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プログラマ転生〜就活生になったので本気出す〜(全2記事)

年収800万円で自律性・有能感・関係性が満たされる環境 GMOのテックリードが勧める、企業選びの軸

技育祭は「技術者を育てる」ことを目的としたエンジニアを目指す学生のための日本最大のオンラインカンファレンスです。ここで登壇したのは、GMOインターネットグループの成瀬允宣氏。新卒の学生に向けた、就職活動の進め方について発表しました。全2回。前半は、目指すべき年収と、自己決定理論について。

自己紹介

成瀬允宣氏:じゃあ約1時間がんばっていきましょう。今回はこのようなかたちで、「プログラマ転生〜就活生になったので本気出す〜」をやっていこうと思います。

みんなこれ、元ネタわかりました? わかった人いるかな。やっぱりみんなわかりますね、『無職転生』、おもしろいですよね。当時、僕もけっこう「なろう系」を読んでいたので。というわけで、今日はプログラマーが転生したらどんな就活をするのかなっていうのをちょっとお話ししていきます。

簡単に自己紹介をしましょう。今回、初めましてという方もきっといるでしょう。GMOインターネットでプログラマーとして働いている成瀬允宣と申します。

最近、グループ横断でテックリードというものができて、その第1号になりました。また、会社ではデベロッパーエバンジェリストという謎の役職がついています。どっちも今のところ僕しかいません。これがちょっとした「なろう系」ですね。

僕は、もともとSIerやゲーム、Webをやっていました。それ以外にDevRel、つまり技術広報、セミナー、小学校で授業とかをやったりしています。AWSのDev DayとかJava、PHPとかいろいろなところでしゃべったりもしています。

著書として『ドメイン駆動設計入門』という本があります。どんな本かというと、プログラミングとかソフトウェア設計の本です。中・上級者向けなんですけど、より高度なOOPのテクニックを使ったソフトウェア設計の話です。

(コメントを見て)「本読みました」、ありがとうございます。「持っています」、すばらしいですね。

現役プログラマーが就活生に転生したらどうするか?

さあ、いきましょう。本日のお話です。

とある開発者が、おうちで仕事をしていました。最近はリモートワークですね。そうすると突然、転生トラックがドカーン! 目が覚めるとそこは就活の面接会場でした。転生トラック、みんな伝わるかな?(笑)。 こういうことよくあると思うんですけど、現役プログラマーが就活生になったらそこでどういうハックをするのかな、というのが発端となって今回のセッションを作ってみました。(コメントを見て)「よくある」、よくあるよねー。そうそう、よくある。

ことの発端としてどんなことがあったのかというと、私には1人、23卒のいとこがいました。彼が、「まあにいちゃん」と。僕は、まさのぶっていいます。「まあにいちゃんってIT系だよね。就活相談していいかな」って。

え? 就活相談していい? こいつに? こんなことやっているこの人に? 

で、ふと思ったんですよ。こんなに遊んだやつに就活相談、それはいいのかなと思って。じゃあ自分が就活するとしたらどうなんだろうと。就活に関わりそうなところをちょっとまとめてみましょう。

僕は今、プログラマー歴10年超です。ついに10年を超えました。SI、ゲーム、Webと3つの業界を経験しています。これだけ経験していると、新卒採用とか中途採用の面接官も経験しているんですよね。

じゃあ、僕が就活したらどうなるのか。これですよ、この人がこうなったら。例えば面接官が「オブジェクト指向をご存じですか」って聞いてきたら。僕ならなんて答えるかなと考えてみたんですよ。

そうすると、例えば「オブジェクト指向プログラミングの話をする前に、そもそもアラン・ケイさんとビャーネ・ストロヴストルップさんがいて、『すべてはオブジェクト』というのはアラン・ケイさんのアイデアであり、まずはどちらの話なのか、そのへんを整理してお話しする必要がありますね」っていう感じで話を始めるわけですね。

あれ? また僕なんかやっちゃいました? 完。ああ、これは完全に合格間違いなしでしょう。というわけで、やっていこうと思います。いろいろなパターンがあると思います。就活の考察から最後の面接までいきましょう。

面接のハードルが2個も減る、就職活動に重要な「新卒カード」

まず就活の考察からしていきますね。私ならまぁ確実に受かるでしょうねと思いますが、みなさんにそのテクを教えようと思います。

就活の1年生。23卒の方は2022年、24卒の方は2023年だと思います。言わなくてもわかっていると思いますが、就活の1年ってすごく大事なんですよね。

どれくらい大事かっていうと、今後の人生の10年が大きく左右されるんじゃないかなと思います。(コメントを見て)そう、「新卒カード」、まさにそのとおり。この10年をどう過ごすかを決める1年は、かなり重要じゃないかなと思います。

