2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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田中邦裕氏(以下、田中):(スライドを示して)これはGoogleのサーバーですよね。
登大遊氏(以下、登):はい。これはGoogle社が1998年にスタンフォード大学のサーバー部屋の余りスペースに置いて動かし始めたもので、それが左上の写真です。しばらくして、大規模ユーザーがついたんですけど、当時はサン・マイクロシステムズのサーバーをバッと並べるというのが、標準的なプロの方法だったんですよね。
だけど、彼らはお金がなかったので、インチキな486DXのマザーボートをバッと積んで、Linuxを動かしていたんですよね。サーバーを買うお金もたぶんなくて、それで、どれがダウンしても大丈夫なように、Linuxを動かしました。今でいうクラウドのソフトウェアを自分たちで書いたんですね。
Googleは、大量のユーザーのアクセスを超高速にさばく最初のものを、結果的に従来のシステムよりも安定して低コストで作りました。これをきれいにやれと、24時間365日保守のコンピューターの、今の企業や行政的な考えでなにか作れとなったら、そういう新しいものは生まれないので、このGoogleの例は、とても“グチャグチャグチャ”の有用性を示していると思います。
田中:なるほど。
村井純氏(以下、村井):だいたいそういうところから始まるんだよね。
登:UNIXも同じなんですよね。1969年にAT&T、日本でいうNTTですね。向こうも保守的な会社ですが、そこの中にも“おもしろ社員”が数名いて、「スペース・トラベル」という惑星間宇宙飛行ゲームをコンピューターで表示して遊んでいたら、会社にそれを撤去されそうになったそうです。
別のワークステーションに移植しようとしたんですけれど、いちいちプログラムを移植するのは面倒だから、いったん書いたらほかのCPUでも動くOSレイヤーを作ってしまおう。さらに、ほかのCPUでも動かせるコンパイラも作ろうと、この瞬間、UNIXとC言語が生まれたといろいろな文献に載っているんです。自分は生まれる前なので、見たことはないんですけども、これもやはり、計画的になにかをやれという感じではなかったそうです。
村井:計画的ではないです。僕、ここに何度も講演に行っているんですよ。右がデニスで、左がケン・トンプソンでしょう?
マレーヒルのベルラボ(ベル研究所)に行った当時、ビットマップディスプレイができたばかりで、「漢字のフォントを出すのが大変なんだよね」みたいな話をしていました。
本家本元UNIX野郎と、俺みたいな日本のインチキUNIX野郎が戦うためには、「お前ら知らねえだろ!」みたいな話を持っていかないといけなくて、だいたいUNIXやっていたやつは「えっ? 英語をしゃべらない人って地球にいるの?」みたいな、そういうアホなやつだったから、「そこだ!」と思って。
だから、日本語を見せて話をしてさ。「地球っていろいろな人類が住んでいるんだよ。お前らは知らないだろうけど」みたいな話をして、それがコンピューターでどういう意味あるの? みたいな話をするしかないからしていたわけ。
それで次の年も行ったら、デニスがビットマップディスプレイを手に入れて、「見ろよ純」って言って、日本語のフォントを出すわけ。
田中:日本語が出たんですね。
村井:そこがポイントで、俺がデニスに「デニス、こんなことを誰がやったの?」って聞いたら「俺が作った」と。「いつから作ってんの?」って聞いたら、「去年純が来た時にこの話をしたから、それからずっと俺が作っていたんだよ」と。
ちょっと待てと。このUNIXファイルシステム、C言語を作ったデニス・リッチーが、俺の話を聞いておもしろそうだと思ったから、フォントをビットマップディスプレイに表示するシステムだけ1年間作っていた。「それ大丈夫か、おい」って思って「ベルラボで、そんなことを思いついてやっていて、論文出していないとか、研究のサマリー書いていないとか、そういうので怒られないの?」って聞いたわけ。
そうしたら、「いやいや、ぜんぜん怒られないよ」って。「ちょっと待って、ベル研って、なにもしてなくても上司に怒られないわけ?」とか聞いたら「ぜんぜん怒られない」と。「えっ、だったらバカなやつが来たら、どうすんの? できるやつとできないやついるじゃん」って聞いたら、「できないやつは恥ずかしくなっていなくなるから大丈夫だ」と。すごいな、さすがだなと思った。
好きなことを好きにやらせる仕組みは、その頃のワトソン(トーマス・J・ワトソン研究所)もそうで、この間浅川さん(浅川智恵子氏)に聞いたら、最近そう戻ってきたと言っていました。
IBMは10パーセント、目をつぶってワトソンに出さなきゃいけないルールだったんだよ。
田中:えっ、何でですか?
村井:研究にビジネスセクターが口出すなってことですよね。ベル研はいろいろあるんだけど、ワトソンはOSのところをベル研よりけっこう好きにやらせたり。そのストーリーを聞いた時に、なにも口を出さない研究所からノーベル賞が出てくるというのは、そういうことかって、思ったのを覚えています。
やはり、縛らないのは大事だよね。そういうことを僕は経験していたから、とにかく枠だけを作って好きなことをやらせたいとその時から思っていたよね。
田中:ちょうど「原動力は何なのか?」というテーマで1つ目をやっていますが、やはり好きなことなんですかね。
登:高専のインチキサーバーで、インチキホスティングやっていたという田中社長も同じやと思うんですけども、好きなことプラス、ほかの方にサーブするのがメッチャ楽しい、ウェルカムみたいな感じ。
田中:いまだに楽しいですね。どこどこのサイトがさくらを使ってくれているらしいと聞いたら、みんなですごく喜びます。
登:ああ、やはりそうですか。
田中:トラフィックが増えると、原価が上がるってビジネスサイドは思いそうじゃないですか。だけど原価が上がるうんぬんではなくて、こんだけ使ってくれるとうれしいですよね。
クラウドみたいになってたくさん使ってくれると課金額も上がって、ビジネスにもつながるし、自分たちも楽しいし、お客さんもビジネスうまくいって儲かるしと、そういうのが一致しやすい社会になったのかなと感じます。
村井:そこまでいくといいよね。
(次回へつづく)
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