2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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成瀬允宣氏:ここからは、みなさんの「アウトプットをしよう」という気持ちにさらに訴求できるかと思います。具体的には、会社が乗っかってきたんです。
(スライドを示して)例えば、みなさんがこの図に旗を立てるならどこに立てますか? 一番目立つ場所。
一番目立つ場所は山のてっぺんです。何か建てるならここに立てますよね。
会社もやはり同じことを思うでしょう。目立つところに立てましょう。目立つ奴に肩書きをつけて、目立つ奴の手伝いをしましょう(笑)。「勉強会やセミナーに150名も集まるなら会場を提供しよう」とか、「肩書きをつけてみよう」とか。
今でも(僕には)デベロッパーエバンジェリストとテックリードという肩書きがあります。今のところ、どちらも僕1人しかいません。普通のテックリードはいますが、グループのテックリードは今のところ僕だけです。
みなさんはDeveloper Relationsをご存じでしょうか。技術広報に近いですが、開発者との関係性を作るチームです。「カンファレンスをスポンサードするので開発者側の意見を吸い上げたい」ということで、僕に声がかかりました。
何をやるかというと、例えば出し物を企画することです。スライドの左下は「ビルコン川柳」というIT系の川柳で、Buildersconでやった企画です。
企画のほかにはノベルティです。ビルコン川柳の写真の下にあるビニール袋が見えますか? これは、うまい棒です。
うまい棒を1万6,000本作ったんです。配り切るのが大変でした。作ったというか、「ノベルティを何にしようか」と言ったら、取締役が急に「発注しておいたから」と言ったのでビックリしました。Developer Relationsチームのメンバー全員も、保管場所を探しに遁走していました。
あとはCMですかね。4つあります。カンファレンスでCMを流す。少しふざけた感じの開発者にフィーチャーしたCMを作っています。最近は他の企業さんも真似するというか、けっこうおもしろいCMを作るようになりました。絵コンテもたまに自分で描いています。
ここまでの話でわかるとおり、アウトプットで人生がかなり大きく変わった。もともとはプログラマーらしい開発業務をしているだけでした。
(スライド示して)アウトプットを始めてから増えた業務がこれらです。簡単に説明すると、アーキテクトは言うまでもありませんが、自分が抱えるシステム以外も私の領域になってきました。他のチームからアドバイスを求められて、「こうしたらいいんじゃないか」と、たまにツールを作ったり手伝ってあげたりしています。
(コメントを見て)「最近CM見ていない」(笑)。僕のCMを見たい人は僕のTwitterの固定ツイートを見てください。(コメントを見て)「キャンプのやつ好きです」そうですね(笑)。第4弾です。(コメントを見て)「うまい棒」、うまい棒です。
アーキテクトとして動くようになったほかに、研修講師です。先ほど言ったとおり、グループ研修や会社向けにセミナーを開いています。登壇活動は言うまでもなく、Developer Relationsチームと技術広報は少し語弊がありますが、そういった仕事もしています。小学校に行ってプログラミング授業もするようになりました。私が先生になってプログラミングを教えています。
立ち上がった技術研究チームのリーダーをやるなど、アウトプットのおかげで仕事の幅がかなり広がったと言えます。ただ、これでよかったのかはよくわからない。もし僕がこの3年間開発に集中していたら、今の自分とどちらがより世の中に影響を与えたのだろうと考えると、わからない。
それこそOSSに貢献したり、自分が思ったライブラリを公開していたんじゃないか。この答えを出すにはまだ人生が長すぎるので、もう少ししたら、ある程度自分の中で答えが出るのではないかと思います。
ともかく人生は変わりました。そこで、みなさんにアウトプットすべきと言うべきかを自問自答してみました。
実は、私は自分の勉強のためや、自分のメモのためにアウトプットをしたことがないんです。今回の定義ではないアウトプット、仕事のアウトプットをしていたので、わざわざ勉強のためにアウトプットする意味はないと思っていたんです。(コメントを見て)「アウトプットがうまくいくとうまい棒1万6000本」、罰ゲームじゃないか(笑)。
