2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
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ものづくり太郎:なんていうか、(TSMCは)外資というところで、ナショナリズムに近いような感情で見る人もいると思うんですけど。そこはどう見られていますか?
(一同笑)
大幸:私からすると、日本と変わらないですね。
ものづくり太郎:なるほど。考え方としては。
大幸:はい、考え方も。特に情に厚くて、きちんと義理は返します。
ものづくり太郎:なるほど。
大幸:不義理はしないですからね。きちんと信頼に応えてくれる。
天野:太郎ちゃんが言っているのは「日本メーカーがそれやってくれたらもっといいのにな」みたいなことですかね。
ものづくり太郎:「投資をこんなにして」みたいなネガティブな意見もあるじゃないですか。
大幸:そうですね。
ものづくり太郎:ただ、今の話を聞くと、やはり日本の産業の下支えになるキーパーツなので、いい面は非常にあるなというイメージですね。
大幸:そうですね。あとSoCというか、そういう分野に向けたファブ(製造工場)の位置付けだと、TSMCは言っているんですよね。今日本の半導体メーカーの中に、そこに投資をかけて増産しようとしている人たちがいますか? というと……。
ものづくり太郎:そうなんですよねえ。確かに。
大幸:ルネサス(ルネサスエレクトロニクス株式会社)が「どうしようかな」と思っているとは思うんですが、そこまで規模がないので。
ものづくり太郎:そうそう。
大幸:世界シェアのマイコンは、トップだと聞いていますが、だとしてもマイコンはそんなにチップが大きくないので、12インチの物量をバンバン必要とするほどではないんですよ。
そうなると、CMOSセンサで片足打法をやっているソニーさんと、誰が一緒になって世界中に向けたソリューションとして出していくのかというところで、やはり欠けている感じがするわけですよ。
ものづくり太郎:そうですよねえ。うれしい反面、そうですよねえ。悶々としちゃいますね。
大幸:金額が金額だし。
ものづくり太郎:一面だけ見るとそうなんですが、過去の連なってきた歴史を見ると、なんとも言えないですよね。いけいけどんどんの時もあったし。だけどいろいろあって、日本のなんとかチップも潰されちゃったし。
大幸:TRONCHIP(トロンチップ)?
ものづくり太郎:TRONCHIPも結局潰されちゃったし。日米貿易摩擦でいろいろやられちゃったので、そういう面もあるし。もしくはそこがなくても、やはりサムスンなんかはトップダウンで非常に強いじゃないですか。
そういった企業が物量で攻めてきた時に、日本が戦えたかというと、これもよくわからないんですよね。だからその一面だけを見ても、なんとも言えないというのが、僕の正直な感想です。
大幸:もう1つ、半導体と関係して、日本の強みと言われているものがあるんですね。
ものづくり太郎:なんですか。
大幸:それは基板実装。
ものづくり太郎:SMT(Surface Mount Technology)でしょうね。
大幸:SMT。それとその一歩手前の。SiP(System in Package)ですね。
ものづくり太郎:基板実装は僕もわかるんですよ。パナソニック、FUJI、ヤマハ、JUKI。
大幸:そうですね。実装機をもうバンバン世界中に(出している)。
天野:その世界的なメーカーが日本にあるということが強み。
ものづくり太郎:そう! 8割握ってるんですよ。
天野:(東芝の大幸氏を示しながら)そこはもうねえ。
(一同笑)
ものづくり太郎:そこは一般の人よりは超詳しいんですが、気になるのはその前のところですよ。
大幸:その装置メーカーさんとタイアップをして、かなり微細なものとか、ボール径が小さなものとか、カーボンニュートラルでどんどんマテリアルを減していくとか、リサイクルをどうしようかと考えていくとすると、半導体の単体のデバイスではなくて、基板実装をする部分に向けた新しいソリューションが要るんですよ。
ものづくり太郎:なるほど、それとSiPがどうつながるか。
大幸:そこを共同開発、共同研究していくのがたぶん大事なんですよ。
ものづくり太郎:なるほど。SiPってわかります?
