CLOSE

コミュニケーションデザインってなに? デザインシステムから見るブランドづくり(全4記事)

デザイナーにしかわからない・使えないものは作らない ブランドづくりにおける、3社それぞれの工夫

企業やサービスのブランドを扱うコミュニケーションデザインの現場、実際みんなどうしてる? 各社それぞれの工夫をざっくばらんに話そう!と奮闘中の3社のデザイナーが集まりました。「ブランドづくり、どう仕組みにしてる?」というテーマで、雑談する様子を聞きながら、各社の取り組みを詳細に知ることができます。全4回。4回目は、他社の真似をしたいポイントについて。前回はこちら。

「会社が解散する」がゴールだったらまだ10点かもしれない

いちはら氏(以下、いちはら):何を100点とするかによって今の進捗がぜんぜん変わっちゃうから、本当に点数を付けるのは難しいなと思っています。「ブランド作りのゴールって何だろう」みたいなところが決まっていないから、点数が付けられないなと今ちょっと思いました。クックパッドはだいたい……えーどうしよう。ちょっと空気を読んだかもしれませんが、40点とか45点ぐらいかなと思います。

司会者:おー。

sekig氏(以下、sekig):(空気を)読まないでください、読まないでください。

(一同笑)

司会者:赤裸々推しを。

いちはら:「クックパッド」はすごく長いサービスで、全国の認知度が相当高いんですよ。信頼ももちろんありますし、ブランドとしての下地がもう出来上がっているんです。ただやはり、まだクックパッド=主婦がレシピを見るサービス(と認知されている)。

実は当社は料理の会社になろうとしています。料理にまつわるあらゆることをサービスとして提供することで、毎日の料理を本当に楽しみにしたいという企業なんですよ。それが叶ったら会社は解散すると定款に書いてあるんですよね。なのでそこを目指すとしたら、本当に10点とかになっちゃう(笑)。

「会社が解散する」がゴールだったらまだ10点かもしれない。でもブランド作りで今時点でやっている取り組みとしては先ほどもちょっと言いましたが、Apronというクックパッドのレシピサービスのデザインシステムと、実は「Organic」というクックパッド株式会社のほうのデザインシステムも、マテリアルを開発をしているところです。

一部徐々に世の中に出始めていますが、そういったサービスと会社とのバランスがきちんと世の中のイメージとして定着していくというところを考えると、これからコミュニケーションデザイナーがやらなきゃいけない領域ってすごくたくさんあるなと思っています。人手が不足しています。

司会者:人手が不足しています(笑)。

sekig:直球ですね。

いちはら:(笑)。

メンバーのビジョンへの理解度の高さが強みのクックパッド

司会者:たぶんみなさん謙遜して低めの点数を付けるだろうなと、なんとなく予想をしていたのですが、逆にある程度やれているなというところだったり、ここはもしかして強みかもしれないと思う部分はどんなところですか? クックパッドさんはどうでしょうか。

いちはら:イチからのインナーブランディングが必要ないところですかね。

(一同笑)

いちはら:入社時のオンボーディングでmission/visonについて話す研修があって、みんなビジョンの理解度が高いから。

sekig:なるほど。

いちはら:そこの浸透率が高いので、「あぁ、そういうことね」という感じでコミュニケーションが取りやすいですね。表層的な部分はまだまだ整っていません。オフィスデザインもそうですし、今やっていることもそうですし、そのデザイントークンの配布や、ブランディングという部分ではまだまだこれからです。

コアの部分で言うと、「クックパッドはこういうサービスであるべき」みたいな姿はみんなの心の中にきちんとあるので、あとは「やっていく!」みたいな感じなんじゃないかなと(思います)。クックパッドは歴史の長い会社ですが、コミュニケーションデザイナーがずっといなかったんですよ。2~3年前にやっと初めて1人目のコミュニケーションデザイナーが入ったんです。

sekig:へー。

いちはら:3年前か。3年前に1人目がやっと入ったので、そう考えるとまだまだ土壌があるからそこを具現化していくところかなと(思っています)。そこがクックパッドの強みというか、できているところなのかなと思います。

