CLOSE

ゲームクリエイターを目指す人へ~木村唯人×高木謙一郎×やしろあずき 生対談~学校では教えてもらえない、今ゲームクリエイターに必要なこと(全6記事)

スタートは「段ボール1箱分の企画書」と「15分で書いた企画書」 木村唯人×高木謙一郎×やしろあずきが開いたゲーム業界の扉

Cygames Tech Conferenceは、「最高のコンテンツ」を目指してきたCygamesの技術カンファレンスです。実際にゲーム開発を通して様々な視点で経験を積んできた木村唯人氏、高木謙一郎氏、やしろあずき氏の3名が、ゲームクリエイターという仕事の楽しさや、必要とされる能力について緩やかに議論を交わしました。全6回。1回目は、ゲーム業界に入ったそれぞれの経緯について。

木村唯人氏、高木謙一郎氏、やしろあずき氏の紹介

司会者:ただいまより、「ゲームクリエイターを目指す人へ〜木村唯人×高木謙一郎×やしろあずき 生対談~学校では教えてもらえない、今ゲームクリエイターに必要なこと」のセッションを開始します。

みなさん、おはようございます。本セッションの司会進行を務めます、Cygames Tech Conference運営委員長の松岡です。どうぞよろしくお願いします。

はじめに、本セッションの概要を説明します。本セッションでは、実際にゲーム開発をとおして、さまざまな視点で経験を積んできた、木村唯人、高木謙一郎、やしろあずきの3名が、ゲームクリエイターの仕事の楽しみや、必要とされる能力について緩やかに議論します。

次世代のゲームクリエイターを目指す方々に向けて、ここでしか聞けないリアルなノウハウと、業界の扉を開くヒントをお届けします。

それではみなさん、自己紹介をよろしくお願いします。まず、木村さんからよろしくお願いします。

木村唯人氏(以下、木村):Cygames専務取締役兼プロデューサーの木村唯人です。よろしくお願いします。プロフィールは読んでいただいて、詳しくは後ほどお話しします。

司会者:ありがとうございます。続いて、高木さん、お願いします。

高木謙一郎(以下、高木):こんにちは。Cygamesコンシューマー事業本部長、プロデューサーの高木です。今日はいろいろとおもしろい話ができればいいなと思っているので、よろしくお願いします。

司会者:よろしくお願いします。続いて、やしろさん、よろしくお願いします。

やしろあずき(以下、やしろ):おはようございます。Cygamesとは1ミリも関係ない、やしろあずきです。よろしくお願いします。

なぜ僕がここにいるのか、みなさん思われていると思うのですが、それは僕が一番思っているので、ご安心ください。

(一同笑)

やしろ:ただ、僕は一応5年間ぐらいゲームプランナーをやっていたので、その経験上からお二方といろいろお話をさせていただければと思っています。どうかよろしくお願いします。叩かないでください、お願いします。

本日のアジェンダとセッション開催の経緯

司会者:みなさん、よろしくお願いします。こちらが本日のアジェンダです。

1つ目は、ゲーム業界にどう入ったのかというテーマで、それぞれゲーム業界を志したきっかけや、業界に入るまでの過程を聞いていきます。

2つ目は、ゲームクリエイターの仕事と日常というテーマで、ゲームクリエイターの仕事にはどんな内容があるのか、それぞれの体験談をもとに、ひもといていきます。また、休暇も含めて、それぞれ日常をどう過ごしているのかも聞いていきます。

3つ目は、必要とされる能力というテーマで、ゲームクリエイターとして業界で働くために必要とされる能力について、みなさんに議論してもらいます。

4つ目は、ゲームクリエイターを目指す人へというテーマで、ゲームクリエイターを目指す人が今、何をすべきか。また、どんな人が向いているかなどを議論してもらいます。

最後に、質疑応答です。ゲームクリエイターになるためには、というテーマで事前にいただいた質問に答えてもらいつつ、リアルタイムで投稿してもらった内容にも、時間の許す限り答えてもらいます。

今回、本セッションを発案したのは、木村さんですが、実施に至った経緯を教えてもらえますか?