天野:ざっくりと。
ものづくり太郎:なるほど。
(一同笑)
同じ基板内(外から見ると1つのパッケージに封止されたデバイス)でシステム構築するということなんですよね。個別商品のパッケージ品を集めてプリント基板に実装するのではなくて、小型同一基板内でそのシステムを構築します。ここで必要になってくるのが実装なんですよ。
天野:だいたいアルファベット3文字熟語って、みなさんわかっているような、わかっていないようなところがあると思うので、ちょっとだけ説明をお願いします。
大幸:別の言い方で、マルチチップモジュールとも言います。半導体のペレット(チップ)、もしくは半導体で1回パッケージになったものを一段階ちょっと大きな基板の上にボンディングして、ある意味、チップを生で実装します。ある小さな部品はそのままパッケージ品を入れる。それを、例えば2センチ角ぐらいのモジュールの中に入れて、また樹脂やセラミックで封止をしちゃうんです。
それがSiPとかMCM(Multi-Chip Module)とか言われているもので、それ1個で、1つの機能を提供するというものなんです。つまり、中をブラックボックスにできて、ユーザーはそのインとアウトだけをプログラムすれば使いやすくなる。あとはプログラムをちょっと変えたりすれば、適当に設定が変えられるというものをSiPやMCMといいます。
大幸:その実装技術の領域で、日本はまだ十分戦えると言われているんですね。それを目指していくというのも、実はTSMCを使う1つのポイントになっています。そういうモジュールに入る中心にあるのは、やはりマイコン系(プロセッサー)のものなんですね。
天野:日本は、そのSiP技術が世界的に見ても優れていて、ここの商品開発を一緒にできるチャンスがたくさん広がるという理解でいいんですかね?
大幸:そうですね。
天野:やはり日本の産業の裾野がまた広がるということですね。得意領域が増える。
大幸:そうです。今、半導体の供給問題の解決になる可能性があると言われているのも、実はそのアプローチなんですよ。なんでかというと、やはり1個1個の半導体を受注管理、供給管理をしていると、今回のように1個欠けると作れないというのが問題になるじゃないですか。
あと、似た半導体と入れ替えたらどう動くのかという検証にも時間がかかるわけですよ。なので、ルネサスさんのマイコンを使っていました。だけど、火災で納期が問題になったので、ちょっとSTマイクロさん(STマイクロエレクトロニクス)のマイコンとか、東芝のマイコンを使ってみましょうとなった時に、検証期間や信頼性チェックに、3ヶ月とか、半年とかすごく時間がかかるわけです。
すると、その間に供給が戻ってきたらどうすんだという話があるわけで。そこでまたアクセルの問題が出てくるんですね。単品で管理をしていると、常にそれがつきまといます。
天野:モジュール化しておいてくれれば、そういうところがないですもんね。
大幸:モジュール化しておけば、インとアウトのスペックは合わせてあって、中の構成が変わります。変わったのは教えますが、評価する必要はありませんということができると、OKなんです。
ものづくり太郎:システムナイズされていて、それを規格に合わせときゃええやんかということですよね。
大幸:そういうことです。
ものづくり太郎:ある種、FPGA(Field Programmable Gate Array)と近い考え方みたいな。
大幸:近いといえば、近いですね。あとは、モジュールの例でいうと、世の中には例えばWi-Fiモジュールとか、Bluetoothモジュールとかいっぱいあるんですが、あれらはその標準に準拠したモジュールなので、インとアウトがもう決まっているんですね。
