2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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麻柄翔太郎氏(以下、麻柄):また1つテーマを変えて、今度は旅行業界やモビリティにおいてテクノロジーを具体的にどう活用していくのか、ちょっとお話をうかがえればと思います。
プロダクトの特性が違うので、またMoTの黒澤さんに先にお聞きしたいと思います。MoTの場合はリアルなものとして車があるので、リアル世界とアプリやWebのオンラインをどうつなぐのか、もけっこう1つのポイントになると思うのですが、このあたり、テクノロジーをどのように活かそうと考えているのか。「このような技術を使ってこういうことを実現しよう」みたいな、このあたりはどのようにお考えでしょうか?
黒澤隆由氏(以下、黒澤):これは技術だけの話ではなくて、UI/UXの設計も含めた話ではあるのですが、オフラインとオンラインが密接に連携することで成り立つプロダクトは、当然オフラインの世界での人や車両など、いろいろなものの振る舞いや行動を変えていかないといけないんですよね。その意味での難しさと、おもしろさがあるなと個人的には思っています。
「GO」に関して言えば、タクシーに乗りたい人とタクシー乗務員のマッチングプラットフォームなので、数分後には実際に出会って一定の時間を同じ空間で過ごすわけですよね。
なので、「こんな服を着ています」とか、現地でスムーズに出会えるためのコミュニケーションだったり、仮にお待たせしてしまっている場合には「乗務員が今お迎えに向かっています」というコミュニケーションも含めて、会う前から人と人のつながりを感じ合えるUXを、とても意識して設計しています。
また、MoTは一般のお客さまだけではなくて、当然タクシー乗務員さんにもアプリの提供をしているんですよね。お客さまがタクシーを呼んだ時に配車リクエストが入ってきて、承諾するとそのお客さまの場所が表示されるなど、さまざまな機能が付いているのですが、それだけではなくて、スムーズな乗車体験や車内オペレーションを実現するために、タクシーメーターなど実はさまざまな車載機器とも連携しているんです。最近だと後部座席に付けられたタブレットから広告が流れていて、そこで簡単に決済ができたりします。
また、これはGOとは別のプロダクトになりますが、MoTでは「DRIVE CHART」という、AI技術によってリスク運転を検知し、事故削減を支援するすごくアドバンスドなドライブレコーダーも開発しています。このように、MoTが提供するさまざまな機器を介して、車両一台一台が常にインターネット経由で通信しています。
そういった観点で言うと、まさにIoTのど真ん中ですし、技術やノウハウもたくさんあります。そういった意味でのプロダクト開発の難しさや楽しさがあるという感じですね。
また、これらの車両から上がってくる膨大なデータと私たちが持っているAI技術をかけ合わせて、データビジネスも含めてさまざまな取り組みをしているのも、MoTの非常にユニークな部分なんじゃないかなと個人的には考えています。
麻柄:ありがとうございます。かなり難易度が高い挑戦をされているなとあらためて感じています。AIで危険運転回避もしつつ、ユーザーと車の移動手段をどうマッチングさせるかというアルゴリズムみたいなところもかなり開発されているのかなと。
黒澤:おっしゃるとおりです。実はMoTには優秀なAIエンジニアがたくさん所属していて、シンプルなところで言うと麻柄さんがおっしゃったタクシーの配車ロジックも、単に周辺の車両にリクエストを投げているだけではなくて、少しでも早く確実にお迎えできるようにさまざまなパラメーターを考慮しながら車両を確定しています。
黒澤:また、「AI予約」という機能があります。これまでのタクシー予約は予約を受けていただく乗務員さんが一定数いて、その方々のシフトを埋めていくわけですよね。そこが埋まってしまったら終わりという仕組みです。なので予約が入ると、乗務員さんはその前後のスケジュールに大きく余白を空けておかないといけないんですよ。