木村:プランナー向けにセッションをしてほしいと依頼されて、考えた結果、なぜかプランナーはこういうセッションを見ないなと思いました。これは悪口ではないんですが、なぜかこういうセッションを見ないんですね。

2時間ぐらいかけて「なんで見ないのか?」をパネルディスカッションしてもいいのですが、2時間ぐらいかかっちゃうので、その議論はTwitter上でみなさんやっていただいて。

今回は、プランナーになりたいと思っている人のためのセッションです。プランナーになりたい人は、これだったら見るだろうと思いました。(プランナーに)なっちゃうともう見ないので。

(一同笑)

木村:ゲーム業界に若い人がいっぱい入ってくれるとうれしいので、こういうセッションをやろうと思いました。

司会者:ゲーム業界への注目もかなり上がってきていますが、ゲーム業界の仕事を経験している人から、ゲームクリエイターにどうやったらなれるかを聞ける機会はあまりないですからね。

専門商社の営業からゲームプランナーに転職

それでは、1つ目のテーマからいきましょう。まずは、ゲーム業界にどのように入ったのかという話からお聞きします。それぞれにお聞きしたいので、まずは木村さんからお願いします。

木村:僕は、大学院を卒業して、まず専門商社に入ったんですね。商社で営業して物を売っていたんですが、あまり合わないなと2年ぐらいで気づいて、何もあてがない状態で辞めたんですね。でもゲームがすごく好きだったので、1回ぐらいゲーム業界にチャレンジしてみようかなと思ったんです。

人材派遣の登録に、ゲーム業界に興味あると登録したら「紹介しますよ」と電話がかかってきました。未経験可のプランナーを募集していたゲーム会社の面接に行ったら、「明日から来てください」と言われて、明日から行けるわけはないなと思って、1週間ぐらい猶予をもらって、ゲーム業界に入れました。

たまたま未経験でも人が欲しいというプロジェクトがあったということが、あとからわかったんですが、タイミングがすごくよかったんだなと思っています。

司会者:木村さんと言えば、ゲームプロデューサーのイメージが強いと思うので、最初はゲーム業界にいたわけではなかったというところで、視聴者も驚いているかもしれませんね。

ADの仕事をしながら、書いた段ボール1箱分の企画書

それでは次に、高木さん、お願いします。

高木:私も大学を卒業して、ゲーム業界をずっと目指していたのですが、ちょうど就職氷河期で、就職活動がうまくいかなくて、とりあえずゲーム専門学校に行こうかという感じで2年間学校に行きました。だけど、そこでもうまく就職ができなくて。

当時は広島にいたんですが、とりあえず東京に出ようと、24歳の時に東京に出てきて、それこそ派遣会社に登録しました。今思えばそこでゲーム会社を紹介してもらえばよかったんですけど。

(一同笑)

高木:なぜかテレビのADをやりながら、1年半ちょっとぐらいですかね、そっちの仕事をしながら企画書を作っていました。

そんな中、ゲーム会社の方に出会って、企画書とかいろいろな自分の書類を見てもらっていました。25歳の終わりぐらいの時に、やっとゲーム会社に入って、2002年から当時はゲームデザイナーという役職だったのですが、プランナーとしてゲーム開発会社に入りました。ちょうどもうすぐ20年ですね。

木村:段ボール1箱って、すごいですね。

高木:そうですね、どうアピールしていいのかがわからなかったので、とりあえず量でいこうと、たくさん作って、たくさん送りつけたので、(向こうは)すごく迷惑だったと思います。

(一同笑)

やしろ:プランナーにはAD上がりの人が多いと思います。僕が前にいた会社には、4、5人ぐらいそういう人がいて、忍耐力をADの仕事でつけてくるから、がんばって働けるというのがADの人にはあるのかな。

高木:そうですね。その時はけっこう雑に扱われたりしていたので。

やしろ:耐性がつくんでしょうね。

高木:そうですね。役立ったんですね。

司会者:今回は、当時作成していた企画書も用意してもらいました。

高木:本当に手書きで、「Word」と「ペイント」みたいな感じで、かなり怨念のこもったファイルなんですけど。

やしろ:色はペイントで塗っているんですか。

高木:そうですね。デザイナーではないので、決してうまくはないのですが、やはり文字だけだと伝わりづらいだろうなと、できるだけ絵を描いて、企画書を当時作っていました。今見てもこのゲームはわりとおもしろいかなと思うんですけど。どっかでどさくさに紛れて作ろうかな。

(一同笑)

司会者:先ほど、就職活動で段ボール1箱を送ったという話があったのですが、今みたいにインターネットでいろいろ登録して送る感じではなかったんですか?

