなところで活動している森と申します。また、今日はMiroスポンサーとして来ていますが、Miroの代理店のプロダクトマネージャーも担当しています。
うちのチームは「オキザリス」というチーム名なのですが、こちらのチームの話を主にしていくことになります。
※スライドはMiroを使って、黄色のマーカーで補足をしながら発表されています。一部見にくい部分もあるかもしれませんが、ご了承ください。
(スライドを示して)下にいろいろと書籍を書いていますが、最近だと『Miro革命』という本が出ました。私が書いたのは1ページだけなのですが、代理店としてのコラムも載せていますので、もし興味があればAmazonから購入してもらえればと思います。
私は何をやっているかというと、Miro代理店をやっています。国内でMiroの市場を開拓するというところですね。代理店は複数あるのですが、その1社です。そのプロダクトオーナー、かつ、あとはいろいろな事業のプロダクトマネージャーも兼任しています。Miro以外もいろいろやっていまして、Miroだけのチームではありません。
新規事業の立ち上げやグロースするチームとしてやっていて、数えてみたら今は17事業が並行して企画・稼働中で、そのうちの新しいものをこういった場所でお話しできればと思っています。
今日お話しする内容の1つが、私たちのチーム「オキザリス」についてです。このオキザリスは花の名前なのですが、(スライドを示して)このかわいい花ですね。オキザリスの花言葉は「喜び」「母親の優しさ」「輝く心」「あなたと過ごしたい」「決してあなたを捨てません」です。私たちのチームは、2020年6月に3人で結成されました。
3人でいろいろなソリューションをやり始めましたが、特にアジャイルチーム支援をやっていました。その支援の中で、私たちがアジャイルの価値観を真に体現するためのチームとして活動する時に、「名前がないよね」となりました。「私たちのチームが大切にしていることって何かな?」という話をした時に、やはりこの「喜び」「JOY」だと。
「優しさ」「あなたと過ごしたい」「決してあなたを捨てません」の部分にすごく惹かれて「この花の名前、いいね」ということで、オキザリスという名前になりました。このチームで一緒に過ごしたいというだけではなくて、事業としてもお客さまと一緒に歩いていきたいというところがあって、この名前を大切に守っています。
(スライドを示して)今のチームメンバーはこんな感じですね。一緒に働いてくれている人が7人で、チームフォロワーもいます。こちらは過去にチームに参加してくれたけれども、今は別のチームに行っています。たまにコラボレーションしている感じです。
今日は「ふりかえりが日常に溶けていく」というお話をしたいんですね。「ふりかえりが溶けていく」がどのようなものなのか、溶けていくことによって何が生まれたのか、溶けていくまでの過程など、この2年間をふりかえってみます。
今後、私がコーチングすることがあると思うのですが、その場所でなにかを再現するための手立てとして、今日は話ができればと思っています。あらためて、今日話すのは、ふりかえりを楽しむ、チームの文化を作る、ということ。また、オーナーシップの話もします。価値観を共有したり、思いを共有したり、ゴールをみんなで共有するなど、そういったチームビルディングも多分に含まれますので、ぜひみなさん聞いていってください。
「ふりかえりが日常に溶ける」とはどういう状態なのかをお話ししますね。私たちのチームでは、ふりかえりがこんなかたちで変化していっています。よくあるのが、スプリントごとのスプリントレトロスペクティブです。1週間に1度、2週間に1度ふりかえりするというやつですよね。私たちも最初はそこから始まりました。
その中で、徐々により細かくフラクタルに1週間の単位が1日になって、3時間になって、と、どんどん細かくなっていって、今も「ふりかえりをしましょう」というタイミングはあるのですが、それ以外のタイミングでも日常的にふりかえっていて、「ふりかえりが溶けている」という状態になっています。「ふりかえりをしよう」と言ってやっている時間ももちろんありますが、それ以外の仕事をしている中でも普通にふりかえっている感じですね。
例えばアクションを実行して「ネクストアクションが出ました」となったら、「今のどうだった?」と、すぐにふりかえるとかですね。あとは、デイリーミーティングの中でも自然とふりかえりが発生します。私たちはMiro代理店として毎週何件もお客さまと話しているので、「打ち合わせはどうだった?」「次はどうするともっと良くなるかな?」という話をしています。
このように、日常的に必要なタイミングで集まってふりかえる状態になるまでのお話をしていきたいと思っています。ちょっと前置きが長いですが、だんだん入っていきます。ということで、これからふりかえりが日常に溶けていくまでの2年間をふりかえります。チームの成り立ちから私のプロダクトオーナーとしての立ち居振る舞い、生まれた効果と、再現性があるのかについて話していきます。
最初はチームが出来上がるまでです。私が2020年6月にチームを作るまでの話ですね。実は、私は2020年5月にやんごとなき事情で異動になりました。私は2017年ぐらいからアジャイルコミュニティに入り始めていたのですが、3年間かけてアジャイル文化を作ってきた組織を離れることになって、アジャイルという価値観が普及していない組織に入りました。
それは型のない状態でした。「アジャイルが」とは言っていないのですが、ふんわりとアジャイルチックなプラクティスは取り入れられていました。でも、みんなよくわからずにやっている。なんとかなるようにやっている感じです。あとは、お客さまからの要望もすべてやる。悪いことではないと思うのですが、何がなんでもすべてやるのはちょっと違うと思うんです。
