2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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やまげん氏(以下、やまげん):そのあとはどういったキャリアを描かれていたんですか?
松下雅和氏(以下、松下):その会社の業務委託でいろいろなところに行っていたので、自社開発を1ヶ月ぐらいしか経験をしていなくて。所属意識みたいなところがだんだん薄まってきてしまって、もう少し自分の自社サービスをやる会社に行ってみたいなとなりました。
当時、業務委託先で行ったのがサイバーエージェントでした。仕事ももう辞めると決めて、2ヶ月間有給消化期間があったので(その期間に)勉強会に参加したら、業務委託でいた時に一緒に働いていたサイバーエージェントの方とばったり出くわしました。
「実は今転職するつもりで……」と言ったら「うちに来なよ」みたいな話になって、それでサイバーエージェントに入った感じです。
やまげん:なるほど。技術とはあまり関係ありませんが、2ヶ月間は何をして過ごされたんですか?
松下:当時は「DevLove」という勉強会のスタッフもしていたので、そのスタッフ業をしつつ、毎日どこかの勉強会に顔を出すことを2ヶ月間ほとんど(毎日)やっていましたね。
やまげん:おぉ、それは素晴らしいですね。
松下:毎日楽しくてしょうがなくて(笑)。
やまげん:いいですね。なんか人生の夏休み感がある(笑)。
松下:毎日いろいろな人と会って新しいコネクションも増えるし、すごく楽しい期間でした。
やまげん:なるほど。ではサイバーエージェントさんで自社開発(をされていた)というところで今までの経験としても違うのかなと思うのですが、自社開発というところで、何か違いがあったりとかしましたか?
松下:そうですね。やはり自分たちで運用する経験が今まで少なかったので、あらためて自社サービスをちゃんと運用するという立場で(する)というのはぜんぜん違いました。
あとは、最初に関わったプロジェクトがサイバーエージェントアメリカの仕事で。対象がFacebookの中で動くゲームで、海外向けのサービスなので、サイバーエージェントの中でもちょっと特殊な部隊にいました。AWSも初めて触るし、海外向けだし、使っているプログラムもMongoDBを使ったり。いろいろ尖っているところにいきなり入ったので、もうすべてが新しい感じでしたね。
やまげん:すごくワクワクしますね(笑)。
松下:そうですね(笑)。いろいろ苦労もしつつもかなり楽しくやっていましたね。
やまげん:それは何年ぐらいの話ですか?
松下:2011年ですね。
やまげん:なるほど。当時は何で実装していましたか?
松下:当時はJavaで開発をしていました。Flashで動いている「アメーバピグ」という当時のコミュニティサービスがあって、その海外版の「AmebaPico」というものをやっていました。ソケット通信で、中はバイナリデータの受け渡しみたいなものをFlashのクライアントとやり取りするような感じでしたね。
やまげん:Flashはバイナリデータのやり取りになるんですね。
松下:別のやり方ももちろんありましたが、私が入った時点ですでにできあがっていて、当時はパフォーマンスをものすごく意識して作られていたので、必要最小限のデータをソケットでやり取りをする感じでした。
やまげん:なかなかギークな構成というか。
松下:そうですね(笑)。最初に入った時に、慣れるまでちょっと苦労しました。
やまげん:そうですよね。かつ、けっこういろいろな方に使ってもらえるサービスですもんね。
松下:MAUが何十万、同時接続で10万人近くいたりして。海外向けでしたが、当時としてもなかなかのボリューム感はありましたね。
やまげん:難しいことはたくさんあったと思いますが、そのバックエンドは絶対におもしろいですよね。なんかそのあたりの、実際に入った時のギャップや苦労した点はあったりしましたか?
松下:苦労した点でいうと、今まではあくまでお客さま向けだったので、どこまでやっていいのかという領域がすごくしっかり決まっていました。しかし、自社サービスなので自分たちでやるべきことを見つけ出すし、サイバーエージェントのエンジニアの方はかなり個性が強くて主張する人が多かったので、自分自身も主張をしないと埋もれてしまう。
カルチャーショックとまではいきませんが、そういったところは「ここまで言っていいんだ」みたいなところで、慣れが必要だなというのはありましたね。
やまげん:なるほど。そのあたりは世の中のエンジニアでも悩んでいる方が多いのかもしれないなと僕も感じていて。実際にそこでマインドチェンジをするとか、苦労はしましたか?
