
2025.02.06
ポンコツ期、孤独期、成果独り占め期を経て… サイボウズのプロマネが振り返る、マネージャーの成長の「4フェーズ」
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やまげん氏(以下、やまげん):CTO百景、始まりました。モデレーターはVoicy エンジニアリングマネージャーの山元です。Voicyでは“やまげん”と言われています。番組の最後でお便りによる質問も受け付ける予定になっています。質問だけでなく、コメントなどもらえると非常にうれしいので、ぜひお便りでコメントをしてください。
ということで今回は、CTO百景が復活してからの第3回のゲストになります。JOMYAKU株式会社のCTO 野澤さんに来ていただきました。よろしくお願いします。
野澤一貴氏(以下、野澤):よろしくお願いします。
やまげん:よろしくお願いします。簡単に自己紹介をお願いしてもよろしいですか?
野澤:JOMYAKU株式会社でCTOをやっています。野澤と申します。軽い自己紹介ということなので、今までのキャリアについてサラッとお話できればと思います。
最初はすごく小さいSESの会社でエンジニアのキャリアをスタートしました。それが2008年くらいです。そこで超化石と呼ばれているCOBOLという言語を使い、主に物流系のシステムを作っていました。
やはりCOBOLだけだと「わい、死んでしまうやん」という危機感があったので(笑)。サイバーエージェントグループの、今でいう株式会社CAMに転職して、そこでネイティブアプリ、iOSアプリの開発と、あとはBtoC向けのメディア(の開発)。後半は、アドテクと呼ばれる広告系のプロダクトの開発に従事しました。思いのほか、広告系のプロダクトの開発が楽しくて。
やまげん:そうなんですね。
野澤:はい。そこでちょうどDMP(Data Management Platform)が流行っていて、DMPを活用した広告配信の仕組みなどをやれないかということで、ミクシィ(株式会社ミクシィ)に転職をしました。ミクシィでは、主のデジタルマーケティングの部署でエンジニアをしていたという感じになります。
そこで「アドテクはおもしろいな」と思いながらやり続けていく中で、日々広告を運用するマーケターの方などが抱えるペインを強く感じたので、運用型広告の自動化のサービスのSaaSを起業して作るところを経て、今はJOMYAKU株式会社で、急に産業廃棄物業界のプロダクトをやっています。
やまげん:なるほど(笑)。ありがとうございます。
やまげん:最後に急に産業事業のDXをやり始めた感じですね。
野澤:そうですね。
やまげん:このあたりは、“静脈事業”と呼ばれたりする領域ですよね?
野澤:“静脈産業”と呼ばれる業界ですね。
やまげん:その説明もしていただけるとうれしいです。
野澤:そうですね。たぶん“静脈産業”という言葉自体が聞きなれないと思います。産業を人間の動脈と静脈になぞらえて例えられています。動脈はいわゆる酸素を運ぶ役割をする血管だと思いますが、それが社会においては、物を生産して顧客に届けるところまでのプロセスを動脈産業と言います。
反対に静脈産業は、人間の営みにおいて出たゴミなどを回収して資源に戻していくというところ。それを、二酸化炭素を回収して心臓に戻すというところになぞらえて静脈産業と呼ばれることが多いです。
やまげん:すごくおもしろい例えですよね。うまい例えだなと。
野澤:そうなんですよね。
やまげん:静脈産業といっても、市場規模みたいなところ、産業規模はやはりけっこう大きいですよね。
野澤:そうですね。規模的にはとても大きくて、今だと14兆円ぐらいの規模感ですかね。
やまげん:なるほど。そういった静脈産業みたいなところで今はチャレンジしているところかと思いますが、具体的に今JOMYAKUさんでやられている事業の説明もしていただけるとうれしいです。
野澤:今JOMYAKU株式会社では、主に静脈産業で産業廃棄物の業界(に取り組んでいます)。(産業廃棄物の業界には)登場人物が3人いて、主にゴミを出す排出事業者と呼ばれる人、ゴミを運ぶ収集運搬事業者という人、ゴミを処分する処分事業者の3人がいます。その中で、ゴミを回収して処分事業者に持って行く、収集運搬事業者向けの業務効率などに提供できるSaaSを作っています。
やまげん:なるほど。ではイメージでいうと、ゴミ収集者の(業務の)部分をより効率的にするイメージですかね。
野澤:そうですね。なぜそこをやっているかというと、もちろん大手の収集運搬事業者というところはありますが、収集運搬事業者の事業者数自体が、コンビニよりも多いんですよ。
やまげん:へー!
野澤:歯医者もコンビニより多いと言われていると思いますが、コンビニと同じぐらいかそれ以上の運搬事業者がいる中で、半数以上が家族経営だったり、身内で経営している会社だったり。
あとは、(所有している)トラックが10台以下の中小企業が大多数を占めているんです。そういう業界は、やはり日本が生まれてから脈々と続いている中でやっている会社だったので、とてもレガシーなところが多い。
今なおDXがうまく進んでいないというところが課題として大きくあるので、そこを改善できるように日々がんばっています。
やまげん:なるほど。初めて知りました。家族経営とか小さいところの方々も顧客に含めながら、営業とかもしつつという感じなんですかね。
野澤:そうですね。
やまげん:プロダクトでいうと、具体的にどんな機能があるものなんですか?
