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IT業界関係者必見!元SEが解説する「プロジェクトマネジメントのアンチパターン」(全4記事)

「なぜやってないの?」「なぜ遅れたの?」に終始する議論 進捗会を「やったこと報告会」にしないために必要な考え方

ソフトウェア開発において「悪い結果に陥りやすい、避けるべき典型例」を指す、「アンチパターン」。 プロジェクトマネジメントの世界にも存在するアンチパターンは、プロジェクトの遅延や成果物の品質低下を招く原因となります。今回のセミナーでは、プロジェクトマネジメントの現場でよく見かける「プロジェクトマネジメントのアンチパターン」と、その回避方法を紹介しました。全4回。3回目は、アンチパターンその3「やったこと報告会になりがちな進捗会」について。前回はこちら。

アンチパターンその3 「やったこと報告会になりがちな進捗会」

西郷智史氏:3つ目は進捗管理です。今までは計画の話が中心でしたが、実行管理において、みなさんがどのようなことをやってしまっているかという観点で話をしていきたいと思います。

まずは「やったこと報告」進捗会です。これは、その週に起こったことや、やったことを詳細に報告する進捗会のこと。具体的に言うと、毎週月曜日に先週やったことの報告会・進捗会をします。「先週はこれをやりました」「ここまで終わっています」「でもこれは70パーセントぐらいです」などと、先週やったことを報告する会をやっています。

これのどこがチェックポイントかというと、タスク実行の予実にやたらとこだわるところです。「これぐらいの予定だったけれども実際はこれぐらいかかりました」「オンスケジュールです」などと予実にやたらとこだわってしまいます。あとは、なぜ遅れたのかという議論が多いのも特徴です。「なぜ、それをやってないの?」「なぜ、それで遅れてしまったの?」などの議論が多くなりがちです。

ほかには、PMからの報告がいつも同じで、支援要求などがないことも挙げられます。やったことの報告なので、この先どのようなことを支援してほしいかというリクエストがなかなか上がってこなかったり、納期遵守に関する客観的な報告が行われなかったりします。「納期に対してどうなの?」という内容が客観的に議論されない、報告されないケースがある場合には、「やったこと報告」進捗会になってしまっている可能性があります。

「過去に何をどれだけやったか」よりも大事な「未来がどうなるか」

(スライドを示して)ここにあるのがイナズマ線です。IT業界の人には馴染みが深いと思います。例えば、計画段階でこのような線を引いておいて、2週間後に「このタスク、こうなりましたよ」「ちょっと遅れています」などと報告します。

3週目では「仕様検討が遅れているけれども、ほかはオンスケジュールです」。6週目では「パート構築のA、Bは遅れていますが、Bの開発は早く進んでいますよ」。8週目では「だいぶAパートが遅れてしまっていますよ」などと、各項目の予実だけを報告することがよくあると思います。最終的には別途報告します、というかたちで終わってしまいます。

では、これの何が悪いのでしょうか? これが起こってしまう理由も含めてですが、計画を作る時に、みなさんはどういった思いでこのタスクを並べているでしょうか? 

おそらく、「この作業はこの日に開始して、この日までに終了する。これが守られれば、プロジェクトは絶対に納期までに終わる」と、部分の和が全体の和になると考えているのです。

「全部のタスクが完了すればプロジェクトも予定どおりに完了するようにやっていきたい」「組織もこのルールでやりましょうね」となってしまっています。よって、このタスクが遅れている、または、このタスクはオンスケジュールである、などと、タスクに対しての報告にとどまってしまうケースがよくあるのです。未来を見る方法がなかなかないので、どうしても過去に何をやったという報告にとどまってしまいます。

よく考えてみてください。プロジェクトマネジメントでやらないといけないミッションは、お客さまに要求された品質のものを、納期どおりに、予算内で届けることです。

過去に何をどれだけやったかも大事ですが、もっと大事なのは「未来がどうなるか」ですよね。「納期に間に合うのか」「予算は足りそうなのか」「クオリティはきちんと担保できそうなのか」など、未来に向かないといけません。しかし、進捗報告では、過去のことに終始してしまうことがよくあると思います。

進捗はパーセンテージではなく残日数で管理する

回避策としては、各タスクの遅れと進みがプロジェクトに対してどのような影響を与えるかを把握することです。そして、その未来に対しての支援と対策を中心にきちんと議論できるような進捗報告会にしていくことです。

先ほどの過去の報告でよく見られるのは、パーセンテージを用いての報告です。例えば「進捗率75パーセントです」と報告する時は、過去にどれだけやったかを報告しています。そうではなく、未来のことを知りたいので、残日数を聞く方法をお勧めします。例えば、10日間のタスクで、9日目に「あと何日で終わりますか?」と聞きます。「何パーセント終わりましたか?」ではなくて、「あと何日でこれって終わるの?」と、率直にそれだけです。

順調にいっていれば、「あと1日で終わります」と答えが返ってくるはずです。もし、遅れる場合。例えば、5日目で「あと7日かかります」と返答があれば、マネージャーは直感的に2日遅れることがわかります。納期に対してどれぐらいの影響があるかを確認すれば、次の行動に移ることができます。何パーセント終わったと言われても、マネージャーは次の行動や対策を取ることがなかなかできないので、過去ではなく未来に対しての報告をしてもらうようにしましょう。

ポイントは、遅れていることを責めないこと。責めてしまうと残日数がなかなか出てこないので、遅れだけを責めることはしないようにしてください。そうしないと、これはうまく機能しません。その点は注意してください。

先ほどの例をまた出しますが、この時の例では、完了したものが灰色になっています。B2パーツやCパーツなどは実行中のものなので、この残日数を聞いていくと、それが納期に対して影響があるかないかが一発でわかります。

B2パーツとCパーツで今やっている業務がどれぐらい遅れたかで、どこにリソースを割り振らないといけないのかがわかります。そういうことをプロジェクトマネージャーが察知して対策を取っていく。なので、進捗会では、この先必要となる支援と対策を中心に議論することが非常に大事になってきます。

(次回へつづく)

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