司会者:ありがとうございます。

いちはら:ドヤってみました。

司会者:(笑)。ドヤっていきましょう。総じてドヤる場もなかなかないと思うので、積極的にドヤっていけるところはドヤっていただいて。

GMOペパボはコピーライティングがわりとできている

司会者:じゃあputchomさんも盛大にドヤっていただいて。

putchom氏(以下、putchom):今「ドヤってほしい」という流れになるとはまったく思っていなかった。

(一同笑)

putchom:アンダーラインを今自分で引いて書き直したところだったんですよね。「ドヤってこい」と言われているんですが、僕自身ドヤるのはメチャクチャ苦手な人間なので。

(一同笑)

putchom:話を聞いていて、「そういえばあれもできていない、これもできていない」というのが頭の中に出てきてちょっとやばいなと(思いました)。

いちはら:ネガティブモードに。

putchom:点数を20点ぐらい下げたんですけど。

(一同笑)

sekig:大幅に(笑)。

司会者:大丈夫か(笑)。

putchom:最初は50点で付けていました。コミュニケーションデザインのタッチポイントを作るところでいうと、みなさん先ほど「全員がデザインをできるように」と話をしていたのですが、「全員が言葉のデザインをできるように」というのを目的に、コピーライティングを助けるメチャクチャ便利な「Kindaichi Suite」というものを用意しています。表記ルールを書いた「Pepabo Writing Style Guide」と、用語集みたいなものをNotion上に用意して、これらを組み合わせた自動校正チェックツール「Kindaichi Check Tool」を用意しています。

例えばここになにかお知らせなどの文言を入れてポチッと押して、トーンとテキストで、「これはペパボで使うの?」とか「SUZURIで使うの?」とか「それは誰向けなの?」「どういうコンテキストなの?」というところを入力すると自動で校正してくれます。

これをコピーライティングと呼んでいいかというとちょっとアレですが、Inhouseでカバーすべき領域は、わりと基礎の部分なので、最低限のデザインが誰でもできるツールということで、こういうものを用意しています。

なので、このコピーライティングとアートディレクションで言うとコピーライティングはわりとできているんじゃないかなと思って50点にしていて、逆にアートディレクションは今はあまりできていません。

それで、先ほど紹介したアートディレクション分科会を立ち上げました。みなさんたぶんイラストレーションなどを整備されていると思いますが、うちはまだちょっとそういうのはできていないので、minneでやっているような例を横展開していこうかなというところで50点にしていました。ただ、それを作ったとして、使うという観点が抜けていたなと点数を付ける時に、みなさんの「今使ってもらうのが大事だよね」という話を聞いて、マイナス20点をしました。

司会者:ハードルがどんどん(笑)。

putchom:使うという点では、こちらはわりと使いやすいインターフェイスですが、アートディレクションにおいては、使うためのインターフェイスがそもそも考案できていないので、そこも含めるともうちょっと点数が低いんじゃないかなというところで、今20点下げて30点にした次第でございます。

sekig:下げないでください(笑)。

putchom:(笑)。そういう感じです。

司会者:Kindaichi Suiteは完全に社内向けなんですか?

putchom:そうですね。これは今Chrome拡張を社内向けに用意していて、ドラッグして右クリックすると、先ほどの校正チェックのページが開いて、校正してくれるので、誰でも使いやすいかたちになっていると思います。エンタープライズプランで売ってもいいかもしれないですね。

司会者:(笑)。

sekig:褒めていますが、これが出た時に本当に頭にきましたね。

(一同笑)

sekig:でも当社もプロダクトサイドでやっているので、今回は我々からは紹介していませんが「textlint」を使って文章校正をしていたり、社内では「須磨倫子さん」(※「須磨倫子」というSlack bot。textlintを使った、Slack上の文章校正ツール)だっけ?

samemaru氏(以下、samemaru):はい。

sekig:そのかたちでの提供はやめたけど、そういうものもやっていました。

putchom:この間、大塚さん(※おおつかあぐり氏)とお話をした時に、Rubyのlintとかテキストレベルのlintをやっているみたいなことをお話していましたね。

sekig:そうですね。すみません、どうしても張り合いたくて。ごめんなさい。

(一同笑)

司会者:どんどん張り合ってもらって。

putchom:うちは逆に、テキストエディタ系のツールはまだ提供できていなくて、デザインエンジニアの方が、Chromeの時にこれをAPI経由で使えるものを作ったので、それでエディタで使えるものを今も作っているところです。プロダクトサイドはこれからですが、コミュニケーションデザインに関しては、これを使って営業メールだったりプレスリリースだったりを使えるようになっている感じです。

司会者:30点でいいんですか(笑)。

putchom:じゃあ、50点にしましょう。

(一同笑)

putchom:ドヤっていきます! 50点にします!