松下:そこまで苦労という感じではありませんが、みんなが楽しんで開発をしていたので、「エンジニアはそこまで楽しめるんだな」ということをあらためてめてそこで感じました。
そこからは自分自身も飛び込んでいくし、周りも巻き込んでいくし、かなりそういった動きをして。社内にGitを展開したのは私だし、「こうあるべき」とか「やったほうがいいよね」と積極的に動けるようになったのはあります。
やまげん:それは素晴らしいですよね。Gitを展開するとか。
松下:そこもけっこうおもしろくて。エンジニアのつながりが社内で横串の組織だったので、メンバーの人たちと飲む時もけっこうあったんですが、飲み会に行ったら「松下さんってGitできるんでしょ? 勉強会で発表するのが好きだから今度Gitの勉強会を社内向けにやってよ」と急に言われました。(でも)私はGitを使ったことがなかったんですよ(笑)。
でも言われたから「じゃあやるから、集客はお願いね」みたいな感じで、良い機会だからそこから1ヶ月ぐらいGitの内部構造などをいろいろ調べながら理解をして、資料を作ってやりました。
200人ぐらいが集まって「Gitはこういうものだよ」と言ったら、みんな「いいね」となって、そこから標準のリポジトリとしてGitを使う動きに変わりました。やってすごくよかったし、がんばればなんだかんだやり切れることはそこでも感じましたね。
やまげん:聞いていて「素晴らしい」という感想です。行動力もすごいし、今はGitがデファクトスタンダードになっているようなものなので、そこの生産性も絶対に寄与しているはずだし。
松下:当時はまだGitには懐疑的な人たちが本当に多かったです。デザイナーさんも含めて(勉強会に)来てもらえたので、エンジニアじゃない人たちも、みんなが良いものだと理解して使ってくれたのが本当に良かったなと思います。
やまげん:今活躍されている背景も見えてきたエピソードでしたが、そのあとはどういった転職・キャリアを踏まれたんですか?
松下:サイバーエージェントでは、序盤はコミュニティサービスを中心にやっていました。後半はゲーム系にいってHTML5のブラウザのゲームなどをやっていたのですが、その中でだんだんゲームを作っては壊しての繰り返しになっていました。
当時はソシャゲがすごく流行っていて、グリーさんとDeNAさんとお互いに良いゲームをどれだけ作るかという競争をしていて。うまくいかないサービスは、早い段階で見切られて止められてしまうことを経験していたので、これを続けるのは正直しんどいなと感じていました。
ゲーム以外のところもあらためて経験したいなと2014年、サイバーに入って3年半ぐらいで考えていました。次を考えていた時に、サイバーエージェントで一緒に働いていた時の後輩の子が起業した、トランスリミットというスタートアップの会社がありました。そこは海外向けのゲーム(の制作)をしていて、脳トレなどの少し遊ぶことで脳の活性化(をする)とか、(ゲームに)もうちょっと教育的な要素を入れたいという考え方をしていました。
海外向けはおもしろそうだし、スタートアップも経験しておきたかったし、ただのゲームというよりは成長要素を得られるものがあるのがおもしろそうだなと思ったので、途中でジョインしてスタートアップを経験しました。そこでは入社して3ヶ月ぐらいでCTOに就任しました。
やまげん:なるほど。ありがとうございます。すごい。スタートアップなんですね。そこもまたギャップがありそうな感じがしますね。
松下:そうですね。
やまげん:入った時は何人ぐらいだったんですか?
松下:私が6人目の社員ですね。
やまげん:じゃあ本当に創業期というか、「ここから」というところだったんですね。
松下:ちょうど入るタイミングである程度資金調達もできたぐらいのタイミングだったので、お金はいったん心配はなさそうなところでした。あとはどれだけ良いものが作れるかということで、スタートアップだったので「みんなでなんでもやるぞ」という感じで、どんどん新しいゲームを作っていこうという流れでやっていましたね。
やまげん:なるほど。いいですね。実際に、大企業からスタートアップに入るチャレンジをしてみたいエンジニアの方も多いのかなと思ったりもします。ギャップはあったりするんですか?
