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アジャイルコーチが学んだ「Tesla 真の凄さ」 〜あなたが学んできたアジャイルとTeslaは何が違うのか〜(全2記事)

「イーロン・マスクに社員が直接質問」「プロジェクトは自分で選ぶ」 テスラが開発チームにあえてリーダーを置かない理由

「Agile Tech EXPO(あじゃてく)」は、社会をちょっと良くするテクノロジーを学び、ちょっと先の未来の話をする無料オンラインコミュニティです。Keynote Speakerとして登壇したのは、ビル・ゲイツ氏、ジェフ・ベゾス氏、イーロン・マスク氏の下で働いた経験があるジョー・ジャスティス氏。テスラ社の急成長を支える、アジャイルハードウェア開発について話しました。全2回。後半は、テスラ社のチームづくりについて。前半はこちら。

リーダーやマネージャーがいないテスラのFast Team

ジョー・ジャスティス氏:そうすることで、各モジュールに速いチームを作れます。ジェフ・ベゾスは、5人以下のチームはリーダーがいなくても迅速にイノベーションを起こせることを教えてくれました。

マスクの会社では、チームは通常50人以上でスタートしますが、その後はリーダーを置かずに、5人以下のグループに自己組織化します。目標は、リーダーやマネージャーを置かずに、100パーセントのスタッフが直接製品に携わることです。

テスラではモブ(モブプログラミング)を採用していました。モブは5人以下で行われます。役割を決めて、1人が推進役をして、他にリサーチしたり、品質をチェックしたり、応援したりするメンバーがいます。役割は常にローテーションしていて、新人であってもドライバーになります。少なくとも1人、いいアドバイスや指示ができる人がいればモブは成り立ちます。

テスラではすべての仕事がモブです。すべてのソフトウェア開発、ハードウェア開発、ハードウェアの組み立て、エンジニアリング、トラックの荷下ろしなど、すべての作業をモブでやっています。全員がさまざまな役割を交代でやっています。

テスラには、リーダーやマネージャーはいません。イーロン・マスクもテスラやSpaceXの工場で、毎日12時間以上はモブに参加しています。参加することで、人々が直接イーロン・マスクに質問したり、コミュニケーションできます。これはイーロンにとって重要なことです。

管理者を待つような承認は、ソフトウェアによって自動化されています。ソフトウェアがマネジメントに取って代わりました。このソフトウェアは、「デジタルセルフマネジメント」と呼ばれ、ほぼ100パーセントのスタッフがエンジニアとなり、日々製品を直接改善できるようになりました。

ファイナンシャルエフィシェンシー(投資効率)ということで、財務的な効率を上げる唯一の方法は、やはり給与が高い管理者を省くことです。テスラでは、こういった管理者をソフトウェアに置き換え、実際に管理者と呼ばれる人たちも現場で作業をすることで製品の価値を向上することが100パーセントできるようになりました。

AIは本当に社員を改善することができるのか、有益なやり方で予算立てをできるのか、技術的な決定の補助が果たしてできるのだろうか、とよく聞かれますが、私の回答の一部はイエスです。

会議のトピック・時間の長さを動的に選択する「リーンコーヒー」を採用

「リーンコーヒー」とは、会議のアジェンダを自己組織化し、各トピックの時間の長さを動的に選択する手法です。テスラ社やSpaceX社も同様の手法で各項目に取り組む内容や時間を決定しています。

このリーンコーヒー手法をどうやってやるのかを知りたい場合、私が書いた本が日本語でもあります。そこに詳しく手法の説明、やり方が書いてあります。このプレゼンの後にリンクを送るので、見てみてください。

社員は「ジャスティスボード」に表示されるプロジェクトを自分で選ぶ

毎日社員は、テスラやSpaceXの施設に入り、自分のプロジェクトを選びます。どのプロジェクトに参加しなければならないかを上司から指示されることはありません。参加可能なプロジェクトは「ジャスティスボード」に表示されます。社員はいつでもジャスティスボードに追加のプロジェクトを提案することができます。