モーターを制御するためには、モーターもある程度標準化しないと難しいんですが、モジュールプラットフォームみたいなものを作り上げて、登録して、それをどんどん供給できるようになれば、だいぶサプライチェーンは平準化されていくだろうと思います。
ものづくり太郎:そうですね。そういう動きを自動車業界発でやらないとダメですよね。
大幸:そう思います。既存のマーケットがあるところには、簡単には投げ込めないんですよ。なので、私がよく言っているのは、まず無人配送車や倉庫の中で動いているAGVでやってみたらどうなの? ということなんですよ。
台数も多いし、やりやすいじゃないですか。閉鎖空間に使う台数がある程度多いから、いろいろなところで実証検証する時に、国や地方自治体も補助金を出したりしているので。
ものづくり太郎:そうですね。
大幸:そういうところをバンバンやっていくべきだなと思います。
天野:今、僕らもラストワンマイルの配送に入っていますが、非常にニーズは多いですからね。
ものづくり太郎:だからその時に、指定のSiPを使えば補助金がちょっと出ますよというような仕掛け作りをしちゃえば、活性化しますよね。
大幸:そういうことです。活性化します。
ものづくり太郎:補助金が出るから、みんなそこに投資するだろうし。ということは研究開発も進むし、いいですよね。
大幸:そうです。やりたい。それはもう本当にやるべきことだと思います。
ものづくり太郎:いやあ、いいですね。すばらしい。
天野:確かに。その領域は、日本がまだトップランナーになれるところがいっぱいありますよね。
大幸:可能性はあります。
天野:世界中でニーズありますしね。
大幸:うん。半導体業界というところと、また別の株式の分類の中に、電子部品メーカーとかがあるじゃないですか。あと、基板メーカーもあるんですが、そういうところがそういうのを手掛けているんですよね。
ものづくり太郎:そうですよね。TDKもそうだし。村田(株式会社村田製作所)もやってるでしょうし。
大幸:はい。ミネベアミツミ(ミネベアミツミ株式会社)もやっているし、太陽誘電(太陽誘電株式会社)もやっているし。
天野:イビデン(イビデン株式会社)もやっているだろうし。
大幸:イビデンは強いですね。
ものづくり太郎:なるほど。まだまだ日本はそこで戦えそうですね。有名企業がいっぱいありますからね。
大幸:はい。でもやはり心配なことがあってですね……。
(一同笑)
ちょっと言っちゃっていいですか。
天野:どうぞどうぞ。
大幸:やはりそれをやるために、ソフトウェアエンジニアが必要なんですよ。ハード(ウェア)は、優秀な開発者、技術者が日本にまだそれなりに残っています。ピースが欠けているのは何かというと、ソフトウェアをやる技術者なんですよ。
開発をどうやって合理的にするか、もしくは修正をアジャイルでどうしやすくするか、現物がなくても、ある程度最終製品のシミュレーションができるというものを、提供していかないといけないんですよ。実は、そこがほとんどできていない。
ものづくり太郎:要するに、シミュレーションプラットフォームを提供できていないんですね。
大幸:そういうことですね。そして、そのシミュレーションとほぼ間違いなく合致したハードウェアが出てくるというところで、そこが合っていない。
ものづくり太郎:なるほど。バーチャルエンジニアリングが弱いんですね。
大幸:そういうこと!
天野:生産設備でも同じことが言えるから、近しい課題が多いですね。
ものづくり太郎:そうなんだよ。そのあたり、ヨーロッパが強いんだよな。
大幸:強いですねえ。
ものづくり太郎:もうメチャクチャ強いんですよ。車載もそうだし。CAE(Computer Aided Engineering)も強いし、だからフランスのダストとかが強いんですよ。
大幸:強いですね。
ものづくり太郎:くそー!
(一同笑)
大幸:今からもう10年近く前ですかね。日本の産業全体がこれからどうなっていくんだと調べた時に、シーメンスが、やはり事業再編成し始めていました。通信を売却して、半導体を出して、インフィニオン(インフィニオン・テクノロジーズ)に出しているだけではなくて、人をどんどん採っていたんですよ。それがソフトウェアエンジニアというカテゴリーになっていて、1年間で2,000人ぐらい採ったんです。2,000人ですよ。もう信じられない。
天野:いやあ、バーチャル側は、シーメンスがメチャメチャ強いですよ。
大幸:強いですねえ。デジタルツインをずいぶん前から活用していてね、だからインダストリー4.0が加速できたという話もあります。
天野:僕らも絶対信者というわけではないですが、南相馬の工場で僕らが使っているバーチャルもやはり全部シーメンスなんですよ。
大幸:ああー。
ものづくり太郎:ここで怖いのが、僕は、インダストリー4.0の動画を出しているじゃないですか。シーメンスのプラントシミュレーションの動画も出していて、ドイツにいる日本人の学生さんが見てくれていて、コメントをくれたんですよね。どういうコメントだったかというと、実はドイツでは工業高校とか大学で、みんなプラントシミュレーションを触っています、と。
大幸:おおー。
天野:怖い。
ものづくり太郎:要するに、そういう人たちが、デジタルツインが前提の脳みそになって工業界に来るわけですよ。
天野:デジタルツインのすばらしさは、いわゆるリスクがない状態でチャレンジングなことがどんどんできるところなんですよ。
ものづくり太郎:そうそう。
天野:リスクがないと言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、バーチャル空間上でいろいろなチャレンジができる。ものづくりは、残念ながらそこがなかなかできなくて、現物のすり合わせだったりで、リスクが多かったんですよね。手間も人もお金もかかった。
でもそこが、どんどんバーチャルになってくると、これに長けた人たちが、今までは考えられないものを作る世界になるんですよね。それを(ドイツでは)全員やっているって言われたら、ちょっともう。
ものづくり太郎:だから今じゃなくて、数年後が怖いんですよね。5年後、10年後。
天野:怖いね。
ものづくり太郎:だって日本の工業高校は、そういうことをやっていないと思うんですよ。
大幸:やっていないですね。
天野:やっていない。手前味噌だけど、「うちの会社が絶対に負けません」と言えるのは、バーチャル空間上で作るエンジニアのトップ・オブ・トップが、うちの会社にたくさんいるからというところは、すごくあるんですよね。
ものづくり太郎:ドイツではそれを学校でやっているんですよね。参っちゃったなという感じですよね。
天野:でもこれを学校でやるというのは極めて正しいアプローチですよね。
大幸:そうですね。
天野:ベトナムやミャンマーのメンバーには、やはりそこから教えたい。自動化されたハードの工場はないけれども、シミュレーションの中ではもう自由に書けるので。大幸さん、やはりそこのエンジニアを増やさないとマズイですよね。
大幸:そうなんですよね。
ものづくり太郎:プラットフォームが欲しいですよね。
大幸:欲しいですねえ。
ものづくり太郎:要するに半導体のSiPだったり、そういったところのシミュレーションができれば。
天野:シミュレーションエンジニアの育成にね。
大幸:そうなんですよ。本当にRaspberry Piみたいなやつ1個でいいから、日本初のモジュールをちょっと作ってみてほしい。
ものづくり太郎:NECにやってほしいですね。
(一同笑)
天野:これ企業案件じゃないよね?
(一同笑)
ものづくり太郎:違う違う(笑)。これは僕の企業案件だったんですけど。基板に対して、EMI(Electromagnetic Interference)ですよね。電磁波がどう影響するのか、シミュレーションが事前にできるソフトを開発しているので。シミュレーションは、そこの延長線上にあると思うんですよ。だからNECにやってほしいなという感じです。
大幸:そうですね。だから、やはり大企業は特に横のつながりをもう少し強く持って(ほしい)。
ものづくり太郎:そう。利益、利益になっちゃっているので。
大幸:国内でもシェア争いというか、やはりいまだに「どこが取るんだ」みたいな話になりがちなので。
ものづくり太郎:そうそう、「利益立つんか」みたいな話になっちゃうんですよ。
大幸:そう。だから市場を創るという、共通のビジョンで動かないとやはり難しいなと思います。
天野:そうですね。僕は、デジタル庁さんにお願いする事案としては、ものすごくいいのかなと聞いていて思いました。
実はこの間、デジタル庁に伺った時にデジタルエンジニアの育成は絶対に必要ですとお話ししました。そこの投資をやはり国としてやっていく必要があると思うので、そこはぜひ事案として出していけたらいいかもしれないですね。
ものづくり太郎:すばらしいですね。検証を早く回さないといけないですからね。だから検証をデジタルツイン上でやりまくれる環境が欲しいということですよね。
大幸:そういうことですね。
ものづくり太郎:まさにそのとおりだと思います。
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