高木:インターネット自体はあったんですが、Webで応募してどうこうというのは少なくて、企業に封筒やハガキを送って、資料くださいとか、そういう流れでした。就職本を買ったら、そこにはいろいろなメーカーの名前や、今何を募集しているのかみたいなことが書いてありました。今はWebで溢れるほどあるようなものを、当時は買って調べて、電話したり、応募したりしていました。

こういうので初めて、それこそパブリッシャーとデベロッパーの差に気づいたりとか、このゲームはここが作っていたんだとかも見られて、当時、おもしろかった思い出はありますね。

司会者:ゲームの開発会社の情報はもちろん、ゲームの情報を集めるのも、今とはけっこう異なっていたみたいですね。

高木:そうですね。今はもうWebやらなんやらで、本当に簡単に情報が手に入っちゃいますが、当時は体験版を買うとか、PVを買うみたいな感じでした。サターンもそうですし、プレステもそうですが、スーパーファミコンの頃から、1,000円、2,000円で、毎月体験版を買っていて、お金がなかった中で、やはりいろいろなゲームに触れたくて、こういうのでも遊んでいました。

今は、体験版もサブスクもたくさんあって本当に羨ましいなと思いますね。

やしろ:昔のゲームもできますもんね。あれはむっちゃ羨ましいですよね。

高木:そうですね。

就活をやめて行った「CEDEC」の企画イベントで学生1位を受賞

司会者:ありがとうございます。それでは次に、やしろさん、お願いします。

やしろ:僕も、純粋なオタク少年で、ゲームはメチャクチャ好きだったんですよね。漫画・ゲームがすごく好きだったんですが、ゲーム業界に絶対入ってやるぞみたいな明確なものは特になくて、純粋に就活が嫌過ぎてやっていなかったという、ダメ学生のうちの1人だったんですけど。

特に集団面接が無理過ぎて、自分以外に人がいっぱいいるのが訳がわからなくて、集団面接のフェーズに行った瞬間に、訳わかんない、なんでいるんだよと思って、集団面接のフェーズが来た瞬間に僕は辞退するというのを繰り返して、就活をぜんぜんやっていなかったんです。

それで、もう自主的に「就活を俺はやめるぞ! ジョジョーーッ!」みたいになって、「CEDEC」という横浜でよくやっているゲーム業界……。

木村:それは、日本で一番有名なやつ。

(一同笑)

やしろ:よくやっているイベントがあって、そこで「PERACON」という、今もたぶんやっているんですが、ペラ1枚に企画書を書いて競い合う企画があって。

大学の友だちがそこに行くと言うので、フラッとついていきました。僕は、当時から多少の絵を描いていたんですよ。今みたいにインターネットには上げてはいなかったんですが。

そこで、まだ応募ができて、ちょうどノートパソコンとペンタブがあったので、会場の休憩室かどこかで、10分、15分で企画書を1枚バッと書いて出したら、なんとそれが学生1位を取ったという。

1位の人がセガの……木村さんだわ、名前(笑)。セガの木村さんという人が1位でした。

木村:ああ、俺じゃない(笑)。

やしろ:2位が僕で、学生で1位を受賞して、ファミ通とかに載せてもらいました。そうしたら、ゲーム会社のほうから、よかったら面接受けに来てくれという話がいくつかあって、よし、しめたと思って。

木村:これすごいですよね。高木さんは段ボール1箱分を書いたのに。

(一同笑)

やしろ:15分で、やっちまいました。

木村:2人とも漫画みたいですね。高木さんは、ドラマみたいな感じで、段ボール1箱分を作って送っていて、ゲームの主人公がやっていそうなことだし。やしろさんは、ハチャメチャ。いきなり1位(笑)。

やしろ:僕らの中で、まともに新卒で就職活動して(ゲーム会社に)入った人は誰もいないんじゃないですか。

木村:でもやはり、やしろさんのすごさは、今日のゲストにはふさわしいですよね。

やしろ:それでいろいろな会社からオファーをいただいて、何社か面接に行って、一番いいなと思ったところに入って、一応新卒で、プランナーとして正社員で入ったということですね。これ、スライドに続きがあるんでしたっけ?

当時作成した企画書を公開

司会者:企画書を、今回用意していただいています。

木村:どうせくだらないやつだと思っていたんですけど。

(一同笑)

木村:でもちょっと見てもらってね。

やしろ:ということです。じゃあ、お願いします。

木村:意外ときちんとしているんだよね。

やしろ:きちんとしているかな?

木村:これはけっこうおもしろそう。

やしろ:このPERACONには、テーマがあって、そのテーマに沿った企画書を書くんですよ。この年のテーマが「途中下車」だったんですよね。だから、思いっきりそれをテーマにして、客の言動を見て当てろという企画書を作りました。

木村:きちんとゲームになってそうなんですよね。スタンスがすごい。

やしろ:実際、ほかに企画を出している人は、今のゲーム開発環境でこれが実現できるのかどうかという部分で作っていたんですが、僕はもうそのへん全部ガン無視して、企画として出したのがけっこうよかったらしいです。絵も今に比べたらぜんぜん下手くそですが、絵も描いて出した、これが2位に。

木村:これ、普通にミニゲームにしたらわりとおもしろいと思いますけどね。

やしろ:えっ、Cygamesが作ってくれるということでいいですか?