ただこれだけは言える。世界は広がります。今は仕事も広がりました。影響を与える範囲は、私が考えたものをみなさんに紹介する時にいい影響を与える範囲。あとは交友関係。これをきっかけに友人ができて、一緒にカンファレンスを立ち上げました。
「アウトプットをするべきか」という問いに対して僕が言えるのは、みなさんがもし閉塞感を持っていたり、業界をよくしたい、何かを伝えたいという強い思いがあるなら、アウトプットをすべきだと思います。逆に、自分の勉強のためにやるとけっこうつらくなるので、あまりおすすめしません。アウトプットしようとするとインプットもする。かなり勉強できるのでいいと思います。
(コメントを見て)「小学校のプログラミング授業はどんな経緯でやることになったのかが気になります」。もともと会社がそういったCSRに近いことに取り組んでいました。「やるぞ」とトップの判断が決まった時に、声がかかったのが僕だったということでしょうか。「あの人ならうまくやってくれるだろう」という信頼を得られたのでしょうか。
今日のメインの「アウトプットへのスタンスとコツ」。私が重視するものの話をします。まず成瀬の記事を見てみましょう。『実装クリーンアーキテクチャ』、この記事は2万6,400文字です。『vue.js + typescript = vue.ts ことはじめ』はチュートリアルですが2万2,300文字。『オブジェクト指向のいろは』という記事は4万3,952文字。『ボトムアップドメイン駆動設計』は8万文字で読み込み500ミリセカンドかかる。
(スライドを示して)これは最近、特別支援学校の授業に行った時に強い情動に駆られて書いたブログですが、1万3,400文字です。視線入力の機械の記事は、その日のうちに書いたものです。
これを見ればわかるとおり、質か量かといわれると私は完璧に質を選んでいます。
私はいつも“質”と“正しさ”を重視しています。なぜここに“正しさ”が加わっているのか。プログラマーの矜持、そして職業作家。商業出版をしているので、意地が加わっているというか。
プログラマーをやっていると、良質なコードで正しく動くプログラムを作りたいのと同じように、良質な情報を正しく伝えたい。(コメントを見て)「読むのに工数かかる」、確かにね(笑)。技術書と一緒で、読むのはなかなか大変です。簡単な読みやすい文章で書いてあるのでぜひ読んでください。別に読まなくてもいいです。
良質な情報を正しく伝えたい。ここで考えるべき“良質”とは何だろうと、ブレイクダウンしてみました。想定する読者が求める情報が網羅されていること。そして想定読者に不足する前提知識が網羅されていること。さらにまだこの世に存在しないこと。そして正しいこと。
この“正しい”が一番難しい。でも、これが一番重要だと思うんです。なぜかというと、情報に正しいことを求めると、精度が気になるからです。先ほど言ったとおり、インプットを求めているのであれば正しさはすごく重要で、正しさを求めないとインプットが加速しないんです。
どこがきっかけかというと、「〇〇だと思います」「たぶん」という言葉を使いそうになったら、それは調査の始まりです。このループが学びを加速させます。逆にいうと、正しさを求めないとインプットにすらなりません。
正しさは絶対に大事です。とはいえ、間違うこともありますよね。
人は誰でも間違えます。自らの間違いを受け入れる必要があります。
僕がぜひみなさんに持ち帰ってほしい言葉は「『誤ってもいいや』と不確かな情報を提供するのではなく『正しさを追い求めた』上で誤ること」です。前者の情報の質は確実に後者より劣ります。気の持ちようと言われればそれまでですが、ここだけは譲れない。追い求めるとは「たぶん」や「と思います」という言葉が出なくなるまで考えたり調べることです。
ただし、補足や裏付けをする際は、確証バイアスが働くことに気をつけてください。自分にとって都合のいい情報ばかりを集めてしまいます。バランスよく情報を集めた上で、伝えたいことが正しいかどうかを判定していく感じでしょうか。
(次回に続く)
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