2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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久保田瞬氏:駆け足で進めてしまって申し訳ないですが、最後に「今とるべきアクション~事例とともに~」ということで、事例も含めてお話ししていきます。
「何をしていくと良いのか」ということですが、「まずは何よりもメタバースを体験すること」ですね。冒頭にお話ししましたように、まだやっていない方は、何よりやってみることだと思います。私の話を聞くよりも、何かにお金を払うよりも、やってみる。
今、どれでもだいたい無料でできますので、やってみてください。また「スマートフォンでメタバースをやってみたい」ということと、「ユーザーをメタバースの世界で、より惹きつけたい」ということを同時に言う方がよくいますが、これは非常に難しくて。
スマートフォンとVRのヘッドセットの両方を体験してみると、それぞれ体験価値がぜんぜん違うし、それぞれの良いところ・悪いところが鮮明にわかると思います。だからこのあたりは実体験としてやっていただいた上で、何をしていくのか考えるのがいいですね。
よく「メタバースに入っても人がいない」という話があります。これは、今ほとんどのメタバースがイベント主体で動いているからなんですね。いわゆるリアルな場と違って、通行人みたいな人がいません。みなさん、何かをやるためにメタバースに来るんですよね。なので、イベント的なものに参加してみると「これがメタバースなのか」とわかると思います。
そして、次のフェーズが「考える」ということです。先ほどもいくつかフレームワークをご紹介しましたが、「どういうポジションをとっていくのか」「どのレイヤーがいいか」ということですね。現時点では、特に投資に近いレイヤーを狙うのが一番いいと思っています。
いざ「何か自分たちでも動こう」となった時に、「メタバースを作る・やってみる」だけが関わり方ではありません。当然「投資行為を行う」「どこかの会社と提携して一緒に取り組む」などもあると思います。「プロジェクトとして立ち上げる」のも、その1つですよね。
また先ほどの群馬県のように、逆に「アクセラレーションに回っていく」「支援する役割に回っていく」というのもあると思います。あとは「この領域をウォッチし続ける」ということも、1つの関わり方だと思います。
いざ「実行する」時には、いくつかのポイントがありますが、まず「収益化を目標にしないほうがいい」ということ。これは、1~2年の短期の収益化のことで、中長期的にはもちろんビジネスなので収益化を考えたほうがいいわけです。基本的には「1~2年でかけたコストを回収しよう」という領域ではないということですね。「これから成長していく」という前提で関わっていただいたほうがいいと思います。
ここから事例をいくつか紹介しますが、どの取り組みも継続が前提で、一発勝負ではないんですね。やっぱり最初はやってみて、ユーザーの反応を見た上で、「技術的にどこを伸ばしたらいいのか」など確実にPDCAを回すことを前提にして取り組んでいます。
なぜかと言うと、まだその価値が顕現していないからなんですね。世の中に同じようなものがまだないから、実際に試してみないとわからないんです。
そこに対して、まず多少予算を削りながら1発目をやってみて、ユーザーの声を聞きながら改善点を見つけて次につなげていく。このように1回ではなくて、2回、3回と継続していくことを前提にした計画を立てたほうがいい。1回に向けて予算を投下して、ドンとやるのは危険だと考えています。
事例はたくさんあるので、すでに有名なものを含めてご紹介しますね。やっぱりコンテンツの領域は非常にメタバースと相性がいいんです。ここにはサンリオさんと、バンダイナムコさんの例を表示しました。
サンリオさんはすでに去年の12月に実績があって、バンダイナムコさんのガンダムメタバースは今作成中ですね。サンリオさんのようにイベント的に行うものもあれば、ガンダムメタバースのように、定常的な公開を目指しているものもある。このように持っている世界観をメタバースで拡張していくことは非常に意味があると思います。
それからTGSの東京ゲームショウです。こちらは去年メタバースで開催されて、今年もちょうど今月開催されるんですね。無料で入れるそうなので、ぜひ覗いてみてください。「イベント×メタバース」のハイブリットな使い方の良い例だと思っています。(※本記事のイベントは2022年9月に開催されたものです)
あとは小売り、ファッション、ブランドですね。日本だとビームスさんのバーチャル店舗が有名ですが、こちらも「実際にどれぐらい売れるのか」と試しながらやっていますね。
基本的にはバーチャル店舗なので、お店はバーチャルです。「バーチャルな店舗でリアルなモノを売るのか」「バーチャルなモノを売るのか」、それから「リアルな店舗に誘導してリアルなモノを買ってもらうのか」みたいに、何通りかの掛け算でいろいろ実験を行っています。こうした掛け算が非常におもしろいところでもあります。
また最近「メタコマース」という言葉が使われ始めていますが、「アバター接客をしてみると反応がどうなるのか」「コミュニケーションがどうなるのか」など、ビームスさんは実験を何度か繰り返していますね。
あとブランドではNIKEが、グローバル規模で非常に活発に動いていると思います。昨年11月に「ロブロックス(ROBLOX)」というところに「NIKELAND」というワールドを作って、3ヶ月ぐらい公開していて。ここに670万人ぐらいのユーザーが来たということです。
これを期間限定の店舗だと考えると、ニューヨークの目抜き通りに店舗を作るよりも人がたくさん来たということになります。タッチポイントとしては成功だと言われていますが、プラットフォームの選定や「その中で何がどこまで行われたのか」など、まだちょっとわからないところではありますね。ただ、Z世代をターゲットにした訴求には資するのかもしれません。