さらに10年ってすごく長いですよね。10年は一生を左右すると思うんですよ。だからこの1年がある意味、一生をかなり左右すると思いますね。なので、言わなくてもわかっていると思いますが、新卒カードはとても大事なんです。

新卒カードがどれだけ重要かというと。面接会場があります。面接会場に行くにはいくつものハードルがあります。新卒カードがあるだけで、なんとこの面接のハードルが2個も減ります。これくらいハードルが減る。あとはたった1個乗り越えれば、もう面接に漕ぎ着けられるすばらしいカードなんですね。

最初の年収がその後の人生に与える影響は大きい

さらにちょっと考察の方向を変えましょう。年収はどれくらいにしましょう。みんな年収は高ければ高いほどいいと思いますよね。うん、僕もそう思います。

なぜならば、就活の最初の年収がその後の人生にすごく影響するんですよ。僕は、この最初の年収にすごく足を引っ張られた人です。

どういうことかというと、この業界では、ステップアップ目的で転職することはよくあります。僕はそれはいいことだと思っています。会社の人が転職していくのを僕はすごく応援しています。転職する時の年収が何を基準に選定されるかというと、その人の能力じゃなくて、実を言うと大半は前職が基準になります。

「前職500万円なら、まぁ500万円ぐらいはいいかな」「前職300万円なら、前職で300万円の評価なのか。じゃあそれくらいの人なんだね」ってどうしても思われちゃうんですよね。だから、最初の金額が安いとあとで苦労します。

もう1個あります。社内的な話で昇給率というのがあります。実は昇給の時、見るべきは昇給額よりも昇給率です。僕が経験したのと話を聞いた中で考えると、企業の多くは絶対評価じゃなくて相対評価です。どういうことかというと、他の人よりも昇給率が高いと、やっぱり次のタイミングでは他の人を上げてあげたいなとか、そういうことが発生します。

だからベースが低いと、どんどん昇給していっても、この人だけなんか5パーセントを超えているなとか、あるタイミングでその昇給率がおかしくなってくるんです。そうすると、じゃあこの人よりも他の人を優先して昇給してあげようとか、そういうことが起き得ます。すべての会社じゃないですよ、そういう会社もあったりします。

だから、ベースが高いほうが昇給率も下げられるので、基本的に有利です。

目標にすべきは、年収800万円

じゃあ、いくらを目標にすべきかという話なんですけど。そりゃあればあるだけいいんですが、僕がいつも提示している金額の目標はこれです。

聞いたことあるかな、みんな。年収800万円。なんで年収800万円なのか。これは新卒ではなく、例えば10年、20年働いて最終的にこのくらいを目指したいなとか、そういうイメージで考えてください。ここにいける算段をつけたほうがいいという話ですね。今コメントにありましたが、まさにそのとおり、「幸福度」です。

ちょっと前に、年収800万円で幸福度は頭打ちという話がありました。今は円安なのでもう少し年収が上がると思いますが、なぜ800万円で幸福度が頭打ちかというと、年収800万円になると、それ以上増えても基本的に生活レベルを上げようと思わないと上がらないんですよね。

普通に生活するうえで何不自由ない金額って800万円なんですよ。これぐらい年収があると、例えばなにか買うのに迷わなかったり、ゲーミングPC買ってみたり、そういうことができます。

初任給が低かったとしても、最終的には800万円あれば、40万円のPCを買う気力が出てくるかなと思います。別に新卒でここまでいけとは言っていないです。10年、20年経ったら、ここを目指すとちょうどよいんじゃないかというのが僕の考え方です。

優秀な新卒を710万円で採用するGMOインターネット株式会社

スタートからどうやっていけば800万円を目指せるのか。なかなか難しいんですが、知っていますか? 710万円で新卒採用をしている会社があるんですよ。あれ? 800万円まであとたったの90万円だ。「GMO」、ネタバレしていますけど(笑)。

GMOインターネットグループが2021年から、「給与ナンバーワンを目指そう」と、もちろん新卒以外もですが、みんなの給料を上げようとしています。優秀な人材の年収を710万円、最初2年間はこれを保証しますと今打ち出しています。(コメントを見て)「宣伝です」、そりゃGMOインターネットのセッションだから宣伝しますよ。これが僕の仕事なんだ(笑)。

もちろん選考のハードルは高いんですが、僕これ、あれ? 越えられるんじゃないって思っていて、優秀の定義はこのあとお話ししようと思います。どうすればこの面接に辿り着けられるのかを、このあとお話ししましょうね。