マネージャークラスだと計画をしっかり立てているのですが、チームレベルで見ると計画があまりなかったりするんですよね。「とりあえずこれをがんばって作りましょう」という状態です。
ほかには、たくさんの新規事業を立ち上げている部署ではあるものの、シーズベースで売れないものを作っていないか? ということもありました。
ニーズがないところに「これは売れるでしょう」と言い、「それは調査したの?」となることもありました。このように、アジャイルがまだふんわりしているからこそ、やはりアジャイル・スクラム・ふりかえりという文化が存在しないわけです。
いろいろなプロダクトを立ち上げている現状があるので、上司の理解もあり、変化への適応はすごくしやすかったのですが、ただ、そういった文化がない中で、潜在的な問題がいくつもあると思いました。ソリューションや組織にいくつもあることはわかっているけれども、やはり放置されてしまい、カイゼンする機会がないんですよね。定期的なカイゼンが行われていないので、自己管理からはちょっと遠いというのが目に見えてきました。
私はこの事業部に入ってから1ヶ月で、いろいろなチームの支援をしながらアジャイルやふりかえりを少しずつ定着させていくことを始めました。まだ私自身がプロダクトを持つ状態ではなかったため、まずは私自身の強みとバリューを活かして始めたのがこの仕事です。
当時は8チームを並行して見ていました。トレーニングを実施したり、週1、2時間のコーチングをしたり、いろいろな人と1on1をしたり。「どうしたらうまくいくかな」「ここをこうやってみようか」みたいな話をしました。いわゆるアジャイルコーチングです。支援する時も、ふりかえりから始めていましたね。私はいろいろな会社にふりかえりの導入支援をしていますが、非アジャイルでもふりかえりは関係なしにできます。
ふりかえりには「カイゼンしなきゃ!」というイメージがあるかもしれませんが、どちらかというとゴール共有や関係性を高めるためのワークを中心にやっています。問題は、組織の中のコミュニケーションとコラボレーションにあることが多いので、「まずはそこから」となることが多かったです。
そうしていろいろなチームを支援すると、内情が見えてくるわけです。内情がどのような感じだったかというと、チームごとに分断していると感じました。いろいろなチームがあります。10個以上のチームがあって、各チーム社員とオフショア、パートナーを含めて5人から20人ぐらいのチームがたくさんあるわけですが、どうしても社員と派遣の間には壁があるんですよね。
社員にしか見えない情報が多い、ゴール像がパートナーとオフショアに共有されていなくてタスクベースで物事をお願いしている、社員が派遣に「これをやってね」とタスクを依頼して週次で「どうだった?」と確認している、などがありました。
チーム感の欠如もありました。週1でしか話さないチームや、私が入って来た頃はコロナ全盛期で同じチームではあるけれどリモートでつながっているチームなど。常に会話しているわけではないんですよね。一緒に働いている一緒のチームなんだけど、ちょっと遠い人みたいな感じになっていたかなと思います。チームに対して、こういう課題がありました。
では、事業はどうだったか? やはり、「顧客のほうを向いているんだっけ?」というところが、私が最初に疑問に思ったところなんですね。「良いものを作れば売れるでしょ」は、エンジニア的な思考としては間違いではないと思います。しかし、事業や組織を成り立たせるためには、売れたものが良いもの(という考え方が必要)なんですよね。売れないといけないんです。組織が残れませんから。
ほかには、ユーザーの声を収集しているかというところもありました。いっぱいユーザーがいます。いっぱいユーザーがいるのですが、社内からの情報やお客さまからの情報ときちんと向き合って分析して、何かに活かしているかというところに疑問を持っていました。あとは、顧客満足度を確認しているかですよね。「使ってもらってどうだった?」というところをきちんと聞けているのか。
こうした部分に加えて、「仮説検証できているんだっけ?」というところもありました。売れるのかどうかを検証していなかったり、マーケットそのものをきちんと分析できていなかったり。そもそも、仮説検証のためのサイクルが取り込まれていないところもあると思います。そういったところを問題視して、「私に何ができるのか?」と考えたわけです。
とはいえ、私もこの事業部に異動して入ってきたからには、個人として成長していきたいじゃないですか。今までのアジャイルコーチングやアジャイル支援、つまり同じことをやり続けて成長するのかと疑問に思いました。「こういった異文化の中に私が飛び込んできて、できることは何だろう?」と考えました。
あとは、私自身が事業に真摯に向き合うことを考えました。今の事業はBtoCやBtoBtoCで、プロダクトをいろいろな人に届けることが仕事です。それまで私は、社内向けの事業やBtoB、SIなど、開発支援を数多くやってきたのですが、直接お客さまに届けられる、お客さまの声をすぐに聞けるのは、実は初めてだったんです。
私自身のチャレンジとしてもやっていきたいという思いがあったのですが、外から入ってきた人間は「事業を作ってね」とか「金稼いでね」など、個の成果が強く求められます。そういったことに対して、チームを作って私がどうしていったのか、という話にここから入っていきます。
(次回へつづく)
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