2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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牧田涼太郎氏(以下、牧田):LuupのChief Product Officerを務めている牧田涼太郎と申します。初めまして。よろしくお願いします。今日は「まだ存在しない体験をミッションから逆算で社会実装する『プロダクトマネジメントのすべて』」という、少し仰々しいタイトルでお送りします。
株式会社Luupは「LUUP」というプロダクトを作っていますが、これまでどういう発想で作ってきたのか。一番の鍵はスライドにも書いてあるミッションですが、そこから逆算してどういうプロダクトをこれまで作ってきたか。今、プロダクト開発の現場で、具体的にどんなことを考えてプロダクトを良くしているのか。今日はそういった話をしようと思っています。
まずはイントロダクションとして、LUUPの立ち上げからこれまでのことを私が話して、最後に小城が、今はどうやってプロダクトを作っているのかという、現場寄りの話をしようと思っています。
自己紹介します。牧田と申します。今はLuupでCPOをやっていますが、もともとは学生時代にLuupを共同創業していました。Luupをやったあと、一度マッキンゼーというコンサルティング会社に行きました。そこからまたLuupに戻ってきて、今はCPOをやっているという、かなり珍しいと思われる経歴です。
今CPOとして担当している範囲は、今日のテーマであるソフトウェアだと思いますが、ハードウェアも含んだすべてのプロダクトの戦略検討や意思決定、ほかにプロダクト組織全体のマネジメントもやっています。
小城久美子氏(以下、小城):プロダクトマネージャーの小城と申します。プロダクトマネージャーカンファレンスの運営もやっています。キャリアとしては、ミクシィ、LINEのほか、及川卓也さんの下でTablyという会社で働いていて、7月からLuupにジョインしています。Luupでは、「ソフトウェアを中心とした、ユーザー体験をどう作るか」というミッションを担当しています。
また、2022年3月に『プロダクトマネジメントのすべて』という本を共著で書きました。本日のセッションタイトルにも「プロダクトマネジメントのすべて」という言葉を使っていますが、この本にも絡めながらお話ししようと思います。よろしくお願いします。
牧田:まずは簡単に、LUUPというプロダクトについて紹介します。スライドにも書いてあるとおり、「電動マイクロモビリティを、スマホ1つで借りて、好きな場所から好きな場所まで移動できるサービス」を提供するためのプロダクトです。
現在は渋谷を中心とした東京都と大阪市、ほかに横浜市でもサービスを始めて、京都の宇治市でも少しやっています。そこに住んでいる方が一度くらい見てくれていたらいいと思いますが、それらの都市で展開しています。
電動マイクロモビリティという言葉がよくわからない方もいると思いますが、スライドの左にあるような、電気の力で動いたり動きをサポートしたりする1人乗りの小さい乗り物のことを言います。
例えば、電動アシスト自転車が一番ポピュラーだと思いますが、LUUPは電動キックボードも扱っています。こちらは漕がなくてもスイスイ進めるような乗り物です。(LUUPは)今は主にこの2つが使えるサービスです。
将来的には電動アシスト自転車や電動キックボードというかたちにこだわらず、どんな方でも使える、より良いものを提供したいと考えています。足腰が弱い方でも、高齢者でも乗れるようなユニバーサルな乗り物にしていきたいと思っていますが、現在は2種類のモビリティを提供しています。
街中に(キックボードや自転車が)たくさんあり、スマホのアプリからアンロック(解錠)して乗って返す、という一連の流れをスマホアプリで完結できます。キックボードや自転車が実際にどこにあるかというと、街中に「ポート」と呼ばれるLUUP専用の駐車場をたくさん用意していて、そこからユーザーがキックボードや自転車を借りて、移動してまたポートに返す。そういうサービスです。
プロダクトの話をします。もしかすると、LUUPは自転車やキックボードを貸し借りするだけのツールだと思う方がいるかもしれませんが、僕たちはLUUPをツールだとはまったく思っていません。
キックボードや自転車で移動した先の世界、人々が気軽に移動した先の世界まで含めて、どうしていくべきかを考えながら日々作っています。そういう意味で、ツールではなくプロダクトだということを最初にお伝えしておこうと思います。
小城:これはまさに私の入社の動機でもあります。2020年のプロダクトマネージャーカンファレンスでお話ししましたが、スライドの右側もその時に話した内容で、誰をどんな状態にしたいのかを考えた上で、それを達成するためのHowとして「何で」と思っているんです。
