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BtoBにおけるPdMとPMMの役割と連携(全2記事)

「最高の製品でも、利益をもたらさなければ意味はない」 PdMとPMMの連携が導くプロダクトの成功

​⽇本と世界のプロダクト開発をつなぎ、⽇本のソフトウェアプロダクトをグローバルで通じる⽔準へ引き上げることを⽬指し、設立された「日本CPO協会」。Salesforce社・プロダクトマネージャーのTerrence Tse氏が、BtoBにおけるPdMとPMMの役割と連携について話しました。全2回。後半は、PdMがプロダクトマーケターとよりよく仕事をするために必要なことについて。前回はこちら。

多くの責任があるプロダクトマネージャーの仕事

Ken Wakamatsu氏(以下、Wakamatsu):Tseさんは、プロダクトマーケティングからプロダクトマネジメントへと移行しましたが、あなたの考えるプロダクトマネジメントとは何ですか?

Terrence Tse氏(以下、Tse):プロダクトマネージャーは、マーケティング側で実際に行われている仕事に対して、何ができるかを把握できます。

PM(プロダクトマネージャー)には多くの責任があります。エンジニアリングチームを管理しなければなりません。製品にどのような機能を持たせるかを決めなければなりません。お客さまと話をする必要があります。既存のお客さまの問題をサポートする必要があります。いろいろなことを把握しておかなければなりません。

また、財務内容の理解も必要です。例えば、どのようにして販売するのか。これは、当社の収益にどのような影響を与えるのか。法律についても知らなくてはいけません。製品が個人情報を蓄積している場合や、ヘルスケア分野にある場合、さまざまなコンプライアンスを意識する必要があります。

マーケティングは、その情報を知る必要はありません。マーケティングは、マーケティングチームや営業チームに向けた外向きの仕事の多くを手助けしてくれます。プロダクトマネージャーのあなたが製品にとって重要なタスクに集中している時に、マーケティング側のカウンターパートに製品のマーケティング関連の仕事を協力してもらえば、あなたがそれを心配する必要はありません。

プロダクトマネージャーの役割

Wakamatsu:プロダクトマーケターが関わる組織について説明してもらいましたが、プロダクトマネジメントの場合はどうでしょうか?

Tse:プロダクトマネージャーは、日常的にエンジニアリングやUXチームと一緒に仕事をします。この2つのチームは、プロダクトマーケティングがあまり関わりを持たないチームです。なぜなら、エンジニアリングは実際に製品をコード化し、構築するチームだからです。

UXチームは、インターフェイスのデザインや、お客さまと製品の接点をサポートします。製品を市場に出すために、プロダクトマーケティングとやりとりをします。

営業組織では、特に技術系の製品の場合、営業チームからの質問の中には非常に技術的なものもあり、マーケターは答えられないかもしれません。マーケティングは、製品の価格設定やポジショニングについて答えてくれます。しかし、技術的なこと、例えば誰がこれを使えるのか、この環境で使えるのかといった製品の制限に関する質問に答えられるのはプロダクトマネージャーです。

会社の外ではお客さまと接することも多く、既存のお客さまから製品の改善点や製品に入れるべき新しい機能について意見をもらったり、製品を使用している既存のお客さまが抱えている問題を解決する手助けをしたりします。

Wakamatsu:取締役の1人から、新製品の市場調査や製品調査をどの組織が行うのか? と質問がありました。

Tse:一般的には、会社の規模によって異なります。私の理解では、小さな会社でこれを行う必要があるのはプロダクトマネージャーです。プロダクトマネージャーは、自分たちが作ることができるものは何か、あるいは強化すべき製品は何かという機会を見極める人です。

先ほどお話ししたとおり、これは一般的に、顧客との関わり、顧客との共同作業、あるいは経験や市場で見ているものを通して行われます。大企業では、そのための専門チームがあるのかもしれません。Salesforceでは、それを行うユーザーリサーチチームがあります。

PMやエンジニア、あるいはCEOなどからアイデアや機能、製品が考案されると、ユーザーリサーチチームが調査や研究を行い、一定数のお客さまに参加してもらい、フィードバックを求めます。一般的に、これらは構造化されており、より定量化されています。

5人から10人のお客さまとお話しします。2人がこう言った、10人がこう言ったというように、なぜこの製品を作るのか、作るべきなのかを判断するためのサポートとなるデータを割り出します。

PMがプロダクトマーケターとよりよく仕事をするためのポイント

Wakamatsu:プロダクトマネジメントを2回、プロダクトマーケティングの仕事を経験した今、プロダクトマネジメントがプロダクトマーケターとよりよく仕事をするためのアドバイスはありますか?

Tse:私はプロダクトマーケターになる前、プロダクトマーケティングで何をするのかをまったく知りませんでした。

チームの存在は知っていましたし、そのチームには人がいることも知っていましたが、そのチームがどんな仕事をしているのかはまったく知りませんでした。私は、プロダクトマネジメント部門が、多くの仕事をしており、すでにほとんどの仕事をやり遂げたと思っていました。しかし、実際にチームに参加してみると、まだまだやることはたくさんあったのです。

また、コミュニケーション不足によるチームの課題も見えてきました。私からの助言としてお伝えしたいのは、「製品を作っている時に、プロダクトマネージャーとマーケティングチームができるだけ頻繁に、そしてできるだけ早い段階でコミュニケーションを取るようにする」ということです。

その主な理由は、プロダクトマーケターは市場を知り、イベント、市場、顧客をターゲットにするための適切なリソースを知り、見つけることを得意としているからです。

PMは、製品を作り上げる上で課題を理解し、エンジニアリングチームと協力してその課題を解決するための技術的なスキルを持っています。

しかし、サイロ化してしまうと、お客さまに提供した商品とたどり着いた市場に差異が生じるおそれがあります。そうすると、売り手が売れない、お客さまが買いたくない製品ができてしまうかもしれません。このような結果になった場合、製品は失敗したことになります。

その製品、世界最高のエンジニアによって作られた、最高のコードを持つ、最高の製品かもしれませんが、会社に利益をもたらさなければ、まったく意味のないのです。

コミュニケーションを取って、プロダクトマーケティングチームと対話し、彼らにも意思決定に参加してもらい、製品を成功させるために必要な活動に協力してもらうのです。

日本人の性格的特徴を活かし、適材適所を心がければ企業は成功する

Wakamatsu:Tseさんはシリコンバレーだけでなく、日本でも仕事をされていましたが、日本で通用するものは何だと思いますか?

Tse:組織に、マーケティング組織やプロダクトマーケターの役割を担う人がいると、とても役立つと思います。

私は日本の人々と一緒に仕事をした経験から、どんな仕事であっても、とても細かいところまで気を配る人が多いと感じました。日本人は、やるべき仕事が間違っていないかに注意を払い、完璧に仕上げるためにディテールにまで気を配ります。

しかし、製品を成功させるためにはさまざまな責任や活動を処理する、より多くの人材が必要です。プロダクトマネージャーだけでは、これらのことをすべては行えません。

マーケティング、営業、法務、エンジニアリングなど、すべてのことが、組織内の1人または数人にかかっているとして、その人がすべてに対して良い仕事をするのはほぼ不可能です。

プロダクトマーケターを組織に置くことで、プロダクトマネージャーの責任を軽減できます。マーケティングやイベントなどの業務をサポートしてくれるので、プロダクトマネージャーは良い製品を作ることに集中できます。

お客さまとの対話、エンジニアリングとの共同作業、構築して市場に出すべき最高の製品を考えることに時間を割けます。

やらなければならないことは山ほどあります。プロダクトマーケターがいるからといって、プロダクトマネージャーは職を失うのではないかと怯える必要はありません。

それが私の考えです。これは日本でもうまく浸透するのではないかと思います。細かいことにこだわる日本人の性格的特徴を活かして、適切な人材にその仕事を任せれば、それだけで会社は成功すると思います。

自分の周りだけではなく、海外に目を向けることも大事

Wakamatsu:ありがとうございます。最後に視聴者のみなさんにアドバイスをお願いします。

Tse:プロダクトマーケティングやプロダクトマネジメントに関する本を読み、自分がいる市場の動向を常に把握するようにしてください。テクノロジー分野の製品を作っている人も、洋服を売っている人も同じです。

優れたプロダクトマネージャーになるためには、通常の勤務時間外でも多くの仕事をこなさなければなりません。ニュースを読んだり、人と話したり、新しい技術を試したりして、世の中で何が起こっているかを理解することは、自分が製品の中で何に取り組んでいるか、何を作っているかの領域を広げるのに役立ちます。

特に日本のみなさんは、お客さまの多くが自分たちの近くにいることでしょう。しかし、ほかの国がどんなことをしているかチェックしてみてください。すばらしいアイデアがたくさんあります。何が起こるかわかりません。あなたのお客さまのためになるようなクールなものが見つかるかもしれません。

Wakamatsu:すばらしいアドバイスです。ありがとうございました。

お時間を割いていただき、また、体験談を聞かせていただいたことに感謝します。近いうちに直接お会いできることを願っています。

Tse:私もお会いできるのを楽しみにしています。

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