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Why Apple? Why menu? ~元 Apple 開発者の次なる挑戦~(全2記事)

勉強をがんばれば、いい会社に入れると思っていた スティーブ・ジョブズの言葉で気づいた、自分の生きがい

技育祭は「技術者を育てる」ことを目的としたエンジニアを目指す学生のための日本最大のオンラインカンファレンスです。ここで登壇したのは、株式会社レアゾン・ホールディングス 執行役員の赤川未來氏。新卒で入社したApple社、現職menu社での経験について話しました。全2回。前半は、学生時代に気づいた、自分の人生におけるやりがいについて。

本日のアジェンダ

赤川未來氏:株式会社レアゾン・ホールディングス執行役員の赤川未來です。よろしくお願いします。本日はAppleに入社した経緯やmenuに転職した経緯などいろいろと話そうと思っています。

僕のセッションは、一方的に話すと不安というか、つまらなくなってしまうので、みなさんの考えも聞きたいと思っています。途中質問や写真を用意しているので、Zoomのチャットから気兼ねなくコメントをください。答えに正解はないので、率直に思ったことを言ってもらいたいと思っています。

今日は最初に自己紹介をしたあと、3つのエピソードについて話します。まずは「大学の話」。大学でしたことについて。次は「Appleの話」。Appleに入社して、ミスをしたことについて話します。最後は「menuの話」です。現職ですが、Appleからmenuに入ってまさかのUターンという意見もあるかと思うので、そちらについても話そうと思います。最後に質疑応答の時間も用意しています。

アメリカの大学で学んだ「Human-Computer Interaction」

自己紹介です。あとで趣味の話をしますが、僕は雪山が好きです。スライドの右の写真は白馬にバックカントリースキーに行った時のものです。

生い立ちについて。出身は東京でジャパンですが、小さい頃から親の(仕事の)関係で海外に行って、イタリアの小学校に通っていました。中学校と高校は横浜でしたが、インターナショナルスクールなので日本の義務教育を受けたことがないという不思議な経歴です。日本語がちょっとおかしかったらすみません。

(スライドを指して)写真を探していたらこんな写真が出てきました。イタリアで、サッカーのACミランの試合の時に撮ってもらったものです。僕が一番盛れていた頃なので、自慢しようと思いました。

大学はアメリカのペンシルベニア州ピッツバーグというちょっと内陸にありました。すごく寒いところで、冬はマイナス20度にもなるけれど、そんなに雪は降らなくて、降ったとしても日本海側ほどは積もらないですね。カーネギーメロン大学に行きました。

専攻は、電気兼コンピューター工学が1つ。「兼」が入っているのに1つというのはおかしいですが、(ダブルメジャーのもう一つは、)Human-Computer Interactionという専攻でした。(スライドを指して)一見キレイで素敵なアメリカっぽいキャンパスに芝生が広がっていて、その奥に昔ながらのキレイな建物がありますが、先ほど言ったとおり本当に寒い過酷な環境でした。

これは大学の図書館の建物です。おもしろいと思って写真を出しました。一見クラブかと思うくらい賑わっていますが、撮影をしたのはたぶん夜中の1時頃です。「やばいやばい、課題やらないと」という時に撮影したんですが、見てのとおり「入ってこい! 勉強しろよ!」と学生を誘惑するような図書館です。写真に写っているように、雪が降っていてすごく寒かったのを覚えています。過酷な環境にある大学でした。

大学卒業後はソフトウェアエンジニアとしてAppleに入社

そんな過酷な環境で4年間がんばって卒業し、Appleに入社しました。写真はAppleの本社です。ソフトウェアエンジニアとして入社して、4年目にエンジニアリングマネージャーというマネジメント職に挑戦しました。右の写真は辞める直前に撮ったもので、入社時の社員証です。6年くらいいましたが、運良く1回もなくさずにいたら写真が少しずつ剥げてきたのですが、社員証はかわいいですよね。僕はいいなと思っていました。

(スライドを指して)せっかくなので、掘り出した写真をみなさんにシェアします。こちらは本社の目の前の道路で、前のキャンパスの「インフィニット・ループ」というApple Campusです。

次がインフィニット・ループキャンパスのロビーの写真です。わかりにくいかもしれませんが、4階建てくらいで吹き抜けになっていて、スペースの使い方にも感慨を覚えます。これは本物の木ですが、すごくキレイにトリミングされています。

そこから、知っている方もいるかもしれませんが、Apple Parkという新しいキャンパスに引っ越しました。ドーナツ型で本当に大きいんです。宇宙から見えるくらいのサイズで、1周すると1マイル(1.6km)くらいあって、4階建てなのにマックスで1万2,000人のキャパシティのある建物です。

全貌が見えにくいですが、いくつか写真を撮ったのでシェアします。これは外周から見たところですが、見てのとおりガラス張りがずっと続いているんです。1周全面ガラス張りで、ガラスも微妙に曲線になっていますが、それを作れるガラス工場がなかったのでガラス工場から作ったというAppleっぽい発想です。

ドイツにあるガラス工場で、会社自体はあったのかな? 会社にお願いしたら「できない」と言われたので、じゃあ工場を作ろうといったエピソードがある、手の込んだ建物です。現状はわかりませんが、残念ながら今はコロナであまり使われていないようです。

こちらの写真は、発表会で見たことがある方もいるかもしれませんが、この下に発表会をするスペースがあって、これはその上の1階部分です。見えにくいかもしれませんが、屋根に1つも柱がなくてガラスの上に乗っかっているという不思議な構造の建物でした。噂では、屋根が100パーセントカーボンファイバー製でとても軽いので、ガラスだけで支えられるそうです。

よく見ると屋根に照明があるんですが、どうやって照明の電気を点けていたのか。ガラスの間のサッシのゴムの部分に線を通して電気を供給している、不思議なキャンパスでした。

後ほど紹介しますが、メチャクチャ広い中庭があって、そこにかわいいアヒルちゃんたちが泳いでいる池があります。かっこいい一面だと、ここがメインのカフェテリア、食堂みたいなところです。4,000人くらい入るのかな。吹き抜けの4階建てで、すごく広くて、中に木が植えられています。小さいプランターの木ではなく、大きな木が屋内に植えてある、おもしろい面もあります。オープンスペースでいい感じでした。夕方に撮ったので、かっこいいと思いました。

この動画では、中庭からの全貌が見えます。広くて緑が豊かで、本当に仕事がしやすい環境でした。こちらがカフェテリア側ですが、先ほどの木が見えます。

現在はmenu株式会社でフードテック事業にフォーカスしている

ちょっとスライドショーは置いておいて、現在はレアゾン・ホールディングスという会社に勤めています。レアゾン・ホールディングスはいろいろな事業、例えば広告やゲームを展開していますが、僕は今、フードテックの事業部にフォーカスしています。サービスとしてはmenuを担当しています。

menuについて説明します。株式会社レアゾン・ホールディングスのフードテックという事業で、正式にはmenu株式会社という子会社です。2年前にデリバリーをスタートしました。全国展開していて、ダウンロードをしてもらえれば注文できるので、ぜひ使ってください。急成長して、今では日本でのマーケットシェアトップ3に入る規模になっています。僕は、今はプロダクト兼開発の責任者をやっています。開発部は今スケール中で、40~50人いるところを今期末くらいには倍にしたいという勢いで成長しています。

趣味は旅行・サッカー観戦・コーヒー・ワインなど

いろいろな方向に趣味があって説明が難しいですが、例えば旅行が好きです。スライドの右はイエローストーン国立公園に行った時の写真です。写真でもすごいのですが、実物はさらに絶景で、湖に山がキレイに反射している光景を見るのが好きなので旅行は大好きです。最近コロナで行けていないのでちょっとストレスです。

サッカーファンの方がいたらコメントが欲しいのですが、僕は小さい頃にイタリアのミラノに住んでいて、その時に熱狂的なACミランのファンになりました。ほかにはスキーや、先ほどの写真にあったように雪山に行ったり登ったり、ハイキングをしたりするのが好きです。

反面、コーヒーのドリップなど落ち着いたこともします。雨の日は自分でコーヒー豆を挽いてドリップしています。ほかには、食べ物やワインも好きです。真ん中の写真のように、サンフランシスコに住んでいた時にはナパ・バレーというワインが有名な地域によく行って、ワインを飲んでいました。このような晴天の中でワインを少しずつ味見していました。

課題がたくさんある世の中で私たちは何を考えてどう行動すればいいのか

自己紹介で僕を知ってもらえたところで、今日の話に進みます。最初に重い話ではありますが、僕は世の中は本当に良くなっているのかと考えることがあって、その問いには答えにくいと思っています。

医療の進歩で平均寿命が長くなったり、世界がお金持ちになって裕福な方が増えていったり、ITの革命によって好きな人に好きな時に連絡が取れたり、いろいろなメディア媒体があるのでいろいろな情報をすぐに手に入れられたり、すごく便利になったと思いがちです。

しかし、直近では新型コロナにより世界中でたくさんの方が亡くなっています。また、裕福にはなっていますが、それによって格差社会に悩まされている人がいたり、情報が必ずしもオープンかつフェアではなかったり、課題はたくさんあります。

そんな中で、僕らの世代や今の学生の世代は、今後どう生きて、どういうことをやって、何を考えてどう行動をすればいいのか。これらについて、今日共有する3つのエピソードから少しでも鍵みたいなものを得てもらえたら、とてもうれしいと思います。

自分にとって生きがいとは何か?

さっそく質問をします。まず、「あなたにとって、人生のやりがいって何ですか?」。フワッとした質問なので自分なりに捉えてもらってかまいません。ぜひチャットからコメントをお願いします。

「技術に関わること」「人に影響を与える」「楽しむこと」「成長すること」「夢を叶えること」「生きること」「誰かの役に立つこと」。「友だちとのゲーム」、いいと思います。「満足して寝る」、いいですね。「飲み会」、僕も飲み会は大好きです。最近は気をつけないといけませんけどね(笑)。さまざまな意見をありがとうございます。

話しながら、そのあたりも考えてもらえればと思います。答えではありませんが、自分なりの見解を出す前に少し話をさせてください。

まず、高校時代の話です。僕が行っていた高校はそんなに勤勉でも進学校でもなく、インターナショナルスクールということもあって語学や文化を学んでいました。みなさんは第二言語をやるかもしれませんが、僕の学校は第三言語もやる点で特化していました。その分、少し勉強してよい成績を取っていると、意外とできちゃったりします。

アメリカの大学には当然入試がありますが、それ以外に小論文を書いたり成績を見られたり、どんな課外活動をしたかを評価されるので、それらの総合点をなんとかやりくりして運良く大学に受かりました。

ただ、さほど勉強をしないで大学に行ってしまったので、行ってからメチャクチャ厳しい日々を送りました。自慢ではありませんが、カーネギーメロン大学はコンピューターサイエンスで世界一を争う大学です。久しぶりに大学ランキングを調べたら、見事に大学の学部部門でコンピューターサイエンス部が1位。よかったよかった、後輩ががんばっている。そういう大学に行きました。

でも、あまり勉強していなかったので最初の試験でボロボロになって、自分が見たこともないような赤点や言えないくらいの点を取ってしまって「やばい」と思い、そこから勉強に没頭してなんとか1年を乗り越えられました。

勉強=就職ではないと気づいて悩んだ日々

そんな中、同じく大変な思いをして勉強をがんばっていた人とすごく仲良くなって、2年生からルームシェアをすることになりました。アメリカだし、特に僕ら留学生は実家もないので、わりとみんなルームシェアをしていました。ルームシェアを始めて数ヶ月した時、彼が「起業してYコンビネーター(Y Combinator LLC)に入る」と言ったんです。

Yコンビネーターを知っている方はいますか? シリコンバレーにあるスタートアップの育成所みたいなところで、成功している人たちからアドバイスを受けながら、実際に起業を目指すのですが、そこに行くと言い始めたんです。僕は「お前、勉強できないだろ。俺ら勉強できない組みやん」と言っていました。そんな人が行けるわけないじゃんと思ったものの、すんなり行っちゃった。結果的には、その事業自体はあまりうまくいかなくて、違うことをやったのですが、そういったところに進んだ人がいる。

先ほど「勉強しないと」と話しましたが、周りを見渡してみるとそういうことなんです。当然、勉強に励んでいる人はたくさんいました。でもよく見ると、自分のプロジェクトをやっていたり、サービスを作っていたり、1年生でもインターンシップに向けて着々と準備をしていたり、各々磨き上げていたんです。

余談ですが、右側の写真は大学のコンピューターサイエンスの建物の中で、螺旋の坂になっています。この写真を撮ったのは3階で、5階まで見えるのですが、ロボットを作って螺旋の坂を5階まで行かせるという、おもしろい競技がありました。見渡してみると、本当にいろいろなことをやっている人がいました。

その時に僕は、勉強とは? と思い始めました。当時は2年生で、勉強をがんばっていて、これならいい会社に勤められると思っていたんです。そんな中、例の友だちやほかのサービスをやってインターンシップを取っている人を見て、初めて勉強=就職ではないと気づきました。その時ライフプランが崩れて、どうしようと悩む日が続きました。そんな中、ふと思い出した言葉がありました。

この写真はスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学卒業式でスピーチをした時のものです。とても良いスピーチなので、よかったらみなさんも一度見てください。僕は読むと噛むので、英語でも日本語でも、みなさん自身で読んでください。

この中に「やりがいを感じることができるただ一つの方法」というフレーズがありますが、その時に僕は思ったんです。僕は本当のやりがいを見つけていなかった。勉強すればいいや、就職すればいいや、会社に勤めればいいやと思っていたんです。別に勉強が悪いわけではないし、例えばアカデミアに行く人たちも勉強は大事だと(言っています)。自分が磨き上げられる1つの道でもあるので、向上するのはとてもいいことだと思います。

しかしそもそも、それを何につなげるのかが見えていないと、せっかくの勉強の努力が半減してしまうのではないかと思い始めました。スティーブ・ジョブズのスピーチのように、自分にとってのやりがいを探そうと思いました。

プロダクトの創造を通して、人類の進歩に貢献していきたい

(スライドを指して)「自分にとっての人生のやりがい」の「プロダクトの創造を通して、人類の進歩に貢献する」です。プロダクトというキーワードと、人類の進歩と聞くと壮大な感じがしますが、これじゃないかと大学の間に徐々に気づいて、今も同じことを思っています。

人生のやりがいはやっていくうちに変わってもいいと思うんですが、何かしらあることは大事だと。結局、仕事を続けるのも新しいチャレンジをするのも、こういうことではないかと思っています。そこから僕は勉強しつつ、いろいろなことに手を出しました。例えばデザインの授業を取ってみたり、ビートルズの授業をおもしろ半分で取ってみたり。

徐々に自分のアイデアでプロジェクトを進めて、なんやかんや卒業までに課外活動グループやサークルみたいなものを始めました。さらに、それに使える管理ツールを作り上げました。写真を掘り出している時に見つけたので、恥ずかしいですが共有しましょう。

スライドの左側が、最初にどういうロゴにしようかスケッチしているところで、右側が実際にできたものです。これは一部のページですが、ここにベタ打ちでタイプして、写真をドラッグ&ドロップで落としたり、ヘッダーを付けたりして保存すると、そのままWebページができます。

今だと普通ですが、これは10年以上も前なので(笑)。「何年生の時ですか?」と質問が来ていますが、これを始めたのは2年生の後半くらいかな。なんだかんだ2年くらいやっていました。

(スライドを指して)「僕はまだ何も達成できていない」。ただ、人生のやりがいが少しはっきりしたことによって、何をすればいいのかというところから徐々に整理がつきました。結果的にこういったプロダクトみたいなものを作って、それが評価されて結果的にAppleのインターンに呼ばれたり、アーリーステージのベンチャーたちに手伝ってくれないかと声をかけられたり。やっと少しずつ自分が望む結果が出始めたと感じたので、みなさんも、人生のやりがいともう一度向き合ってみてはどうでしょうか?

(次回へつづく)

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