それはいったん置いておいて。今チラッと僕が言った、幸福度という言葉がありましたね。幸福とはなんでしょう。幸福っていう話をすると、みんな少し胡散臭く感じると思うんですけど、人生では、特に30歳、40歳になってくるとこれがけっこう大事だと思います。

お金が幸福。もちろんそういう人もいますよね。お金は幸福ですごく重要なファクターなんですけど、お金があるからといって幸福ではないと思うんですよ。

(コメントを見て)「家族と友だちが大事よ」って今おっしゃっている方がいますが、その人はすごくよく知っていますね。

幸福度に影響する「自己決定理論」

みんなは聞いたことがあるかな、「自己決定理論」っていう言葉。どういう話かというと、自律性・有能感・関係性、このいずれかが損なわれてしまうと、心身の不調、生活の満足や幸福が低下するという理論なんですね。

具体的にそれが何かというと、要するに生存的な欲求、例えば睡眠欲とか食欲とか以外にこれら(自律性・有能感・関係性)を心理的に感じる必要があるという理論です。

詳しく話すと、「自律性」は、自分の行動が自発的であると感じられること。どういうことかというと、例えば仕事において自分で進め方を決められる。仕様に納得したうえで取り掛かることができる。これはすごく大事ですね。

次、「有能感」。自分は能力に優れ社会の役に立つ存在であるという感覚。例えば小さなコミュニティでもチームの戦力になっているだとか、社会的に意義のあるサービスを作っているとか、こういうのはすごい大事ですよね。こういう感覚のことです。

あとは「関係性」。他の人と精神的につながっているから、家族・友人・上司・同僚に恵まれているという、この3つの感覚があり、さらにこの中で最も重要とされるのが自律性であると言われています。お金以外にもこれがすごく大事です。僕は、転職する人はだいたいこれを求めて辞めていっているんだろうなってよく見ています。

ここを目指すにはどうすればいいかというと。ここまでの話をまとめると、年収800万円で、裁量があって、自分が役に立ち、仕事仲間に恵まれた環境です。わかりやすいですね(笑)。じゃあそれを目指して企業分析をしていきましょう。

SIer、ゲーム、Web、それぞれの業界における体験談

はい、企業分析。例えばどこを目指すかなんですけど。転生プログラマーの成瀬さんは、またWebの自社開発でいいやって思うんですが、これは転生者だから言えることなんですよ。そこに通じる自分の経験があるからこんなふうに言えているんです。

いとこと話して僕は思ったんですよ。就活についてネットでけっこう調べても、企業研究ってかなり限界があるなと思ったので、僕の経験談を話していきます。

業界経験談。僕は3つの業界を経験しています。SIer、ゲーム、Webですね。それぞれどんな感じかというと、SIerがシステム開発とか運用を請け負う会社です。この時は僕、受託開発がメインで、知らない業界の業務知識が得られてけっこう楽しかったです。ただレガシーが多くて、ちょっと技術スタックは硬直しがちでした。SESも少しやりました。

マジでSESの世界は「なろう」の世界だなと思っていました(笑)。ExcelのVBAをちょっと作ったら、「成瀬さん、すごいですね」って言われるような世界だったから。あのタイミングはちょっとおもしろかったですね。

ゲーム(業界)。ゲームはどうかというと、ゲームを作るの自体は楽しいです。やっぱり楽しい。みなさんが見たことがないバグが起きますからね。すごくでっかくなるみたいな。そういうのがすごくおもしろかったです。

本人はすごく楽しんでいるんだけど、周りから見たら、働き方はどうしてもブラックに映ることが多いでしょうね。給与相場もほかと比べると、やっぱりちょっと低いかなとは思います。(コメントを見て)「楽しくてワーカホリックになっちゃう」、まさにそのとおりですね。

で、Web(業界)。Webはインターネットで情報を得やすいです。開発体制とかフローがすごくトレンドに近くて、最新技術に触れる機会もあるので知識欲が満たされる。

ここまで書いて、これってぜんぜん参考にならないなと思ったんですよ。結局、僕が経験した会社の話であって、その会社によってぜんぜん違うんですよね。

受託開発の良いところ、悪いところ

じゃあ別の軸で考えましょう。どうすればみんなに伝わるかな。大きく変わるのはたぶんこの2つの軸だと思うんですよね。受託開発なのか、自社開発なのか。

受託開発の話をします。どういうものかというと、クライアントがいて、そのクライアントのためのシステムを作る開発ですね。で、良いところはPros、悪いところはConsなイメージですね。

Pros、受託開発はやっぱり自分たちの知らない世界の業務知識を得るので、その知らない世界を知るという好奇心が満たされます。顧客を抱えるのでダイレクトに感謝されて、すごく楽しいですね。あと1つのシステムじゃないので、飽き性にはおすすめです。

Cons、よくない話を言うと、納期へのスタンスは厳しめです。きちんとできなければ怒られます。下流工程ばっかりになるとやっぱりおもしろくないですね。上流工程をやらないと受託開発はおもしろくないです。お客さんと「じゃあそれをどうやって解決しようか」って話ができるのがおもしろいところなので。

あとは、顧客がいるのでどうしても技術は硬直しがちです。「枯れた技術」って、みんなよく言っていますね。客先常駐の場合は、作業環境はよくないかもしれない。僕は別に気にしなかったんですけど、パイプ椅子とか普通にありました。

自社開発の良いところ、悪いところ

もう1個、自社開発の話もしようか。自社開発はどんな感じかというと。僕たちの会社の場合は、すでにリリース日を発表していたりするので、納期を変えられないんですよ。なので、納期が厳しい時にどうするかというと、ここまでの範囲だけリリースしようというスコープは変えます。これはソフトウェア開発でよくある話で、どうしても間に合わない時は、スコープを変えるという手段が取りやすかったりします。

新規の技術は自分たちで面倒を見るので採用しやすいです。あとは自分の席がある、これは大事ですよ。最近はリモートワークだからあまりないんだけどね。

次に、Cons。文化はどうしても企業独自の文化になりますよね。担当システムもけっこう固定化しやすい。「君のシステムはこれね」みたいな感じで、ずっとそればっかりをやっている。放っておくとスキルが硬直化するので、なかなかそこらへんがつらかったりします。

こんな感じで自社開発・受託開発のどっちがいいかなっていうのを考えたほうがいいですね。自分のところでずっと育てたいのか、それとも、いろいろなシステムに触りたいのかで変えてみてもいいかなと思います。人と関わり合うのが楽しかったら、たぶん受託開発が向いていますよ。僕もおもしろかったですからね。

企業を見る時にチェックするその他のポイント

その他で考える軸。いろいろあるんですけど、例えば会社の大きさ。会社の大きさには良し悪しがあると思っています。大きければ大きいほど歯車的な働き方になるので、それが苦な人はすぐに辞めちゃいますね。

裁量という意味だと、大きい会社より小さいほうが得やすいですよね。人に対する裁量の与え方がぜんぜん違うので。とはいえ、大きい=動きにくいじゃないんですよ。メガベンチャーって大きくてもけっこう機敏に動けたりします。

一番大事なことで、手続き関係は大きいほうが整っています。手続き関係で失望して辞めていく、なんかすごくテンションが下がる人もけっこういるので、大きいほうがやっぱり整っていますね。なので、会社の大きさはそんなに重視していませんが、どっちかというと動きやすいか動きにくいか。ベンチャー気質があるかどうかで僕はいつも考えています。

(コメントを見て)「いい上司がいるか」、それ大事ですよね。「ベンチャーで正解」(笑)。やっぱり人間関係ですから、さっきの関係性の話でもあった、幸福につながる関係性。これがすごく大事なので、上司によってそこらへんの満足感は変わりますよね。

ほかに企業を見る時の僕のポイントは何かというと。開発者が楽しそうにしているか。例えばSNSで楽しそうにしているかなとか。カンファレンスで楽しそうにしゃべっているかどうかってけっこう大事じゃないですか。

あとは胸を張れる仕事か。これはすごく大事なんですね。善であることはすごく心地いいですよ。だから「正義マン」って言葉があるんですけど、自分が善の立場にいるというのはすごく心地がいいんですね。

それってすごくいいことです。先ほど、有能感という話がありましたよね。それにつながるのですごく大事なことです。なので企業を見る時は、自分にとって胸が張れる仕事かどうかというのが大事です。

逆に僕が見ないのが、成長できる環境か、というのと、研修が整っているか。なんで成長できる環境かを見ないのかというと、一番成長できることは何か知っていますか? 地獄に飛び込むことです。なので、成長できる環境を求めたら、どんどんつらい環境にいきますよ。

研修が整っているか。これは先ほど僕が話した、目標の800万円を求めるんだったら、研修頼りにしていたらいけないなと。僕は雇われている時に、企業に対してもちろん感謝はありますが、借りよりも貸しを作るようにしています。

別にこれは企業に奉仕しろという意味ではなくて、人間は感情の生き物なんですよね。感情的に納得できないと何があっても不満になるんですよ。なるべく貸しを作っておくと、気持ちよく仕事ができます。

(次回へつづく)

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