あと国内だと、日産が新車種の発表をメタバースでやったり、店舗をメタバースに持っていくみたいなことをやっていまして。実際に車の試乗もできるようなものになっています。これは、まだユーザーが数百万しかいない「VRChat」というプラットフォームを使っているので、ユーザーは限られているんですね。
でもクリエイター、もしくはコミュニティと一緒にワールド作り・体験作りをやっているところが評価されているんです。非常にコミュニティマーケティング的な実験を行っている事例となっています。
またモビリティや観光の分野では最近だとJRさんもやられていますので、どれを紹介するのか悩ましいところではあったんですけど。東京だけじゃなく、大阪の事例として阪神阪急さんをご紹介します。「沿線の魅力創出」という考え方のもと、梅田のメタバースを使ってライブイベントが行われました。それによって実際に梅田にも来たくなるような、沿線の活性化の1つとしてリアルな駅周辺のメタバースを構築した例ですね。
あと最近の例では、HISさんの「トラベルワールド」というもの。これは「REALITY」のプラットフォームを使っていて、延べユーザー数はわかりませんが1ヶ月で130万人程度が来場したということです。いろんな観光名所のワールドを展開して、そこにアバターで訪れて写真を撮ってもらうと。
REALITYというのは、アバター配信のプラットフォームです。だからまずはそういったアバターの配信をしてから、映える場所を作っていく発想で、バーチャル店舗を作ってやってみた事例です。REALITYは日本以上に海外のユーザーが多いので、海外訴求にもつながったようです。
それから医療分野だと、遠隔診療でメタバースを用いる例が出てきました。すべての診療ができるわけではないので、まだ分野は限られるのかなと思っています。
また教育分野を先行しているのは角川ドワンゴ学園さんですね。N高・S高という通信制の学校があって、こちらでバーチャル教育を行っていて、生徒はVRのヘッドセットを被ってアクセスするんですね。この「普通科プレミアム」というプログラムは、もう1年以上展開されています。
リモート下における新しいコミュニケーションとして、VRを使って、例えば教室で隣に人がいることを知覚できたり、レクリエーションで同級生と交流できたりする。こうしたコミュニケーションの部分に着目されているようですね。
モノづくり系だと、まだメタバース関連ではあまり出てきていないのですが、韓国の現代自動車は先ほどのNVIDIAのメタバースに近いですね。「メタファクトリー」という概念をユニティとして打ち出しています。
デジタルツインの工場を3DCGで作ってシュミレーション環境を構築して、それをモニタリングしたり、ロボットやAIと連携させていくという考え方です。いわゆるコンシューマ向けのメタバースとは異なりますが、こういう概念や取り組みも出てきています。これは主に「デジタルツイン」の文脈かなと思います。
自治体に関してさっき群馬県の例を出しましたが、最近韓国の首都ソウルもメタバースを構築しているんです。国自体が力を入れていることもあって、バーチャルソウルが現在建造中ですね。
「アバターコミュニケーションで若年層とのタッチポイントを増やしたい」とか、観光要素にも使っていきたいそうです。これも基本的に、行政としてのコミュニケーションツールとしてのメタバース利用を狙っているようです。
いろいろと情報を矢継ぎ早にお伝えしてしまいましたが、これで最後のスライドになります。
今、メタバースに関して世界中でいろんなチャレンジが行われている最中です。このチャレンジに興味がある企業さまは、やってみてもいいと思います。逆に「もうちょっと待ってみようかな」というのも、もちろんありだと思います。いろんな関わり方があるということをお話ししてきました。
チャレンジすると見えてくるものは何か。まず1つとしては、非常に期待が高まっているものなので、「現実とのギャップ」がよくわかるということ。ギャップが出てしまうこと自体はネガティブですが、それを分析できるわけですよね。生の声も聞くことができるし、どこに可能性があるのかをよりディープに探ることができる。
また「『〇〇業×メタバース』では、どういう可能性がありますか?」とよく聞かれます。私が答えられるのは基本的には推測であり、場合によっては、わずかに出てきている先行事例からの知見です。これを「実体験の数字として」もしくは「実体験の声として」取り入れることができるのは、逆に今の黎明期の段階では非常に重要なことかなと思います。
そしてスマホが出てきた時に「モバイルファースト」という言葉が出てきたように、おそらく「メタバースファースト」な世界が一定出てくると思います。特に、若年層を中心に3DCGの世界に慣れている人たちが出てくる。たぶんメタバース的な世界観が当たり前のようになっていきます。
そうなった時に、どういう提供のされ方が当たり前なのか。これはスマホが出てきた時のことを考えてみてください。最初の頃のスマホのアプリって、インターフェースが今とはぜんぜん違っていたと思います。
だから、実際「どういうものがいいのか」というのは、やってみないとわからないところがありまして。「メタバースにおいて一番大事なことは何だろう?」といったことも、実際の取り組みの中で見えてくると思います。
そして、10年先15年先の未来にメタバースが普及している世界があるとしたら、「そこに向けて今何をするといいんだろうか?」ということを、あらためて考えていくことができると思っています。
ちょっと駆け足で、それでも時間が過ぎてしまいましたが、私の話は以上です。ありがとうございました。
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