2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
リンクをコピー
記事をブックマーク
やまげん氏(以下、やまげん):ちなみに、スケールアウトの時はCEO兼CTOとして立ち上げて、次もCEO兼CTOなんですか?
山崎大輔氏(以下、山崎):次も同じやり方です。これもよく聞かれるのですが、「出資しないのか? 出資を受けないのか?」という話があります。否定するわけではないのですが、僕は今の出資のようなスキームがあまり好きじゃないというか。スモールビジネスの概念(の方)がすごく好きなんです。
前の緒方さん(株式会社Voicy代表取締役・緒方 憲太郎氏)の時にも話したのですが、エリック・シンクという人がいて、(その人の)『革新的ソフトウェア企業の作り方』という本があります。この本と、あとRuby on Railsの作者のDHH(David Heinemeier Hansson)という凄腕のプログラマーがいて。(僕は)その人の信奉者で、この2人は、すごくざっくりいうと「大きい会社は作るな」と言っているんです。
エリック・シンクがどういうソフトウェア会社を作っているかというと、どういうソフトウェアかは忘れてしまいましたが、特定のニーズを満たすソフトウェアを作って、それを超少ない人数、5人とかで2、3社に(そのソフトウエアを)売って、それで小さなビジネスをする(ことを)志向しろと言っています。
そこでまず黒字を作っておいて、そのソフトウェアを売った先の会社の成長とともに、こちらも売上が上がるようなモデルを作ればいいんじゃないかという話をしています。
Voicyさんや、いわゆるVC(Venture Capital)とかを否定するわけではありませんが、そういうところが志向している会社の作り方は、最初は赤字でもいいから、とにかくユーザーを集めきって、(1ユーザのLTVに応じて)お金が供給されるから赤字を掘ってもいいから、2年とか3年とか時間をかけて成立させるのがが正しいやり方だ、みたいな。そういうやり方があります。
エリック・シンクやDHHはそういう考え方ではなく、もうちょっと人数を絞って、それで事足りるような売上をいきなり上げてしまうやり方のほうが、プログラマーにとっては穏やかに仕事ができていいんじゃないかという話を提唱しているんです。
やまげん:なるほど。
山崎:僕はこの考え方がすごく好きで。これは別に僕がエンジニア起業家だからそういう方法が好みというだけで、みなさんがそれが正しいというわけではないんですが、エンジニアをしながらすごく緻密なコードを書きつつ、だけど売上をちゃんと上げることを同時にやるのは、だいぶ難しい仕事なんですよね。
やまげん:難しいですね(笑)。
山崎:例えば、今やまげんさんは売上に対しての責任は持っていないけれど、社長になると、そのプレッシャーが同時にかかるわけですよ。Voicyでいえば、緒方さんをやりながらコードも書くようなことを要求されるわけです。わかりますか?
Voicyで配信とかをしながら、VCとお金の折衝もしながら、売上も上げつつ、だけどエンジニア社長としてメンバーにはアーキテクチャを示しつつ、キレキレのコードを書くみたいなことをやらなきゃいけないわけです。
やまげん:ヤバいですね。スーパーマンですね。
山崎:ヤバくないですか(笑)?
やまげん:はい(笑)。
山崎:自分でも言っていておかしいなという感じなんですけど、エンジニア社長って結局そういうファンクションなんですよ。それはさすがにできないので、先にプロダクトを作って黒字にしておいて、VCからのお金の心配は基本的になしにしておいて、それから積み上げていこうというスタイルでやろうとしているという感じです。
やまげん:なるほど。パッとCEO兼CTOみたいな(お話の)ところで、Voicyでは無理だろうな(と思いました)(笑)。
山崎:無理ですよ。だって今の仕事に加えて、緒方さんのファンクションを同時に兼ねるんですよ。おかしくないですか?
やまげん:頭がおかしくなっちゃいそうです(笑)。
山崎:そうなんですよ。だから、それはしない代わりに、例えばスケールのスピードを遅くするというチョイスをするという感じです。これは良い悪いとかではなくて、単なる起業のスタイルの違いだと僕は思っていて、「柔道と剣道どっちがいい?」みたいな話だと思っています。僕はそういうスタイルがすごく好きだし、しっくり来ているので、そういうのを選んでいる感じです。
やまげん:なるほど、ありがとうございます。きっとCTOになりたいエンジニア、起業してみたいエンジニアみたいな人たちも多いと思います。僕自身はその目線がぜんぜんなかったというか、Voicyのビジネスモデルはわりと普通だとは思っていたのですが、確かに利益を上げるその方法は1つでしかないなと気づかされました。Voicyは、赤字をバリバリに掘っています(笑)。
山崎:だからそれはそういうスタイルなんですよね。それはそれで良い悪いではなくて、1つの方法という感じです。
やまげん:ありがとうございます。
やまげん:LTVやいろいろなユーザーを集めてLTVに最適化していく時のエンジニアのつらさみたいなものは、具体的にどんなものがあるんですか?
山崎:やはり単純に、お金がないのはメチャクチャきついんですよ。頭の中にお金の心配があることです。例えばやまげんさんは、給料をもらっていると思うのですが、明日の給料が払えるかわからなくて、かつ、生活費が足りなくなるかもしれないみたいな恐怖を負いながらコードは書けないという、単純な話です。
やまげん:なるほど。
山崎:(私も)それはさすがにできないです。ただ、もちろんそういうのをぜんぜん抜きにして、エンジニア社長でもバンバンそういうことを先にやる方法もあるんですよ。ただちょっと僕はそれができないという、ただそれだけです。
やまげん:なるほど、ありがとうございます。
(次回に続く)
技術相談、組織面のアドバイス、経営陣とエンジニアの橋渡し 山崎大輔氏が技術顧問として取り組んでいる3つのこと
「経営の問題も組織の問題も、どの企業も課題は同じ」 元CTOが次のキャリアに技術顧問を選んだ理由
緻密なコードを書きながら、売上をちゃんと上げるのは難しい 山崎大輔氏が好む『革新的ソフトウェア企業の作り方』が提唱する働き方
技術顧問が語る“大企業のDXはたいてい失敗する”理由 ライバルに勝ちたい大企業、緩く長く開発し続けたいSIer
「手伝うためには“ストーリー”が必要だった」 山崎大輔氏が語る、技術顧問になる企業の選び方
「事業で1円でも稼いだことがあるエンジニアはそれだけで食べていける」 元CTOが語る、“言われたことだけで給料をもらう”エンジニアの危険性
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには