2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
橋田裕之氏 インタビュー(全1記事)
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ーーデジタル化・自動化の急速な普及によって、企業はビジネススタイルの変革を求められ、ビジネスパーソンの働き方も大きく変わりました。こういった変化や影響は人事評価にも見られるのでしょうか。
橋田裕之氏(以下、橋田):我々はPOSITIVEという統合人事システムを提供していますが、導入されるお客さまは大企業が多く、昨今は自社だけでなくグループ全体を同一のシステムで管理したいというニーズがあります。これまで大企業の人事制度は各社各様で行われていましたが、できるところは統一したいという考え方が進んでいます。
また、システム導入を検討される企業の多くは、それまで業績評価は半年に1回、能力評価は半年から1年に1回でしたが、その期間をもっと短くして、特に業績評価は1~3ヶ月に1回くらいの頻度で評価に結びつく面談やフォローアップをする方向に変わっているようです。
ネットやスマホが当たり前にある環境で育った今の若い世代の方は、わからないことは調べればすぐわかるという感覚を持ち、リアルタイム性を求めるところがあります。自分の評価や目標についても、スピード感を求めている感じですね。これからは、人事システムもリアルタイム性やスピード感を考えなければいけないと思います。
ーー企業の従業員は自社の人事評価のどこに不満を感じるのでしょうか。その不満を解消して、納得度の高い人事評価制度を作るポイントはありますか。
橋田:例えば当社の評価制度は、大きく業績評価と役割評価の2つがあります。目標を定めて、それを達成したかがポイントになりますから、「目標の合意の仕方」が重要です。その時、いい評価をもらった人は公平だと感じ、ちょっと残念だったという人は不満を持つと思うんですね。
このちょっと残念な時にどうやって納得感のあるデータを提供できるかがポイントです。POSITIVEではAIを使ってパフォーマンスの良い方の行動分析を蓄積し、提供する機能があります。例えば過去に部署で成功した人の行動分析を提示しながら、本人は気付いていないけれど、データ上は成功者と同等の指数が出ている項目があることを伝えられます。あるいは、その人に適した職場や職種、ポジションを推薦することもできます。
転勤や海外駐在の際も、「データを照合するとあなたのスキルやパフォーマンスは成功された前任の方と似ているので、マッチ度は高いですよ」と裏付けを示した上で話すと、経験や勘で抜擢していた時代と違って、説得力が増すと思います。
ーー人事評価への従業員の納得度を高めるためには「目標の合意の仕方」が大切だということですが、目標の合意にAIやテクノロジーを活用することはできないのでしょうか。
橋田:プレス発表もしていますが、POSITIVEを採用いただいている明治安田生命保険相互会社さまは、職員の方がキャリアビジョンを考える際に、自由にロールモデルを探せるよう本人の同意を得た約1,000人の管理職の経歴を閲覧できるようにしています。
職歴や業務歴などを開示していますので、職員の方は目標とする先輩や上司が、どの部署やポジションで、どんな経験を積んできたかを確認でき、自身のキャリア設計の参考にしています。
例えば営業企画部の部長の経歴を見て、その部長が例えば25歳とか30歳の時に、どういう業務・経験をしていたかを確認できるということですね。上長も「あの部長みたいになりたかったら、こういう設定をしたほうがいいんじゃないかな」といったコミュニケーションができます。
通常、人事システムは目標設定や賞与支給の際などにアクセスが増えますが、明治安田生命さまでは、常に職員の方々に閲覧されているそうです。一般的に人事データは慎重に取り扱われていますが、我々はこれからは開示していく方向性を推奨しています。
ただ、労働組合との兼ね合いもあり、現状日本の企業でそこまでダイナミックにシステムをお使いになっている企業はありません。でも、明治安田生命さんの例のようにできるところからやっていこうという方向性は間違いなくあります。
今後システムやAIを最大限に使うためにも、今は情報をどんどんインプットして、蓄積することが大事な段階です。その蓄積したデータをいざ活用したいとなった時に、我々の提供するシステムのさまざまな機能が生きてきます。大手の企業さんには、そういった活用を想定して採用いただいているところも多くあります。
ーー多くの企業が人事システムをダイナミックに使用するようになるためには、何が必要でしょうか。
橋田:グローバルに展開される企業の方は認識されていると思いますが、外国籍の社員の方は、人事評価にちょっとでも不透明や不公平なところがあると退職の検討に直結してしまいます。そのため、外資系のパッケージシステムやソフトは非常に細かく項目の設定ができるようになっています。でも、日本の企業ではそこまで細かい項目を入れきれません。それがデータベースを使いこなせない理由だと思います。
でも、これからは細かい項目のインプットがとても大事になります。所属部署の履歴だけでなく、部署内での業務履歴、業務履歴の中でもどのくらいのレベルの業務をしていたか。プロモーションやマーケティングをやっていたという情報はあっても、どの業務をどのようにやっていたかはわかりません。
例えば「1つの部署に固定をしない」「いろんな金融業務を教えたい」という考えから、金融機関さんは他の業界に比べて、配属部署が大きく変わります。その時、営業部署から審査部に行き、さらに融資部に異動したという履歴は残っても、審査部で受付をしていたのか、審査業務をしていたのか。審査業務の中でも中小企業を担当していたのかなど、具体的に何の業務を担当していたのかはわからないのが現状です。
業務に必要なスキルや適性を全社で共有するためにも、そこを細かく入力することが大事になります。会社側もインプットをする社員に、「みんながきちんと入力することで、他の社員に役立ち、自分のキャリアパスも形成しやすくなる」というメリットを伝えなければいけないと思います。
ーー企業が社会や時代の変化に対応し、成長していくためにも情報のインプットと蓄積したデータの活用が大切だということですね。今後さらにAIやテクノロジーが進化すると、人事領域でどういったことが可能になりますか。
橋田:例えば、残業の増加傾向を確認したら、ラインマネージャーに該当する社員との1on1での面接をすすめる通知を出すなどは既に可能だと思います。また、過去2~3年の本人からの申告内容や勤務実績、目標設定などから、辞めそうな傾向が出ている人を通知することもできるのではないかと思います。
あとは、顔相や表情の分析も可能です。アメリカでは既に行われているようですが、例えばオンラインで営業職の採用面接をする時に、営業で成功している人の顔相や表情、リアクションのデータから適性を確認するというものです。
あるいは、先ほどお話ししましたが、金融機関さんのように定期的に人事異動を行う業界や業種があります。その時、玉突き人事と言われる「この人を動かしたら別のこの人を動かす」という連鎖的な異動が発生します。
お得意さんが近くの支店にいてはいけないとか、家族が同じ支店ではいけないとか、過去にこの上司と部下はうまくいっていないといったことをすべて調整しながら半期ごとに定期異動をしますが、その際にシステムで適切な配置転換の案を出すこともできると思います。
ーー企業やビジネスパーソンにとって、人事評価や人事領域でのAI・テクノロジーの活用は広がりと可能性を感じます。
橋田:POSITIVEを提供する私たちHCM事業部では「POSITIVE ONE, Open happiness.」をスローガンにしていますが、我々はAIやテクノロジーを駆使して働くみなさんに幸せを感じていただきたいと考えています。多くの人が「この仕事がやりたかったんだ」「この仕事をやれてよかった」と納得し、喜べる未来にしていきたいですね。
ーー本日はどうもありがとうございました。
橋田:ありがとうございました。
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