プロダクトマネージャーが責任を持つのは、その「何で」というWhatだけではなく、WhyとWhatの両方。私はCoreという言葉も使いますが、ビジョンをすごく大事にしています。「どんなミッションを達成するために何を作るのか」という紐づけが本当に大事で、LUUPはそういうミッションにクリティカルなところが素晴らしいと思って入社したという背景があります。間に入ってすみません、続けてください。
牧田:ポイントはどんな世界を作るのか。スライドの右下に書いてありますが、LUUPの場合、どういう世界を作りたいのかを、どう考えてかたちを描いてプロダクトに落とし込んでいるかというと、すごく特徴的なミッションがあります。
どこの会社にもミッションはあるのかもしれません。ビジョンとかミッションとか、いろいろな呼び方をしますが、LUUPの場合、ミッションがものすごく洗練されていて、かつ会社の中にもすごく浸透しています。
このミッションを達成するためにプロダクトを作ることが当たり前のように、(ミッションが)会社やチームの中に浸透しているのが特徴で、まさに本日のセッションのタイトルのとおり、ミッションを達成することから逆算してどういうプロダクトを作るのかを考えています。
じゃあ、(それが)どんなプロダクトなのか。移動を軸にして、それを気軽にすることで、より生活や人、人が生活をしている街そのものが豊かになっていくようなプロダクトを目指しています。
牧田:今日のメインテーマでもある、Luupのミッションの説明をします。「街じゅうを『駅前化』するインフラをつくる」というミッションを掲げています。このミッションは、わかるようでわからない表現だと思います。これまでの日本の交通や移動を考えると、特徴的なのは鉄道中心の交通インフラがものすごく発達していることです。日本には、世界の中でも一番完成度が高いと言われているものがあります。
鉄道インフラを中心に、駅の周辺から街が発展して、経済全体が発展してきたのがこれまでの日本の経済発展成長の一番の軸だと思っています。ただ、あえて課題を挙げると、やはり駅から遠い場所、電車が便利であるがゆえに電車が出る(ところまでの)アクセスがしづらいところ、駅から遠い場所はまだまだもっと発展する余地があるんじゃないかとLuupは捉えています。
「街じゅうを『駅前化』するインフラをつくる」というミッションが達成されれば、駅の前や駅周辺だけでなく、どこでも、そこら中にアクセスできるような状態になる。その状態を作るような、ワンマイルの新しい交通インフラをLuupが作る。そうすれば、これまで行けなかったような場所、もしくは行こうともしなかったような場所に、人々が気軽に移動することができる世界がやってくると思っています。
その結果として、駅の周辺だけではなく、街の至るところが駅前くらい盛り上がって発展していくことを描いていて、これを実現するという意思を込めたのが、この「街じゅうを『駅前化』するインフラをつくる」というミッションです。
もう少し噛み砕いて、Luupの「街じゅうを『駅前化』するインフラをつくる」が達成された世界はどんなだろうと自分でもよく考えますが、一言でいうと生活のスタンダードを底上げしたいと思っています。
例えば私個人の意見ですが、日本はすごくご飯がおいしい国だと思っていて。僕は海外旅行が好きでいろいろな国に行きますが、少ししたらどうしても日本に戻りたくなる。一生日本にいたいと思うのは、毎日3回食べるご飯が全部おいしいからです。
すごく高級なレストランの料理がおいしいという話ではなくて、日々スーパーで食材を買ってきて家で作る料理も素材がおいしいからおいしいし、安く行けるチェーンのレストランも全部安くてクオリティが高くておいしい。日本はそういう世界があるところがすごく良くて、日本の食に関するスタンダードがすごく高い。
僕らが「街じゅうを『駅前化』するインフラをつくる」というミッションを達成することで、移動や人々や街の豊かさのスタンダードが底上げされるような世界を作りたいと思っています。
では、具体的にどうするのか。(スライドを示して)今日何度かこの図が出てくると思いますが、まずは僕たちLuupが移動のハードルを下げるようなインフラ、みんなが使うようなプロダクトを作る。それによって、これまで行けなかったところや行かなかったところへの移動が新しく生まれる。そうすると、移動している人自身の生活が豊かになる。
つまり、これまで行こうと思っていたが行けなかった場所、少し億劫だったサウナやジム、友だちの家などにどんどん気軽に行けるようになって、その人の移動だけではなく、移動から発生する周りの生活そのものがすごく豊かになっていく。街にいる人それぞれの生活が豊かになると、街全体にも活気が出て、発展し豊かになっていく。そうすると、街の魅力が上がってまたお出かけしたいと思う。
ミッションの達成をつうじて、この好循環を作っていきたいと思っています。
ここまでで、イントロとしてLuupのミッションとその先の説明、プロダクトを紹介しました。
(次回に続く)
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