木村:いや、絶対作らないけど。

(一同笑)

やしろ:即拒否(笑)。

でも、まあこれが、ゲーム業界に入るきっかけになった1枚みたいな感じですね。

木村:すごいよ才能。だってこれ15分でしょ。すごいな、スキル高いな。

やしろ:まさかこれでいけると僕は思っていなかったんで。

木村:いや、いけるよ。企画書を、おもしろいように書くのはけっこうムズいんですよ。いきなりこれを15分で書けるのはすごいと思う。

やしろ:メッチャ褒められるやん、今日。

(一同笑)

木村:だから、すごいのよ。だって、すごいって。

やしろ:うれしい。

それで、そのまま(会社に)入って。1回その会社を辞めて転職して、セガに入って、セガでプランナーを3年ぐらいやって、独立して、なぜか漫画家になるという感じでございます。

ゲームプランナーから漫画家へ転身をしたきっかけ

司会者:やしろさんは、今は漫画家として独立をされていますが、会社のお仕事ではなく、個人でお仕事するようになったきっかけはなにかあったんですか?

やしろ:僕、セガのこと1ミリもディスらないですからね。メチャクチャ好きです、セガのこと。本当にいい会社ですよ、あそこはマジで。人もいいし、全部いいです。すべて、空気もいい。

なんですが、セガで働きながら僕はちらほら絵を描いていて、Twitterにちょくちょく漫画を上げるようになっていって時に、会社にも、「別にそれは好きにやっていいよ」みたいな風潮があったので、それを普通に趣味としてやり続けていたら、だんだん、僕の漫画を好きになってくれる人が増えて、フォロワーさんが増えて、漫画のお仕事も来るようになったんですよね。

これは後々話すんですが、僕はゲームプランナーと漫画家を比べた時に、もちろんどっちも好きな仕事だし、とってもいい仕事なんですが、スタイルがぜんぜん違うなと思いました。僕の生き方だと、個人でやれる仕事のほうがいいのかなと考えたので、漫画でもらえるお仕事の給料が、ゲームプランナーの給料を抜いたら辞めようと思ったんです。

わりと、「辞めちまえ!」みたいに辞めたんじゃなくて、そういう計画性を持って僕はやっていて、それでいろいろやっていたら、漫画でもらえる給料がゲームプランナーの給料をちょっと抜いた時があって、もう自分が決めたことだからここで辞めようと、円満退社をしました。

セガさんとはね、なにも揉めていません。なにも揉めていないんです。

木村:だいぶ昔の話ですもんね。

やしろ:今からすると、もう5、6年とかそのぐらい前の話ですね。それで、フリーランスとして活動を始めた感じです。

組織の強みは個人でできない部分の壁を突破できること

司会者:会社での制作と、個人でのお仕事の両方を経験されて、それぞれここはよかったなとか、ここはちょっと悪かったなみたいに、感じることはありましたか?

やしろ:正直、プランナーって「俺が最強のゲームを作りたい」と思って会社に入ると挫折するんですよね。入社してすぐに『ドラクエ』を作れるわけでないし、『FF』が作れるわけでもないので。

やはり最初は本当に、細々としたところから始まるので、そういう志を持って入ってきて、折れてしまった人も何人も見てきました。

僕は、けっこうアイデアマンな部分があったので、やはりどちらかで比較した時に、個人でイチから全部、ゼロからゼロイチで作れる仕事のほうが、やりがいがあるんじゃないかなと思った部分もありました。

ただ、ゲームプランナーは、やはり組織としてやっていて、自分でできない部分、例えば描けない絵をデザイナーが描いてくれたり、できないプログラミングをプラグラマーが書いてくれたりというチーム制作なので、そこの良さは、やはり個人と比べてはありますよね。

個人でできない部分の壁を突破できるというのが、やはり組織の強みだと思うので、そこは個人と組織の違いだなと思いますね。

司会者:確かに個人だと、本当に自分でいろいろなことをやらなくてはいけないというところがありますもんね。それぞれお聞きしましたが、ゲーム業界に入る過程だけでもこんなに違うんですね。

(次回へつづく)

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 孫正義氏が「知のゴールドラッシュ」到来と予測する背景 “24時間自分専用AIエージェント”も2〜3年以内に登場する?

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!