ジャスティスボードにまず何が書いてあるかというと、この会社にお金がどのくらい残っているかです。全社員が現在の会社の銀行口座の残高を見ることができます。また、自動化されたソフトウェアが毎日、毎時、毎秒どのくらい支出をしているかが示されています。

各列は、それぞれのプロジェクトになっていて、「Cybertruck」のような大きいものや、オートパイロットのようなハードウェアを伴うソフトウェアプロジェクト、それから車の内側に絶縁テープを実装した、ロボットのようなとても小さいプロジェクトなどが書いてあります。

それぞれのプロジェクトに価値があり、そのバリューは時間とともに変化します。例えばこの自動運転の例を取ってみると、最初に掲げられた価値は、この工場の中で10メートル走れるか、10メートル走った後に安全に止まれるかが価値として定められました。

価値は変化し、自動運転でカーウォッシュまで行って、お客さまのところに届けられることになりました。そして、また価値が変わり、お客さまのところに届けるための輸送車まで自動運転ができるかどうかに変わりました。

実際に販売されるまでに、道路交通法に合っているか、当局の基準に合っているかが価値基準になり、現在は、人間の運転より何パーセント安全かということが自動運転の価値になっています。

その効率化もソフトウェアによって計算がされています。作業にかかる人件費や工場のスペースなども計算され、いかに効率的にできているか計算をされます。すべてAIで計算されているので、エンジニア自身が工数を考える必要がありません。実際に工数や計算効率やコストや人件費などの効率化を考えているのはすべてAIです。

今は、すでに自動運転がされていて3,200パーセント安全だと証明されています。人が運転するよりも、3,200パーセント安全だという基準は、進んだキロメーターでどのくらいアクシデントがあったかを基に計算がされています。

それぞれのプロジェクトがジャスティスボードに書かれてあるので、従業員は、自分がどのプロジェクトに価値を与えられるのか、貢献できるのかを考えながらプロジェクトを自ら選んでいます。

納品した部品を45分ごとに更新するサプライヤーもいる

テスラが毎日使用する製品の多くは、サプライヤーが納入しています。サプライヤーとの契約は固定予算、固定期日、または時間および材料の場合があるでしょう。アジャイル契約に切り替える際に重要な変更点は、納品された部品が1週間ごと、またはそれよりも早くフィードバックに基づいて改善されなければならないことです。テスラのサプライヤーの中には、納入した部品を45分ごとに更新しているところもあります。

素早くイノベーションを起こすための「エクストリーム・マニュファクチャリング」

(スライドを示して)「エクストリーム・マニュファクチャリング」とは、日々新しいデザインを生み出し、素早くイノベーションを起こすための工場生産の手法です。

「オープンスペース・テクノロジー」では「モビリティの法則」を導入

「オープンスペース・テクノロジー」は、「モビリティの法則」を導入し、いつでもワークグループを切り替えられるようにしています。10万人以上が同時に参加でき、管理は不要です。これはテスラにおいて社員が毎日仕事を選んでいるのとよく似ています。

アジャイルを推進するための認定資格「アジャイルハードウェア開発」

私たちはハードウェア業界でアジャイルを推進するために新しい認定資格を作りました。それが「アジャイルハードウェア開発」です。このクラスは、ハードウェア業界に特化したアジャイルクラスです。

テスラ、SpaceX、そして私自身の自動車会社、Wikispeedを例にして、実践的な授業が展開されます。ハードウェア業界で働く方は、ぜひ受講をご検討ください。取得できる資格は、アジャイルハードウェア開発で、アジャイルビジネスインスティテュート株式会社が付与します。

みなさん、本日はありがとうございました。テスラ、SpaceXが、アジャイルハードウェア開発をどういうやり方でやっているかを紹介する機会をいただいて、本当にうれしく思っています。ありがとうございました。

これは、ハードウェア製造業の業界に特化したものではなく、このハードウェアディベロップメントのコースを受講することで、全社がハードウェアアジャイルを適用できると思っています。

自動運転などの内容も入っているので、ソフトウェアの開発をしている人も、とても楽しく、興味を持って受講して勉強してもらえると思います。

ありがとうございます。

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