他社の真似をしたいポイント

司会者:ありがとうございます。みなさんけっこう点数が出揃いつつ、各社の真似をしたいポイントもそれぞれあると思いますが、どのへんを真似したいと思うんですか?

sekig:ドヤらせてもらっていないので、しゃべると(笑)。SmartHRの僕と、samemaru的にはクックパッドさんやペパボさんはどうしても先輩に見えてしまう部分があります。

企業規模や事業フェーズの違いとしてそう見えてしまうというのはありますが、各社それぞれの取り組み方があるよねというのがわかりました。進んでいるところばかり見えてしまって、「いいな」「僕らもがんばらなきゃ」と思ってしまうので、例えばペパボさんだったら概念的整理がかなりされていて、それを落とし込むアプローチができている。僕らはほぼ真逆に近いアプローチを意図的に取っていて、そっちもやらなければいけないというのが見えていますが、できていないので、それをやっていかなきゃなと思っています。

クックパッドさんは歴史が長いというのもあると思いますが、きちんと全体感を持ってできているのは本当にすごいなと思って見ていました。

同時に、SmartHRの僕が個人的にめっちゃいいなと思っているのは、実際にどうかはみんなの意見を聞かないといけませんが、デザイナーのためのデザインにしようとしていないところです。それは少し自慢できるんじゃないかなと思っています。

これはたぶんプロダクトサイドのデザイナーのみんなも「そう」って言ってくれるんじゃないかなと思っているんですね。それは一貫しているので、デザイナーしかわからない言葉とか、デザイナーだけが使えるものというものをできるだけ生まずに、まず社内のみんなが使えるリソースや、ガイドラインを提供して、事業を進めるというのをとにかく大事にしているというのがドヤれるところかなと個人的には思っています。

司会者:最近SmartHRでは、関口さんやsamemaruさんの活動を「透明活動」と呼ぶ動きが出ているようですが。

sekig:すみません、拾っていただいて(笑)。これはコミュニケーション領域に限ったことなんですが、ちょっと続けてしゃべりますね。これは僕の持論ですが、特にコミュニケーション領域のブランドにまつわる活動がうまくいけばいくほど、活動が透明になってくると思っています。なぜならうまくいっていて、問題がないから。自然だから。

なので目立った成果やわかりやすい成果は見えにくいというか、なりにくい。「〇〇を作りました」と物事がうまくいってより良くなったとしても、それは自然なことだからわかりにくいなと思っています。でも確実に活動としてはやっているので、それを言語化したいなと思っています。

我々の社内には、すぐに絵文字を作るという文化があるんですけど(笑)。それでsamemaruさんがなにかをやるたびに「透明活動」というボタンを押すんです。

いちはら:みんなが使えるのは大事ですよね。それは大事だ。

sekig:ありがとう!

(一同笑)

司会者:クックパッドさんのイラストの話などもたぶんメチャクチャあるんだろうと思うのですが、みなさんなにか話足りないことはないですか?

putchom:さっき関口さんがおっしゃった「概念は決まっているけど……」みたいなところで、やはり僕らはまったく逆で、会社が「アウトプットすることを大事にしよう」と言っているけれど、まだサイト上に決めていることをぜんぜんアウトプットできていないので、今日のSmartHRさんの発表を見て「早くアウトプットをしないとまずいな」と、ちょっと焦燥感が出てきましたね。

sekig:まぁ逆のことを思っているので。

putchom:そうですね。ないものねだりみたいな感じになっていると思うんですけど。

(一同笑)