あまり遠くのほうにお客さまを送り届けてしまうと予約時間までに戻って来れなくなるなどの理由で、結果的に前後に大きく余白を設けないといけない。そういう非効率性も含めて、営業効率が低下してしまうので、実は乗務員さんにとって予約はあまりうれしくなくて、乗務員さんにとってのペインにもなっていました。また、そのように非効率なやり方なので、多くの方が予約を使いたいと思ってくれていても、本当に限られた数の予約しか受けられないというのがこれまでの状態でした。
「AI予約」という機能は、予約を受け付けるタイミングで、日時やその場所の車両数などさまざまな要素を加味した上で、「この時間帯のこの場所だと何件の予約までであれば99.9パーセント以上、限りなく100パーセントに近い確率でお受けできるか」を算出しています。しっかり配車するために膨大なデータとAI技術を活用してシミュレーションした上で、最適なタイミングでリアルタイムに配車リクエストしています。
これにより、これまで受けていた予約のほぼ10倍以上の数を捌いています。そういう意味でAIをフル活用して事業展開をしていますね。
麻柄:ありがとうございます。10倍以上、すごい数字ですね。
麻柄:私たちもちょっとAIでいい感じにいろいろやっていかないとというところはね(笑)。私たちはまだぜんぜん挑戦する土台に立っていないので。
大浦さん、令和トラベルとしては今後どうテクノロジーを活用してどんなことを実現していきたいと考えているのでしょうか?
大浦貴幸氏(以下、大浦):AIという観点でいくと、旅行業界でやはり今注目しているのは「ホッパー(Hopper)」ですね。航空業界やホテル業界は、いわゆるダイナミックプライシングと言われる、レベニューマネージメントの観点によって価格をシステムで変動させるかたちで収益の最大化を図っています。
そこにプラスして、各OTA(Online Travel Agent)と言われる、それこそ楽天トラベルであったりエクスペディアのセールの企画や、自社そのものでベストレートを保証したり価格が常にリアルタイム変動しています。旅行者にとって複雑性を生み出している状況です。
(旅行者は)常に価格の安いホテルはどこだ、安い航空券はどこだと検索する疲れを起こしているような状況です。これを逆手に取って、カスタマー視点で価格を固定化するというプライスフリーズ機能を提供しています。価格変動の波をカスタマー視点でサービスを展開したことで、北米を中心に、ホッパーが非常にポピュラーになってきています。
価格変動をAIやマシンラーニングで分析できれば、クライアントだけではなく、カスタマーにもシンプルに一番お得なものを提供できると思っています。私たちも将来AIによる需要予測テクノロジーを使って、カスタマーファーストな価値を届けていきたいなと思っています。
麻柄:ありがとうございます。そうですね。ホッパーは、95パーセントの精度でフライトの価格も予測できるAI技術を活用して「今買い時です」とか、「2週間以内だったら1,000円払うだけで今のプライスを保証します」みたいな、ある種ちょっと金融商品っぽいものもAIを活用して展開している。まさに価格が、ダイナミックプライシングでかなり動いている部分を私たちもデータとして全部学習しています。
私たちの場合はトータルの旅行体験なので、フライトだけではなく、ホテルやその他アクティビティも含めて、その人にとって最適な旅行プラン、最安値だったり予算の中だったりで提案する、価格保証をしていくことができると思っています。まさにこれからやっていきたい部分ですね。
大浦:そうですね。
麻柄:ありがとうございます。
麻柄:このあたりのテクノロジーの活用については、MoTさんにだいぶ学ばせてもらいたい部分があります。今は両社とも業界のDXを進めて、難しいテクノロジーをたくさん使っていくというところで、そこで働く私たち自身も、求められるものや役割が前の時代からけっこう変わってきているのかなとも思っています。
MoTさんでモビリティのDXを進めていくにあたって、例えばPdMに求められる役割など、どういう部分が大切なポイントになってくるのでしょうか?