野澤:プロダクトでいうと、いつ・どこに・どのトラックで回収をしに行くのかを管理するための“配車表”と呼ばれる機能がありますが、それがメイン機能になります。ゴミの回収は、市区町村の許可がいるんですよ。
やまげん:なるほど。確かに。
野澤:産業廃棄物って、法律でガチガチに規制が入っているんですよね。不法投棄だったりがけっこうニュースで出てくると思いますが、そういうことをしないように「どの市区町村で、どの種類のゴミを回収していいですよ」という許可をもらって、ようやく運べるんですよね。なので、例えば神奈川県と東京都と埼玉県がルートとなっている場合は、3つの都道府県で許可を取らなきゃいけなかったり。
「このお客さんのゴミは回収していいけど、このお客さんのゴミは回収しちゃダメ」とかがあるので、そういうところを管理しやすいような配車表を、カレンダー的なところで表現しています。
やまげん:けっこうドメインというか、専門知識が深そうな領域ですね。
野澤:そうですね。正直キャッチアップはとても大変でした。
やまげん:直接聞きにいくとかでキャッチアップしていったかたちですか?
野澤:朝5時に一緒にトラックに乗り込んで、ドライバーさんに張り付くこともやっていました。
やまげん:へー! それはけっこう熱い話ですね。
野澤:そうですね。でもやっぱりそれぐらい日々業務をやっているユーザーさんに向き合わないと、本当にいいものが作れないところがあるので。やはり頻繁にユーザーインタビューをしたり、フィードバックをもらうコミュニケーションは取っています。
やまげん:すごい。メチャクチャ大事なところですが、そういったものは開発組織などに浸透させるのはけっこう難しそうだというところがなんとなくあるんですけど。
あと、そもそも開発組織は今どういった組織なんですか? 何人ぐらいいて、今はどういうチームでやってとかで言うと。
野澤:今の開発組織はとても小さく、10人以下でやっています。フロントエンドとバックエンドで大きく分けて、それぞれの分野にテックリードポジションのエンジニアが1人ずついるのと、その下に手を動かすエンジニアがぶら下がっている構造で、今は8名ぐらいで、業務委託の方を含めてやっている感じになります。
やまげん:そうなんですね。もしかしてそういった人たちも一緒にトラックに乗ったりとかはあるんですか?(笑)。
野澤:そうですね。業務委託の方は調整が難しかったりしますが、プロパーの社員のエンジニアの方に関しては、最初に体験してもらっています。
やまげん:なるほど。じゃあ、1日中いろいろなところのゴミとかを回収して、一緒に手伝いとかもしながら……。
野澤:そうですね。
やまげん:すごいですね。やはりそういったところの実感とかがあってこそ、ドメイン知識が深まってくるようなところがある感じなんですかね。
野澤:そうですね。あると思います。やはり日常では接しない業界なので、それをしないと本質的な価値をもつプロダクトは作れないところはあります。
やまげん:あとは、例えばドメイン駆動設計みたいなところで、「モデル図はドメインで共通意識で持とう」みたいなことが手段の1つなのかなと思ったりしています。ユーザーヒアリングをした結果を可視化したり、ドメインをみんなで勉強するというか、共通認識を作るようなところで活動もされていたりするんですか?
野澤:現時点で、そこのミーティングの8割がドメイン理解だったりディスカッションというところに費やしています。ビジネスサイドと開発サイドのディスカッションをけっこうしています。
やまげん:そうなんですね。ミーティングの8割というと、1週間でどのくらいになるんですか?
野澤:ごめんなさい。8割はちょっと盛ったかもしれないです(笑)。週4時間、5時間は会話しているかもしれないですね。もっとしているな。10時間ぐらいかな。週に10時間はしていますかね。
やまげん:それはすごい。確か、1人のエンジニアあたりのイメージですよね。
野澤:そうですね。
やまげん:かなりそこに力を入れているというか、やはりそこが1番コアなところと考えてのマネジメントだったりするんですか?
野澤:そうですね。やはりエンジニアはWebだったりとか、最先端のテクノロジーに触れて生きてきているじゃないですか。だから、そういう人たちが使いやすいサービスだったりプロダクトというところに関してはすごく理解があります。
(ただ、)今の静脈産業においては「あまりテクノロジーに触れていない人たちが使いやすいサービスにするにはどうしたらいいんだっけ」「どういう設計がいいんだっけ」というところが入ってくるので、そこのディスカッションにすごく力を入れているというところです。
やまげん:なるほど。勉強になりますし、絶対に大切ですよね。
野澤:そうですね。
(次回に続く)
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