いちはら:隣の芝は青いやつです(笑)。

sekig:samemaruさんはどうかな? 我々の場合はアレだよね。サイトのフロントに出ているものがほぼすべてだよね。

samemaru:そうですね。基本的に全部公開していて、本当にここだけは! というところだけログインしないと見られない状態になっているので、95パーセントぐらいはみなさんアクセスできるはずです。なのでこのままの進捗だと思っています。

sekig:それもつらい(笑)。

各社とも新しい仲間を絶賛募集中

司会者:ありがとうございます。そろそろ締めに入ります。1時間半に亘って、いわゆるコミュニケーションデザイン領域や、コミュニケーションデザイン領域の中のデザインシステムという、非常に難しくて各社の定義がそれぞれある中でラジオ的にトークをさせてもらいました。お疲れ様でした。

一同:お疲れ様でした。

司会者:参加者のみなさんも参加していただいてありがとうございます。登壇者のみなさんは仲間を絶賛募集中と聞いています。どういう方にコミュニケーションデザインのチームに入ってほしいのか、クックパッドさん、ペパボさん、SmartHRさんそれぞれ教えてもらってもいいですか? では、クックパッドのいちはらさんからお願いします。

いちはら:基盤グループの主なコミュニケーションデザイナーは今、私1人しかいません。部長になったので現場のほうが回らないというのが課題としてあります。来ていただく方には、ほとんど全権をお任せできれば。

(一同笑)

いちはら:とにかく横断部署なのですごくやることがたくさんあるので、好きなことをぜひやっていただきたい。クックパッドは、なにかしたいという気持ちをすごく尊重していて、入社しても「何やりたい? なりたい?」と、ずっと言われます。興味を持っていただければ、その方の得意と会社の求めることを本当に自由にやってもらえるし、それがすごく評価される環境です。ぜひ「クックパッドのブランドをぶち壊してやるぜ」という気合いのある方が来てもらえるといいなと個人的に思います。

私はMeetyにいるので、転職するつもりはそんなにないけれど、ちょっとカジュアルに話をしてみたいぐらいの感じでゆるっとお話しできるとうれしいです。

司会者:ありがとうございます。ペパボさんはいかがですか?

putchom:はい。うちはさっきのコンセプトで言っていたとおり、全員でデザインシステムを作っているというところがあります。今はけっこういろいろなポストで募集していて、コミュニケーションデザインで言うとminne、SUZURI、カラーミーショップというサービスでコミュニケーションデザイナーを募集しています。

事業のコミュニケーションデザインをしながら、週1の定例会や臨時会で実際にInhouseのデザインシステムの構築に携わることができます。コミュニケーションデザインに限らず、プロダクトのデザイナーであってもどこをやってもいいと思うので、実際に来てもらって、まずお話だけでもできるとうれしいです。

もっとここが聞きたいというところがあれば、Wantedlyやそういう媒体から「デザインシステムのこれはどうですか?」みたいにご連絡をいただければ。ゆるい話でもいいので、ぜひお願いいたします。

司会者:ありがとうございます。ゆるくデザインシステムの話からでもいいわけですね。

putchom:はい。それで大丈夫です。

司会者:ありがとうございます。ではsamemaruさんと関口さん、いいですか?

samemaru:じゃあ関口さん。

sekig:お!?(笑)。はい。SmartHRのブランドマネジメントユニットでは、仲間を募集しています。samemaruさんと一緒に活動を推進してくれるデザイナーと、最近の言葉で言うとデザインプログラムマネージャー的な方を主に募集しています。他にもブランドコムと称しているのですが、ブランド回りでコミュニケーションデザインをやってくれるチームの求人もあるので、我々のコーポレートサイトを見てもらえるとうれしいです。よろしくお願いします。

司会者:ありがとうございます。3社ともかなりカジュアルに、デザインシステムだったりコミュニケーションデザインだったりのもっと深い話を聞いてみたいよというテンションでもぜんぜんいいんですよね。

putchom:はい。

いちはら:もちろんです。

司会者:登壇者の方々に突撃DMをしても、もしかしたら答えてくれるかもしれないので、連絡をしてみてはいかがでしょうか。ということで、そろそろ今回のイベントを終了しようかなと思います。ご参加いただいた方も、登壇者のみなさまも本当にありがとうございました。お疲れ様でした。

samemaru:お疲れ様です。

sekig:ありがとうございました。

司会者:ありがとうございました。失礼します。

sekig:みなさんありがとうございます。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 孫正義氏が「知のゴールドラッシュ」到来と予測する背景 “24時間自分専用AIエージェント”も2〜3年以内に登場する?

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!