黒澤:難しい質問ですね。PdMというと、みんなを強いリーダーシップで引っ張っていくというイメージがあると思いますが、私のイメージは少し違います。「ミニCEO」とよく言いますが、そういう素養はもちろん必要だと思っています。
今の事業やプロダクトをやっていて思うのが、あらためて事業サイドには事業サイドの視点や気づき、アイデアがあって、同じようにエンジニアサイドにも当然それがあります。
そういういろいろなものがある中で、なにを取捨選択していくのかということに責任を持っているのがプロダクトマネージャーだと思っています。
結局、優先順位というかトリアージというか。その中でどういうアイデアを優先して、採用していかないといけないのかだったり、最終的にそういうアイデアをどういうかたちに落とし込むのか、というディテールにこだわることも含めて非常に重要だと思っています。
その際にしっかりブレない軸と、一方でさまざまなステークホルダーやメンバーの意見をフラットに聞いて判断していける素養が非常に重要だと考えています。
なにかを解決しようとした時に、それは難しいからと小手先で逃げようとすると、結果的に似ている機能なんだけど本質的にぜんぜん違うものを作っちゃったみたいな、「それって意味あるんだっけ」みたいなことは往々にしてやりがちなミスだと思うので、やはり本質を見極めて判断していくことが大事だと思います。
AIであろうとなんであろうと、一朝一夕に解決できるような課題だったらみんなとっくに解決しているわけですよね。
麻柄:確かに(笑)。
黒澤:その解決が困難な課題に私たちは取り組む。それは令和トラベルさんも一緒だと思います。そういうのはやはり業界や産業の巻き込みもそうだし、胆力を持ってやっていくことが非常に重要だと思っています。会社としてもそうだし、プロダクトに責任を持つプロダクトマネージャーなら、なおさらそういう意味での胆力が必要なんじゃないかと思います。
麻柄:なるほど。ありがとうございます。DX技術は難しい、テクノロジーの活用という文脈もありつつ、もちろん理解していたほうがいいに越したことはないですが、そこが大事というよりは、ブレない軸を持ってしっかりと本質を見極めて判断していく。
黒澤:そうですね。「これは難しそうだから」と昔だったら諦めていたようなことが、AIも含めて「今だったらこんなことができるんじゃない?」とできたりするわけですよね。なので、そういうことが非常に重要かなと思います。
麻柄:同じような質問をエンジニアサイドの大浦さんにもぶつけたいなと思っています。業界のDXを進めていくにあたって、エンジニアに求められる役割やポイントみたいなところをエンジニア観点でいうとどうでしょう?
大浦:一言で言うと、バリューエンジニアリングだと考えます。要はプロダクトの価値を機能やコストの関係に捉えた時に、黒澤さんたちのようなプロダクトマネージャーは、そのプロダクトの価値を定義して「なにを作るのか」というところをしっかり定義していきます。
それに対してエンジニアはHowの部分を担っていくので、コストの部分をしっかりフィードバックできると思っています。要は、低コストでこのぐらいの価値を作れるのか、中くらいの価値を作れるのか、大きな価値を大きなコストをかけて作れるのかを、エンジニアからフィードバックすることで最終的に何を今作るべきかをプロダクトチームとして明確にできる。
さらにプロダクトマネージャーと密にエンジニアにしか見えない観点でのフィードバックをしていくことも求められているとは思いますね。
麻柄:ありがとうございます。確かにテクノロジーの活用という観点で言うと、数年前のシステム開発、プロダクト開発は、要件定義と設計以降を切り離して企画する人、開発する人でけっこう切り分けられていたイメージがありますが、どんどんその境界が曖昧になっています。
1人で全部できるわけではないので、プロダクトマネージャーとエンジニアリングの密な対話だったり、エンジニアもバリューエンジニアリングという観点で、単に言われたものを作るのではなくて、なにを作るのかというところをPdMとしてきちんと話をして、ソリューションとして案を出して議論して決めていく。そういうところがポイントになりそうだと、お話を聞いていて思いました。
ではそろそろエンディングに入っていきたいなと思います。視聴者のみなさん、本日のイベントはいかがでしたか? スタートアップでのキャリア、スタートアップで社会課題に取り組む意義、テクノロジーの活用による産業のDXについて少しでもみなさんの仕事やキャリアのヒントになっていれば幸いです。
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