松下:もともと一緒に働いていたことがある子が社長だったので、サイバーの組織体制というか、エンジニアのマインドは大事にするというところはしっかりあったので、そこまでギャップはなくて。どちらかというと少人数で1チームという感じなので一蓮托生というか、「みんなでこの会社をどうやっていくかはみんな次第だよ」という感じで。「やれるだけのことはみんなでやっていこう」というぐらいでしたかね。
やまげん:なるほど。ありがとうございます。
やまげん:その経験もすごくたくさん聞きたいんですが、実際にそこから6年ぐらいでカオナビさんに移られたんですか?
松下:そうですね。
やまげん:その6年(間)ではどういったことをやられていたんですか?
松下:ゲーム作りをひたすらやっていたんですが、2本目のタイトルは半年から1年ぐらいかけて作って、3本目は2年ぐらいかけてがんばって作ってということで、本数をたくさん作るというよりは、1つのラインで一つひとつ丁寧に作っていく進め方をしていました。
私はCTOでしたが、ダブルCTOという体制をとっていて。ゲームのフロントエンド部分でやはり私では対応できない部分がありました。もともとそちらにCTOがいたので、私はそれ以外のバックエンドから開発の環境までをすべてを整えていくという立ち位置という、分業制のCTOをやっていました。
各ゲームを作る上でどういうアーキテクチャにするかとか、インフラ、バックエンド、API。あとは開発環境などすべてを基本的に私が判断をして、「クライアント側はそちらでお願いします」という感じでした。そこで連携を取りながらひたすら開発をしていく流れです。
やまげん:なるほど、ありがとうございます。エンジニア組織も増えたりはしましたか?
松下:組織全体としては二十数名ぐらいで、エンジニアは10名ちょっとになっていました。
やまげん:なるほど。そのあたりのマネジメントもしながらという感じだったんですね。
松下:ただ当時は社長もエンジニアでもあったので、比較的社長が全体を見てくれていて、私はもうほとんど技術のところを中心に見ていて、組織面は見ることができていなかったというのが正直なところですね。
やまげん:そうだったんですね。なるほど。
やまげん:そこから今のカオナビさんに移られたのかと思うのですが、何かきっかけがあったりしたんですか?
松下:そうですね。開発をしていたゲームも市場もだいぶ変わってきていて、広告を打ちまくってどれだけ多くの人にリーチしてちょっとでも遊んでもらったら(それで)ペイできる。そういったスタイルのマネタイズのやり方。ハイパーカジュアルゲームという市場でした。
USだとそれが8割ぐらい占めるような状況になってしまっていて、どんなに良いゲームを注力して作っても一瞬で廃れていく状態になってきました。このままゲームでいくのは厳しいなと感じたので、ゲーム以外のところをあらためて考えたタイミングです。
やまげん:なるほど。
松下:トランスリミットでCTOではありましたが、先ほどお話したとおり組織面はあまり見ることができていなくて、技術のところだけでやってきたので、「これでCTOを言い切っていいのだろうか」というところはその6年間ずっと感じていました。もう少ししっかりと組織も見られるような立場も必要だなと思いました。
CTOということはいったん忘れて、もう少し経営層に近いところと会話ができたり、コミュニケーションをとって、会社の組織運営がどう行われているのかを知りたいとすごく思ったんですね。そこが気になっていたので、知り合いのエージェントの方と話して、たまたまそのつながりでカオナビを紹介してもらったという流れですね。
やまげん:そうなんですね。なるほど。ありがとうございます。事業への共感は選択する上で重要視されているんですか?
松下:そうですね。カオナビ自体は組織をどうやってうまくワークさせるかとか、社員の個性や才能を発掘することをすごく重視しているので。
今までの経験でも(言えますが)、優秀な人だけを集めればプロジェクトが成功するかというと、実はそうでもないのです。その中でも同じマインドを持ったり同じゴールを設定したり(しないと)、モチベーションやメンバーの能力だけで良いものが作れるわけではないことを経験してきました。
「カオナビ」というプロダクトは、そういったところにも貢献できるんじゃないかなとすごく感じていたので、「これはすごく自分のやりたいところにマッチしているな」と感じました。
やまげん:なるほど。ありがとうございます。
(次回につづく)
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